「成人男性の適切な摂取カロリーはどれくらいなんだろう?」
カロリーについて気になっているけれど 、適切な摂取カロリーやカロリーそのものについてはよく分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
適切な摂取カロリーは体格や年齢によって異なります。
この記事では1日の摂取カロリーの目安やカロリーについての基礎知識について知ることができます。
男性に多い内臓脂肪肥満についても解説するので、ぜひ最後までお読みくださいね。
1.成人男性の摂取カロリーの目安
「自分に必要な摂取カロリーってどれくらいなんだろう?」
自分に合った摂取カロリーを知らないという方は多いかもしれませんね。
消費カロリーはどれだけ体を動かすかによって異なるため、摂取カロリーの目安を決めるにはまず、ご自身の「身体活動レベル」を把握しておきましょう。
以下の表で、ご自身の身体活動レベルを確認してくださいね。
身体活動レベル | 日常生活の内容 |
---|---|
低い(Ⅰ) | 生活の大部分を座って過ごす |
普通(Ⅱ) | 座って過ごすことが多いが、仕事などで立ったり歩いたりする場合、通勤や買い物などで歩く場合、家事や軽いスポーツを行う |
高い(Ⅲ) | 立ったり歩いたりすることが多い仕事に就いている場合、余暇に活発に運動する習慣がある |
厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」をもとに執筆者作成
この章では標準的な体格の人、現在の体重を維持したい人、目標の体重まで減量・増量したい人、それぞれの摂取カロリーの目安をお伝えします。
1-1.標準的な体格の場合
まずは標準的な体格の場合の推定必要カロリー(推定エネルギー必要量)を紹介します。
厚生労働省は、以下のとおり各年代の推定必要カロリーを発表しています。
年齢 | 身体活動レベル | ||
---|---|---|---|
低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) | |
18〜29歳 | |||
30〜49歳 | |||
50〜64歳 | |||
65〜74歳 | |||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
なお、この推定必要カロリーは、以下の日本人として平均的な「参照体重」を元に計算されたものです。
年齢 | 体重 |
---|---|
18~29歳 | |
30~49歳 | |
50~64歳 | |
65~74歳 | |
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
この体重から大きく外れていない方は、前掲の推定必要カロリーを摂取していれば、健康的な体重を維持できると考えられるでしょう。
1-2.現在の体重を維持したい場合
前項の推定必要カロリーは標準的な体格の者を対象としているため、小柄な人では肥満につながったり、反対に大柄な人は十分なカロリーを摂取できず痩せたりしてしまう恐れがあります。
現在の体重を維持したい場合に必要なカロリーの目安は[現在の体重(kg)]×[体重1kg当たりの推定必要カロリー(kcal)]で求めることができます[1]。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、体重1kg当たりの推定必要カロリーを以下のように定めています。
体重1kg当たりの推定必要カロリーは以下の表のご自身の年齢、身体活動レベルに合った箇所を参照ください。
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
---|---|---|---|
18〜29歳 | |||
30〜49歳 | |||
50〜64歳 | |||
65〜74歳 | |||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
例として体重60kgで、通勤で歩く習慣がある20代男性が現在の体重を維持するための摂取カロリーを計算してみましょう。
通勤で歩く習慣があるということは、身体活動レベル「Ⅱ(普通)」に当たります。
18〜29歳の身体活動レベル「Ⅱ(普通)」の体重1kg当たりの推定必要カロリーは41.5kcalです。
これに体重の60kgを掛け合わせると、1日の推定必要カロリーは2,490kcalと導き出せます。
この男性が現在の体重を維持するには、毎日2,490kcalを目安に摂取カロリーを調整すれば良いということになります。
[1] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
1-3.目標体重を目指す場合
減量を目指す場合はまず目標体重を定め、その体重での推定必要カロリーを目安にしましょう。
これは[目標体重(kg)]×[体重1kg当たりの推定必要カロリー(kcal)]で求めることができます[2]。
この際、目標体重は標準体重やBMIを参照し無理のないものにしましょう。
肥満の判定基準は国によって異なりますが、国内では以下の基準が用いられています。
BMI | 判定 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
18.5未満 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
18.5以上25.0未満 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
25.0以上30.0未満 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
30.0以上35.0未満 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
35.0以上40.0未満 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
40.0以上 |
性別 | 男性 | ||
---|---|---|---|
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
18〜29歳 | |||
30〜49歳 | |||
50〜64歳 | |||
65〜74歳 | |||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
