「タンパク質は1日にどれくらい摂取すべきなんだろう?」
「タンパク質を効率的に摂るには何を食べれば良いんだろう?」
タンパク質はヒトの体に必要なエネルギー源となる栄養素の一つです。
それだけでなく、筋肉や臓器、皮膚、髪の毛など体の組織の材料にもなります。
このためタンパク質が不足すると、筋力の低下やそれに伴う消費カロリーの低下など、さまざまな悪影響が起こります。
この記事ではタンパク質の1日当たりの適切な摂取量や平均摂取量について紹介します。
タンパク質の摂取源となる食品についても紹介するのでぜひ参考にしてくださいね。
1.タンパク質とは
タンパク質とはヒトの体にとって必要な栄養素で、エネルギー源となる「エネルギー産生栄養素」の一つです。
タンパク質は1g当たり4kcalのエネルギーを産生します[1]。
またタンパク質は筋肉や臓器、皮膚、髪の毛などの材料となる他、ホルモンや酵素、抗体などを構成する成分でもあります。
タンパク質は20種類の「アミノ酸」によって構成されています[2]。
必須アミノ酸をバランス良く含んでいる食品を「良質なタンパク質」と呼びます。
どれくらい必須アミノ酸が含まれているかは「アミノ酸スコア」という値によって示されます。
動物性食品では肉類や魚類、卵、牛乳など、植物性食品では豆類などが良質なタンパク質に該当します。
動物性食品は植物性食品よりもアミノ酸スコアが高い食品が多く見られます。
タンパク質が不足するとさまざまな悪影響を及ぼします。
タンパク質は筋肉を構成する成分であるため、不足すると筋肉量が低下します。
それに伴い「基礎代謝量」も低くなるため、太りやすくなる恐れがあります。
また高齢者のタンパク質不足は「フレイル」や「サルコペニア」の原因にもなります。
一方でタンパク質を過剰摂取した場合には腎機能へ悪影響があると考えられていますが、摂取量の上限は定められていません。
タンパク質についてより詳しく知りたい方は以下をチェックしてみてくださいね。
タンパク質とは?体内でのはたらきや食事摂取基準、豊富な食品を紹介
[1] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「たんぱく質」
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「アミノ酸」
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「良質なたんぱく質」
2.タンパク質の1日当たりの適切な摂取量
「タンパク質は1日にどれくらい摂取するべきなのかな?」
このようにタンパク質を摂取するに当たっての目安が気になっている方もいらっしゃるでしょう。
この章ではタンパク質の1日当たりの適切な摂取量を紹介します。
成人と未成年者、運動習慣がある人について、それぞれ見ていきましょう。
2-1.成人の1日当たりの適切な摂取量
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人のタンパク質の「推定平均必要量」「推奨量」「目標量」が設定されています。
なお、タンパク質の摂取目標量は具体的なグラムではなく、1日の総摂取カロリーのうちタンパク質から摂取すべきカロリーの割合(%エネルギー)で設定されています。
成人におけるタンパク質の1日当たりの食事摂取基準は以下のとおりです。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目標量 (%エネルギー) | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目標量 (%エネルギー) |
18~29歳 | ||||||
30~49歳 | ||||||
50~64歳 | ||||||
65~74歳 | ||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
また妊婦や授乳婦には付加量が設定されています。
推定平均必要量 | 推奨量 | 目標量 (%エネルギー) | |
---|---|---|---|
妊婦(付加量) 初期 中期 後期 |
+5g +20g |
+5g +20g |
|
授乳婦(付加量) |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
高齢者の目標量は、フレイルの回避を目的とした量を設定するために、他の年代よりも高くなっています。
[5] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-2.未成年者の1日当たりの適切な摂取量
未成年者のタンパク質の1日当たりの適切な摂取量はどれくらいなのでしょうか。
未成年者の場合、生後0~11カ月の乳児には目安量が設定されています。
未成年者の1日当たりの適切な摂取量は以下のとおりです。
