炭水化物を摂ると眠くなる?眠気の原因と予防のためのポイントを解説
「炭水化物を摂ると眠くなるのはどうしてだろう?」
「食後に眠くならないようにする方法はあるのかな?」
ご飯や麺など、炭水化物を多く含む食品をたくさん食べた後、眠くなったことがある人も多いかもしれません。
炭水化物を摂った後に眠くなる現象には、血糖値の急激な変動が関与しています。
この記事ではそもそも炭水化物とは何か、また炭水化物を摂るとなぜ眠くなるのかについて解説します。
炭水化物を摂った後の眠気を予防するためのポイントもご紹介するので、食後の眠気に悩んでいる方はぜひ参考にしてくださいね。
1.炭水化物とは
炭水化物と眠気の関係を解説する前に、まず炭水化物はどのような栄養素なのかをみてみましょう。
炭水化物は体のエネルギー源となる栄養素(エネルギー産生栄養素)の一種です。
ヒトは食事から摂取したエネルギーを、生命を維持したり体を動かしたりすることに消費しています。
体重は摂取カロリー(エネルギー摂取量)と消費カロリー(エネルギー消費量)のバランスで増減し、摂取カロリーが消費カロリーを上回っていると肥満につながります。
炭水化物はエネルギーの供給源であることから、ダイエットの際に制限しなければならないものというイメージがあるかもしれませんね。
しかし実際には、炭水化物は「糖質」と「食物繊維」に分けられ、それぞれはたらきが異なります。
糖質は炭水化物のうち、エネルギー源になるもののことです。
炭水化物から生み出されるエネルギーはほとんどが糖質に由来し、そのカロリーは1g当たり約4kcalです[1]。
食事で取り込まれた糖質は分解され、そのうちのブドウ糖は血中に取り込まれます。
こうして血糖値(血中のブドウ糖濃度)が上昇すると、それに反応して膵臓(すいぞう)からインスリンというホルモンが分泌されます。
インスリンにはブドウ糖を細胞にエネルギーとして取り込ませる作用の他、消費し切れなかったブドウ糖を脂肪などに変え体内に蓄えさせる作用があります。
このため、糖質を摂り過ぎると肥満につながってしまうのです。
反対に糖質が不足した場合は、エネルギー不足による集中力の低下や疲労感などが生じます。
糖質について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
糖質とは?はたらきや過不足の悪影響、摂取の目標量と摂取源を紹介
食物繊維は炭水化物のうちヒトの消化酵素では消化できないもの(難消化性炭水化物)のことです。
消化されずに大腸まで到達し、便通を整える作用があることで知られています。
食物繊維は腸内細菌による発酵分解でエネルギーを生み出しますが、その値は1g当たり0〜2kcalと一定ではありません[1]。
食物繊維の定義は国や機関によって異なり、厚生労働省は難消化性炭水化物を食物繊維、炭水化物から食物繊維を除いたものを糖質と定義しています。
食物繊維について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
食物繊維とは?はたらきや摂取目標量、摂取源となる食べ物を解説
炭水化物はエネルギー源になる糖質と、おなかの調子を整える食物繊維が合わさったものなのですね。
[1] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2.炭水化物を摂ると眠くなる原因
「ご飯やパンを食べるとどうして眠くなるのかな……」
炭水化物を摂った後の眠気は、血糖値が急上昇することによるものだといわれています。
血糖値が急激に上昇した後に急降下したり、血糖値が高い状態が続いたりすると眠気やだるさなどの症状が現れるのです。
血糖値が急上昇する原因として、糖質の摂り過ぎやGI値の高い食べ物の摂取、インスリンの分泌能力低下が挙げられます。
この章では、炭水化物を摂ると眠くなる原因について解説します。
原因1 糖質の摂り過ぎ
炭水化物のなかでも糖質を摂り過ぎると血糖値の急上昇が起こり、眠くなります。
血糖値が上がり過ぎると、血糖値を下げるはたらきを持つインスリンが多く分泌されてしまいます。
これにより急激に血糖値が下がって低血糖状態になるため、眠気やだるさが生じてしまうのです。
原因2 GI値の高い食品の摂取
GI値が高い食品は血糖値の急上昇を招き、眠気を生じさせます。
同じ量の炭水化物を摂取しても、どの食品から摂るかによって血糖値の上がり方は異なるとされています。
GI値が高い食品ほど血糖値が急激に上昇しやすく、GI値が低い食品ほど血糖値が緩やかに上昇するのです。
GI値が高い食品の代表例には、白米やパン、餅などの穀類の他、果物のジャムや缶詰、いも類などが挙げられます。
また甘いお菓子やスポーツドリンクは急激に血糖値を上げやすいとされています。
こうした食品の摂取は、食後の眠気につながるのですね。
GI値について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
原因3 インスリン分泌能力の低下
インスリンを分泌する能力が低下することも、食後の眠気を招く原因です。
インスリンは食事によって上昇した血糖値を下げるはたらきを持ちます。
