「上腕二頭筋を鍛えるにはどんな筋トレがあるの?」
「上腕二頭筋をより効果的に鍛えるにはどうしたら良いのかな……?」
上腕二頭筋を鍛えたいと思っている方のなかにはこのような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
上腕二頭筋は日常生活においても使用頻度の多い筋肉で、物を引き寄せたり重いものを抱え上げたりする動作に使われます。
また上腕二頭筋は野球やテニスなどスポーツにおいても欠かせない筋肉であるため、鍛えることでスポーツパフォーマンスの向上も図れるでしょう。
この記事では上腕二頭筋を鍛えるトレーニングや鍛える上で気を付けたいポイントについて解説します。
上腕二頭筋を効率良く鍛えたい場合には必見ですよ。
1.上腕二頭筋とは?
「上腕二頭筋ってどんな筋肉なの?」
上腕二頭筋という名前は聞いたことがあるけど、実際にどんな筋肉なのか詳しくは知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
上腕二頭筋は上腕の力こぶに当たる筋肉のことです。
肘と肩の二つの関節を越えてついている「二関節筋」であり、肩、肘、前腕の運動に関わります。
上腕二頭筋の主なはたらきは肘関節を曲げる動作と、前腕を回し手の平を上に向ける「回外」の動作です。
日常生活では体に向かってものを引き寄せたり、ドアノブを回したりする動作に使われます。
このようなはたらをする上腕二頭筋は、さらに「長頭」と「短頭」という二つの部位にわけられます。
長頭と短頭のそれぞれの役割については、次項で詳しく解説しましょう。
1-1.長頭
上腕二頭筋の長頭は上腕前部分の外側についている筋肉のことです。
長頭は主に肘関節を曲げる動きに使われます。
長頭を鍛えることで力こぶに高さが出るといわれています。
1-2.短頭
上腕二頭筋の短頭と上腕前部分の内側に位置する筋肉です。
短頭は肘を曲げる動作に加え、手の平が上を向くように前腕を回転させる動きに使われます。
短頭を鍛えることで力こぶの太さが増します。
上腕二頭筋の筋肥大を目指すなら、長頭と短頭の二つの部位をバランス良く鍛えることが重要です。
2.上腕二頭筋を鍛える自重トレーニング
「器具を使わずに上腕二頭筋を鍛えることはできるのかな?」
上腕二頭筋を鍛えたいと思っていても具体的なトレーニング方法が分からないという方もいらっしゃるかもしれませんね。
上腕二頭筋を鍛えるトレーニング方法には、自重を使うものとダンベルなどの器具を使ったものがあります。
自重トレーニングだけでもさまざまな種類があり、なかには初心者にも取り組みやすい内容のトレーニングもあります。
今回はそんな自重トレーニングのなかから、特に上腕二頭筋に効くトレーニングを四つ紹介しましょう。
2-1.ドルフィン・プッシュアップ
ドルフィン・プッシュアップは腕立て伏せに前後の動きを加えた筋トレです。
このトレーニングは上腕二頭筋に加えて肩の筋肉も鍛えられます。
ドルフィン・プッシュアップの詳しいやり方は以下のとおりです。
まずうつぶせになり、肘と爪先を床について体を支えます。
このとき、肘から手までが床に触れた状態にしておきましょう。
構えたら、膝を曲げないようにしてお尻を高く上げます。
限界まで上げ切ったら、腕立て伏せの要領で床を押して元のフォームに戻りましょう。
腰を反らしてしまうと腰痛の原因になる可能性があるため、背筋を伸ばしてお尻を上げるようにしましょう。
2-2.パーム・カール
パームカールは上腕二頭筋のうち、短頭を鍛えられる筋トレです。
ダンベルやバーベルを使うものをダンベル・カールなどと呼びますが、自重トレーニングの場合には手のひらを使うためパーム・カールと呼ばれています。
正しいフォームを身につけるためにパーム・カールのやり方を紹介します。
まず一方の手を拳にして逆側の手で拳を握った方の手首を押さえ、拳を握った方の手を押さえ込むように負荷をかけていきます。
拳を握った方の手は逆側の手に逆らい、拳を突き上げるように動かしましょう。
拳を作った方の手が上がったら、力を抜かずに負荷を感じながらゆっくりと腕を下ろします。
しっかりと上腕二頭筋に効かせるには脇を締め、肘が体の横から動かないようにトレーニングを行いましょう。
肘を上手く固定できない場合には、脇にタオルを挟んでトレーニングするのもおすすめです。
2-3.クラッピング・プッシュアップ
クラッピング・プッシュアップのやり方は以下のとおりです。
まずうつぶせの状態で両手と爪先を床につき体重を支えます。
このとき両手は肩幅ほどに開いて置くようにしましょう。
