「鉄分不足といわれたけど、どうしたら良いんだろう……」
「鉄分を摂るには何を食べたら良いのかな?」
鉄分について、このように心配されている方もいらっしゃるかもしれませんね。
鉄分は正確には「鉄」と呼ばれる栄養素のことで、体内で主に酸素を運ぶはたらきに関わります。
鉄が不足すると鉄欠乏性貧血を招く可能性が高まります。
この記事では鉄分不足の症状や鉄の食事摂取基準について解説します。
鉄の摂取源となる食べ物や貧血を防ぐためのポイントなどもご紹介しているので、鉄分不足の解消や予防の参考にしてくださいね。
1.鉄分不足とは
鉄分不足とは体内の鉄が不足している状態のことです。
鉄は「必須ミネラル」の一種で、一般に鉄分と呼ばれることがあります。
鉄は赤血球の中の「ヘモグロビン」を構成する材料で、ヘモグロビンは体中へ酸素を運びます。
鉄が不足するとヘモグロビンの減少とともに赤血球が減るため、体内へ酸素が十分に行き届かなくなります。
この状態を「鉄欠乏性貧血」といいます。
鉄欠乏性貧血の主な症状は頭痛や目まい、動悸(どうき)、息切れなどです。
その他、「異食症」や舌炎、嚥下(えんげ)障害といった症状が見られることもあります。
このような症状は鉄分不足が重度にならないと現れません。
そのため、日頃から症状の有無にかかわらず鉄分を十分に摂ることが重要です。
鉄分不足は、月経のある女性や鉄の需要が増す妊婦、授乳婦で特に起こりやすいため注意しましょう。
[1] 国立研究開発法人国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識」
【関連情報】 「鉄分とは?はたらきや食事摂取基準、多く含まれる食品などを紹介」についての記事はこちら
2.鉄の食事摂取基準
「鉄分不足にならないためにはどのくらい鉄を摂れば良いのかな……」
鉄を十分に摂るために、適切な摂取量が知りたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
鉄の摂取基準は性別や年齢別に定められています。
また、月経がある女性は血液とともに損失する鉄を補う必要があるため、摂取すべき量が多くなります。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、鉄の摂取推奨量は次のように定められています。
年齢 | 男性 | 女性(月経なし) | 女性(月経あり) |
---|---|---|---|
6~11カ月 | |||
1~2歳 | |||
3~5歳 | |||
6~7歳 | |||
8~9歳 | |||
10~11歳 | |||
12~14歳 | |||
15~17歳 | |||
18~29歳 | |||
30~49歳 | |||
50~64歳 | |||
65~74歳 | |||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
また妊娠中・授乳中の女性の場合、推奨量に加えて付加量が設定されています。
付加量 | |
---|---|
妊婦 初期 | 2.5mg |
妊婦 中期・後期 | 9.5mg |
授乳婦 | 2.5mg |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
3.鉄分の摂取源となる食べ物
「鉄を摂るにはどんなものを食べたら良いのかな?」
どのような食品に鉄が多く含まれているのか、気になりますよね。
鉄分不足を解消するためには、鉄が含まれている食べ物を摂取することが重要です。
この章では鉄分の摂取源となる食べ物を、動物性食品と植物性食品に分けてご紹介するので参考にしてくださいね。
3-1.動物性食品
鉄分の摂取源となる主な動物性食品には次のようなものがあります。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
豚レバー | ||
鶏レバー | ||
鶏ハツ | ||
赤貝 | ||
牛レバー | ||
牛ヒレ肉 | ||
羊ロース肉(マトン) | ||
砂肝 | ||
まいわし | ||
かき |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
動物性食品には、鉄のなかでも特に吸収の良い「ヘム鉄」が多く含まれます。
鉄を効率良く摂取するためには、動物性食品を積極的に摂ることをおすすめします。
3-2.植物性食品
鉄分の摂取源となる主な植物性食品には次のようなものがあります。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
ごま | ||
きなこ | ||
チアシード | ||
パセリ | ||
アーモンド | ||
小松菜 | ||
くるみ | ||
白菜 | ||
干しぶどう | ||
水菜 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
植物性食品に多く含まれる鉄は、「非ヘム鉄」です。
非ヘム鉄はヘム鉄に比べて吸収率が低いという特徴がありますが、動物性たんぱく質やビタミンCと一緒に摂ることで非ヘム鉄の吸収率を高めることができます。
日本人は非ヘム鉄から鉄を摂取することが多いといわれますので、吸収しやすいように工夫をすることも重要ですね。
4.貧血を防ぐためのその他のポイント
「鉄の多い食品を食べる他に、貧血を予防する方法はあるのかな?」
貧血にならないように、日常生活のなかでできることがあれば知りたいと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この章では、貧血を防ぐためのポイントを詳しくご紹介します。
ポイント1 バランスの取れた食事を摂る
貧血を予防するためには、鉄をはじめ必要な栄養素をしっかり摂ることが重要です。
そのため動物性食品や植物性食品を組み合わせ、毎日バランスの良い食事を摂るようにしましょう。
さらに、よく噛んで食べると胃酸の分泌が促され鉄の吸収が高まります。
