「たんぱく質を摂取するにはどんなものを食べたら良いんだろう?」
健康を維持したり筋トレの効果を十分得たりするためにはたんぱく質の摂取が重要だと理解していても、どんなものを食べたら良いのか分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はたんぱく質と一口にいっても、その摂取源によって体内での利用効率も異なります。
たんぱく質は「良質なたんぱく質」と呼ばれる食品から摂取することが勧められます。
この記事では良質なたんぱく質とはどのようなものなのか、たんぱく質はどんな食べ物に豊富に含まれているのか、たんぱく質の摂取量に過不足があった際にはどんな影響があるのかを解説します。
またたんぱく質の適切な摂取量と摂取する際のポイントも紹介します。
効率良くたんぱく質を摂取したいと考えている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
1.「良質なたんぱく質」を選ぼう
たんぱく質を多く含む食品を選ぶ際には、たんぱく質の含有量だけでなく、そのたんぱく質の「質」、つまり体内での利用効率の高さを意識することがおすすめです。
そもそも、たんぱく質は20種類のアミノ酸によって構成されています[1]。
アミノ酸は食事からの摂取が必要な9種類の「必須アミノ酸」と、体内で合成可能な11種類の「非必須アミノ酸」に分けられます[1]。
たんぱく質のはたらきについては以下の記事で詳しく解説しています。
タンパク質とは?体内でのはたらきや食事摂取基準、豊富な食品を紹介
実は、食品に含まれるたんぱく質の体内での利用効率は、たんぱく質を構成するアミノ酸の組成によって異なります。
体内での利用効率が高いたんぱく質は「良質なたんぱく質」と呼ばれます。
食品中のたんぱく質に、必須アミノ酸がヒトの体にとって望ましい量に対しどれくらいの割合で含まれているかを示す指標を「アミノ酸スコア」といいます。
アミノ酸スコアは100を上限とし、その値が高いほど良質なたんぱく質であるとされます[2]。
卵や牛乳、牛肉、豚肉、鶏肉、魚類、大豆などはアミノ酸スコアが100で高く、理想的な食品とされています[2]。
アミノ酸スコアについては以下の記事で詳しく解説しています。
アミノ酸スコアとは?たんぱく質を効率良く吸収・利用するポイント
アミノ酸スコアが低い食品は体内での利用効率が下がるため、食品を選ぶ際はたんぱく質量だけでなく、アミノ酸スコアも重視するようにしましょう。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「アミノ酸」
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「良質なたんぱく質」
2.たんぱく質を豊富に含む食べ物
「どんな食べ物を食べたらたんぱく質を効率良く摂れるのかな?」
このようにたんぱく質の摂取源となる食べ物について気になっている方もいらっしゃるでしょう。
この章では肉類・魚類・卵類・乳製品・豆類・大豆製品のなかから、たんぱく質を豊富に含む食べ物をご紹介します。
たんぱく質含有量の他、アミノ酸スコアとカロリーも掲載しているので献立を考える際の参考にしてくださいね。
2-1.たんぱく質を豊富に含む肉類
肉類はたんぱく質を豊富に含みます。
たんぱく質を豊富に含む肉類は以下のとおりです。
食品名 | 加工状態など | たんぱく質含有量 | アミノ酸スコア | カロリー |
---|---|---|---|---|
くじら(赤肉) | ||||
鶏ささみ | ||||
鶏むね(皮なし) | ||||
豚ヒレ(赤肉) | ||||
ローストビーフ | ||||
牛ヒレ(脂身付き) | ||||
豚もも | ||||
豚レバー | ||||
牛リブロース (脂身付き) | ||||
馬肉(赤肉) | ||||
牛レバー | ||||
豚ロース (脂身付き) | ||||
牛肩肉 (脂身付き) | ||||
鶏もも(皮なし) | ||||
鶏レバー | ||||
豚肩肉 (脂身付き) | ||||
牛ランプ (脂身付き) | ||||
鶏砂肝 | ||||
鶏手羽元(皮付き) | ||||
牛肩ロース (脂身付き) |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」およびWHO「Protein and amino acid requirements in human nutrition」をもとに執筆者作成
