「筋肉をつけるには、どんな食事がいいの?」
「筋トレの効果を高めるために、食事はいつ摂ったらいいだろう?」
このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
筋トレの効果を高めるためには、筋肉に必要な栄養素を食事から補給することが必要です。
また、食事を摂るタイミングによって筋トレの効果が減少する可能性があるので、食事のポイントと併せて知っておきたいですね。
この記事では、筋肉に必要な栄養素、筋トレにおすすめの食事のタイミングなどについてお伝えしていきます。
1.筋トレと食事との関係
「そもそも、筋肉は何でできているんだろう?」
このように疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれません。
まずは、筋肉とは何か、筋肉と食事の関係をお伝えしましょう。
筋肉にはいくつか種類があり、一般的に筋肉と呼ばれているのは「骨格筋」です。
骨格筋のうち75%は水分で固形分は25%です[1]。
この固形分のうち20%がたんぱく質で構成されています[1]。
つまり水分を除いた固形分の約80%はたんぱく質でできている [1]ということです。
筋トレの際にはたんぱく質が重要だと聞いたことがある方も多くいらっしゃるでしょう。
たんぱく質は他の栄養素から体内でつくることができないため、食べ物から取り入れることが必要です。
またその他にも、筋肉を育てるために重要な栄養素はいくつもあります。
具体的にどのような栄養素が重要となるのかは次の章でお伝えしましょう。
[1] 公益財団法人 日本オリンピック委員会 アスリートのためのカンタン栄養学「第2回カラダづくりのための栄養」
2.筋肉に必要な栄養素とは?
「筋肉を増やすには、どんな栄養素が必要なの?」
このように気になっている方もいらっしゃるでしょう。
筋肉をつくる栄養素を摂ることはもちろん、それ以外の栄養素をバランスよく摂取することが必要です。
そこで、ここからは筋肉に必要な栄養素について、なぜ必要なのかという理由も併せてお伝えしていきます。
2-1.たんぱく質
たんぱく質は筋肉をつける上では欠かせない栄養素で、豆・卵・魚・肉などの食品に多く含まれています。
20種類の「アミノ酸」が結合してできているたんぱく質にはさまざまな種類があり、それぞれの構造、はたらきは異なります[2]。
たんぱく質のうち必須アミノ酸をバランスよく含むものは「良質なたんぱく質」と呼ばれます。
良質なたんぱく質が含まれている食品は、たんぱく質の含有量が多く体内での利用率も高いといえます。
良質なたんぱく質がどのような食品から摂取できるかについては、この後紹介します。
筋肉の多くがたんぱく質でつくられているため、積極的に取り入れていきたいですね。
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「たんぱく質」
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「アミノ酸」
2-2.炭水化物
炭水化物は、エネルギー産生栄養素の一つであり、糖質と食物繊維で構成されています。
糖質は炭水化物のうち体内で消化されるもので、筋肉を動かす際に必要なエネルギー源として使われます。
摂り過ぎは肥満の原因となりますが、不足するとエネルギー不足による疲労感が見られ、集中力が落ちてしまう恐れがあるので適度に摂取しましょう。
一方、炭水化物のうちヒトの消化酵素で消化することができないものを食物繊維といいます。
エネルギーにはほとんどなりませんが、おなかの調子を整えたり脂質や糖質、塩分を体外に排出したりするはたらきがあり、便秘や肥満の予防・改善効果があるといわれています。
2-3.脂質
脂質は細胞膜の構成成分であり、炭水化物と同じくエネルギー産生栄養素の一つです。
筋トレで体を動かすのに必要なエネルギー源になります。
それだけではなく、筋肉に必要な脂溶性ビタミンの吸収を助けるために必要な栄養素です。
2-4.ビタミン
ビタミンは、糖質、脂質、たんぱく質の代謝を助け、人の体の機能を正常に保つために必要な栄養素であり、人の体内では生成することができません。
ビタミンには数多くの種類がありますが、それぞれに異なるはたらきを持ち、「水溶性ビタミン」と呼ばれる群と「脂溶性ビタミン」と呼ばれる群に分けられます。
【ビタミンの種類とはたらき】
水溶性ビタミン
ビタミン | 代表的なはたらき |
---|---|
ビタミンB1 | 糖質の代謝などに関わる |
ビタミンB2 | 糖質、たんぱく質、脂質の代謝に関わる |
ナイアシン | 体内の酸化・還元作用に関わる 皮膚や粘膜の健康維持を助ける |
ビタミンB6 | たんぱく質の代謝に関わる |
ビタミンB12 | 核酸の合成などに関わる 赤血球の形成を助ける |