無理なダイエットや欠食をしないことも、貧血を防ぐための大事なポイントです。
ポイント2 良質なたんぱく質を摂る
たんぱく質はヘモグロビンの材料であるため、貧血を予防する上で欠かせない栄養素です。
特に必須アミノ酸をバランス良く摂ることができる「良質なたんぱく質」を意識的に摂取するようにしましょう。
良質なたんぱく質が多く含まれる食品には、肉類や卵、大豆などがあります。
特に、動物性たんぱく質には非ヘム鉄の吸収を高めるはたらきがあるため、毎日摂るように心掛けましょう。
ポイント3 ビタミンCを摂る
貧血の予防のためにはビタミンCの摂取が有効です。
ビタミンCは消化管での鉄の吸収を促すといわれます。
特に緑黄色野菜や果物に多く含まれる栄養素です。
ビタミンCを多く含む食品には次のようなものがあります。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
青汁(ケール) | ||
赤ピーマン | ||
黄ピーマン | ||
ブロッコリー | ||
パセリ | ||
レモン | ||
青ピーマン | ||
キウイフルーツ(緑) |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
なじみのある食品が多いので、毎日の食事にも取り入れやすいですね。
ポイント4 鉄の吸収を阻害する成分を避ける
貧血予防のためには、鉄の吸収を阻害する成分を避けることが大切です。
食品中には鉄の吸収を妨げる成分が存在します。
例えばコーヒーや紅茶、ウーロン茶の渋みの成分である「タンニン」には鉄の吸収を悪くする作用があります。
食事中や食後すぐにコーヒーや紅茶を飲まないようにしましょう。
他にも、ハムやソーセージなどの加工食品やインスタント食品、スナック菓子など添加物である「リン酸塩」は鉄の吸収を妨げます。
食べ合わせに注意して、鉄の吸収が阻害されないようにしたいですね。
ポイント5 ビタミンB12を摂る
貧血予防のためには、ビタミンB12を摂取することも重要です。
ビタミンB12 が欠乏すると、「巨赤芽球性貧血」を招く恐れがあります。
赤血球の合成には、鉄の他にビタミンB12が必要です。
そのためビタミンB12が不足すると、赤血球の合成がうまくいかなくなり貧血を起こします。
ビタミンB12を多く含む食品には次のようなものがあります。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
しじみ | ||
焼きのり | ||
牛レバー | ||
いくら | ||
あさり | ||
鶏レバー | ||
まいわし(丸干し) | ||
豚レバー |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
レバーはビタミンB12と鉄を同時に摂ることができる、貧血予防にうれしい食材ですね。
ポイント6 葉酸を摂る
貧血を予防するために葉酸もしっかり摂りましょう。
葉酸はビタミンB群の一種で、細胞増殖に深く関わります。
葉酸が不足すると細胞分裂が抑制されて造血機能に異常が起こり、巨赤芽球性貧血を招くことがあるため注意が必要です。
葉酸を多く含む食品には次のようなものがあります。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
焼きのり | ||
鶏レバー | ||
抹茶 | ||
牛レバー | ||
豚レバー | ||
えだまめ | ||
ブロッコリー | ||
いちご |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
葉酸という名前から、植物性食品にのみ含まれている印象を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、レバーなど動物性食品にも多く含まれていることが分かりますね。
5.鉄分不足についてのまとめ
一般的に鉄分とは必須ミネラルの鉄のことで、鉄分不足とは体内の鉄が不足している状態です。
鉄が不足すると体内へ酸素が十分に行き届かなくなり、鉄欠乏性貧血を引き起こします。
鉄欠乏性貧血の主な症状は頭痛や目まい、動悸、息切れなどですが、いずれの症状も鉄分不足が重度になるまで現れないため、日常的な鉄分の摂取が重要です。
鉄分不足は、月経のある女性や鉄の需要が増す妊婦、授乳婦で特に起こりやすいため注意しましょう。
鉄の摂取推奨量は、男性の場合18〜74歳で7.5mg、75歳以上で7.0mg、女性で月経ありの場合18〜49歳で10.5mg、50歳~64歳で11.0mg、月経なしの場合18〜64歳で6.5mg、65歳以上で6.0mg です[2]。
妊婦、授乳婦に定められている付加量は、妊婦初期で2.5mg、中期・後期で9.5mg、授乳婦で2.5mgです[2]。
鉄は動物性食品、植物性食品のいずれにも含まれますが、動物性食品に多く含まれるヘム鉄は植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄に比べて吸収しやすいという特長があります。
効率良く鉄を摂取するためにはヘム鉄の多い動物性食品がおすすめですが、非ヘム鉄も工夫次第で吸収を高めることができます。
貧血を予防するポイントは、鉄の他にも必要な栄養素をしっかり摂りバランスの良い食事を心掛けることです。
ヘモグロビンの材料となる良質なたんぱく質や鉄の吸収を高めるビタミンC、巨赤芽球性貧血の予防のために必要なビタミンB12 や葉酸などを含む食品の積極的な摂取が重要です。
お茶などの渋み成分であるタンニン、加工食品やスナック菓子などの添加物であるリン酸塩などには、鉄の吸収を妨げたり鉄の排出を促したりする作用があります。
摂取のタイミングや食べ合わせに注意して、鉄の吸収が阻害されないようにしましょう。
この記事を参考に、鉄分不足に悩まない生活を送ってくださいね。
[2] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」