肉類にはたんぱく質が豊富に含まれていますが、脂質が多い食品もあるため、摂取カロリーを抑えたい場合には注意しましょう。
脂質の摂取量を減らすためには、皮なしの鶏肉や脂肪の少ない部位、赤身肉を選んで食べるといった工夫をしましょう。
2-2.たんぱく質を豊富に含む魚類
魚類にもたんぱく質が豊富に含まれています。
たんぱく質を豊富に含む魚類は以下のとおりです。
食品名 | 加工状態など | たんぱく質含有量 | アミノ酸スコア | カロリー |
---|---|---|---|---|
くろまぐろ (天然、赤身) | ||||
びんなが | ||||
かつお(春獲り) | ||||
めばち(赤身) | ||||
かつお(秋獲り) | ||||
まかじき | ||||
塩ざけ (しろさけ) | ||||
ひらめ (養殖、皮付き) | ||||
みなみまぐろ (赤身) | ||||
くるまえび(養殖) | ||||
ぶり | ||||
まだい(養殖、皮付き) | ||||
さば(水煮缶詰) | ||||
いわし(水煮缶詰) | ||||
まさば | ||||
たらばがに(水煮缶詰) | ||||
まあじ(皮付き) | ||||
まがれい | ||||
バナメイえび (養殖) |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」およびWHO「Protein and amino acid requirements in human nutrition」をもとに執筆者作成
魚類には必須アミノ酸が豊富に含まれています。
また同時に脂質も含まれていますが、青魚などには「DHA」や「EPA」といった不飽和脂肪酸が含まれています。
不飽和脂肪酸は血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させる作用に加え、脂質異常症や高血圧、動脈硬化などの生活習慣病の予防に役立つはたらきがあります。
現代の日本人は魚離れが進んでいる傾向にあります。
生活習慣病を予防するためにも積極的に魚を食べるようにしましょう。
2-3.たんぱく質を豊富に含む卵類
卵類にもたんぱく質が豊富に含まれています。
たんぱく質を豊富に含む卵類は以下のとおりです。
食品名 | 加工状態など | たんぱく質含有量 | アミノ酸スコア | カロリー |
---|---|---|---|---|
鶏卵(卵黄) | ||||
鶏卵(ゆで卵) | ||||
鶏卵(全卵) | ||||
鶏卵(卵白) |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」およびWHO「Protein and amino acid requirements in human nutrition」をもとに執筆者作成
卵類は調理のバリエーションも豊富で手軽に摂りやすいため、たんぱく質の摂取源としておすすめです。
2-4.たんぱく質を豊富に含む乳製品
乳製品にもたんぱく質を豊富に含む食材はあります。
たんぱく質を豊富に含む乳製品は以下のとおりです。
食品名 | 加工状態など | たんぱく質含有量 | アミノ酸スコア | カロリー |
---|---|---|---|---|
パルメザンチーズ | ||||
エメンタールチーズ | ||||
ゴーダチーズ | ||||
チェダーチーズ | ||||
プロセスチーズ | ||||
カマンベールチーズ | ||||
モッツァレラチーズ |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」およびWHO「Protein and amino acid requirements in human nutrition」をもとに執筆者作成
チーズにはたんぱく質の他に脂質やビタミン、カルシウムなどさまざまな栄養素が含まれています。
種類によって味や用途が異なるので好みや料理に合わせてチーズを選び、食卓に取り入れてみましょう。
2-5.たんぱく質を豊富に含む豆類・大豆製品
豆類・大豆製品はたんぱく質を豊富に含む食品の一つです。
たんぱく質を豊富に含む豆類・大豆製品は以下のとおりです。
食品名 | 加工状態など | たんぱく質含有量 | アミノ酸スコア | カロリー |
---|---|---|---|---|
いり大豆(黄大豆) | ||||
きな粉(黄大豆、全粒大豆) | ||||
油揚げ | ||||
えんどう豆(塩豆) | ||||
湯葉 | ||||
グリンピース(揚げ豆) | ||||
ひきわり納豆 | ||||