また頭から足にかけて全身が一直線になるよう意識しておきます。
この姿勢から、足は地面に付けた状態で両手で強く床を押し、手のひらを床から離します。
手が床から浮いたら、両手を叩き、元の姿勢に戻ります。
クラッピング・プッシュアップは着地に失敗するとけがをする危険があるため、その他の上腕二頭筋を鍛えるトレーニングになれてきたら取り入れるようにしましょう。
2-4.リバース・チンニング
リバース・チンニングは上腕二頭筋を鍛える自重トレーニングの代表例ともいわれるトレーニングです。
チンニングは一般的に背中を鍛える筋トレというイメージが強いトレーニングですが、上腕二頭筋に効かせるには少しフォームが異なります。
それではリバース・チンニングのトレーニング方法について見ていきましょう。
まず手の幅を肩幅より狭め〜肩幅程度にして、逆手でバーを握ります。
背中をやや丸めた状態で腕の力を使って体を引き上げていきましょう。
体を引き上げたら少しキープし、ゆっくりと筋肉に効かせながら元の体勢に戻ります。
肩甲骨を寄せると背筋にトレーニングの負荷が逃げてしまうため、上腕二頭筋を意識して動かしてみてください。
少し背中を丸めるようにして腕の力だけでトレーニングすると効果的です。
チンニングは筋トレのなかでも難易度の高いトレーニングといわれており、初心者は一回もできない場合があります。
初心者の方はチンニングをやる場合にはジャンプしたり、椅子に足を乗せたりしてトレーニングに補助を入れて取り組んでみると良いでしょう。
3.上腕二頭筋を鍛えるダンベルを使ったトレーニング
「上腕二頭筋を鍛えるダンベルを使った筋トレにはどんなトレーニングメニューがあるんだろう?」
ダンベルを使ったトレーニング方法を知りたいという方もいらっしゃるかもしれませんね。
ダンベルトレーニングは重さを活かしてより効果を高められる上、さまざまな種類があるのでトレーニングの幅も広がります。
ここからは上腕二頭筋を鍛えるダンベルを使ったトレーニングメニューを六つ紹介します。
それぞれのメニューのポイントなども解説するので、正しいフォームでトレーニングを行えるようチェックしてみてくださいね。
3-1.バイセップス・カール
バイセップス・カールは上腕二頭筋だけでなく、上腕二頭筋の下に位置する「上腕筋」や上腕から手首にかけて付いている「腕橈骨筋」も鍛えられます。
バイセップス・カールのやり方は以下のとおりです。
まず足を肩幅程度に開いた状態で立ち、膝を少し曲げます。
両手にダンベルを持ち、腕を体の横につけます。
肩は後ろに引き、おなかに力を入れて真っすぐ立つように意識しておきましょう。
この状態から、肘が体の横から離れないようにしつつ、手のひらを上に向けてダンベルを肩に向かって引き上げます。
引き上げ切ったとき、上腕二頭筋が完全に縮んでいることを意識しましょう。
そしてゆっくりと最初の姿勢に戻ります。
ダンベルを持ち上げるときには勢いや反動をつけないように注意しましょう。
3-2.リバース・バイセップス・カール
リバース・バイセップス・カールは上腕二頭筋と上腕筋を鍛えられるトレーニングメニューです。
全体的な動きはバイセップス・カールと同じですが、ダンベルを順手で握るという違いがあります。
まずダンベルを両手に順手で持ちます。
腕を伸ばし両肘は体から少し離した位置で固定しましょう。
腰と肘の位置を固定し反動を使わずに、肘をゆっくりと限界まで曲げます。
肘の位置を動かさず、ゆっくりダンベルを最初の位置に戻します。
動かすときには腰を前に突き出したり体を反らしたりしないように注意しましょう。
3-3.コンセントレーション・カール
コンセントレーション・カールは上腕二頭筋だけでなく上腕筋にも効果がある筋トレです。
上腕二頭筋のなかでも特に短頭に効かせられるトレーニングです。
ベンチを使用し座った状態で行うトレーニングなので、トレーニングの際は椅子などを用意してください。
コンセントレーション・カールのフォームは以下のとおりです。
まず両脚を開いて椅子に座り、ダンベルを持つ方の肘を膝の内側につけます。
腰と肘の位置を固定したまま、肘をゆっくりと曲げダンベルを持ち上げましょう。
肘は動かさず、ゆっくりとダンベルを最初の位置に戻します。
ダンベルを持ち上げた際に手首が上を向くように外側にひねることで、上腕二頭筋をより収縮させられます。
ダンベルを持っていない方の手は膝の上に載せておきましょう。
3-4.ハンマー・カール
ハンマー・カールは上腕二頭筋と上腕を鍛えられるトレーニングメニューです。
上腕二頭筋のなかでも特に長頭に効果があるといわれています。
それではハンマー・カールのやり方を見ていきましょう。
