「カリウムにはどんなはたらきがあるのかな?」
「カリウムが不足すると体にどんな影響が出るんだろう……」
カリウムはカルシウムや鉄分などのミネラルと比べてなじみがないため、どんなミネラルなのかよく知らないという方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
カリウムは細胞内液の浸透圧の調節や神経伝達、筋肉の収縮などさまざまなはたらきに関わるミネラルの一つです。
一方でカリウムは不足すると高血圧の原因となったり、過剰に摂取すると不整脈を引き起こしたりする恐れもあります。
この記事ではカリウムとはどんな栄養素なのか、どんなはたらきを持っているのかなどについて解説します。
1.カリウムとは
カリウムは人体に欠かせない必須ミネラルの一つです。
成人の体内には約120~200gのカリウムがあり、その多くが細胞内にあります。
また、ごく一部ではありますが、血液や体液、骨などにも分布しています[1]。
カリウムには浸透圧を調整し一定に保つはたらきがあります。
他にも過剰に摂取されたナトリウムの排出を促したり、神経の伝達や筋肉の収縮に関与したり、体液のpHバランスを維持したりとさまざまな役割を果たしています。
このようにカリウムは体のいろいろな機能に関わっているため、日々の食事から積極的に取り入れたいミネラルの一つといえるでしょう。
2.カリウムの過不足による体への影響
「カリウムを過剰に摂取したり、不足したりすると体にどんな影響が出るのかな」
カリウムの過剰摂取や摂取不足によって人体にどんな悪影響があるのか気になりますよね。
ここからはカリウムの過剰摂取、摂取不足それぞれが引き起こす体への影響について解説していきます。
2-1.カリウムの過剰摂取による体への影響
カリウムはさまざまな食品に含まれているため、過剰摂取を心配される方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし腎臓が正常に機能していれば体内の余分なカリウムは尿中に排出されるため、過剰摂取になるリスクは低いといわれています。
「じゃあどんな場合にカリウムの過剰摂取に注意したら良いんだろう?」
という点を確認しておきたいですよね。
カリウムの過剰摂取は腎機能が低下していたり、カリウムの排出を妨げる薬を服用していたりといった要因が重なることで起こります。
このような理由により体内にカリウムがたまり血清カリウム値が5mEq/L以上になると、高カリウム血症と診断されます[2]。
基本的には無症状ですが重症化すると脈がゆっくり打ったり早く打ったりと不規則な動きをする「不整脈」や吐き気、脱力感といった症状が現われることがあります。
基本的にはカリウムを摂り過ぎる可能性は低いといえますが、このようなケースに該当する方は注意が必要ですね。
2-2.カリウムが不足した場合の体への影響
カリウムが不足し血液中のカリウム濃度が非常に低い状態を低カリウム血症と呼びます。
ただし、健康的な食生活を送っている方が低カリウム血症になることはほとんどないといえます。
体内にあるカリウムが嘔吐や下痢、下剤の過剰使用などによって大量に失われた場合、低カリウム血症を引き起こすと考えられています。
低カリウム血症は基本的には無症状ですが、血液中のカリウム値が大きく低下した場合には筋力低下や痙攣(けいれん)、ひきつり、麻痺、不整脈といった症状が現れます。
また症状が進行すると歩いたり走ったりするのが困難になるだけでなく、尿が頻繁に出たり、出にくくなったりといった症状を引き起こす恐れもあります。
原則としてカリウムが不足するケースは少ないといえますが、嘔吐や下痢などの体調不良に襲われた際は注意すると良いでしょう。
3.カリウムの食事摂取基準と平均摂取量
「カリウムは1日にどれくらいの量を摂取すれば良いのかな?」
「日本人が平均してどれくらいのカリウムを摂取しているのか知りたい」
このような疑問をお持ちの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、ここからはカリウムの食事摂取基準と日本人の平均摂取量を紹介します。
3-1.1日当たりの摂取基準量
厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、カリウムには摂取目安量と摂取目標量が設定されています。
摂取目安量とはある一定の栄養状態を保つのに十分な量を指しており、この量以上を摂取していれば不足するリスクはまずないと考えられている数値です。
また、摂取目標量は生活習慣病の発症を予防するために定められた数値です。
カリウムの1日の摂取目安量は成人男性では2,500mg、成人女性では2,000mgです[3]。
1日の摂取目標量は、成人男性が3,000mg以上、成人女性が2,600mg以上です[3]。
また腎機能が正常であれば、通常の食事でカリウムの過剰摂取になることはまずないため、過剰摂取が引き起こす健康障害を防ぐために定められた「耐容上限量」は設定されていません。
3-2.1日当たりの平均摂取量
カリウムの1日当たりの平均摂取量は以下のとおりです。
【日本人の1日のカリウム平均摂取量】
年代 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20代 | 2,080mg | 1,743mg |
30代 | 2,100mg | 1,896mg |
40代 | 2,269mg | 2,033mg |
50代 | 2,290mg | 2,153mg |
60代 | 2,569mg | 2,529mg |
70代 | 2,764mg | 2,648mg |
80歳以上 | 2,536mg | 2,250mg |
摂取目安量をみると、男性は20代~50代、女性は20代~30代を除いて十分に摂取できていますが、摂取目標量に関しては70代の女性だけが摂取量を満たしています。
さらにWHOのガイドラインでは摂取目標量を1日3,510mgと定めているため、世界的に見ても日本人のカリウム摂取量が少ないことが分かりますね[4]。
