「水泳にはどんな効果があるんだろう?」
「おすすめの種目があれば知りたい……」
このような疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は水泳はウォーキングやサイクリングなどと同様に有酸素運動の一種であり、さまざまな効果があります。
この記事では水泳の効果やおすすめの種目についてご紹介します。
健康のために何か運動を始めたいという方はぜひ参考にしてみてくださいね。
1.水泳に期待できる効果
「水泳にはどんな効果があるのか知りたい」
このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
水泳は浮力・水圧・水温・抵抗といった「水の特性」を利用した運動であり、このような運動を「アクアエクササイズ」と呼びます。
ここからは陸上での運動とは異なる効果を期待できるアクアエクササイズの一種である水泳の七つの効果を紹介していきます。
1-1.体脂肪燃焼・カロリー消費
水泳には体脂肪を燃焼しカロリー(エネルギー)を消費する効果が期待できます。
体を動かすとカロリーが消費され、減量につながるということは皆さんご存じですよね。
脂肪燃焼の効果は、体を動かした量だけでなく、どのような運動を行ったのかによっても異なります。
水泳は脂肪の燃焼効果が期待できる「有酸素運動」の一種です。
【関連情報】 「有酸素運動とは?効果や無酸素運動との違い、おすすめの運動を紹介」についての記事はこちら
水泳のような有酸素運動は、体内の脂肪を燃料とするため体脂肪を減らす効果が期待されます。
消費カロリーは運動の激しさと持続時間に伴って大きくなりますが、体脂肪の燃焼効果は負荷の小さい有酸素運動の方が大きいといわれているのです。
また水中では体温を維持するためにエネルギーが消費され、消費カロリーが大きくなります。
さらに水中では水の抵抗を受けるため運動の負荷が大きくなり、陸上での運動以上にエネルギーを消費できます。
このように脂肪燃焼効果があり、消費カロリーの大きい水泳はダイエットにぴったりの運動であるといえるでしょう。
[1] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
1-2.基礎代謝の向上
水泳には基礎代謝の向上もできます。
基礎代謝は体格の影響を受け、筋肉量が増えればそれに伴って増加します。
水泳では水の抵抗を受けながら筋肉を動かすため、全身の筋肉をまんべんなく鍛えることができます。
特に、腹筋や背筋などの「体幹」や腕のインナーマッスルなどが鍛えられるでしょう。
このように全身の筋肉を鍛えられる運動である水泳は、基礎代謝を向上させ消費カロリーを増やすことができると考えられるのです。
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 身体活動とエネルギー代謝」
1-3.心肺機能の向上
水泳には「心肺機能(心臓と肺の機能)」を向上させる効果も期待できます。
心臓や肺の機能に依存する体の粘り強さやスタミナのことを「心肺持久力」といいます。
耳慣れない言葉で戸惑った方もいらっしゃるかもしれませんが、心肺持久力は全身持久力とも呼ばれます。
運動を長く続けられる体力や粘り強さは心肺機能に基づいているといえるのですね。
心肺機能を高めるためには軽い運動を可能な限り長い時間行うこと、最大酸素摂取量の40%以上の酸素を確保することが必要だとされており[3]、この条件には水泳やジョギング、サイクリングなどの全身を使った有酸素運動が当てはまります。
また水泳には、水圧で胸が圧迫されることによる呼吸機能の向上も期待できます。
水泳により心肺機能が強化されれば、全身持久力が向上し、より長い時間活動できるようになるでしょう。
これにより運動を長時間続けカロリー消費を大きくすることもできると考えられます。
また運動中に息切れすることも少なくなるかもしれませんね。
[3] 厚生労働省e-ヘルスネット「 心肺持久力」
[4] 厚生労働省e-ヘルスネット「 最大酸素摂取量 / VO2max」
1-4.肩こり・腰痛の改善