身体活動レベルがⅡ(普通)に該当する30代の男性であれば、64.58×39.3=2,537kcal(小数第一位で四捨五入)となりますね。
[2] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「BMI」
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」
2.カロリー(エネルギー)とは
「実はカロリーってなんなのかよく知らないな……」
なんとなく使う言葉ではあるものの、カロリーがどんなものであるか疑問に思われている方も多いかもしれませんね。
ヒトが1日に消費するカロリー(エネルギー)は基礎代謝と食事誘発性熱産生、身体活動に分けられます。
基礎代謝は呼吸や心拍、体温の維持など生命を保つのに消費される必要最低限のエネルギー量で、食事誘発性熱産生は食後に栄養素を分解する過程で起こるエネルギー消費のことです。
また身体活動は安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する全ての動作を指します。
基礎代謝は総消費カロリー(総エネルギー消費量)の約60%を占め、食事誘発性熱産生が約10%、身体活動量が約30%を占めています[6]。
このようにカロリーはヒトの生命活動を維持するために使われるため、適切な量を食事から摂取しなければなりません。
この章ではヒトの生命活動に必要なカロリーになる栄養素とそれらの適切なバランスについてご紹介します。
[5] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[6] 厚生労働省 e-ヘルスネット「身体活動とエネルギー代謝」
2-1.カロリー(エネルギー)になる3種の栄養素
エネルギー(カロリー)源になる栄養素には炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質の3種類があります。
これらはエネルギーを生み出す栄養素であることから、「エネルギー産生栄養素」と呼ばれており、以前は三大栄養素という呼称で知られていました。
エネルギー産生栄養素はそれぞれに異なるはたらきを有しています。
炭水化物(糖質)はエネルギー産生栄養素のなかでも主要なエネルギー源となる栄養素です。
エネルギー源となる糖質と、ヒトの消化酵素では消化できないためにほとんどエネルギー源にならない食物繊維に分けられます。
炭水化物のエネルギーはほぼ糖質に由来するものだといえます。
また糖質のなかでもブドウ糖は、特別な場合を除き脳のエネルギー源となる唯一の物質です。
たんぱく質はエネルギー源となる他、筋肉や臓器、皮膚、髪の毛といった体の組織の材料となります。
またホルモンや酵素、抗体といった体の機能を調節する物質の成分でもあります。
脂質はエネルギー源となる他に、細胞膜の材料となったり、ホルモンなどとしてはたらいたりしています。
このようにエネルギー産生栄養素はエネルギー源となるだけでなく、他にも重要なはたらきを果たしているのですね。
なお、炭水化物(糖質)とたんぱく質は1g当たり4kcal、脂質は1g当たり約9kcalのエネルギーを生み出します[7]。
[7] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-2.エネルギー産生栄養素バランス
エネルギー産生栄養素はそれぞれに異なるはたらきがあります。
健康のためには、摂取カロリーを適切に調節するだけでなく、エネルギー産生栄養素をバランス良く摂取することも重要です。
「エネルギー産生栄養素バランス」を意識するようにしましょう。
エネルギー産生栄養素バランスとは、各エネルギー産生栄養素が総摂取カロリー(総エネルギー摂取量)に対して占める比率の指標です。
厚生労働省は、総摂取カロリーに対し、各エネルギー産生栄養素から摂取するカロリーの割合が以下のとおりとなるよう、目標量を設定しています。
年齢 | 炭水化物 | たんぱく質 |
---|---|---|
18〜49歳 | ||
50〜64歳 | ||
65歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
エネルギー産生栄養素のバランスを保ちながら、摂取カロリーを調節し健康的な体づくりを目指しましょう。
3.成人男性に多い内臓脂肪型肥満に注意
「カロリーを摂り過ぎるとどんなことが起こるのかな?」
消費するカロリー以上のカロリーを摂ると肥満になります。
体脂肪は内臓脂肪と皮下脂肪に分けられます。
胃や腸などの内臓の周りにつく「内臓脂肪」が多い状態を内臓脂肪型肥満、皮膚と筋肉の間につく「皮下脂肪」が多い状態を「皮下脂肪型肥満」といいます。
男性に多いといわれているのは、内臓脂肪型肥満です。
内臓脂肪肥満型は生活習慣病を発症するリスクが高く、予防の心掛けが必要です。
この章では内臓脂肪やメタボついて詳しく解説し、内臓脂肪肥満の予防のポイントをご紹介します。
3-1.内臓脂肪とメタボの関係
「メタボって太ってるってことだよね……」
「内臓脂肪とメタボにはどんな関係があるんだろう?」
メタボとはメタボリックシンドロームの略称です。
よく耳にする言葉かもしれませんが、意味を詳しく知らないという方も多いかもしれませんね。
メタボリックシンドロームは単に太っている状態やおなか周りが大きい状態を指すわけではありません。
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積に加え、高血圧・高血糖・脂質代謝異常(血中脂質の異常)のうち二つ以上が重なった状態のことです[8]。
高血圧とは、心臓から押し出された血液が動脈の壁を押す圧力(血圧)が慢性的に高い状態のことです。
高血糖は血中のブドウ糖濃度が高い状態を指します。
脂質代謝異常は血中脂質が基準値から外れた状態で、メタボリックシンドロームの診断に関わるものには中性脂肪(トリグリセリド)とHDLコレステロール(善玉コレステロール)があります。
男性に多い内臓脂肪型肥満は、これらの高血圧や糖尿病、脂質異常症を引き起こしやすくするといわれています。
糖尿病は高血糖が慢性化した病気です。
詳しくは以下の記事で解説しています。
糖尿病を予防するには?食事や運動で気をつけたいポイントを紹介
脂質異常症は血中脂質が基準値から外れた状態です。
詳しくは以下の記事でご説明しています。
脂質異常症とは?発症の原因や健康への影響、改善のポイントも解説!
