「カツオにはどんな栄養素が含まれているんだろう?」
「カツオのおいしい食べ方ってどんなものがあるのかな……。」
カツオは、健康を意識している方にとって気になる食材の一つかもしれませんね。
カツオにはたんぱく質やビタミンが豊富に含まれています。
また、動脈硬化などに効果があるとされるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの成分も含まれています。
この記事では、カツオに含まれる栄養素やカツオの選び方、おいしく食べるコツなどをご紹介します。
普段の食事に取り入れてみたいと思っている方はぜひ参考にしてくださいね。
1.カツオの基礎知識
カツオはスズキ目サバ科カツオ属に属する回遊魚で、世界中の暖かい海に分布しています。
カツオの旬は4〜5月の初夏と9〜10月の秋の2回あります。
日本近海に生息するカツオは春から初夏にかけ、太平洋側を九州南部から餌の豊富な三陸沖に向けて北上していきます。
4~5月頃に獲れる春獲りのカツオは「初がつお」と呼ばれ、脂は少ないものの、あっさりとした上品な味わいが特徴です。
夏の間、太平洋のプランクトンや小魚をたっぷりと食べたカツオは秋になるとまた南の暖かい海を目指して南下していきます。
9〜10月頃に獲れるカツオは「戻りがつお」と呼ばれ、脂がのった濃厚な味わいがあります。
夏の間にたくさん餌を食べたことで、脂肪が増えるのです。
カツオの漁獲量が多いのは静岡県や宮崎県、東京都、高知県などです。
2.カツオに含まれる成分とそのはたらき
カツオのカロリーはどれくらいなのかご存じない方も多いでしょう。
カツオ100g当たりのカロリーは春獲りの場合は108kcal、秋獲りの場合は150kcalです[1]。
また、カツオ100g当たりの脂質の量は春獲りの場合は0.5g、秋獲りの場合は6.2gです[1]。
秋獲りの方がカロリーが高いのは、脂質の含有量が多いからだと考えられます。
カツオの脂質には、免疫反応やアレルギー、動脈硬化、脂質異常症などの予防と改善に効果があるといわれている「多価不飽和脂肪酸」が含まれています。
なかでもEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれています。
カツオにはその他たんぱく質やビタミンが豊富に含まれています。
それでは、どのような栄養素が多く含まれているのかみていきましょう。
[1] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
3.カツオに豊富に含まれる栄養素とそのはたらき
「カツオにはどんな栄養素が多く含まれているんだろう?」
このように気になる方もいらっしゃるかもしれませんね。
カツオにはたんぱく質、ビタミンD、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12が豊富に含まれています。
なお、春獲りのカツオと秋獲りのカツオでは、栄養素の含有量がやや異なります。
【カツオに豊富に含まれる栄養素とその含有量(100g当たり)】
栄養素 | 春獲り | 秋獲り |
---|---|---|
たんぱく質 | 25.8g | 25.0g |
ビタミンD | 4.0μg | 9.0μg |
ナイアシン | 19.0mg | 18.0mg |
ビタミンB6 | 0.76mg | 0.76mg |
ビタミンB12 | 8.4μg | 8.6μg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
この章ではカツオに豊富に含まれる栄養素とそのはたらきについて解説していきます。
3-1.たんぱく質
春獲りカツオには100g当たり25.8g、秋獲りカツオには25.0gのたんぱく質が含まれています[2]。
たんぱく質はヒトの体のエネルギー源になる栄養素の一つです。
また、たんぱく質は筋肉や臓器、皮膚、髪の毛などの体の組織を構成したり、ホルモンや酵素、抗体などの体を調節する成分の材料となったりもします。
たんぱく質は20種類の「アミノ酸」と呼ばれる物質で構成されており[3]、その組成により体内での利用率が異なります。
食品に含まれるたんぱく質に、必須アミノ酸がヒトの体にとって理想的な量に対しどれくらいの割合で含まれているかを示す数値のことを「アミノ酸スコア」といいます。
アミノ酸スコアは100を上限とし、その数値が高いほど体内でのたんぱく質の利用率が高いことを意味します[4]。
たんぱく質含有量が多くアミノ酸スコアの高い食品は「良質なたんぱく質」食品と呼ばれています。
カツオのアミノ酸スコアは最大値の100で、カツオは良質なたんぱく質を含む食品といえます[2][5]。
たんぱく質の1日当たりの摂取推奨量は18歳~64歳の男性で65g、65歳以上で60g、18歳以上の女性で50gです[6]。
たんぱく質が不足すると筋力低下や免疫機能の低下などの原因になります。
良質なたんぱく質を含むカツオを日々の食事に取り入れてみてはいかがでしょう。
たんぱく質についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
たんぱく質は1日どれくらい必要?効率良く摂取できるおすすめの食品
[2] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 アミノ酸」
[4] 厚生労働省「 食生活改善指導担当者テキスト ~健康教育編・栄養指導~」
[6] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3-2.ビタミンD
春獲りカツオには100g当たり4.0μg、秋獲りカツオには9.0μgのビタミンDが含まれています[7]。
ビタミンDは脂溶性ビタミンの一種です。
ビタミンDはカルシウムやリンなどのミネラルの代謝に関わっています。
カルシウムやリンは骨をつくるミネラルです。
ビタミンDは体内でカルシウムとリンの吸収を促すはたらきを通じ、骨の健康を維持する役割を果たしています。
ビタミンDの1日当たりの摂取目安量は18歳以上の男性、女性共に8.5μgです[8]。
ビタミンDは食品から摂取できる他、日光を浴びることで体内で合成することもできます。
食事から十分な量を摂取できない場合や、消化管からの吸収が不十分な場合、日光に当たる時間が不十分な場合などに不足する恐れがあります。
不足すると、成人では骨の強度が弱まる「骨軟化症」、高齢者では骨粗しょう症や骨折、小児では骨の成長障害の「くる病」の原因となる恐れがあります。
ビタミンDは野菜や穀物、豆類、いも類にはほとんど含まれておらず、動物性食品では魚類、植物性食品ではきのこ類などに含まれています。
カツオなどから摂取するよう心掛けましょう。
ビタミンDについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンDってどんな栄養素?効果と摂取方法について徹底解説!