水泳は肩こりや腰痛の改善にも効果がある運動とされています。
水泳には肩甲骨や腰回りの筋肉を動かす動作が多いため、肩や腰周辺の血行が促進され、肩こりや腰痛の予防・改善につながります。
特に腕を肩から回すように大きく動かすクロールと腕を後ろに回す背泳ぎは肩こり改善におすすめの泳法です。
とはいえあまりに水温が低いプールは体を冷やし、肩・首・下半身の血行が悪化して肩こり・腰痛をひどくする恐れがあるので肩こりや腰痛にお悩みの方は温水プールを利用しましょう。
1-5.自律神経が整う
水泳は自律神経を整え、精神的・身体的ストレスなどから来る不調を改善すると考えられます。
プールの水温は一般的に体温よりもやや低く設定されており、体温との差が自律神経に良い刺激を与えると考えられています。
また水中では腹式呼吸になること、皮膚に刺激が加わることにより副交感神経が優位になります。
これも自律神経を整える一助になるとされています。
1-6.ストレスの解消
水泳には身体的な効果だけでなくストレスの解消効果も期待できます。
水泳のような一定の動きを繰り返す運動は「幸せホルモン」と呼ばれる「セロトニン」の分泌を促すといわれています。
セロトニンが分泌され脳の感情や記憶を司る部分に伝わると、ストレス解消やリラックス効果といった効果がもたらされるのです。
また、ある研究によると余暇の身体活動やスポーツをすることは、将来的な抑うつ状態の予防に効果的であることが分かっています[4]。
日常生活でストレスを感じているのであれば、水泳のような運動を積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。
[4] スポーツ庁「 数字で見る! スポーツで身体に起こる気になる「6」つのデータ」
1-7.関節の負担の軽減
水中で行う運動である水泳では、陸上で行う運動よりも関節の負担が軽減されます。
水中では浮力がはたらき、肩まで水に浸かった場合は体重が約10%まで減少するといわれています[5]。
これにより膝・腰などの関節や靭帯にかかる負担が軽減されるため、肥満や足腰の痛み・疾患などがある方も体を動かしやすくなるでしょう。
[5] 一般財団法人 熊本県スポーツ振興事業団「 水の持つ4つの運動効果!」
2.ダイエットや筋トレにおすすめの水泳メニュー
「痩せたり体を鍛えたりするためにはどんな水泳メニューが良いのかな」
と疑問を抱いている方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここからは「クロール」「背泳ぎ」「平泳ぎ」「バタフライ」「水中ウォーキング」の五つの種目ごとの特徴や鍛えられる部位などを紹介していきます。
2-1.クロール
クロールはダイエットや筋トレにぴったりの泳法です。
クロールは背泳ぎや平泳ぎ、バタフライといった他の一般的な泳法に比べスピードの速い種目だといわれています。
クロールは全身をバランス良く鍛えられます。
背中や肩、お尻、太もも、肩関節周辺などの大きな筋肉の他、体の深い部分にあるインナーマッスルも鍛えられます。
水泳種目のなかでは消費カロリーが多い方ではありませんが、長時間泳ぎ続けられれば高い運動効果を期待できるでしょう。
クロールで泳ぐ際に押さえるべきポイントは以下のとおりです。
【クロールの泳ぎのポイント】
- 全身を伸ばし、浮きやすいように正しい姿勢をとる
- 腕を肩から大きく回す
- 膝を曲げず両足の親指が軽く触れるようにしてバタ足をする
- 水中で鼻から息を吐き、腕を水面から出して回し始めたら横を向いて口から息を吸う
また、クロールを長時間続けるためには、無理のない範囲で息継ぎをすること、できるだけ力を抜き肩や太ももを体の内側から大きく動かしつつゆっくり進むことを意識しましょう。
2-2.背泳ぎ
あおむけで泳ぐ背泳ぎも、ダイエットや筋トレにおすすめの泳法です。
クロールと同じような動きがあるため、同等の効果が期待できるでしょう。
また消費カロリーは多くはないものの、長く続けることで十分な効果を得られるといわれています。
背泳ぎのコツについて見ていきましょう。
【背泳ぎの泳ぎ方のポイント】
