有酸素運動と筋トレの違いは?効果的な頻度や順番、組み合わせるコツ
「有酸素運動と筋トレはどう違うんだろう?」
「有酸素運動と筋トレは組み合わせても良いのかな……」
運動習慣をつけたいと思っていても、ウォーキングをはじめとした有酸素運動と、腕立て伏せや腹筋などの筋トレでは、どちらをすべきか迷われている方もいらっしゃるかもしれませんね。
有酸素運動と筋トレでは、体に与える効果や適切な頻度などが異なります。
このため、それぞれの運動のコツを押さえ組み合わせることで、より運動の効果を高めることができます。
この記事では有酸素運動と筋トレの効果や適切な頻度、運動の順番、組み合わせる際に押さえておきたいコツをご紹介します。
それぞれの運動のおすすめ種目も解説するので、運動習慣を見直す際に役立ててくださいね。
1.有酸素運動と筋トレの違いとそれぞれの効果
「有酸素運動と筋トレの違いって何だろう?」
このように気になっている方もいらっしゃるでしょう。
有酸素運動と筋トレにはそれぞれに異なる効果があります。
ご自分の運動の目的と照らしながら、両者の効果を参考にしてくださいね。
1-1.有酸素運動の効果
有酸素運動には体脂肪を燃やすダイエット効果や生活習慣病の予防効果、全身持久力を高める効果などが期待できます。
有酸素運動は筋肉にかかる負荷が比較的軽く、長時間継続することのできる運動のことです。
具体的にはウォーキングやジョギング、ランニング、水泳、エアロビクスダンス、縄跳びなどが該当します。
有酸素運動は体内の脂質や糖質をエネルギー源として消費し、その際に酸素が使われることからこう呼ばれます。
有酸素運動をすると、エネルギーとしてまずは糖質が主に使われ、次第に脂質の割合が大きくなっていきます。
有酸素運動は直接的に脂肪を燃やすことができる運動なのですね。
もちろん体を動かすと消費カロリーが増えるため、ダイエット効果が得られますよ。
有酸素運動は負荷が小さい運動ですが、長時間続けやすいためカロリー消費が期待できるのですね。
また有酸素運動では、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった「生活習慣病」の予防・改善効果も期待できます。
これは有酸素運動が糖質や脂肪をエネルギーに用いることで血糖値、血中脂質などが改善されるためです。
加えて、血管内皮(血管の壁)の機能を改善してくれるため、血圧が下がったり動脈硬化を抑制できたりといった効果も期待できます。
さらに、有酸素運動は心肺機能を高め、「全身持久力」 を向上させてくれます。
全身持久力が向上すると体に酸素を多く取り込めるようになり、スポーツでより好成績を望めるようになります。
有酸素運動はダイエットに良いだけでなく、生活習慣病の予防・改善や全身のスタミナアップを見込める運動なのですね。
1-2.筋トレの効果
筋トレでは、筋肉量・筋力の増大が見込める他、基礎代謝の向上も期待できます。
筋トレは筋肉に負荷を繰り返しかけることで、筋肉量を増やすことを目的としたトレーニングです。
筋トレのように短時間で強い力を発揮する運動では、筋肉を収縮させるエネルギー源として主に糖質が使われ、体内の酸素は消費されません。
このため、こうした運動は無酸素運動と呼ばれます。
無酸素運動には筋トレの他に、短距離走や投擲(とうてき)、相撲などの競技が含まれます。
筋トレをすると筋肉は筋線維の一部が破断され、それが修復される際にもとの筋線維よりも少し太い状態になる「超回復」が起こります。
これを繰り返すことで筋肉が太くなり筋力が上がるのです。
また筋トレでは基礎代謝の向上が見込めます。
筋肉量が増えると、それに伴って基礎代謝量が増加します。
これにより運動時の消費カロリーが増える他、安静時の消費カロリーも増加するのです。
このため脂肪がたまりにくい体になるといえます。
他にも、適度な筋トレにはがんや心血管疾患、糖尿病などの発症リスクを下げる効果があると考えられています。
筋トレのような無酸素運動は運動強度が高いため、同時間行えば有酸素運動よりも多くのカロリーを消費できますが、長時間継続することはできません。
有酸素運動と筋トレでは、効果の他にもそれぞれ異なった特長があるのですね。