葉酸 | たんぱく質の代謝や赤血球の生成、核酸の合成などに関わる |
パントテン酸 | 糖質、脂質、たんぱく質の代謝に関わる コレステロールや免疫抗体などの生成に関わる |
ビオチン | 脂質の代謝などに関わる 皮膚や神経組織、甲状腺などの機能を正常に保つ |
ビタミンC | 抗酸化作用を持つ 皮膚や粘膜の健康維持を助ける |
脂溶性ビタミン
ビタミン | 代表的なはたらき |
---|---|
ビタミンA | 網膜で光を感知する物質を構成する 成長の促進、皮膚粘膜の形成を行う |
ビタミンD | カルシウムの吸収、骨形成の促進を行う ホルモン分泌や免疫の調節を行う |
ビタミンE | 抗酸化作用を持つ 細胞の健康維持を助ける |
ビタミンK | 血液凝固に必要な物質の生成に関わる 骨形成の促進を行う |
ビタミンB群についてはこちら
水溶性ビタミンは体内のさまざまな代謝に関わっています。
特にビタミンB群は、筋肉を動かすために必要なエネルギーをつくるサポートをし、筋肉の材料となるたんぱく質を代謝するはたらきがあります。
高齢女性を対象とした調査により、血液中のビタミンC濃度が高いと、筋力や身体能力が高いことを明らかになっています[4]。
また、ビタミンCを合成できないマウスを用いた研究の結果、ビタミンCの不足期間が長くなるにつれ、筋肉が萎縮して減少し、身体能力も低下することが分かりました[4]。
筋力や身体能力の維持・向上には、ビタミンCの摂取が重要なのですね。
一方で、ビタミンAやビタミンDなどの脂溶性ビタミンは体のはたらきを正常にしています。
特にビタミンDは、海外の研究により血中のビタミンD濃度が低いほど筋力および筋肉の量が減少しやすいと報告されています [5]。
筋トレで体を動かすためにもビタミンは欠かせない栄養素ですね。
[5] Marjolein Visser, et al.「Low vitamin D and High Parathyroid Hormone Levels as Determinants of Loss of Muscle Strength and Muscle Mass (Sarcopenia): The Longitudinal Aging Study Amsterdam(『J Clin Endocrinol Metab』88(12):5766-72, 2013)」
2-5.ミネラル
ミネラルは、体を構成する主要な元素(酸素、炭素、水素、窒素)を除いた元素の総称であり、多くの種類が存在します。
そのうち人の体に存在し栄養素として必要であることが分かっている「必須ミネラル」は16種類です[6]。
ミネラルには人間の歯や骨をつくったり臓器や細胞の活動をサポートしたりするはたらきがあり、生きていく上で欠かせません。
ミネラルに関する詳しい情報はこちら
なかでもマグネシウムは筋肉の動きに関与しており、不足すると筋肉の痙攣(けいれん)が起こります。
また、カリウムも、筋肉が正常に機能するのに必要な栄養素です。
ミネラルもビタミンと同様に体内で生成できない上、汗をかくとミネラルは汗と一緒に排出されてしまうので、筋トレする際に摂取しておきたいものです。
[6] 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識」
3.筋トレの効果を高める食事のポイント
「いろんな栄養素が必要なのは分かったけど、どんな食事を摂ればいいんだろう?」
と疑問に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
筋トレの効果を高めるためにはさまざまな栄養素を摂ることが大切です。
では、具体的に筋トレの効果を高める食事のポイントをお伝えしていきましょう。
ポイント1 栄養バランスを意識する
さまざまな栄養素を摂るために、栄養バランスを意識した食事をすることが大切です。
栄養バランスを整えるためには、糖質を摂取できるごはんなどの主食、肉や魚などのたんぱく質がメインとなる主菜、野菜やきのこ、海藻などのビタミン・ミネラルが摂れる副菜をそろえた食事を摂ることがおすすめです。
そのため、食事内容は単品にするのではなく複数の料理を組み合わせて摂ると良いでしょう。
厚生労働省と農林水産省が共同で策定した食事バランスガイドは、1日の食事バランスを整えるポイントが紹介されています。量や食材などがイラストで分かりやすく提示されているので、参考にしてみてくださいね。
ポイント2 たんぱく質を十分に摂る
筋肉を増やすためには、筋肉のもととなるたんぱく質を十分に摂る必要があります。
厚生労働省では「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で、1日のたんぱく質の目標量を以下のように定めています。
【たんぱく質の1日当たりの目標量(g/日)】
男性