しかし膵臓の老化や肥満などの理由により、インスリンの分泌量が低下したり分泌するタイミングが遅れたりすることがあります。
これにより食後の血糖値の急激な上昇を招きます。
食後に血糖値が高い状態が続くと覚醒を促す「オレキシン」というホルモンの分泌が抑制されるため、眠気が生じるとされているのです。
なお、食後2時間が過ぎても血糖値が140mg/dL以上の状態を食後高血糖といいます[2]。
食後高血糖を放置していると糖尿病になるリスクが高まるため注意が必要です。
高血糖について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
高血糖とは?血糖値の基準や高血糖の健康上のリスクについて解説
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「食後高血糖」
3.炭水化物摂取後の眠気を予防するためのポイント
「食後に眠くならないようにする方法はあるのかな?」
炭水化物摂取後の眠気を予防するには、血糖値の急上昇を防ぐことが重要です。
この章では、炭水化物を食べた後の眠気を予防するためのポイントについて解説します。
ポイント1 糖質を摂り過ぎない
食後の眠気を予防するためには、糖質を摂り過ぎないよう心掛けましょう。
糖質の摂り過ぎは、血糖値を大きく上昇させて眠気を招きます。
それだけでなく、エネルギーとして使い切れなかった糖質はインスリンのはたらきにより体脂肪として蓄えられてしまいます。
これらを防ぐためには、糖質を摂り過ぎないことが重要です。
厚生労働省は、炭水化物の目標量を1日の総摂取カロリーに対し炭水化物から摂取するカロリーが占める割合(単位:%エネルギー)で設定しています。
炭水化物の目標量は50〜65%エネルギーです[3]。
これは糖質ではなく炭水化物全体の目標量ではありますが、炭水化物によって生み出されるエネルギーのほとんどは糖質に由来するため、糖質を制限する際の参考にすると良いでしょう。
例えば、1日の適正な摂取カロリーが2,000kcalの場合、1日に炭水化物から摂取すべきカロリーは1,000〜1,300kcalとなります。
糖質は1g当たり約4kcalであるため、重量に換算すると糖質の摂取量を250〜325gにすると良いことが分かります[3]。
糖質はご飯やパン、麺などの主食の他、いも類や果実類、砂糖などの甘いものに多く含まれています。
そのため、これらの食品の摂取量に注意すると良いでしょう。
[3] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
ポイント2 食物繊維を十分に摂る
炭水化物を食べた後の眠気を防ぐためには、食物繊維を十分に摂ることが大切です。
食物繊維は炭水化物の一種ではありますが、血糖値の急激な上昇を抑えるはたらきがあるといわれています。
食物繊維を積極的に摂取することで血糖値の上昇が緩やかになり、食後の眠気を予防できると考えられるのです。
また食物繊維には整腸効果や、糖質や脂質を体外に排出することで肥満などを予防・改善する効果も見込まれています。
このように有用な食物繊維ですが、実は多くの日本人が十分に摂取できていません。
成人の理想的な食物繊維摂取量が1日当たり25g以上なのに対して、摂取量はこれに遠く及んでいないのが実情です[4]。
このため、厚生労働省は以下のように実現可能な摂取目標量を定めています。
| 年齢 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 18〜29歳 | ||
| 30〜49歳 | ||
| 50〜64歳 | ||
| 65〜74歳 | ||
| 75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
食物繊維は、穀類や野菜類、豆類、きのこ類、海藻類などの植物性食品に含まれています。
食事にこれらの食品を意識的に取り入れると良いでしょう。
特に、切り干し大根やかぼちゃ、ごぼう、たけのこ、ブロッコリー、モロヘイヤ、さつまいも、納豆、あずき、おから、しいたけ、ひじき、しらたきなどは、1食当たりの摂取量に食物繊維がそれぞれ2〜3g含まれているのでおすすめです[5]。
主食をご飯やパンから、玄米ご飯や麦ご飯、全粒粉パンなどに置き換えることでも、食物繊維摂取量を増やすことができますよ。
食物繊維を含む食べ物について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
食物繊維を含む食べ物は?摂取目標量と摂取量を増やすコツも解説
[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
ポイント3 GI値の低い食品を選ぶ
食後眠くならないようにするために、GI値の低い食品を選びましょう。
GI値の低い食品を選ぶことで血糖値の上昇を緩やかにすることができます。
一般的にはGI値が55以下の食品が低GI、56〜69の食品が中GI、70以上の食品が高GIとされます[6]。
主食では、白ご飯のGI値は77で高GIの食品であるといえます[7]。