立った状態で手のひらが向き合うようにして両手にダンベルを持ち、腕を伸ばします。
次に背筋を伸ばして肘の位置を固定し、肘を曲げてダンベルを持ち上げます。
重さを感じながらダンベルをゆっくりと最初の位置に戻しましょう。
トレーニング中に肘の位置が動いてしまうと僧帽筋に負荷が逃げてしまうため、肘の位置を固定して勢いや反動を使わず行うようにしてください。
3-5.ダンベル・サイドカール
ダンベル・サイドカールは上腕二頭筋の長頭を鍛えられる筋トレです。
ハンマー・カールのバリエーションの一つです。
通常のハンマー・カールの動きに、上腕二頭筋が持つ肩関節を水平に動かす動作を加えたトレーニングです。
ダンベル・サイドカールのやり方は以下のとおりです。
まず背筋を真っすぐにして立ち、ダンベルを片手に握って腕を伸ばします。
肘の位置を固定したまま、ダンベルが胸の前に来るように肘を曲げましょう。
ダンベルの重さを感じながらゆっくりと最初の位置に戻します。
ダンベル・サイドカールは通常のハンマー・カールと異なる刺激を筋肉に与えられるため、上腕二頭筋の肥大が停滞したと感じたときに取り入れてみると良いでしょう。
ダンベルを持ち上げる際は反動を使わずに持ち上げることがポイントです。
3-6.ダンベル・ドラッグカール
ダンベル・ドラッグカールは上腕二頭筋の短頭に効果のある筋トレです。
ダンベル・ドラッグカールのやり方を紹介します。
まず背筋を真っすぐにして立ち、両手にダンベルを握って腕を伸ばします。
肘を後ろに引きつつ、腕を曲げてダンベルを持ち上げましょう。
負荷を感じながらゆっくりとダンベルを下ろしていきます。
肘を後ろに引く際に肩甲骨を寄せるように動作すると僧帽筋に負荷が逃げ、上腕二頭筋に十分に効かせられなくなってしまうので注意してください。
無理に重い重量で行うのではなく、肘関節をしっかり曲げられる負荷を設定しましょう。
4.上腕二頭筋を効果的に鍛えるポイント
「上腕二頭筋をより効果的に鍛えるためにはどんなことに気を付けたら良いかな?」
上腕二頭筋を鍛えるには筋トレが欠かせませんが、日々の食事やストレッチはそれと同じくらい重要です。
ここからは上腕二頭筋を効果的に鍛える四つのポイントを紹介します。
上腕二頭筋をより効果的に鍛えたいと思っている方は筋トレと並行して取り入れてみてくださいね。
ポイント1 ストレッチを取り入れる
筋トレで上腕二頭筋を酷使した後はストレッチを行い、筋肉をしっかりとケアしましょう。
ストレッチとは関節や筋肉を動かしたり伸ばしたりして筋肉の柔軟性を高める運動のことです。
関節を動かすことで筋肉を収縮させるものを「動的ストレッチ」、筋肉をゆっくりと伸ばしその状態をキープするものを「静的ストレッチ」と呼び、それぞれ異なる効果があります。
運動や筋トレ後のストレッチには、静的ストレッチがおすすめです。
静的ストレッチには筋トレ後の柔軟性向上だけでなく、クーリングダウンやリラックス効果があります。
静的ストレッチをする際には以下の五点に注意してください[1]。
【静的ストレッチの注意点】
- 20秒以上かけて伸ばす。
- 伸ばす部分を意識する。
- 痛くなく気持ちいい程度にする。
- 呼吸を止めない。
- 目的に応じて伸ばす部位を適切に選択する。
以上のポイントを守ってストレッチを行わないと、十分な効果を得られない可能性があるので気を付けましょう。
また、筋トレや運動する前には静的ストレッチではなく、大きな動きで体を温める動的ストレッチがおすすめです。
ストレッチの順番による筋出力や関節の可動域の影響を調べた実験では、静的ストレッチを先に行った方が筋出力が向上する傾向にあるとの実験結果が出ました[2]。
このことからも運動前には動的ストレッチが、運動後には静的ストレッチが向いているといえます。
目的に合わせて静的ストレッチと動的ストレッチを使い分けましょう。
[2] 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会「静的ストレッチングおよび動的ストレッチングの順序が筋力と関節可動域に及ぼす影響」
ポイント2 適切な回数を設定する
トレーニングは適切な回数で行う必要があります。
腕立て伏せやダンベルを使ったトレーニングは「レジスタンス運動」とも呼ばれ、10~15回を1セットとして、1~3セット無理なく行うことが推奨されています[3]。
しかし推奨されたセット数をこなしても負荷が少ないと感じる方のなかには、より大きなトレーニング効果を得るために、セット数を増やして負荷を増やそうと考える方もいるかもしれません。