納豆 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」およびWHO「Protein and amino acid requirements in human nutrition」をもとに執筆者作成
植物性たんぱく質は動物性たんぱく質と比べてアミノ酸スコアが低いものが多く見られます。
しかし、特に大豆はアミノ酸スコアが高くたんぱく質を豊富に含んでいます。
大豆製品には納豆や油揚げ、きな粉など日本人にとってなじみ深い食材が多いため、普段の食事にも取り入れやすいというメリットがありますね。
3.たんぱく質のはたらきと過不足による影響
「そもそもたんぱく質にはどんなはたらきがあるの?」
このような疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
たんぱく質は私たちが活動したり生命を維持したりするのに欠かせない栄養素の一つです。
ここではたんぱく質のはたらきと過不足によって表れる影響をご紹介します。
3-1.たんぱく質のはたらき
たんぱく質はヒトのエネルギー源となる重要な栄養素です。
たんぱく質は筋肉や臓器、皮膚、毛髪など体の組織の材料にもなります。
さらにホルモンや酵素、抗体などの体の機能を調節する成分としての役割を持っています。
このようにたんぱく質にはさまざまな重要なはたらきがあるため、生命を維持するのに欠かせない栄養素といえるでしょう。
3-2.たんぱく質の不足と過剰摂取による影響
「たんぱく質の過剰摂取や摂取不足は体にどんな影響があるんだろう?」
このような疑問を持っている方もいらっしゃるかもしれません。
たんぱく質は筋肉の材料となるため、不足すると筋肉量が減少してしまいます。
筋肉が減少すると体力や「基礎代謝」が低下し、消費カロリーが減少します。
基礎代謝が低下するとその分消費カロリーが減ってしまうため、太りやすい体になってしまいます。
またたんぱく質の摂取不足は高齢者のフレイルやサルコペニアを引き起こす恐れがあります。
またたんぱく質不足は、筋肉だけでなく毛髪や皮膚などにも大きな影響があります。
一方、たんぱく質を過剰に摂取した場合には腎臓のはたらきが低下すると考えられていますが、摂取量の上限については設定されていません。
たんぱく質の不足による影響は以下の記事で詳しく解説しています。
タンパク質が不足するとどうなる?1日に摂取すべき量や摂取源も紹介
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「サルコペニア」
4.たんぱく質の適切な摂取量
「たんぱく質は1日にどれくらい摂れば良いのかな?」
たんぱく質の摂取量についてこのように疑問を持っている方もいらっしゃるでしょう。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1歳以上のたんぱく質の摂取量について「推定平均必要量」「推奨量」「目標量」が設定されています。
たんぱく質の目標量はグラムではなく、1日の総摂取カロリーのうちたんぱく質が占めるカロリーの割合(%エネルギー)で設定されています[4]。
また生後0~11カ月の乳児には、一定の栄養状態を維持するのに十分な量とされる「目安量」が定められています[4]。
たんぱく質の食事摂取基準は以下のとおりです。
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年齢など | 推定平均必要量(g) | 推奨量(g) | 目安量(g) | 目標量 (%エネルギー) | 推定平均必要量(g) | 推奨量(g) | 目安量(g) | 目標量 (%エネルギー) |
0~5カ月 | ||||||||
6~8カ月 | ||||||||
9~11カ月 | ||||||||
1~2歳 | ||||||||
3~5歳 | ||||||||
6~7歳 | ||||||||
8~9歳 | ||||||||
10~11歳 | ||||||||
12~14歳 | ||||||||
15~17歳 | ||||||||
18~29歳 | ||||||||
30~49歳 | ||||||||
50~64歳 | ||||||||
65~74歳 | ||||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
さらに妊婦や授乳婦には上記の摂取量に付加量が設定されています。
推定平均必要量 | 推奨量 | |
---|---|---|
妊婦 | ||
初期 | ||
中期 | ||
後期 | ||
授乳婦 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