[1] 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~ 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット)「身体活動とエネルギー代謝」
2.有酸素運動と筋トレの効果的な頻度や順番
「有酸素運動や筋トレは毎日行っても良いのかな?」
「有酸素運動と筋トレではどちらを先にやっても良いのだろうか……」
せっかく運動するなら、有酸素運動と筋トレ両方の効果を十分に得たいものですよね。
この章では、それぞれの運動の効果的な頻度や順番について解説します。
2-1.有酸素運動と筋トレの効果的な頻度
厚生労働省は成人に対し、生活習慣病発症予防のために推奨される運動量を示しています。
具体的には、通常の歩行に相当する強度(3メッツ)以上の、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上行うことが推奨されています[3]。
なお、運動に限らない身体活動全体としては、1日60分以上、歩数にして1日8,000歩以上が目標です[3]。
ただし有酸素運動だけを長期にわたって実施していると、体がエネルギーの浪費を防ごうとして脂肪をためやすくなると考えられているため、注意が必要です。
体脂肪の減少が目的であっても、有酸素運動だけでなく筋トレを組み合わせて行うことが勧められます。
筋トレは週2〜3回行うことが推奨されています[3]。
[3] 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」
2-2.有酸素運動と筋トレの効果的な順番
ダイエットを目的として有酸素運動と筋トレを組み合わせて行う場合は、有酸素運動よりも先に筋トレを行うことが勧められます。
これは筋トレのように激しい運動を行うと成長ホルモンが分泌され、その後の有酸素運動による体脂肪燃焼効果を高めるためです。
筋トレで分泌される成長ホルモンの作用によって体脂肪が燃えやすくなり、その状態で有酸素運動を行った方が、より効果的に体脂肪を燃焼させることができるのです。
反対に有酸素運動を先に行うと、成長ホルモンの分泌が抑えられてしまうため注意が必要です。
ただし、体脂肪の燃焼ではなく筋肉量を増やすことが目的の場合は、体を温めるために最初に少し有酸素運動を行っても構わないといわれています。
ご自分の目的に合わせて順番を決めてみてくださいね。
3.有酸素運動と筋トレを組み合わせて行う際のコツ
「有酸素運動と筋トレをするときに注意するポイントってあるのかな?」
有酸素運動と筋トレの特長を最大限に活かすには、気をつけるべき点がいくつかあります。
この章ではこれらの運動を組み合わせて行う際のコツを四つご紹介します。
コツ1 筋トレでは超回復の期間を設ける
筋トレは毎日行わずに、週に2~3回の頻度で行いましょう[4]。
毎日行っても問題のない有酸素運動に対し、筋トレには適切な休息が必要です。
これは筋肉が成長する際に起こる超回復に時間がかかるためです。
筋トレで筋線維の一部が破断し元よりも太くなる超回復には、2〜3日かかるといわれています[5]。
このため筋トレは週に2〜3回の頻度が推奨されます[4]。
効率的に筋肉量を増やしたい場合は、筋肉を部位ごとに分けて鍛えることもおすすめです。
一度筋トレを行った部位は次のトレーニングまで超回復の期間を空け、その間に別の部位を鍛えるというローテーションを組むことで、筋トレの頻度を上げることができます。
ただし疲労が蓄積してかえって効率が落ちてしまう恐れもあるので無理のない範囲で行うようにしましょう。
[4] 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」
[5] 厚生労働省 健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~ 生活習慣病などの情報(e-ヘルスネット)「筋力・筋持久力」
コツ2 有酸素運動を長時間し過ぎない
有酸素運動を長時間行わないようにしましょう。
有酸素運動を長時間続けると、筋肉量の低下を招く恐れがあります。