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
---|---|---|---|
18歳〜29歳 | 75~115 | 86~133 | 99~153 |
30歳〜49歳 | 75~115 | 88~135 | 99~153 |
50歳〜64歳 | 77~110 | 91~130 | 103~148 |
65歳〜74歳 | 77~103 | 90~120 | 103~138 |
75歳以上 | 68~90 | 79~105 | - |
女性
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
---|---|---|---|
18歳〜29歳 | 57~88 | 65~100 | 75~115 |
30歳〜49歳 | 57~88 | 67~103 | 76~118 |
50歳〜64歳 | 58~83 | 68~98 | 79~113 |
65歳〜74歳 | 58~78 | 69~93 | 79~105 |
75歳以上 | 53~70 | 62~83 | - |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
筋トレをすると多くの場合は身体活動レベルが「Ⅲ(高い)」に該当するので、表を参考にしてたんぱく質を摂取することがおすすめです。
また、一般的に筋トレや運動を行っている人は体重1kg当たり2g必要であるともいわれています。
特に、たんぱく質が多く含まれていて利用率の高い良質なたんぱく質が摂取できる食品を選ぶようにしましょう。
以下に良質なたんぱく質を含む代表的な食品とそのたんぱく質含有量をご紹介します。
【良質なたんぱく質を含む代表的な食品と可食部100g当たりのたんぱく質 含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
くろまぐろ(赤身) | 生 | 26.4g |
ささみ | 生 | 23.9g |
鶏むね肉 | 生、皮なし | 23.3g |
豚ロース(赤肉) | 生 | 22.7g |
豚ヒレ(赤肉) | 生 | 22.2g |
牛サーロイン | 生 | 22.0g |
ローストビーフ | - | 21.7g |
牛もも肉(赤肉) | 生 | 21.2g |
鶏もも肉 | 皮なし、生 | 19.0g |
納豆 | - | 16.5g |
焼き豆腐 | - | 7.8g |
肉類にはたんぱく質とともに脂質が多く含まれているものがあります。
脂質を摂り過ぎないよう、脂身のない部位を選んだり調理法を工夫したりするようにしましょう。
またいわゆる「プロテイン(サプリメント)」と呼ばれるたんぱく質摂取量を手軽に増やせる商品を活用するのも良いかもしれませんね。
効率よく摂取できる食品やプロテインに関して
ポイント3 糖質や脂質を摂り過ぎない
引き締まった体をつくりたいという方は特に、糖質や脂質を摂りすぎないように注意することが必要です。
糖質や脂質を摂り過ぎてエネルギー源として消費できなかった場合は、中性脂肪として体内に蓄積され、肥満につながる恐れがあります。
できるだけ摂取するエネルギーが消費エネルギーを超えないように、食事の内容を工夫すると良いでしょう。
厚生労働省では「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で、1日の推定エネルギー必要量を以下のように定めています。
【1日当たりの推定エネルギー必要量(kcal/日)】
男性
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
---|---|---|---|
18歳〜29歳 | 2,300 | 2,650 | 3,050 |
30歳〜49歳 | 2,300 | 2,700 | 3,050 |
50歳〜64歳 | 2,200 | 2,600 | 2,950 |
65歳〜74歳 | 2,050 | 2,400 | 2,750 |
75歳以上 | 1,800 | 2,100 | - |
女性
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
---|---|---|---|
18歳〜29歳 | 1,700 | 2,000 | 2,300 |
30歳〜49歳 | 1,750 | 2,050 | 2,350 |
50歳〜64歳 | 1,650 | 1,950 | 2,250 |
65歳〜74歳 | 1,550 | 1,850 | 2,100 |
75歳以上 | 1,400 | 1,650 | - |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
