糖質制限は本当にダイエット効果があるの?知っておきたい注意点!

糖質制限は本当にダイエット効果があるの?知っておきたい注意点!

2021年03月02日

2024年04月18日

MediPaletteとは、あなたのお悩みを解決に導く健康情報メディアです!

「糖質を制限すれば痩せられるって聞いたけど本当?」

「糖質制限はどうやってすれば良いんだろう?」

というように、糖質制限について気になっているという方も多いのではないでしょうか。

糖質制限はテレビや雑誌、書籍などさまざまなメディアに取り上げられて話題になっていますが、実際にどれくらい痩せられるのかが知りたいですよね。

ダイエット効果について注目されることが多い糖質制限ですが、実は健康へのリスクがあるともいわれています。

この記事では、糖質制限とはどのようなダイエット方法なのか、効果や知っておきたい注意点などについてご紹介します。

1.そもそも糖質って何?

糖質制限という言葉はよく耳にしますが、そもそも糖質とは何を指すのか、どんな方法で制限を行うのかなど分からないことも多いですよね。

糖質制限について間違った認識を持たないためにも、まずは糖質の役割について説明していきます。

1-1.糖質は頭と体の大事なエネルギー源

糖質の多い食材

そもそも「糖質」とはどのようなものなのか、皆さんご存じでしょうか。

糖質とは「炭水化物」の一部で、ヒトの体のエネルギーとなる物質のことです。

糖質と聞くと「甘いもの」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、炭水化物は甘味のある砂糖や果物などだけではなく、米やパン、パスタなどの主食やいも類にも多く含まれています。

糖質はたんぱく質や脂質と共に生きるために必要なエネルギー源となるため、不足すると体内のエネルギーが足りなくなり、疲労を感じたり集中力が欠けたりしてしまいます。

特に糖質の一種であるブドウ糖は脳にとって重要なエネルギー源の一つで、不足し過ぎると意識を失ってしまうこともあります。

しかし逆に糖質を過剰に摂取すると、余った分は中性脂肪として体にたまっていきます

そのため、糖質は肥満の原因になるといわれているのですね。

メモ
炭水化物には糖質の他にヒトの消化酵素では消化できない「食物繊維」があります。

2.本当にダイエットになる?糖質制限の効果と方法

やはり一番気になるのは、

「糖質制限って本当にダイエット効果があるの?」

ということですよね。

そこで、ここからは糖質制限の効果と糖質制限を行う方法について詳しくご説明していきましょう。

2-1.短期的にはダイエット効果あり

腹囲を計測する女性

糖質制限のダイエット効果については、国内外で専門家による研究が行われています

2017年に発表された糖尿病の患者の方を対象とした糖質制限とカロリー制限の効果を比較した追跡調査があります。

その研究によると、調査を開始してから半年が経った時点では糖質制限を行ったグループの方が体重やBMIに変化が表れていると報告されています[1]。

しかし、一年後再度比較をすると糖質制限を行ったグループとカロリー制限を行ったグループの間に差はなかったとのことです[1]。

また、日本肥満学会が示している「肥満症診療ガイドライン」においては「短期的に減量効果は大きいものの、長期的には差が見られないことも多いので、極端な糖質制限は勧められない 」とされています[2]。

糖質制限は医師に診断された肥満症などに対しては全く効果がないわけではありませんが、長期間にわたって続けられるダイエット方法ではないといえるでしょう。

[1] Junko Sato ,Akio Kanazawa, Chie Hatae, et all:「One Year Follow-Up After a Randomized Controlled Trial of a 130 g/day Low-Carbohydrate Diet in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus and Poor Glycemic Control」(PLOS ONE December 4, 2017)

[2] 肥満症診療ガイドライン2016(『日本内科学会雑誌』107巻2号 266)