これは、有酸素運動のエネルギー源となる体内の糖質や脂質が不足してくると、筋肉を構成するたんぱく質がエネルギー源として消費され始めるためです。
また有酸素運動はコルチゾールというホルモンの分泌を促します。
コルチゾールの増加は筋肉量の低下を招くといわれているので注意が必要です。
有酸素運動は短時間でも脂肪燃焼効果をもたらすため、無理に長時間行わないことが重要なのですね。
コツ3 筋トレでは大きな筋肉を優先的に鍛える
筋トレでは基本的に大きな筋肉を優先的に鍛えることが勧められます。
これは大きな筋肉を対象としたトレーニングでは、同時に周辺の小さな筋肉を鍛えることもできるためです。
また大きな筋肉を鍛えると体の変化を実感しやすいため、筋トレのモチベーションを維持できるでしょう。
この他にも、効率良く基礎代謝の向上を目指せることもメリットといえます。
体格は身体活動による消費カロリーにも影響するため、大きな筋肉を鍛えて体つきが大きくなると、有酸素運動による消費カロリーを増大させることにも役立つと考えられます。
体のなかで大きな筋肉は特に下半身に集中しており、太もも前側の大腿四頭筋やふくらはぎの下腿三頭筋、太もも裏側のハムストリング、お尻の大臀(だいでん)筋などがあります。
これらの筋肉を鍛えられるトレーニングメニューを優先的に取り入れてみてくださいね。
コツ4 たんぱく質や糖質などの栄養素を十分に摂る
筋肉を育てる上では、食事が特に重要です。
どれだけ筋トレを行っても、栄養素が不十分では筋肉は育ちません。
栄養素のなかでも筋肉の主な材料となるたんぱく質は、十分摂ることが勧められます。
またたんぱく質の代謝にはビタミンB6などが欠かせません。
なおダイエット目的の場合、糖質を制限している人もいらっしゃるでしょう。
しかし糖質制限を行いながら有酸素運動を実施すると、有酸素運動の際のエネルギー源が不足して筋肉がエネルギー源として分解される恐れがあります。
このため空腹時の運動は避けることが勧められます。
他にも、体に必要な栄養素はさまざまに存在するため、バランスの良い食事を摂ることが重要です。
4.おすすめの有酸素運動
「おすすめの有酸素運動を知りたい!」
このように気になっている方もいらっしゃるでしょう。
有酸素運動は年齢問わず比較的始めやすい運動のため、自分に合った種類から取り組んでみてくださいね。
4-1.ウォーキング
ウォーキングとは、健康の増進や生活習慣病の予防を目的として、動作の質や強度を考慮して歩く運動のことです。
ウォーキングは体力に自信のない人や運動に不慣れな人であっても気軽に始められる有酸素運動です。
常に地面が足についているため、膝や腰などを痛めるリスクも低いといえます。
まずは日常生活のなかで少しでも歩く機会を増やすと良いでしょう。
なおウォーキングは、正しいフォームを意識することが大切です。
姿勢が崩れていると、ウォーキングの効果を十分に得られないだけでなく、足や腰を痛める恐れがあります。
4-2.ジョギング
ジョギングは息が切れない程度のスピードで走ることで、ランニングよりも強度の低い運動です。
早歩きと同じぐらいの速さで走るため、比較的疲れにくく長時間行うことができます。
このため初心者でも取り組みやすく、脂肪が効率良く燃焼できます。
ジョギングを行う場合はけがを防ぐため、走る前にストレッチを行い、正しいフォームを意識することが勧められます。
また無理のないペースや距離で取り組み、継続して行うことが重要です。
4-3.サイクリング・フィットネスバイク
サイクリングも有酸素運動の一種で、自転車で道路を走る運動のことをいいます。
また室内で自転車をこぐ運動ができるフィットネスバイクも同じく有酸素運動に当たります。
膝や腰に痛みのある人では、ウォーキングやランニングなどを長時間続けると痛みを生じることがあります。
サイクリングやフィットネスバイクではお尻をサドルに乗せているため、足や腰にかかる負担を軽減できます。
通勤手段を電車から自転車に変えるなど、日常生活のなかに取り入れることがおすすめです。
なお屋外を走る際は安全に注意してください。
4-4.エアロビクスダンス
