「飽和脂肪酸を摂り過ぎると健康にどんな影響があるのかな?」
「飽和脂肪酸はどんな食品に含まれているんだろう?」
飽和脂肪酸は脂質を構成する脂肪酸の一種です。
主に動物性の脂肪に含まれており、ヒトの体内でも合成が可能です。
摂り過ぎると肥満や脂質異常症など、健康への悪影響を生じます。
この記事では、飽和脂肪酸とはどのようなものなのか、どんな食品に多く含まれるのか、過剰摂取すると健康にどのような影響が生じるのかといった点について解説します。
1.飽和脂肪酸とは
「飽和脂肪酸ってどのようなものなんだろう?」
飽和脂肪酸とは脂質の構成要素である「脂肪酸」の一種です。
脂肪酸は構造的な違いから飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。
飽和脂肪酸は乳製品や肉などの動物性脂肪や、パーム油などの食物油脂に多く含まれている傾向にあります。
飽和脂肪酸は体内で合成することができるため食事からの摂取は必須ではありません。
また過剰な摂取は肥満や生活習慣病の要因となることでも知られています。
2.飽和脂肪酸を多く含む食品
「飽和脂肪酸はどんな食品に多く含まれているんだろう?」
生活習慣病と深い関係がある飽和脂肪酸は、過剰摂取を防ぐためにもどんな食品に多く含まれているのか把握しておきたいですよね。
ここでは、飽和脂肪酸を含む食品の代表例をご紹介します。
2-1.肉類
飽和脂肪酸は肉類に含まれています。
【牛肉100g当たりの脂肪酸総量と飽和脂肪酸の含有量】
食品名 | 脂肪酸総量 | 飽和脂肪酸量 |
---|---|---|
もも(脂身) | 56.08g | 25.71g |
かた(脂身) | 53.95g | 27.32g |
ばら(脂身付き) | 29.63g | 13.05g |
サーロイン(脂身付き) | 20.52g | 10.85g |
かたロース(脂身付き) | 15.11g | 7.54g |
ランプ(脂身付き) | 14.05g | 6.47g |
リブロース(脂身付き) | 13.54g | 7.15g |
ヒレ(赤身) | 3.99g | 1.99g |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
【豚肉100g当たりの脂肪酸総量と飽和脂肪酸の含有量】
食品名 | 脂肪酸総量 | 飽和脂肪酸量 |
---|---|---|
かた(脂身) | 68.13g | 27.09g |
ばら(脂身付き) | 33.36g | 14.60g |
ロース(脂身付き) | 17.73g | 7.84g |
かたロース(脂身付き) | 17.54g | 7.26g |
もも(脂身付き) | 9.07g | 3.59g |
ヒレ(赤身) | 3.13g | 1.29g |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
【鶏肉100g当たりの脂肪酸総量と飽和脂肪酸の含有量】
食品名 | 脂肪酸総量 | 飽和脂肪酸量 |
---|---|---|
皮(もも) | 48.07g | 16.30g |
皮(むね) | 44.66g | 14.85g |
手羽先(皮付き) | 15.05g | 4.40g |
もも(皮付き) | 12.93g | 4.37g |
むね(皮付き) | 5.23g | 1.53g |
もも(皮なし) | 4.14g | 1.38g |
むね(皮なし) | 1.55g | 0.45g |
ささみ | 0.52g | 0.17g |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
2-2.乳製品
飽和脂肪酸は乳製品にも含まれています。
【乳製品100g当たりの脂肪酸総量と飽和脂肪酸の含有量】
食品名 | 脂肪酸総量 | 飽和脂肪酸量 |
---|---|---|
無発酵バター(食塩不使用) | 73.00g | 52.43g |
発酵バター(有塩) | 70.71g | 50.56g |
無発酵バター(有塩) | 70.56g | 50.45g |
ホイップクリーム(乳脂肪) | 35.57g | 24.98g |
