必須脂肪酸とは?はたらきや食事摂取基準、摂取源の食べ物を紹介
「必須脂肪酸ってなんだろう?」
このように気になっている方もいらっしゃるでしょう。
必須脂肪酸とは、脂質を構成する脂肪酸のうち、体内で合成できず食べ物から摂取しなければならないもののことです。
体にとって重要な役割を持ち、欠乏すると体に悪影響を及ぼすことがあります。
この記事では必須脂肪酸の種類やはたらき、摂取量の目安、摂取源となる食べ物をご紹介します。
1.必須脂肪酸とは
必須脂肪酸は、脂質の主要な構成要素である「脂肪酸」の一種です。
体内で合成できず、食べ物から摂取する必要があることから必須脂肪酸と呼ばれます。
脂肪酸は構造の違いから「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられ、不飽和脂肪酸はさらに「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分けられます。
必須脂肪酸はこのうち多価不飽和脂肪酸に分類されます。
脂質については以下で詳しく解説しています。
脂質とは?はたらきや種類、1日に摂取すべき量の計算方法を解説
1-1.必須脂肪酸の種類
必須脂肪酸である多価不飽和脂肪酸は、「n-3系脂肪酸」と「n-6系脂肪酸」に分けられます。
n-3系脂肪酸はα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)に大別されます。
このうち日本人にとって最も摂取量の多いn-3系脂肪酸はα-リノレン酸です。
n-6系脂肪酸にはリノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸などがあります。
日本人が摂取するn-6系脂肪酸はリノール酸が98%を占めます[1]。
[1] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
1-2.必須脂肪酸のはたらき
一口に必須脂肪酸といってもさまざまな種類が存在しており、現在も研究が進められています。
この章ではこれまでに判明しているそれぞれのはたらきについて解説します。
n-3系脂肪酸のDHAやn-6系脂肪酸のアラキドン酸は、体内で神経組織を構成する脂肪酸です。
DHAは特に、神経細胞同士を接続し電気信号のやりとりに関わる「神経シナプス」や、目の網膜にある光の受容体に多く存在しています。
またアラキドン酸は脳の神経細胞の主要成分であることから、学習能力や記憶力を向上する効果があるといわれています。
DHAやEPAといったn-3系脂肪酸は、認知機能の低下や認知症を予防する効果が期待できます。
また、循環器疾患(心臓や血管などの病気)の予防に有効ともいわれています。
n-6系脂肪酸であるリノール酸は、冠動脈疾患(心臓の筋肉に血液を送る血管の病気)を予防できると考えられています。
通常の食生活では必須脂肪酸の不足はまれですが、長く欠乏するとうろこ状の皮膚炎や、脱毛、血小板の減少、子どもで知的障害などが起こる場合があります。
必須脂肪酸はそれぞれが健康に良い影響をもたらすのですね。
2.必須脂肪酸の食事摂取基準と平均摂取量
「日頃の食事で必須脂肪酸を十分に取れているのかな?」
このように気になっている方もいらっしゃるでしょう。
この章では、必須脂肪酸の食事摂取基準と平均摂取量をご紹介するので参考にしてくださいね。
2-1.必須脂肪酸の食事摂取基準
厚生労働省は全年代に対しn-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸の「目安量」を設定しています。
各性別や年齢における必須脂肪酸の1日当たりの目安量は以下のとおりです。
| 性別 | 男性 | 女性 | ||
|---|---|---|---|---|
| n-3系脂肪酸 | n-6系脂肪酸 | n-3系脂肪酸 | n-6系脂肪酸 | |
| 0〜5カ月 | ||||
| 6〜11カ月 | ||||
| 1〜2歳 | ||||
| 3〜5歳 | ||||
| 6〜7歳 | ||||
| 8〜9歳 | ||||
| 10〜11歳 | ||||
| 12〜14歳 | ||||
| 15〜17歳 | ||||
| 18〜29歳 | ||||
| 30〜49歳 | ||||
| 50〜64歳 | ||||
| 65〜74歳 | ||||
| 75歳以上 | ||||
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
この量を目安に、必須脂肪酸を摂取してくださいね。
2-2.必須脂肪酸の平均摂取量
日頃、自分が必須脂肪酸をどのくらい摂れているのか気になりますよね。
厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査」によると、n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸の1日当たりの平均摂取量は以下のとおりです。
| 性別 | 男性 | 女性 | ||
|---|---|---|---|---|
| n-3系脂肪酸 | n-6系脂肪酸 | n-3系脂肪酸 | n-6系脂肪酸 | |
| 1〜6歳 | ||||
| 7〜14歳 | ||||
| 15〜19歳 | ||||
| 20〜29歳 | ||||