エアロビクスダンスは音楽をかけながらランニングやジャンプなどの動きを行うダンスです。
ダンスと聞くと、苦手意識がある方もいらっしゃるでしょう。
しかしエアロビクスダンスは、ダンス経験のない初心者でも挑戦しやすく、音楽に合わせて楽しく踊ることができます。
このため、一般的なトレーニングだとハードルが高いと感じている方でも、楽しく踊りながら脂肪燃焼が望めるでしょう。
また室内で行われるので天候を問わないことがメリットといえます。
5.おすすめの筋トレ
「おすすめの筋トレにはどんなものがあるのかな?」
筋トレを始めたいと思っていても、どのように行ったら良いのか分からずお困りの方もいるかもしれませんね。
この章では、初心者でも始めやすいトレーニングメニューをご紹介します。
特別な道具を使わずに自宅で簡単に始められますよ。
5-1.スクワット
スクワットは、立った状態から足を肩幅くらいに開き、お尻を突き出すように腰を落とし、元の姿勢に戻る動作を繰り返すトレーニングです。
お尻の大臀筋、太もも前部の大腿四頭筋、ふくらはぎの外側のヒラメ筋が鍛えることができます。
体幹も鍛えられるため姿勢の改善や腰痛予防などの効果も期待できます。
スクワットは大きな筋肉を鍛えられ、道具を必要としない運動のため初心者にもおすすめの筋トレです。
5-2.プッシュアップ
プッシュアップは、いわゆる腕立て伏せのことで、胸や肩、二の腕などを鍛えられるトレーニングです。
上半身の筋肉を総合的に鍛えることができます。
このため胸板を厚くしたい人や、メリハリのあるボディラインを目指したい人におすすめのトレーニングです。
また、体幹の安定性向上も目指せるため、良い姿勢を保つことに役立ちますよ。
5-3.バックエクステンション
バックエクステンションは「背筋」とも呼ばれ、うつぶせになった状態で背中を反らすように状態を起こすトレーニングです。
バックエクステンションでは「脊柱起立筋」と呼ばれる背中の筋肉を鍛えられます。
バックエクステンションで脊柱起立筋を鍛えると姿勢の改善や腰痛予防に効果的だといわれています。
5-4.プランク
プランクは床についた肘と爪先で体を支え、静止した状態を保つトレーニングです。
腹筋全体の他、背中や腰の深いところにある筋肉など、体幹全体を鍛えられます。
基礎代謝の向上の他、おなかを引き締めたり、体幹の安定性を高めたりといった効果が期待できます。
5-5.クランチ
クランチは床に横たわった状態で、脚を上げてへそをのぞき込むように上体を起こすトレーニングです。
シックスパックと呼ばれるおなかの腹直筋を主に鍛えることができます。
これによりおなか周りを引き締めたり、姿勢を改善したりできるといわれています。
また、姿勢がきれいになるため腰痛の予防や改善にも効果的です。
6.有酸素運動と筋トレの違いや順番についてのまとめ
有酸素運動は筋肉にかかる負荷が比較的軽い運動のことで、体内の脂質や糖質をエネルギー源とします。
有酸素運動は消費カロリーの増加や脂肪燃焼といったダイエット効果に加え、生活習慣病のリスクを減らしたり全身持久力を高めたりといった効果を持ちます。
筋トレは無酸素運動に当たり、筋肉を収縮させるエネルギー源として主に糖質が使われます。
筋肉量を増やし基礎代謝を向上する効果があります。
このように有酸素運動と筋トレではそれぞれに異なる効果があるのですね。
ただし有酸素運動だけを長期にわたって実施していると、体がエネルギーの浪費を防ごうとして脂肪をためやすくなると考えられています。
体脂肪の減少が目的であっても、有酸素運動だけでなく筋トレを組み合わせて行うことが勧められます。
なお筋トレで成長ホルモンが分泌されると体脂肪が燃えやすくなるため、筋トレの後に有酸素運動を行うことで効果的に体脂肪を燃焼させることができますよ。
また毎日行っても問題のない有酸素運動に対し、筋トレは数日の筋肉を休める期間が必要です。
この他にも有酸素運動と筋トレを組み合わせて行う場合は、有酸素運動を長時間行わないようにする、筋トレでは大きな筋肉を優先的に鍛える、筋肉の主な材料となるたんぱく質を始め、栄養素を十分摂ることが勧められます。
この記事を参考に、有酸素運動や筋トレを生活に取り入れてみてくださいね。