- 全身の力を抜き、体を一直線に伸ばす
- ややあごを引いて視線をおなかに向ける
- 腕を肩から大きく回すようにして水をかく
- バタ足は太ももから大きく動かすイメージで行う
長時間泳ぎ続けるためにも泳ぎ方のポイントを押さえるようにしてくださいね。
2-3.平泳ぎ
ダイエットやトレーニングのためには平泳ぎもおすすめです。
平泳ぎは手足を交互に動かすという特徴があり、特に足の動きが重要になります。
水をすくい上げる腕の動作では肩の「三角筋」や背中から腰、腕にかけてついている「広背筋」、蹴る動作では太ももと太ももの裏の筋肉を鍛えられます。
平泳ぎには他の泳法とは異なる要素が多くあるので、泳ぎ方のポイントをしっかり押さえて取り組みましょう。
【平泳ぎの泳ぎ方のポイント】
- かかとをお尻に近づけるように脚を縮め、脚の内側・足裏を使い後方に水を蹴る
- 水をかき分けるようにして両手を動かす
- 脇を締め両腕を胸の前に持っていったら顔を上げ息継ぎをする
平泳ぎでは全身をダイナミックに使うため、短期間でダイエット効果が得られるといわれています。
多少難易度が高い泳法ではありますが、泳ぎに自信のある方や泳ぎに慣れてきたという方はぜひ取り組んでみてくださいね。
2-4.バタフライ
バタフライには高いダイエット効果が期待できます。
全身を使う泳法のため、水泳種目のなかで最もカロリー消費が多いといわれているのです。
また三角筋や広背筋、首から肩、背中にかけてついている「僧帽筋」や股関節の周りについている筋肉を鍛えられます。
両手両足を同時に左右対称に動かすので難易度はたかくなりますが、以下のようなポイントを押さえて取り組んでみましょう。
【バタフライの泳ぎ方のポイント】
- 両足をそろえ、大きく蹴る
- 腹筋に力を込めおなかをへこませて、骨盤辺りから大きく脚を動かす
- 手足のタイミングを合わせてリズミカルに動かす
- 手を水に入れる際の角度は45度を意識する
- 水を後ろにかいたタイミングで顔を上げ息継ぎをする
泳ぐのに慣れてきた方や短時間で多くのカロリーを消費したい方は挑戦してみてくださいね。
2-5.水中ウォーキング
水泳が苦手な方や水に顔をつけるのが怖いという方には水中ウォーキングがおすすめです。
水中ウォーキングでは水の抵抗により、陸上での歩行よりも負荷が大きくなります。
このためより多くのカロリーが消費できるでしょう。
シンプルな運動ですがフォームが崩れると疲労がたまりやすくなるため、正しいフォームを意識して運動を行いましょう。
【水中ウォーキングのポイント】
- 前を向いて歩く
- 胸を張り体幹を意識する
- 骨盤から前に出すようにして歩く
よりシェイプアップ効果を高めたい場合は、肩甲骨や股関節、ふくらはぎを大きく動かす意識で動作することで消費カロリーが増えますよ。
3.水泳の効果を高めるためのポイント
「水泳の効果を高めるためにした方が良いことってあるのかな?」
運動の効果を高めるためのポイントがあったら知りたいものですよね。
ここからは水泳の効果を高めるための四つのポイントを紹介します。
ポイント1 運動前後にストレッチを行う
水泳をする際は運動前後に必ずストレッチを行うようにしましょう。
ストレッチとは筋肉や関節の柔軟性を高めることを目的とした運動のことです。
ストレッチには関節を一定の方向に動かし筋肉の伸縮を繰り返す「動的ストレッチング」と、一定方向に筋肉をゆっくり伸ばししばらく静止する「静的ストレッチング」があります。
動的ストレッチングはウォーミングアップとして行うことでけがの予防に有効です。
また静的ストレッチングは運動後、クーリングダウンに行うことで疲労回復のサポートやリラックスに効果的だとされています。
水泳は体にかかる負担が少ない運動ですが、けがをするリスクがゼロとはいえません。
安全に水泳を行い疲労を翌日に残さないためにも、運動前後のストレッチを必ず行ってくださいね。
水泳後はすぐにプールから上がらず水中ウォーキングや静的ストレッチを行い、クールダウンする時間を作りましょう。
ただし、ストレッチにも誤ったやり方で行うと筋肉を痛める恐れがあります。