[7] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[8] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3-3.ナイアシン
春獲りカツオには100g当たり19.0mg、秋獲りカツオには18.0mgのナイアシンが含まれています[9]。
ナイアシンは水溶性ビタミンでビタミンB群の一種です。
ナイアシンはナイアシンとして食品から摂取する他に、体内で必須アミノ酸の「トリプトファン」から合成することができます。
このため、食品に含まれるナイアシンの量や、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」におけるナイアシンの摂取推奨量などは食品中に含まれるナイアシンとトリプトファンから合成されるナイアシンの量を合わせた「ナイアシン当量(mgNE)」で表されます。
ナイアシンは体内でエネルギーを生み出すための酸化還元反応に補酵素として関わります。
これにより、ナイアシンは活性酸素の悪影響を防ぐ「抗酸化防御機構」に関わっています。
この他に、ナイアシンは脂肪の構成要素である脂肪酸の生合成や、ステロイドホルモンの生合成、DNAの修復や合成、細胞の分化にも関わっています。
ナイアシンの1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合、18歳~49歳で15mgNE、50歳~74歳で14mgNE、75歳以上で13mgNEです。
また女性の場合、18歳~29歳で11mgNE 、30歳~49歳で12mgNE、50歳~74歳で11mgNEです[10]。
ナイアシンが欠乏すると皮膚炎や下痢、精神神経障害の症状がある「ペラグラ」を引き起こす恐れがあります。
ペラグラは日本では稀ですが、アルコール依存症の方、ビタミンB6などのビタミンやたんぱく質が不足している場合に欠乏症がみられることがあります。
不足の心配はあまりありませんが、重要な栄養素の一つなのでカツオなどから適宜摂取しておきましょう。
[9] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[10] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3-4.ビタミンB6
春獲りカツオ、秋獲りカツオには共に100g当たり0.76mgのビタミンB6が含まれています[11]。
ビタミンB6は水溶性ビタミンの一種で、たんぱく質や脂質、炭水化物の代謝の補酵素としてはたらきます。
特にたんぱく質の代謝において重要なはたらきをしているため、たんぱく質の摂取量が増えるとそれに伴って必要量が増加します。
またビタミンB6は神経伝達物質の一種の代謝の補酵素となったり、ホルモンを調節したりするはたらきもあります。
ビタミンB6の1日当たりの摂取推奨量は18歳以上の男性で1.4mg、同じく女性で1.1mgです[12]。
ビタミンB6が不足すると皮膚炎、口角炎、舌炎、貧血、免疫力低下などを引き起こす恐れがあります。
ビタミンB6不足による不調は、不足した食生活が続いた場合やビタミンB6を阻害する抗リウマチ剤や降圧剤などの薬剤を摂取したときに起こります。
ただしビタミンB6が単体で不足することは珍しく、多くの場合は他のビタミン不足と同時に起こるといわれています。
カツオには他のビタミンも多く含まれているのがうれしいポイントだといえますね。
バランス良くビタミンを摂取できるよう食べ合わせを工夫するのも良いでしょう。
[11] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[12] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3-5.ビタミンB12
100g当たり春獲りカツオには8.4μg、秋獲りカツオには8.6μgのビタミンB12が含まれています[13]。
ビタミンB12は水溶性ビタミンの一種で、アミノ酸や脂質の代謝の補酵素としてはたらきます。
またビタミンB12は葉酸と共に血液をつくる役割も果たしています。
成人の1日当たりのビタミンB12摂取推奨量は男女共に2.4μgです[14]。
ビタミンB12が不足すると巨赤芽球性貧血や神経障害を引き起こす恐れがあります。
ビタミンB12は植物性食品にはほとんど含まれないため、カツオなど動物性食品から摂取する必要があります。
ビタミンB12についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンB12が不足する原因とよくある症状は?摂取しやすい食品も紹介
[13] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[14] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
4.カツオに含まれる栄養素とそのはたらき
「カツオには他にも含まれている栄養素はあるのかな」
このようにお思いの方もいらっしゃるかもしれませんね。
春獲り・秋獲りに共通してカツオには鉄が含まれています。
また、春獲りカツオはカリウムも含んでいます。
【カツオに含まれる栄養素とその含有量(100g当たり)】
栄養素 | 春獲り | 秋獲り |
---|---|---|
鉄 | 1.9mg | 1.9mg |