4.カリウムの摂取源となる主な食品
「カリウムは主にどんな食品から摂取できるのかな?」
カリウムは多くの食品に含まれるとはいっても、食品から意識して摂取するにはカリウムを含む食品を知っておきたいですよね。
ここからはカリウムを特に多く含む野菜類、果実類、いも類・豆類、肉類・魚介類、海藻類のなかから摂取源となる食品を紹介します。
4-1.野菜類
カリウムを含む野菜をみていきましょう。
【カリウムを含む野菜類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態 | 含有量 |
---|---|---|
ほうれん草 | 生 | 690mg |
えだまめ | 生 | 590mg |
モロヘイヤ | 生 | 530mg |
たけのこ | 生 | 520mg |
にら | 生 | 510mg |
小松菜 | 生 | 500mg |
リーフレタス | 生 | 490mg |
水菜 | 生 | 480mg |
ブロッコリー | 生 | 460mg |
れんこん | 生 | 440mg |
野菜類からカリウムを摂取する際は、茹でると煮汁にカリウムが流出してしまうため、スープやサラダなどで食べるのがおすすめですよ。
4-2.果実類
カリウムを含む果実類は以下のとおりです。
【カリウムを含む果物類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態 | 含有量 |
---|---|---|
バナナ | 生 | 360mg |
メロン(露地メロン) | 生 | 340mg |
キウイフルーツ | 生 | 300mg |
ぶどう(皮付き) | 生 | 220mg |
さくらんぼ(国産) | 生 | 210mg |
パパイヤ | 生 | 210mg |
白桃 | 生 | 180mg |
果実類は間食や食後のデザートとして手軽にカリウムを摂取できる食品といえます。
4-3.いも類・豆類
カリウムを含むいも類・豆類をみていきましょう。
【カリウムを含むいも類・豆類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態 | 含有量 |
---|---|---|
きな粉(黄大豆) | 生 | 2,000mg |
ひきわり納豆 | - | 700mg |
納豆 | - | 690mg |
さといも | 生 | 640mg |
ながいも | 生 | 590mg |
さつまいも | 皮なし、生 | 480mg |
じゃがいも | 皮なし、生 | 410mg |
おから | 生 | 350mg |
湯葉 | 生 | 290mg |
納豆のような大豆製品は日本人にとってなじみ深い食品なので、手軽にカリウムを摂取しやすい食品といえそうですね。
4-4.肉類・魚介類
カリウムを含む肉類・魚介類は以下のとおりです。
【カリウムを含む肉類・魚介類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態 | 含有量 |
---|---|---|
さわら | 生 | 490mg |
まだい | 皮なし、生 | 490mg |
かんぱち | 生 | 470mg |
きはだまぐろ | 生 | 450mg |
めかじき | 生 | 440mg |
豚ヒレ肉 | 生 | 430mg |
かつお(春獲り) | 生 | 430mg |
ささみ | 生 | 410mg |
牛ヒレ肉 | 生 | 370mg |
牛サーロイン | 生 | 360mg |
魚は刺身や煮付け、焼きなどさまざまな食べ方ができるので、いろいろな調理法を楽しみながらカリウムを摂取できるでしょう。
カリウムが塩分を調整するはたらきがあるとはいえ、肉や魚を調理する際には塩味をつけ過ぎないように気を付けたいですね。
4-5.海藻類
海苔やひじきといった海藻類の食品にもカリウムは含まれています。
【カリウムを含む海藻類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態 | 含有量 |
---|---|---|
刻み昆布 | - | 8,200mg |
干しひじき | 乾燥 | 6,400mg |
乾燥わかめ | 素干し | 6,000mg |
あおさ | 素干し | 3,200mg |
焼きのり | - | 2,400mg |
塩昆布 | - | 1,800mg |
カットわかめ | 乾燥 | 430mg |
乾燥わかめなどは水分が抜けている状態でとても軽いため、100g当たりのカリウム含有量は非常に多くなります。
しかしこのような食品は1食当たりの使用量が非常に少ないため、実際のカリウム摂取量は100g当たりの数値と比べ大きく減少すると考えられます。
そうはいってもわかめはみそ汁の具材、ひじきは煮物などで手軽に摂取しやすいため、カリウムを補うには適した食品であることは間違いないでしょう。
5.カリウムについてのまとめ
カリウムは人間にとって欠かせない必須ミネラルの一つです。
細胞内液の浸透圧を調節する他、神経伝達や筋肉の収縮、ナトリウムの排出などさまざまな役割を担っています。
カリウムが不足するとこれらのはたらきに異常が出る他、低カリウム血症になり筋力の低下、痙攣(けいれん)などの症状を引き起こす恐れがあります。
基本的にはカリウムはたくさんの食品に含まれているため、通常の食生活を送っていれば不足することはありません。
また過剰摂取は高カリウム血症を引き起こす恐れがありますが、腎機能が正常であれば尿としてカリウムを体外に排出するため心配する必要はほとんどないといえます。
日本人は食事から塩分を摂取することが多いため、特にカリウムの摂取が重要視されています。
日本人のカリウムの平均摂取量はWHOが定めた摂取目標量と比べてみても非常に少ないため、普段の食事からカリウムを積極的に取り入れたいですね。
この記事で紹介したカリウムの摂取源となる食品を参考にしてみてくださいね。