ビタミンB6のはたらきは?食事摂取基準や摂取源となる食品も紹介

2024年05月27日

2024年08月20日

「ビタミンB6ってどんな栄養素なんだろう?」

ビタミンを意識的に摂取していても、ビタミンB6の詳しいはたらきまでは知らないという方も多いでしょう。

ビタミンB6はたんぱく質の分解を助け、免疫機能を維持する重要な栄養素です。

この記事ではビタミンB6のはたらきや1日に必要な量、過不足による悪影響について解説します。

ビタミンB6の摂取源となる食品もご紹介するので毎日の食事の参考にしてくださいね。

1.ビタミンB6とは

ビタミンをイメージさせるカプセルとビタミンB6の化学式

ビタミンB6は水に溶けやすい水溶性ビタミンで、ビタミンB群の一種です。

ビタミンとは
人体のはたらきを正常に保つために必要なものです。ビタミンは体内ではほとんど合成できないため、食事から摂取しましょう。
メモ
ビタミンB群にはビタミンB6のほか、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンがあります。ビタミンB群について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

ビタミンB群は、互いに助け合ってはたらくためバランス良く摂取することが重要といえます。

ビタミンB6は炭水化物、脂質、たんぱく質の代謝において重要なはたらきをする栄養素です。

代謝とは
飲食物から吸収した栄養素や、体内に貯蔵されている栄養素をエネルギーや生命維持に必要な物質に変える作用のことです。

炭水化物、脂質、たんぱく質は体に必要な栄養素のなかでもエネルギー源となる重要なものです。

また脂質は細胞膜やホルモンなどの材料にもなります。

たんぱく質は筋肉や臓器、皮膚、髪の毛などの体の組織を構成し、ホルモンや酵素などの体の機能を調節する物質の材料にもなります。

メモ
酵素とは消化や吸収、代謝などの体内で起こる化学反応に触媒として関わるたんぱく質のことです。酵素はそれぞれに異なるはたらきをし、体内には数千種類存在するといわれています。酵素にはそれ単体で作用するものと、補酵素と呼ばれる別の物質を必要とするものがあります。

ビタミンB6はこれらのエネルギー源となる栄養素の代謝に、補酵素として関わっています。

特にたんぱく質の分解を助けるため、たんぱく質の摂取量が多いほど必要量が増えるといわれています。

またビタミンB6は赤血球のヘモグロビンを合成するためにも欠かせない栄養素です。

メモ
ビタミンB6には妊娠中のつわりを軽減する効果があるといわれています。この効果が確かなものであるかはまだ研究が進められている途中ですが、アメリカではつわりの治療としてビタミン剤を投与する療法があります。ただし自己判断による妊娠中のサプリメント摂取は健康に悪影響を及ぼす恐れがあるため避け、主治医に相談しましょう。

2.ビタミンB6の食事摂取基準と平均摂取量

ししとう

「ビタミンB6はどれくらい摂取するべきなんだろう?」

「普段の食生活でビタミンB6を十分に摂取できているのかな?」

このように気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。

ここではビタミンB6の摂取量の目安と、日本人の平均摂取量をご紹介します。

2-1.ビタミンB6の食事摂取基準

厚生労働省はビタミンB6の1日の摂取量の目安となる「推定平均必要量」「推奨量」および「耐容上限量」を公表しています。

メモ
推定平均必要量は半数以上の人にとって十分な量で、推奨量はほとんどの人にとって十分な量です。また、耐容上限量は過剰摂取による健康への悪影響が生じないように定められたものです。

ビタミンB6の推定平均必要量は以下のとおりです。

【ビタミンB6の推定平均必要量(mg/日)】
年齢 男性 女性
1〜2歳
0.4
0.4
3〜5歳
0.5
0.5
6〜7歳
0.7
0.6
8〜9歳
0.8
0.8
10〜11歳
1.0
1.0
12〜14歳
1.2
1.0
15〜17歳
1.2
1.0
18〜29歳
1.1
1.0
30〜49歳
1.1
1.0
50〜64歳
1.1
1.0
65〜74歳
1.1
1.0
75歳以上
1.1
1.0