ホイップクリーム(乳脂肪・植物性脂肪) | 34.89g | 16.63g |
ホイップクリーム(植物性脂肪) | 34.20g | 8.30g |
チェダーチーズ | 30.42g | 20.52g |
クリームチーズ | 28.55g | 20.26g |
カマンベールチーズ | 21.28g | 14.87g |
普通牛乳 | 3.32g | 2.33g |
ヨーグルト(全脂無糖) | 2.64g | 1.83g |
ヨーグルト(脱脂加糖) | 0.19g | 0.13g |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
2-3.油脂類
飽和脂肪酸は油脂類にも含まれています。
【油脂類100g当たりの脂肪酸総量と飽和脂肪酸の含有量】
食品名 | 脂肪酸総量 | 飽和脂肪酸量 |
---|---|---|
オリーブ油 | 94.58g | 13.29g |
ごま油 | 93.83g | 15.04g |
なたね油 | 93.26g | 7.06g |
パーム油 | 92.94g | 47.08g |
大豆油 | 92.76g | 14.87g |
ラード | 92.66g | 39.29g |
ココナッツオイル(やし油) | 92.08g | 83.96g |
家庭用マーガリン(有塩) | 75.33g | 23.04g |
ファットスプレッド | 61.14g | 20.40g |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
2-4.菓子類
飽和脂肪酸は菓子類にも含まれています。
【菓子類100g当たりの脂肪酸総量と飽和脂肪酸の含有量】
食品名 | 脂肪酸総量 | 飽和脂肪酸量 |
---|---|---|
ホワイトチョコレート | 36.11g | 22.87g |
ミルクチョコレート | 31.34g | 19.88g |
レアチーズケーキ | 23.84g | 16.59g |
ソフトビスケット | 22.79g | 12.42g |
バターケーキ | 22.03g | 14.73g |
ベイクドチーズケーキ | 18.36g | 12.11g |
ポテトチップス | 32.74g | 3.86g |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
3.飽和脂肪酸の過剰摂取による健康への影響
「飽和脂肪酸は摂り過ぎると体にどんな影響があるんだろう?」
このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
飽和脂肪酸の摂り過ぎの影響として、まず挙げられるのは肥満です。
脂質は重要なエネルギー源ですが、他のエネルギー産生栄養素よりもカロリーが高いため、体内に蓄えられやすいと考えられます。
肥満は脂質異常症や高血圧、糖尿病などの生活習慣病の発症リスクを高め、さらに動脈硬化を進めます。
また、飽和脂肪酸を摂り過ぎると、心筋梗塞をはじめとする循環器疾患(心臓や血管の病気)の発症リスクが高まるといわれています。
飽和脂肪酸の過剰摂取は、動脈硬化の原因となる脂質異常症の一種「高LDLコレステロール血症」の発症の要因となります。
脂質異常症とは血液中の脂質の値が基準から外れた状態のことをいい、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値が高い高LDLコレステロール血症、HLDコレステロール(善玉コレステロール)の値が低い「低HDLコレステロール血症」、中性脂肪(トリグリセリド)の値が高い「高トリグリセリド血症」などがあります。
脂質異常症はいずれも動脈硬化を進行させ、心筋梗塞などの循環器疾患の発症リスクを高めてしまうため、予防・改善が重視されています。
動脈硬化による重大な病気を招いてしまわないためにも、飽和脂肪酸の摂り過ぎを避けることが重要なのですね。
脂質異常症について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
脂質異常症とは?発症の原因や健康への影響、改善のポイントも解説!