年齢等 | 男性 | 女性 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 目標量 (%エネルギー) | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 目標量 (%エネルギー) |
0~5カ月 | ||||||||
6~8カ月 | ||||||||
9~11カ月 | ||||||||
1~2歳 | ||||||||
3~5歳 | ||||||||
6~7歳 | ||||||||
8~9歳 | ||||||||
10~11歳 | ||||||||
12~14歳 | ||||||||
15~17歳 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
成長期であるこの時期にはタンパク質をしっかり摂りたいですね。
2-3.運動習慣がある人の1日当たりの適切な摂取量
運動習慣がある人は運動習慣のない人よりも多くのタンパク質が必要であるといわれています。
成人の方の場合、健康的な生活を送るには体重1kg当たり1gのタンパク質が必要とされています[6]。
しかし、筋肉をつけたい人や運動習慣がある人、アスリートの場合には体重1kg当たり2gのタンパク質が必要といわれています[6]。
例えば体重60kgの方が日常的に運動をしている場合、1日に120gものタンパク質が必要ということになります。
ささみのタンパク質含有量が100g当たり23.9gなので[7]、約500gものささみを食べなければ適切な量のタンパク質を摂取できないのです。
このように食事から適切な量のタンパク質を摂取するのは難しいことが分かります。
1日に必要なタンパク質を摂取するためにも、「プロテインパウダー」を活用するのもおすすめです。
運動量によって摂取すべきタンパク質の量は異なりますが、摂取量が不足しているとせっかく筋肉をつけようと運動をしていても筋肉がつかないどころかむしろ減ってしまう恐れもあるのです。
運動をする方は日々のトレーニングの効果を実感するためにも意識的にタンパク質を摂取するようにしてくださいね。
[6] 一般社団法人 日本プロテイン協会「プロテイン=タンパク質」
[7] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
3.タンパク質の1日当たりの平均摂取量
「日本人は1日にどれくらいの量のタンパク質を摂っているのかな?」
厚生労働省が公表する「令和元年 国民健康・栄養調査」ではタンパク質の平均摂取量を確認することができます。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢等 | ||
1~6歳 | ||
7~14歳 | ||
15~19歳 | ||
20~29歳 | ||
30~39歳 | ||
40~49歳 | ||
50~59歳 | ||
60~69歳 | ||
70~79歳 | ||
80歳以上 |
厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」をもとに執筆者作成
この結果から、年代を問わず推奨量を上回っていることが分かりますね。
4.タンパク質の摂取源となる食品
「タンパク質を摂取するには何を食べたら良いのかな?」
タンパク質がどんな食品に含まれているのか知りたい方もいらっしゃるでしょう。
この章ではタンパク質の摂取源となる食品を紹介します。
4-1.肉類
タンパク質の摂取源となる食品の一つに肉類があります。
以下のような肉類にはタンパク質が多く含まれています。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
くじら肉 | ||
ささみ | ||
鶏むね肉(皮なし) | ||
豚ロース(赤肉) | ||
豚ヒレ(赤肉) | ||
牛サーロイン(赤肉) | ||
牛リブロース(赤肉) | ||
ローストビーフ | ||
牛もも肉(赤肉) | ||
豚ロース(皮下脂肪なし) |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
タンパク質の含有量が多いことで知られる鶏ささみでも、成人の1日の推奨量を満たすには200~300g食べる必要がありことが分かります。
また肉類はタンパク質と同時に脂質も多く含んでいるため、食べ過ぎには注意が必要です。
肉類からタンパク質を摂取する場合には、皮つきのものを控えるようにしたり、赤身肉を食べたりするようにしましょう。
4-2.魚介類
タンパク質の摂取源となる魚介類には以下のようなものがあります。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
まぐろ(赤身) | ||
かつお(春獲り) | ||
くろまぐろ(赤身) | ||
さけ | ||
びんながまぐろ | ||
さば水煮缶 | ||