2-2.糖質制限をする方法

糖質制限は、「1日当たりの糖質の摂取量を減らす代わりにたんぱく質や脂質を多く摂る 」というものです。

場合によっては糖質を減らす代わりに「肉類や魚類、卵や乳製品といったたんぱく質はその分好きな量を食べて良い」と説明されていることもあります。

「従来の食事制限でのダイエットはおなかが空いてつらい……」

という方には、魅力的なダイエット方法に思えますよね。

なぜお肉などをたくさん食べてもよいといわれているのか、糖質制限のメカニズムをご説明しましょう。

実は糖質を制限することで食後の血糖値の上昇を防げば、中性脂肪を作るはたらきを促すホルモンの分泌量を減らすことができるのです。

糖質を摂取して血糖値が上昇すると、「インスリン」というホルモンが分泌されます。

インスリンは血糖値を下げるだけでなく、血液中にある余った糖を中性脂肪に変えるはたらき もしています。

糖質を摂取した後には血糖値が上がりますが、一方たんぱく質や脂質は血糖値をほとんど上げません。

そのため糖質の摂取量を抑えることでインスリンの分泌が抑えられ、脂肪がたまりにくくなると考えられるのですね。

ただし、糖質を制限し過ぎたり、たんぱく質・脂質を代わりに摂り過ぎたりすると健康へのリスクが生じることも指摘されています。

そこで、次は糖質制限による健康へのリスクについて説明していきましょう。

インスリン
膵臓から分泌される血糖値を下げるはたらきを持つホルモンのことです。

【関連情報】 「糖質オフの食品」についてもっと知りたい方はこちら

3.糖質制限にはリスクがある?

糖質制限は短期的なダイエット効果はあるとされているものの、長期的・持続的な効果はあまり認められていません。

「短期的にでもいいから、効果があるのであればやってみたい!」

と感じた方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし、糖質制限は健康に悪い影響を与える可能性があるともいわれています

糖質制限を始める前に、健康へのリスクに関して知っておきましょう。

【糖質制限のリスク】

  1. 糖質を制限すると死亡リスクが上昇する
  2. 糖質制限は逆に太る可能性もあり
  3. 高齢者が糖質制限を行うと病気を招きやすくなる

リスク1 糖質を制限すると死亡リスクが上昇する

糖質制限の健康リスクに関しては、いくつかの研究で指摘されています。

2013年に国立国際医療研究センター研究所から発表された論文では、糖質制限食(低炭水化物食)を摂っている人の死亡リスクが高い ことが示されました[3]。

心臓や血管の病気に関しては、発症リスクは高炭水化物食の人と大きな差はなかったものの、死亡リスクはやはり高いということが指摘されています。

さらに、低糖質+高たんぱく質を指標として分析した結果も、同じように死亡リスクが高かった とのことです。

2018年にアメリカで発表された論文でも同様に、糖質制限食は死亡リスクが高くなる ことが示されています[4]。

短期的にはダイエット効果が期待できる糖質制限ですが、健康には大きなリスクがあると医学的には考えられているのですね。

[3] Hiroshi Noto , Atsushi Goto ,Tetsuro Tsujimoto, Mitsuhiko Noda「Low-Carbohydrate Diets and All-Cause Mortality: A Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Studies」(PLoS One January 25, 2013)

[4] Sara B Seidelmann, Brian Claggett, Susan Cheng, et all:「Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis」(THE LANCET SEPTEMBER 01, 2018 VOLUME 3, ISSUE 9, E419-E428,)

リスク2 糖質制限は逆に太る可能性もあり

体重計に乗り嘆く女性

効果的なダイエット方法として話題になっている糖質制限ですが、痩せるはずなのに逆に太ってしまう可能性もあります。

糖質を減らす代わりにたんぱく質や脂質の量を増やし過ぎて、カロリー過多になってしまうためです。

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、炭水化物の制限によるダイエット効果について、カロリーが同じならたんぱく質や脂質と大きな違いはないという報告が多いとされています[5]。

これはつまり、炭水化物を減らして摂取カロリーが減ればダイエット効果はあるけれど、炭水化物を減らした分だけたんぱく質や脂質を増やせば減量にはならない可能性があるということです。

摂取したカロリーが消費するカロリーを上回っていれば、当然ながら太ってしまいます。

炭水化物をどんなに減らしてたんぱく質を増やしたとしても、摂取カロリーがいつもより多くなってしまえば、痩せる効果は期待できないようですね。

[5] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

リスク3 高齢者が糖質制限を行うと病気を招きやすくなる

立ち眩みをしている女性

健康のために痩せたいと考えている高齢者の方もいるかもしれません。

年齢を重ねると運動をするのが負担になってしまうこともあり、食事で痩せられるならやってみたいと思いますよね。

しかし上記でご説明した健康へのリスクに加え、高齢者の方の場合は別のリスクもあるのです。

高齢になると、消化機能の低下や運動量の減少による消費カロリーの低下などで食欲が落ち、十分な量を食べることができなくなります。

このような状態で糖質制限をすると、栄養不足や栄養バランスの乱れを引き起こし、健康を損なう恐れがあります。

また、痩せ過ぎてしまうと体の抵抗力が低下して感染症にかかりやすくなったり、筋肉量や骨の密度が急激に低下したりするほか、認知症の発症と関連する可能性も指摘されています