| 30〜39歳 | ||||
| 40〜49歳 | ||||
| 50〜59歳 | ||||
| 60〜69歳 | ||||
| 70〜79歳 | ||||
| 80歳以上 | ||||
厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」をもとに執筆者作成
多くの年代の男女でn-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸の平均摂取量は共に目安量を上回っています。
このため、一般的な食生活を送っていれば必須脂肪酸が不足する心配はないといえるでしょう。
3.必須脂肪酸の摂取源となる食べ物
必須脂肪酸がどのような食べ物に含まれているのか気になりますよね。
この章では、必須脂肪酸の摂取源になる食べ物をご紹介します。
3-1.n-3系脂肪酸の摂取源となる食べ物
n-3系脂肪酸は以下のような食べ物から摂取できます。
| 食品名 | 加工状態など | 含有量 |
|---|---|---|
| えごま油 | ||
| あまに油 | ||
| あん肝 | ||
| くるみ | ||
| みなみまぐろ(脂身) | ||
| 天然くろまぐろ(脂身) | ||
| さんま(皮付き) | ||
| しめさば | ||
| イクラ | ||
| いわし(かば焼き) | ||
| さんま(味付け) | ||
| ぶり | ||
| さば(みそ煮) | ||
| いわし(水煮) | ||
| うなぎ(かば焼き) | ||
| さば(水煮) | ||
| しろさけ(塩ざけ) | ||
| ほっけ(開き干し) | ||
| まさば | ||
| 養殖くろまぐろ(赤身) |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
n-3系脂肪酸は青魚などに多く含まれるため、食生活に意識的に取り入れてくださいね。
またn-3系脂肪酸は熱に弱いため、えごま油やあまに油は加熱せずドレッシングなどに用いると良いでしょう。
3-2.n-6系脂肪酸の摂取源となる食べ物
n-6系脂肪酸は以下のような食べ物から摂取できます。
| 食品名 | 加工状態など | 含有量 |
|---|---|---|
| ベニバナ油(ハイリノール) | ||
| ぶどう油 | ||
| ひまわり油(ハイリノール) | ||
| 綿実油 | ||
| くるみ | ||
| ごま油 | ||
| なたね油 | ||
| ピスタチオ | ||
| らっかせい | ||
| アーモンド(無塩) | ||
| かつおフレーク油漬け | ||
| 油揚げ | ||
| びんながまぐろフレーク油漬け(ツナ) | ||
| きはだまぐろフレーク油漬け(ツナ) | ||
| 大豆 | ||
| カシューナッツ(味付け) | ||
| がんもどき | ||
| 鶏皮(もも) | ||
| あいがも肉(皮付き) | ||
| 豚ばら肉 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
このように、n-6系脂肪酸はぶどう油やひまわり油といった植物油、かつおやまぐろなどから摂取できます。
現代は食の欧米化によって肉類が中心の食生活を送りがちです。
このため、魚を使ったメニューに置き換えるなど、n-3系脂肪酸やn-6系脂肪酸を摂れるよう工夫してくださいね。
4.必須脂肪酸についてのまとめ
必須脂肪酸とはヒトの体内で合成できないため、食事からの摂取が必要な脂肪酸のことです。
脂肪酸は脂質の構成要素で、構造の違いにより飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられ、不飽和脂肪酸はさらに一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられます。
必須脂肪酸である多価不飽和脂肪酸には、n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸があります。
n-3系脂肪酸はα-リノレン酸、EPA、DHAに大別され、このうち日本人にとって最も摂取量の多いn-3系脂肪酸はα-リノレン酸です。
n-6系脂肪酸の代表例にはリノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸があり、日本人の食生活で摂取されるn-6系脂肪酸の98%はリノール酸です[2]。
これらの脂肪酸には、それぞれに健康効果があると考えられており、現在も研究が進められています。
n-3系脂肪酸のDHAやEPAには認知機能の低下や認知症を予防する効果が期待されています。
n-6系脂肪酸のリノール酸には冠動脈疾患の予防効果が、アラキドン酸には学習能力や記憶力を向上させる効果があると考えられています。
通常の食生活をしている分には必須脂肪酸は不足しませんが、長く欠乏すると皮膚病などの悪影響が生じます。
n-3系脂肪酸はえごま油やあまに油、さんまやさばなどの青魚を中心とした魚介類、n-6系脂肪酸はぶどう油やひまわり油といった植物油、かつおやまぐろなどから摂取できます。
必須脂肪酸を効率良く摂取するためにも、この記事を参考に毎日の食生活を工夫してくださいね。
[2] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」