4.脂質および飽和脂肪酸の摂取目標量
「飽和脂肪酸の摂り過ぎによる影響は分かったけど、どれくらいの量に抑えれば良いんだろう?」
現在の食生活で飽和脂肪酸を摂り過ぎていないかどうか気になりますよね。
ここでは、脂質および飽和脂肪酸の1日の摂取目標量をご紹介します。
厚生労働省は18歳以上の成人に対して、脂質から摂るカロリーを1日の総摂取カロリーの20〜30%に抑えるという目標量を設定しています[2]。
また、飽和脂肪酸から摂取するカロリーは総摂取カロリーの7%以下にすることが推奨されています[2]。
1日の推定必要カロリー(推定エネルギー必要量)は、年齢や性別、どれだけ体を動かすかによって異なります。
まずは以下の表で、ご自身の身体活動レベルを確認しましょう。
【身体活動レベル】
身体活動レベル | 日常生活の内容 |
---|---|
低い(Ⅰ) | 生活の大部分を座って過ごし、体を動かす機会があまりない場合 |
普通(Ⅱ) | 座って過ごすことが多いが、歩いたり立って作業・接客したりすることがある仕事に就いている場合、または通勤や買い物で歩いたり、家事をしたり、軽いスポーツを行ったりする習慣がある場合 |
高い(Ⅲ) | 移動したり立って作業したりすることの多い仕事に就いている場合、または余暇にスポーツをするなどの活発な運動習慣を持っている場合 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
身体活動レベルが分かったら、下の表でご自分に合った推定必要カロリーを確認します。
【男性の1日当たりの推定エネルギー必要量(kcal)】
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
---|---|---|---|
18〜29歳 | 2300 | 2650 | 3050 |
30〜49歳 | 2300 | 2700 | 3050 |
50〜64歳 | 2200 | 2600 | 2950 |
65〜74歳 | 2050 | 2400 | 2750 |
75歳以上 | 1800 | 2100 | - |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
【女性の1日当たりの推定エネルギー必要量(kcal)】
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
---|---|---|---|
18〜29歳 | 1700 | 2000 | 2300 |
30〜49歳 | 1750 | 2050 | 2350 |
50〜64歳 | 1650 | 1950 | 2250 |
65〜74歳 | 1550 | 1850 | 2100 |
75歳以上 | 1400 | 1650 | - |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
ご自身の体格や状況に合った1日当たりの推定必要カロリーが知りたいという方は以下の記事をご確認ください。
1日の適切な摂取カロリーは?体格や運動量に合わせた計算方法を解説
例えば30代で身体活動レベルが普通の女性の場合、1日当たりの推定必要カロリーは2,050kcalです。
脂質から摂るべきカロリーはこの20〜30%に当たるので、410〜615kcalとなります。
脂質は1g当たり約9kcalであるため、9で割ると1日に摂取する脂質は約46〜68gに抑えるべきであることが分かりますね[2]。
また飽和脂肪酸から摂取するカロリーは143kcal以下、重さでは約16g以下に抑えるべきということになります。
「実際の摂取量はどれくらいなんだろう?」
と気になった方もいらっしゃるかもしれません。
厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査」の結果では、20歳以上の日本人の総摂取カロリーに対する脂質から摂取するカロリーの割合(脂肪エネルギー比率)は男性で27.4%、女性で29.2%となっています[3]。
また飽和脂肪酸の1日当たりの摂取量と、総エネルギー摂取量における飽和脂肪酸の占める割合は、以下の表のとおりとなっています。
【成人男性における飽和脂肪酸の摂取量】
年齢 | 1日当たりの摂取量(g) | エネルギー(%) |
---|---|---|
18~29歳 | 17.4 | 7.6 |
30~49歳 | 15.7 | 7.1 |
50~64歳 | 15.4 | 6.5 |
65~74歳 | 14.5 | 6.4 |
75歳以上 | 13.1 | 6.2 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
【成人女性における飽和脂肪酸の摂取量】
年齢 | 1日当たりの摂取量(g) | エネルギー(%) |
---|---|---|
18~29歳 | 14.1 | 8.2 |
30~49歳 | 14.4 | 7.9 |
50~64歳 | 14.1 | 7.5 |
65~74歳 | 13.3 | 6.9 |
75歳以上 | 11.4 | 6.5 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
年代によっては飽和脂肪酸から摂取するカロリーが摂取カロリーの7%を超えてしまっているので、お肉や脂っこいものがお好きな方や、脂質の多いお菓子を習慣的に食べる方などは、飽和脂肪酸の摂り過ぎに気を付けておきたいですね。
5.飽和脂肪酸を含む食品についてのまとめ
飽和脂肪酸は主に肉の脂身や鶏皮、乳製品などの動物性食品やパーム油に含まれています。
脂質はエネルギー源および細胞膜の構成要素としての重要役割があります。
しかし飽和脂肪酸を過剰に摂取すると肥満や高LDLコレステロール血症を招き、心筋梗塞などの循環器疾患の発症リスクを高めてしまいます。
そのため、飽和脂肪酸の摂り過ぎには気を付ける必要があります。
厚生労働省は脂質から摂取するカロリーを1日に摂取するカロリーの20〜30%に抑えるという目標量を設定しています[4]。
また、飽和脂肪酸から摂取するカロリーは1日のカロリーの7%以下にすることが推奨されています[4]。
食事のメニューを考えたり選んだりするときは、飽和脂肪酸を多く含んだ偏った食事内容になっていないか注意しましょう。