高齢者の方は糖質制限を控え、健康的な方法で痩せることを意識しましょう。

【関連情報】 「糖質不足のリスク」についてもっと知りたい方はこちら

4.健康的に痩せるための3つのポイントとは?

「糖質を減らし過ぎることは良くないのは分かったけれど、じゃあどうやってダイエットしたらいいの?」

と思っている方もいらっしゃるでしょう。

体に負担をかけずに自分で簡単にダイエットをする方法があるなら、いち早く実践したいですよね。

ここからは、健康的に痩せるための3つのポイントについてご説明していきましょう。

【健康的に痩せるためのポイント】

  1. 適切な栄養バランスを意識しよう
  2. 適度な運動を心掛けよう
  3. 時間をかけてゆっくり痩せよう

ポイント1 適切な栄養バランスを意識しよう

体脂肪率を下げるためには、まずは食事のバランスを整えることが重要です。

理論上では消費カロリーが摂取カロリーを上回れば痩せることは可能 です。

しかし糖質制限や特定の食材のみを食べるなどのダイエット方法だと食事内容が偏り、栄養不良になるなど健康を損ねるリスクなどがあります。

健康的に痩せるためには、カロリーも意識しながら栄養バランスの取れた食事を摂ることが大切です。

バランスの取れた和食

厚生労働省が設定している炭水化物の摂取目標量は、食事全体の50〜65%です[6]。

この量を目安に日々の食生活を工夫すると良いでしょう。

ちなみに、たんぱく質の摂取割合は11〜20%、脂質の摂取割合は20〜30%が目標とされています[7]。

以下に、糖質量が気になる食品を中心に、カロリー量と炭水化物やたんぱく質、脂質の量をまとめました。

【糖質量が気になる食品と可食部100g当たりの成分値】

食品名 加工状態 カロリー 炭水化物 たんぱく質 脂質
食パン - 248kcal 46.4g 8.9g 4.1g
ロールパン - 309kcal 48.6g 10.1g 9.0g
クロワッサン - 438kcal 43.9g 7.9g 26.8g
うるち米 めし 156kcal 37.1g 2.5g 0.3g
うどん ゆで 95kcal 21.6g 2.6g 0.4g
そば ゆで 130kcal 26.0g 4.8g 1.0g
マカロニ・スパゲッティ ゆで 150kcal 32.2g 5.8g 0.9g
中華めん ゆで 133kcal 29.2g 4.9g 0.6g
フライドポテト 揚げ 229kcal 32.4g 2.9g 10.6g
とうもろこし(スイートコーン) 89kca 16.8g 3.6g 1.7g
にんじん 皮なし、生 32kcal 8.8g 0.7g 0.2g
りんご 皮なし、生 53kcal 15.5g 0.1g 0.2g
みかん 49kcal 12.0g 0.7g 0.1g
ビール - 39kcal 3.1g 0.3g 0
発泡酒 - 44kcal 3.6g 0.1g 0
ウイスキー - 234kcal 0 0 0

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

このように各食材にどれくらいの糖質が含まれているのかを知って、日々の食事内容を見直してみましょう。

厚生労働省と農林水産省が提示している「食事バランスガイド」を参考にすると、食事の準備がしやすくなるのでおすすめですよ。

自分に必要なカロリーを知って、適切なバランスでカロリーを摂ることと、特定の食材に偏らずさまざまな食品から栄養を摂ることを心掛けてみてくださいね。

1日に必要なカロリー「推定エネルギー必要量」の計算に関しては、日本医師会のサイト「健康になる!1日に必要なカロリー「推定エネルギー必要量」」のページを参考にしてみてくださいね。