一方、精白されていないご飯は白ご飯よりもGI値が低く、大麦ご飯は67、玄米は55です[7]。
また麺は、そばとうどんが47、スパゲッティが46といずれも低GIに分類されます[7]。
食後の眠気を予防したい方は、GI値の低い食品を取り入れてみると良いでしょう。
低GIの炭水化物を含む食べ物について知りたい方は以下の記事をご覧ください。
[6] 山梨県厚生連健康管理センター「食品のGI値」を活用し、健康な体をつくりましょう! 」
[7] Kentaro Murakami, Satoshi Sasaki, Yoshiko Takahashi, Hitomi Okubo, Yoko Hosoi, Hyogo Horiguchi, Etsuko Oguma,and Fujio Kayama「Dietary glycemic index and load in relation to metabolic risk factors in Japanese female farmers with traditional dietary habits」(『The American Journal of Clinical Nutrition』Volume 83, Issue 5, p1161-1169, 2006)」
ポイント4 食物繊維の多い食品から食べ始める
食後の眠気を予防するために、食物繊維の多い食品から食べ始めるのがおすすめです。
食物繊維を多く含む野菜などから食べ始める食事法「ベジファースト」は、血糖値の急上昇を抑えるのに有効だとされています。
食物繊維を先に摂取することで糖質の分解や吸収が遅くなると考えられています。
食事を摂るときにはサラダやおひたしのような副菜から食べ始めると良いでしょう。
ポイント5 たんぱく質の多い食品から食べ始める
食後の眠気を防ぐために、炭水化物より先にたんぱく質の多い食品を食べるようにしましょう。
たんぱく質を多く含む食品から食べ始めることも、食後血糖値の上昇抑制に効果があるといわれています。
たんぱく質を先に摂取するとインスリンの分泌が増え、食後の血糖値が上がりにくくなると考えられているのです。
まずは食物繊維を含む野菜類、次にたんぱく質を含む肉類や魚介類、最後にご飯や麺のような炭水化物を含む穀類の順で摂取すると良いでしょう。
たんぱく質を含む食べ物については以下の記事で解説しています。
タンパク質とは?体内でのはたらきや食事摂取基準、豊富な食品を紹介
ポイント6 早食いをしない
炭水化物を食べた後の眠気を防ぐために、早食いをしないようにしましょう。
早食いは急激な血糖値上昇の原因になります。
脳が満腹を感じる仕組みには、血糖値が関わっています。
食事に含まれる糖質が分解され血糖値が上昇すると、脳の満腹中枢が刺激され満腹であると感じます。
つまり満腹中枢が刺激されるには、血糖値が上昇するまでの時間がかかるということです。
しかし早食いをすると、血糖値が上昇し脳が満腹だと感じる前に食べ過ぎてしまいます。
その結果、糖質の摂り過ぎにつながり、血糖値が大きく上昇する恐れがあるのです。
食後眠くならないように、よく噛んでゆっくり食べるようにしましょう。
ポイント7 食事を抜かない
食後に眠くならないようにするためには、食事を抜かないことも大切です。
食事を抜くとインスリンの作用が低下してしまい、次の食事の後、血糖値が大きく上昇することが分かっています。
血糖値の急上昇を防ぐためには、食事を抜かず、1日3食規則正しく食べる必要があるのですね。
ポイント8 食後に適度な運動をする
食後の眠気を予防するために、適度な運動をすることが勧められます。
食後の運動は、血糖値の急激な上昇を防ぐ上で有効です。
特に、食後1時間後の運動は、食後の高血糖状態を改善するといわれています[8]。
なお、糖尿病の運動療法としては、「ややきつい」と感じられる程度の全身を使った有酸素運動を、20分以上連続して週3回以上、合計150分以上行うことが勧められています[8]。
これに加えて、週2〜3回の筋トレを行うことも推奨されています[8]。
運動を習慣的に行っていると、筋肉量が増え、糖質が消費されやすい体になるといわれています。
まずは食後のウォーキングやジョギングから、できる範囲で行うことをおすすめします。
[8] 厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病を改善するための運動」
4.炭水化物を摂ると眠くなる原因と予防策のまとめ
炭水化物を摂った後の眠気は血糖値の急上昇や、急降下に伴う低血糖によるものだと考えられています。
血糖値は糖質を摂り過ぎたり、GI値の高い食べ物を摂ったりした場合の他、膵臓のインスリン分泌能力が低下している場合に急激に上昇します。
血糖値の急上昇による眠気を防ぐためには糖質を摂り過ぎないこと、食物繊維を十分に摂ることが大切です。
また、GI値の低い食品を選ぶこと、食物繊維やたんぱく質を多く含む食品から食べ始めることも有効だと考えられます。
さらに早食いをせずよく噛んでゆっくり食べること、食事を抜かないこと、食後に適度な運動を行うこともポイントです。
この記事を参考に、食後の血糖値の急上昇を防ぐために食生活や運動習慣を見直してみてくださいね。