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

また妊婦の方は年代別の推定平均量に0.2mg、授乳婦の方は0.3mgの付加量が設定されています[1]。

ビタミンB6の推奨量は以下のとおりです。

【ビタミンB6の推奨量(mg/日)】
年齢 男性 女性
1〜2歳
0.5
0.5
3〜5歳
0.6
0.5
6〜7歳
0.8
0.6
8〜9歳
0.9
0.7
10〜11歳
1.1
0.9
12〜14歳
1.4
1.1
15〜17歳
1.5
1.3
18〜29歳
1.4
1.3
30〜49歳
1.4
1.1
50〜64歳
1.4
1.1
65〜74歳
1.4
1.1
75歳以上
1.4
1.1

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

また推奨量においても妊婦の方は年代別の推定平均量に0.2mg、授乳婦の方は0.3mgの付加量が設定されています[1]。

ビタミンB6の耐容上限量は以下のとおりです。

【ビタミンB6の耐容上限量(mg/日)】
年齢 男性 女性
1〜2歳
10
10
3〜5歳
15
15
6〜7歳
20
20
8〜9歳
25
25
10〜11歳
30
30
12〜14歳
40
40
15〜17歳
50
45
18〜29歳
55
45
30〜49歳
60
45
50〜64歳
55
45
65〜74歳
50
40
75歳以上
50
40

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

推奨量と耐容上限量を参考に、ビタミンB6不足したり過剰になったりしないよう注意しましょう。

メモ
1歳未満の子どもに対してはビタミンB6の「目安量」が設定されています。目安量は推定平均必要量と推奨量を設定するために十分な科学的根拠が得られなかった場合に設定される基準で、目安量以上を摂取していれば不足による不調が現れるリスクはほぼないと考えられています。目安量は男女共に0〜5カ月で0.2mg、6〜11カ月で0.3mgです[1]。

[1] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-2.ビタミンB6の平均摂取量

普段の食事で十分にビタミンB6を摂取できているのかを把握するのは難しいものです。

ここでは目安として、ビタミンB6の平均摂取量をご紹介します。

一般的な食生活でどのくらいのビタミンB6が摂れているかの参考になるでしょう。

【ビタミンB6の平均摂取量(mg/日)】
年齢 男性 女性
1〜6歳
0.77
0.69
7〜14歳
1.12
1.03
15〜19歳
1.31
1.09
20〜29歳
1.12
0.91
30〜39歳
1.13
0.96
40〜49歳
1.25
1.01
50〜59歳
1.23
1.05
60〜69歳
1.36
1.23
70〜79歳
1.46
1.30
80歳以上
1.31
1.09

厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」をもとに執筆者作成

20〜64歳の男性はビタミンB6の摂取量が食事摂取基準の推奨量を下回っている傾向にあるといえますね。

自分が十分な量のビタミンB6を摂取できているか心配に思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

次の章ではビタミンB6が不足した場合や、過剰に摂取した場合の体への影響を解説します。

3.ビタミンB6の過不足による体への影響

腹部に手をあてる女性

「ビタミンB6が不足するとどんな影響があるんだろう」

「ビタミンB6は多く摂っても大丈夫なのかな……」

ビタミンB6が足りなかったり摂り過ぎたりしたらどうなるのか、気になりますよね。

栄養素は不足した場合も過剰摂取した場合も体に何らかの影響が生じます。

ここからはビタミンB6の不足や過剰摂取が体に与える影響についてご説明しましょう。

3-1.ビタミンB6の摂取不足が体に及ぼす影響

ビタミンB6が不足すると湿疹や口角炎、口内炎、結膜炎などの皮膚や粘膜のトラブルが起こりやすくなります

また聴覚過敏や情緒不安定、免疫機能の低下などの悪影響が生じる場合があります。

ビタミンB6はヘモグロビンの合成に関わる栄養素であるため、不足により貧血の原因となることもあります。

しかしビタミンB6は多くの食品に含まれる他、腸内細菌からもつくられるため不足することはほとんどありません

ビタミンB6不足に陥る危険があるとされるのは、主に降圧剤や抗リウマチ剤などの一部の薬品を服用している方やアルコール依存症の方などです。

なおビタミンB6が不足する場合は他のビタミンB群の不足と同時に起こるといわれています。

ビタミンB6だけではなく、普段からバランスの取れた食生活を心掛けるようにしましょう。

3-2.ビタミンB6の過剰摂取が体に及ぼす影響

ビタミンB6は水溶性ビタミンのため、多少摂り過ぎても尿として排出されます。

このため、通常の食生活を送っている分には過剰摂取の心配はありません。

しかし長期間にわたって過剰摂取を続けると、以下のような悪影響があることが分かっています。

ビタミンB6の過剰摂取によって起こる症状

  • 力が弱くなる、感覚が鈍るなどの神経障害
  • 骨の痛み
  • 筋肉が脆弱になる
  • 精巣の萎縮
  • 精子数の減少

これらの症状は数グラムの摂取を長期間続けた場合に生じるものです。

サプリメントなどの大量摂取を長く続けない限り悪影響は出ないと考えて良いでしょう。

4.ビタミンB6を多く含む食品

スマホを操作するひとと緑黄色野菜

「ビタミンB6はどんな食べ物から摂れるのかな?」

と気になっている方もいらっしゃるでしょう。

ビタミンB6は植物性食品からも動物性食品からも広く摂取できる栄養素です。

ここではビタミンB6を効率的に摂取できる食品を植物性食品と動物性食品の二つに分けてご紹介しましょう。

メモ
水溶性ビタミンであるビタミンB6は、食品をゆでたり煮たりするとゆで汁や煮汁に流出してしまいます。このためゆで汁や煮汁も一緒に摂れるような調理法を工夫してみてくださいね。

4-1.動物性食品

お皿にのった生のレバー

ビタミンB6は赤身の魚や肉といった動物性食品に多く含まれています

【ビタミンB6を豊富に含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
みなみまぐろ(赤身)
1.08mg
びんなが(びんちょうまぐろ)
0.94mg
牛レバー
0.89mg
ビーフジャーキー
-
0.85mg
かつお(春獲り)
0.76mg
鶏ささみ
0.66mg
鶏レバー
0.65mg
鶏むね肉
皮なし、生
0.64mg
さけ(しろさけ)
0.64mg
豚レバー
0.57mg
豚ヒレ
0.48mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

一食当たりに摂取できる量を考えると、動物性食品はビタミンB6を効率良く摂取できるといえるでしょう。

4-2.植物性食品

にんにく

ビタミンB6は以下のような植物性食品に多く含まれています

【ビタミンB6を豊富に含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
にんにく
1.53mg
こむぎ(小麦はいが)
-
1.24mg
ピスタチオ
いり、味付け
1.22mg
ドライバナナ
乾燥
1.04mg
とうがらし
1.00mg
ドライトマト
乾燥
0.95mg
ごま
いり
0.64mg
焼きのり
-
0.59mg
黄大豆(中国産)
乾燥
0.59mg
玄米
0.45mg
ししとう
0.39mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

一見含有量が多く見えますが、一食当たりに摂取できる量を考えるとあまり多くありません。

バランス良くさまざまな食品から摂取することを心掛けてくださいね。

5.ビタミンB6についてのまとめ

ビタミンB6はたんぱく質、脂質、炭水化物の代謝の際に補酵素としてはたらきます

特にたんぱく質の分解を助ける役割があるため、たんぱく質を多く摂取している方ほど必要量が増えます。

他にも免疫機能を維持する、皮膚の抵抗力を高める、肝臓への脂肪の蓄積を防ぐといった効果があります。

ビタミンB6の1日の摂取推奨量は成人男性で1.4mg、成人女性で1.1mgです[2]。

一方でビタミンB6が不足した場合は、皮膚炎や免疫機能の低下などが起こるためバランスの取れた食生活を送ることが重要です。

過剰に摂取した場合は、神経障害や骨の痛みにつながる恐れがあるため、耐容上限量が設定されています。

ビタミンB6を摂取しやすい食品としては赤身の魚や肉などが挙げられます。

水に溶けやすいため、煮込み料理やスープにして煮汁ごと摂ると効果的に摂取できますよ。

この記事を参考に、ビタミンB6の積極的な摂取を心掛けてくださいね。

[2] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査

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