いわし水煮缶 | ||
まさば | ||
まだい |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
肉類と同じように魚類も良質なタンパク質とされる食品の一つです。
魚に含まれるタンパク質は肉類に含まれるものに比べて消化しやすいという特徴があります。
さけやまぐろなど身近な魚にもタンパク質が多く含まれているのはうれしいことですね。
さらにまぐろは脂質の含有量も低いため、タンパク質の摂取源としてうってつけの食品といえるでしょう。
4-3.卵類
卵類もタンパク質の摂取源として優秀な食品の一つです。
タンパク質の摂取源となる卵類は以下のとおりです。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
鶏卵(卵黄) | ||
うずら卵(全卵) | ||
鶏卵(全卵) | ||
鶏卵(卵白) |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
特に卵のアミノ酸スコアは100と高く理想的なタンパク質の摂取源といえます[8]。
卵かけご飯や目玉焼き、卵焼きなど卵は調理のバリエーションが多く、普段の食事に取り込みやすい食品といえるでしょう。
[8] 厚生労働省 e-ヘルスネット「良質なたんぱく質」
4-4.乳類
乳類はタンパク質の摂取源の一つです。
タンパク質を含む乳類には次のようなものがあります。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
パルメザンチーズ | ||
エメンタールチーズ | ||
ゴーダチーズ | ||
チェダーチーズ | ||
プロセスチーズ | ||
カマンベールチーズ | ||
モッツァレラチーズ | ||
カッテージチーズ | ||
ホイップクリーム | ||
ヨーグルト | ||
ソフトクリーム | ||
普通牛乳 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
4-5.豆類
豆類はタンパク質の摂取源となる食品の一つです。
タンパク質の摂取源となる豆類は以下のとおりです。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
高野豆腐(凍り豆腐) | ||
いり大豆 | ||
きな粉 | ||
油揚げ | ||
湯葉 | ||
ひきわり納豆 | ||
糸引き納豆 | ||
がんもどき | ||
大豆水煮缶 | ||
ひよこまめ | ||
いんげんまめ | ||
あずき | ||
木綿豆腐 | ||
絹ごし豆腐 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
植物性タンパク質は動物性タンパク質に比べてアミノ酸スコアが低い傾向にありますが、そのなかでも豆類は良質なタンパク質に該当します。
豆類のなかでも大豆は特にタンパク質を豊富に含んでおり、「畑の肉」とも呼ばれています。
その他にも小豆やいんげん豆などもタンパク質を含むため、タンパク質の摂取源としておすすめです。
米に豆をまぜた赤飯や豆ごはんを作ったり、豆料理を添えたりすることで植物性タンパク質を摂取できるようになるでしょう。
また動物性タンパク質には脂質も多く含まれているため、脂質を摂り過ぎないためにも植物性タンパク質からもバランス良くタンパク質を摂取してくださいね。
5.タンパク質の1日当たりの摂取量についてのまとめ
タンパク質は重要なエネルギー源となる栄養素で、脂質や糖質と共にエネルギー産生栄養素と呼ばれています。
また筋肉や臓器、皮膚、毛髪や、ホルモン・酵素・抗体といった体調節機能成分などの材料としても重要です。
タンパク質の摂り過ぎは腎機能に悪影響を及ぼすとされていますが、害を及ぼす量については明確になっていないのが現状です。
一方で、タンパク質が不足すると筋力の低下を招き、高齢者ではフレイルやサルコペニアなどになることがあります。
タンパク質の1日当たりの摂取推奨量は18~64歳の男性で65g、65歳以上で60g、18歳以上の女性で50gと定められています[9]。
全年代で推奨量を上回る量のタンパク質を摂取できているため、不足することはあまりないといえるでしょう。
運動習慣がある人や筋肉をつけたい人の場合には、体重1kg当たり2gのタンパク質を摂取するのが望ましいでしょう[10]。
タンパク質の主な摂取源とされる食品には肉類や魚介類、卵類、乳類、豆類があります。
これらはいずれも体内で合成できない必須アミノ酸を豊富に含む良質なタンパク質です。
動物性タンパク質と植物性タンパク質をバランス良く摂り、必要な量のタンパク質を確保してくださいね。
[9] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[10] 一般社団法人 日本プロテイン協会「プロテイン=タンパク質」