メモ
最近は「ロカボ」という新たな形の健康食も注目されるようになりました*8。ロカボは極端な糖質制限ではなく、適正な量の糖質を摂取しようというもので、一般社団法人 食・楽・健康協会によって商標登録されています。たんぱく質や脂質の量に制限はなく、糖質の量が1食当たり20〜40g になるように気をつけて食べることが推奨されています。

[6] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

[7] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

[8] 一般社団法人 食・楽・健康協会「ロカボとは

ポイント2 適度な運動を心掛けよう

ストレッチする女性

健康的に痩せるためには、運動で消費カロリーを増やすことも重要です。

無理なくできる範囲の運動を長く続けていくことを心掛けましょう。

有酸素運動を行えば効果的に体脂肪を燃焼させることができますよ。

また、筋力トレーニングも併せて行えば筋肉がついてエネルギーを消費しやすい体になっていきます

運動の効果はすぐに出るわけではないので、継続することを意識するようにしましょう。

エスカレーターではなく階段を使ったり、いつもより長い時間歩いてみたり、普段の生活でできることから始めてみるのがおすすめですよ。

有酸素運動
酸素を使い、体脂肪を燃料とする比較的負担の小さい運動のことです。ウォーキングやジョギング、サイクリングなどが該当します。

ポイント3 時間をかけてゆっくり痩せよう

下腹部を抑える

「大事なイベントがあるから、できるだけ短期間で痩せたい!」

と考える方もいるかもしれませんが、急激に体重を落とすことは健康へのリスクがあります。

栄養不足になってしまうことはもちろん、便秘や月経異常、貧血、骨粗しょう症などを引き起こしてしまうリスクがあります。

無理をせずに、長期的に生活習慣を見直していく ことが大切です。

【関連情報】 「健康的な糖質との向き合い方」についてもっと知りたい方はこちら

5.糖質制限についてのまとめ

「できるだけ簡単に痩せたい」「短期間で体重を落としたい」と思っている方も多くいらっしゃるでしょう。

確かに糖質制限は肥満症などの疾患に対し短期的には効果があることが認められています。

しかし現時点では長期的な効果は確認されておらず、過剰な糖質制限には健康を損なうリスクがあることも指摘されています。

健康的に痩せるためには極端な糖質制限を行うのではなく、栄養バランスの良い食事を摂り適度な運動を心掛けることが重要です。

焦って無理なダイエットをすると体に大きな負担がかかってしまいます。

食事をはじめご自身の生活習慣を見直し、時間をかけて健康的な体型を目指していきましょう。

この記事の監修者

青木厚
青木厚
あおき内科さいたま糖尿病クリニック
院長

【経歴】
自治医科大学付属さいたま医療センター内分泌代謝科を経て 2015 年に開設。糖尿病、高血圧、高脂血症、生活習慣病が専門。糖尿病患者の治療に食事術を取り入れインスリン脱悦や薬を使わない治療に成功するなど成果を挙げている。自身も 40 歳のときに舌がんを患うも完治。食事療法を実践して再発を防いでいる。著書「空腹こそ最強のクスリ」(アスコム刊)は40万部超えのベストセラー。近年では、「ファーストファスティングー青木式 16 時間断食ー」の監修に携わり、宿泊しながら気軽にファスティングを体験できるホテル・ファーストキャビン HD の専属顧問に 2021 年から就任。また、エステプロ・ラボでも医学顧問を務めている。

【出演番組等】
日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース」、中京テレビ「それって!?実際どうなの課」、テレビ朝日「林修のレッスン!今でしょ」、フジテレビ「めざましテレビ」、「ポップUP!」、テレビ東京「なないろ日和!」など出演多数。ほかにも番組の医療監修なども日々行っている。

【クリニックのHP・SNS情報】
»あおき内科さいたま糖尿病クリニック »X(旧Twitter) »Instagram

【執筆論文情報】
»Association of serum osteoprotegerin with vascular calcification in patients with type 2 diabetes, Cardiovascular Diabetology 2013 Jan 9;12:11.
»Prompt increases in retinol-binding protein 4 and endothelial progenitor cells during acute exercise load in diabetic subjects, Endocrine Journal 2012, 59 (12), 1085-1091

SNSでシェア
ジャンルから探す

MediPalette公式SNS

MediPalette公式SNS

MediPalette By LOTTE

© LOTTE MediPalette Co.,Ltd. All rights reserved.