内臓脂肪型肥満や高血圧、高血糖、脂質異常症はいずれも「動脈硬化」を進行させる要因となります。
メタボリックシンドロームは、動脈硬化を進行させ、それによる病気のリスクを高める危険な状態だといえますね。
このため、内臓脂肪型肥満や、メタボリックシンドロームは予防・改善が重視されています。
メタボリックシンドロームについて詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
メタボリックシンドロームとは?診断基準や原因、改善のポイント
厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」によると内臓脂肪型肥満の疑いがある「上半身肥満」に該当する人は年齢が上がるごとに増えています。
年齢 | 割合 |
---|---|
20〜29歳 | |
30〜39歳 | |
40〜49歳 | |
50〜59歳 | |
60〜69歳 | |
70歳以上 |
厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」をもとに執筆者作成
60代以上では割合が減少していますが、これは高齢になり食欲が低下することも関係していると考えられます。
内臓脂肪型肥満は健康上の大きなリスクになり得るため、早めの改善が勧められます。
内臓脂肪については以下の記事でさらに詳しく解説しています。
内臓脂肪とは?健康への影響や皮下脂肪との違い、落とし方を徹底解説
[8] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
3-2.内臓脂肪型肥満予防のポイント
肥満は摂取カロリー(エネルギー摂取量)が消費カロリー(エネルギー消費量)を上回り続けることで起こります。
従って肥満の改善には食事で摂取するカロリー(エネルギー)を減らすことと、運動で消費するカロリーを増やすことが重要です。
内臓脂肪を1kg減少させるには消費カロリーと摂取カロリーの差が約7,000kcal必要だといわれています[9]。
例えば1日当たりのエネルギー収支が200kcal減っても、1kg減量するまでに1カ月以上かかるということです。
このためダイエットには長期的に取り組むことが重要となります。
また、健康的に減量を続けるためカロリー制限だけでなく、運動によるカロリー消費も行いましょう。
健康的に内臓脂肪を減らす方法について詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
内臓脂肪を減らすには?効果的な食事の摂り方と運動方法を紹介!
[9] 厚生労働省「健康づくりのための運動指針 2006」
4.成人男性の摂取カロリーについてのまとめ
適切な摂取カロリーは、体格や身体活動量などによって異なります。
標準的な体格の方は、厚生労働省が公開している各年代・身体活動レベルごとの1日の推定必要カロリー(推定エネルギー必要量)を参照しましょう。
ただしこれは参照体重を元に算出されているため、体重が平均から外れている方では体重の増加や減少の原因となってしまいます。
その場合、体重1kg当たりの推定必要カロリーを用いて自分に合った摂取カロリーを求めましょう。
現在の体重を維持したい方は現在の体重と、目指したい体重がある方は目標体重と、体重1kg当たりの推定必要カロリーを掛け合わせることで求められます。
なお、カロリーは本来、ヒトが食べ物から摂取し、生命維持や身体活動に消費するエネルギーの量を表す単位です。
エネルギー源(カロリー)になる栄養素には炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質の3種類があります。
健康のためには摂取カロリーだけでなく、これらのバランスも意識することが重要です。
成人男性には、生活習慣病のリスクが高い内臓脂肪型肥満が多く見られるといわれています。
またメタボリックシンドロームは内臓脂肪型肥満に他の要素が組み合わさることで、動脈硬化進行のリスクが高まった状態です。
内臓脂肪型肥満やメタボリックシンドロームを予防するためには、食事と運動で摂取カロリーと消費カロリーのバランスを取ることが重要です。
この記事を参考に、まずは適切な摂取カロリーを把握するところから始めてくださいね。
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