カリウム | 430mg | - |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
ここでは、それぞれの栄養素とそのはたらきについて説明します。
4-1.鉄
春獲りカツオ、秋獲りカツオ共に100g当たり1.9mgの鉄が含まれています[15]。
鉄はヒトの体に必須のミネラルです。
体内にある鉄の約70%はヘモグロビンやミオグロビンに存在しています[17]。
ヘモグロビンは血液の赤血球中に存在し酸素を各組織に運ぶ物質です。
ミオグロビンは筋肉に存在し、酸素を蓄えるはたらきをしています。
このように体内の鉄は多くが酸素の供給に関わっています。
またこの他に、酵素の構成要素としてもはたらきます。
鉄が不足すると「鉄欠乏性貧血」に陥ります。
鉄欠乏性貧血では酸素の供給が十分にできなくなるため、集中力の低下や頭痛、食欲不振、動悸(どうき)、目まい、息切れ、筋力の低下などの症状が見られます。
貧血にならないために1日にどれくらいの鉄を摂取したら良いのか気になる方もいらっしゃるでしょう。
鉄の1日当たりの摂取推奨量は男性の場合、18歳~74歳で7.5mg、75歳以上で7.0mgです[18]。
また鉄の必要量は月経のある女性の場合大きくなります。
このため月経のある18歳〜49歳に対しては10.5mg、50〜64歳に対しては11.0mgの摂取推奨量が設定されています[18]。
月経がない女性の場合、摂取推奨量は18歳〜64歳で6.5mg、65歳以上で6.0mgです[18]。
なお、食事によって含まれる鉄の種類が違います。
食品中の鉄には、肉や魚に多い「ヘム鉄」と、野菜などに含まれる「非ヘム鉄」があります。
鉄を補うためには、吸収率が高いヘム鉄を多く含む動物性食品を摂取すると良いでしょう。
カツオはヘム鉄を多く含む食品なので貧血予防にはぴったりですね。
[15] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[16] 国立研究開発法人国立循環器病研究センター「 栄養に関する基礎知識」
[17] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 鉄」
[18] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
4-2.カリウム
春獲りカツオには100g当たり430mgのカリウムが含まれています[19]。
カリウムは必須ミネラルの一種で、体内では主に細胞内液の浸透圧を調節しています。
また神経の興奮や筋肉の収縮に関わったり、体液の酸性とアルカリ性のバランスを維持したりするはたらきもしています。
またカリウムには同じくミネラルの一種であるナトリウムを体外に排出する作用があります。
このためカリウムには血圧を下げる効果が期待されています。
カリウムの1日当たりの摂取目標量は18歳以上の男性で3,000mg以上、同じく女性で2,600mg以上です[20]。
下痢をしているときや汗をたくさんかいたとき、利尿剤を服用しているときなどには、血中のカリウム濃度が低下し、筋力の低下や脱力感、食欲不振などの症状が現れる場合があります。
このような欠乏症は通常の食事をしていればまず起こりませんが、日本人には食塩の摂り過ぎによる高血圧患者が多いため、カリウムの積極的な摂取が勧められます。
カリウムはカツオだけでなくその他の野菜や果物などにも多く含まれているので、さまざまな食品から摂取すると良いでしょう。
カリウムについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
カリウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を紹介
[19] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[20] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
4.カツオをおいしく食べるコツ
せっかくならおいしくカツオを食べたいものですよね。
ここでは、カツオをおいしく食べる際のコツをご紹介しましょう。
4-1.カツオの選び方
新鮮なカツオは、まるまると太っていて身が締まっており目が澄んでいます。
さらに、縞模様のコントラストがくっきりしているものも鮮度が良いといえます。
切り身の場合は赤身の色が鮮やかで透明感があるものを選びましょう。
4-2.カツオのおすすめの食べ方
カツオは、にんにくのすりおろしやしそ、しょうがなどの薬味がマッチします。
鮮度が落ちやすいため、表面を軽くあぶるたたきにして食べるのも良いでしょう。
その他には、照り焼きや煮物、揚げ物などにしてもおいしく食べられます。
5.カツオに含まれる栄養素についてのまとめ
カツオには春獲りと秋獲りがあり、それぞれカロリーや栄養素の含有量に違いがあります。
両方に共通して豊富に含まれている栄養素はたんぱく質、ビタミンD、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12です。
また、両方に共通して含まれている栄養素には鉄があります。
カツオをおいしく食べるためには、赤身の色が鮮やかで身が締まっているものを選びましょう。
刺身やたたきなどにして食べるのがおすすめです。
健康維持のために、栄養たっぷりのカツオを食事に取り入れてみてはいかがでしょう。