65歳以上の高齢者の目標量はフレイルの予防を考慮して、他の年代よりも高い値が設定されています。
また一般的には、筋肉をつけたい成人や運動の習慣がある人は体重1kg当たり2gのたんぱく質摂取が必要であるといわれています[5]。
[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[5] 一般社団法人 日本プロテイン協会「誰でもわかるプロテインの基礎知識」
5.たんぱく質を摂取する際のポイント
「たんぱく質を摂取する際に注意すべきことはあるのかな?」
このように気になっている方もいらっしゃるでしょう。
ここからはたんぱく質を摂取する上で意識すべき三つのポイントをご紹介します。
ポイント1 一度に摂らず分けて摂取する
たんぱく質は1食でまとめて摂るのではなく、1日数回に分けて摂った方が良いといわれています。
これは、たんぱく質は摂った分だけ吸収されるというわけではなく、体内に蓄えておくこともできないためです。
たんぱく質を1日数回に分けて摂取することは、筋肉を維持するためにも重要です。
筋肉量を維持するには年齢に関係なく各食事で規定量以上のたんぱく質摂取量を満たすことが重要であると考えられます[6]。
また夕食でたんぱく質を摂取するよりも、朝食でたんぱく質を摂取した方が筋肉がつきやすいとされています。
ただし1食当たりのたんぱく質の吸収限界量を示す根拠がないため、1食当たりの摂取量の目安に関しては示されていません。
筋肉量を維持し続けるためにも、3食で偏りが出ないように各食事で規定量のたんぱく質を摂取しましょう。
[6] 独立行政法人 農畜産業振興機構「骨格筋量の維持・増加に向けたたんぱく質摂取の重要性」
ポイント2 他の栄養素もバランス良く摂取する
たんぱく質を摂取する際は他の栄養素もバランス良く摂取することが重要です。
例えば炭水化物が不足していると代わりにたんぱく質がエネルギーとして使われてしまい、体をつくるはたらきを十分に発揮できない恐れがあります。
またビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6は、たんぱく質の代謝に関わる「補酵素」としての役割があります。
ビタミンB1はたんぱく質の構成要素であるアミノ酸のうち、分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)の代謝に関わる補酵素です。
ビタミンB2は体内でエネルギー代謝に関わる補酵素としてはたらく栄養素です。
ビタミンB6は補酵素としてたんぱく質や脂質、炭水化物の代謝に関わり、その必要量はたんぱく質摂取量に応じて増加します。
ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6についてはそれぞれ以下の記事で詳しく解説しています。
ビタミンB1とは?作用や食事摂取基準、摂取源となる食品を紹介
ポイント3 適宜プロテインなどを活用する
たんぱく質を摂取する際には必要に応じて、適宜プロテインなどを活用するのも良いでしょう。
たんぱく質を豊富に含む食品には、同時に脂質や炭水化物が豊富に含まれている可能性が多くあります。
そのためエネルギーの摂り過ぎで肥満を招いたり、反対にたんぱく質の摂取量が不十分になったりすることがあります。
たんぱく質を摂取するためにはチキンやヨーグルト、ゆで卵などコンビニで手軽に購入できる商品を活用すると良いでしょう。
またたんぱく質を摂ろうとして栄養バランスが崩れてしまう場合には、プロテインを活用すると良いでしょう。
6.たんぱく質を豊富に含む食べ物についてのまとめ
たんぱく質を摂取する際は体内での利用効率を考慮し、良質なたんぱく質を摂取することが勧めらます。
肉類や魚類、卵類、乳製品、豆類・大豆製品には良質なたんぱく質が豊富に含まれています。
たんぱく質はエネルギー源となるほか、筋肉などの体をつくる材料となる他、体の機能を保つためにも欠かせない物質です。
そのためたんぱく質が不足すると筋肉量が低下に伴う体力の低下や、消費カロリーの減少、毛髪や皮膚にも悪影響が表れます。
一方でたんぱく質の過剰摂取は腎機能を低下させる恐れがあるとされています。
たんぱく質を摂取する際には1日数回に分けてたんぱく質を摂取したり、たんぱく質の摂取を助ける他の栄養素もバランス良く摂取したりすることが重要です。
またプロテインを活用することも効率良くたんぱく質を摂取するポイントの一つです。
良質なたんぱく質を過不足なく摂り、健康な毎日を過ごしてくださいね。