このようにセット数を増やしトレーニングを長時間化させるような負荷の調節方法は、あまり良い方法とはいえないどころか、筋肉に十分な刺激を与えられない恐れもあります。
推奨された1~3セットを基準としてダンベルの重さを調節したり、1セットの回数を増やしたりして調節を行いましょう。
また自重トレーニングのように比較的軽い負荷で行う運動の効果を増強させる方法として「スロートレーニング」があります。
スロートレーニングは、筋トレの上げ下げといった動作をそれぞれ3~5秒かけて行うというシンプルなやり方で実施できます[4]。
スロートレーニングは自重トレーニングをより効果的なトレーニングにするだけでなく、腱や関節への負担も少ないというメリットもあります。
ご自身に合った負荷を調節する方法として覚えておくと良いかもしれませんよ。
ポイント3 適切な頻度でトレーニングを行う
筋肉を肥大化させるには適切な頻度でトレーニングを行う必要があります。
同じ部位の筋トレは毎日ではなく、2~3日に1回、週に2~3回くらいの頻度で行うことが重要です[5]。
これは筋トレで傷つけた筋肉を修復させるために休息期間を設ける必要があるためです。
筋トレを行うと筋繊維の一部が傷つけられ、修復される際にトレーニング前よりもより大きく太い筋肉になります。
これを「超回復」と呼び、この超回復を繰り返すことで筋力が増します。
損傷した筋肉を修復させるには2~3日の休息が必要です[6]。
反対に筋トレ後に筋肉が修復しないうちにトレーニングを続けると「オーバートレーニング症候群」に陥ってしまう恐れがあります。
オーバートレーニング症候群はトレーニング効果が低下するだけでなく、疲れやすくなったり、睡眠障害や食欲不振などの症状が現れたりします。
健康的で効果的なトレーニングを行うためにも、筋トレ後は適切な休息をとり、筋肉を修復させましょう。
ポイント4 たんぱく質を摂取する
上腕二頭筋をより効果的に鍛えたいのであれば、たんぱく質を摂取しましょう。
たんぱく質は筋肉の材料となるため、不足しているとせっかく筋トレを行っても筋肉量アップにつながらない可能性もあります。
厚生労働省の定めるたんぱく質の1日当たりの摂取推奨量は以下のとおりですが、一般的には筋肉を増やしたい方は体重1kg当たり2gのたんぱく質を摂るべきだともいわれています[7]。
【たんぱく質の1日当たりの摂取推奨量】
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
18〜29歳 | 65g | 50g |
30〜49歳 | 65g | 50g |
50〜64歳 | 65g | 50g |
65〜74歳 | 60g | 50g |
75歳以上 | 60g | 50g |
たんぱく質を豊富に含む食品には動物性のものでいえば肉類や魚類、卵や乳製品があり、植物性のものなら豆類や穀類などがあります。
特に肉や卵、魚、大豆などのたんぱく質は人体で合成できない「必須アミノ酸」を理想的な割合で含むため、「良質なたんぱく質」と呼ばれています[8]。
ただし肉や魚は脂質が多いものもたくさんあるので、バランスの良い食事を心掛けましょう。
また筋肉量アップや健康のためにはビタミンやミネラルといった他の栄養素も欠かせません。
筋トレ中の食事については以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてくださいね。
筋トレの効果を高める食事とは?おすすめのタイミングや必要な栄養素
5.上腕二頭筋の筋トレについてのまとめ
上腕二頭筋は上腕の力こぶに当たる筋肉です。
肘と肩の二つの関節を越えてついており、肩や肘、前腕の運動に関わります。
上腕二頭筋を自重で鍛える筋トレには、ドルフィン・プッシュ・アップやパーム・カールなどがあります。
難易度は上がりますが、慣れてきたらクラッピング・プッシュ・アップやリバース・チンニングといったトレーニングにも挑戦してみましょう。
またダンベルを使うことでより効率的に上腕二頭筋に負荷がかけられます。
ダンベルを使った上腕二頭筋のトレーニングメニューにはバイセップス・カールやリバース・バイセップス・カール、コンセントレーション・カール、ハンマー・カールなどがあります。
トレーニングによって効果のある部位が異なるので、ご自身が鍛えたい部位によって実施するトレーニングを選びましょう。
筋トレを行う場合は前後にストレッチを行うことが勧められます。
またトレーニングは適切な回数、頻度で行うようにしましょう。
たんぱく質を十分摂取することも重要です。
この記事を参考に、理想的な腕のラインを目指してくださいね。