たんぱく質と同様に、筋トレする場合は身体活動レベルが「Ⅲ(高い)」に該当する可能性が高いため、全体のエネルギー量は「Ⅲ(高い)」に該当する数値を参考にすると良いでしょう。
そのうち炭水化物は全体のエネルギーの50%〜65%、脂質は全体のエネルギーの20%〜30%のバランスにすることがおすすめです[7]。
[7] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント4 ビタミンやミネラルを十分に摂る
ビタミンやミネラルは筋肉を動かすために必要なエネルギーをつくるサポートをしたり、筋肉を収縮させたりするはたらきをしているため、十分に摂る必要があります。
筋トレ中は、特にエネルギーをつくるサポートをするビタミンB群と筋力や筋量に関与するビタミンDといったビタミンが重要になるでしょう。
ビタミンB群は以下のような食品群に多く含まれています。
【ビタミンB群とそれぞれを多く含む食品】
ビタミンB1……豚肉、穀類など
ビタミンB2……レバー、ハツなど
ビタミンB6……にんにくや肉類、魚類など
ビタミンB12……貝類や魚卵、レバーなど
ナイアシン……魚類、肉類など
パントテン酸……レバーやハツなど
葉酸……のりやレバーなど
ビオチン……レバーや落花生など
またビタミンDはきのこ類、魚介類、卵類、乳類の食品に豊富です。
またミネラルでは、筋肉の動きに関わるマグネシウムや筋肉の機能を維持するはたらきのあるカリウムが特に重要です。
マグネシウムは藻類、魚介類、穀類、野菜類、豆類などに多く含まれています。
また、カリウムは生鮮食品に多く、藻類、果実類、芋類(でん粉類)、豆類、肉類、魚介類、野菜類などに多く含まれています。
特にカリウムは加工食品だと含有量が減るため、できるだけ加工食品は避けると良いでしょう。
副菜を含む食事内容にして、ビタミンやミネラルを摂取していきたいですね。
マグネシウムやカリウムに関する関連記事
4.筋トレにおすすめの食事のタイミング
「筋トレの効果を高めるためにおすすめの食事のタイミングはあるの?」
このように気になる方もいらっしゃるかもしれません。
食事のタイミングによって筋トレが逆効果になる可能性があるので、ポイントを押さえておきたいですね。
そこで、筋トレにおすすめの食事のタイミングを紹介します。
4-1.筋トレの数時間前に食事をする
食事は筋トレの数時間前にしておくのがおすすめです。
空腹状態になるとエネルギー源が不足します。
さらに、その状態が続くと筋肉のたんぱく質が分解されエネルギー源として利用されてしまう恐れがあります。
筋肉を動かすためにもエネルギー源は必要なので、おなかがすいた状態で筋トレをすることは避けると良いでしょう。
ただし食べてすぐの運動も禁物です。
食後は食べ物の消化で胃腸が活発にはたらくため、多くの血液や酸素を必要とします。
ところが、食後すぐに激しい運動をすると血液が筋肉や肺に流れ、胃腸への血液が不足して消化の機能が弱まってしまうのです。
腹痛や吐き気を催す恐れがあるので、食後すぐの筋トレは避けた方が良いといえるでしょう。
多くの食べ物の消化時間はおよそ数時間といわれているため、食事は筋トレの数時間前に済ませておくのがおすすめです。
ただし、脂質の多い食品は消化時間が長いので筋トレ前には控えましょう。
4-2.夜遅い食事は控える
夜間の食事はせっかくの筋トレの効果を小さくしてしまう可能性があるので注意が必要です。
夜に増加する「BMAL1」という遺伝子は、脂肪の合成を促進することが明らかになっています[8]。
そのため、夜遅い時間の食事による栄養摂取は脂肪になりやすいと考えられます。
多くの人は夜になると活動量が減るので、夜遅い時間の食事は控え遅い時間になる場合はエネルギー量を抑えた食事内容にすると良いでしょう。
[8] 西野喜美子他「夕食を分割摂取することが肥満による代謝異常に及ぼす多面的効果」(『日本糖尿病学会誌』第56巻第11号 833-840)
5.筋トレと食事の関係についてのまとめ
筋肉をつくるにはたんぱく質はもちろん糖質や脂質、ビタミン、ミネラルを摂ることが不可欠です。
たんぱく質は筋肉の材料となり、糖質や脂質は体を動かすエネルギー源となります。
またビタミンB群はエネルギー産生栄養素の代謝に関わり、ビタミンDは筋肉の量や力強さに関わるとされています。
ミネラルのなかでもマグネシウムは筋肉の動きに関わっており、カリウムは筋肉の正常な機能を保ってくれます。
栄養素はそれぞれに助け合ってはたらくため、特定の栄養素を摂れば良いというものではなく、バランスの取れた食事を摂ることが重要だといえるでしょう。
またせっかくの筋トレが無駄になってしまわないよう、摂取カロリーや糖質・脂質の摂取量に注意することも大切です。
食事が体に与える影響はタイミングによっても異なるので、時間も考慮して規則正しい食生活を心掛けましょう」。
この記事でお伝えした内容を参考にして、食事でより筋トレの効果を高めてくださいね。