やり方が分からないという方はフィットネスクラブのインストラクターやストレッチ講師などの指導を受けるようにしましょう。
ポイント2 筋トレと組み合わせる
水泳によるダイエット効果をさらに高めたい場合は筋トレと組み合わせるのがおすすめです。
筋トレによって筋肉量が増加すれば基礎代謝が高まるため、消費エネルギーもその分増加し太りにくい体を維持できるようになるでしょう。
水泳でも全身のさまざまな筋肉を鍛えられますが筋肉を肥大化させる運動としては筋トレの方が適しています。
筋トレと水泳を組み合わせる際は、筋トレを先に行ってから水泳などの有酸素運動を行いましょう。
筋トレをすると成長ホルモンが分泌され、その作用によって中性脂肪の分解が促されます。
つまり筋トレ後の体は体脂肪を燃焼しやすい状態になっているため、その状態で脂肪燃焼効果のある有酸素運動を行うことでより効率良い脂肪燃焼が期待できるのです。
反対に筋トレ前に有酸素運動を行ってしまうと筋トレ後の成長ホルモンの分泌が抑えられてしまいます。
水泳による脂肪燃焼効果を高めるには、筋トレを合わせて行うこと、同日に実施する場合は筋トレを先にすることを心掛けましょう。
ポイント3 バランスの良い食事を摂る
水泳のダイエット効果をより高めたい場合は、バランスの良い食事を摂ることも重要です。
減量するために特定の食品だけを食べたり食事量を極端に制限したりするといった食事制限は、ストレスがたまるだけでなく必要な栄養素が摂取できずにかえって健康を損なう恐れがあります。
例えば偏った食生活を送りたんぱく質が不足してしまうと、運動でつけた筋肉も減少してしまうため、基礎代謝が低下し脂肪を燃焼しにくい体になってしまうでしょう。
ダイエットのためには、摂取カロリーが消費カロリーを下回るようにした上で、体に必要な栄養素が不足しないよう栄養バランスを意識することが重要です。
特に筋肉の材料となるたんぱく質などはしっかり摂っておく必要があります。
ダイエット中の食事については以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてくださいね。
ポイント4 定期的に行う
水泳などの運動は定期的に行うことが重要だと考えられています。
水に慣れたり体の動かし方を覚えたりする上でも、あまり間を空けずに行うことが必要だと考えられますよね。
習慣的な運動は生活習慣病のリスクを下げ、死亡率を下げることが分かっています[6]。
またメンタルヘルスや生活の質の改善にもつながると考えられています[6]。
では実際どれくらいの頻度で水泳に取り組めば良いのかが気になるところですよね。
理想的には毎日泳ぎたいものですが、なかなかそれは難しいでしょう。
厚生労働省は1回当たり30分以上、週2回以上の運動を1年以上続けている人を運動習慣のある人としています[6]。
まずはこの頻度を目標に、継続的に行うことを目標としてみましょう。
[6] 厚生労働省「 身体活動・運動」
4.水泳の効果についてのまとめ
水泳はウォーキングやジョギングと同様に有酸素運動に該当する運動で、脂肪燃焼効果があります。
その他にも、基礎代謝を上げることでさらに消費カロリーを増大させる効果があります。
また心肺機能を向上させることで持久力を高める効果も期待できます。
肩こり・腰痛が改善したり、自律神経が整ったりするのもうれしいポイントですよね。
足腰に不安があり、陸上での運動が難しい方にとっては関節の負担が軽減された状態で運動できるのもメリットです。
また水泳は種目によっても難易度や鍛えられる筋肉が異なるため、期待する効果や鍛えたい筋肉に合わせて種目を選ぶと良いでしょう。
全身をバランス良く鍛えたいならクロールや背泳ぎ、短時間でダイエット効果を期待するならバタフライがおすすめです。
水が怖い、水泳が苦手という方は水中ウォーキングから始めてみるのも良いでしょう。
水泳の効果を高めるために運動前後のストレッチを行いましょう。
また筋トレと組み合わせることでさらに消費カロリーを増大できます。
また減量を目的とする場合にも極端な食事制限はせず、適切なエネルギー量を摂取してバランスの良い食事を心掛けてくださいね。