「疲労の原因にはどんなものがあるんだろう?」
「どうしたら疲れをとれるんだろう……」
忙しい毎日の中で疲れを感じ、このような疑問を持っている方も多いかもしれませんね。
疲労には、肉体的なものや精神的なもの、病気に伴うものなどがあります。
「単に疲れがたまっているだけだから」と放置せず、早めに対処することが重要です。
そこで、この記事では疲労を感じるメカニズムや疲労の種類などについて解説します。
疲労の解消法などについても紹介するため、ぜひ参考にしてみてくださいね。
1.疲労とは?
「最近疲れているかもしれないな……」
何となく体調が優れないときに、このように感じる方もいらっしゃるでしょう。
疲労感を自覚しながらも「疲れただけで大したことはない」と、特に対処しないことも多いですよね。
しかし、疲労を感じるということは、体からの大切なサインでもあるのです。
ここでは、疲労とは何なのか、その原因などについてご説明していきましょう。
1-1.疲労の定義
そもそも、疲労とは何なのでしょうか。
「疲れ」や「疲労」という言葉は身近ですが、よく考えてみると疲れがどのようなものなのか分からない、という方も多くいらっしゃるかもしれませんね。
疲れとは、心身の負担が大きく、活動能力が低下している状態のことをいいます。
肉体的なものだけでなく、「だるい」「休みたい」と思う精神的なものも疲労だと考えられるのですね。
疲労は「痛み」や「発熱」に並ぶ体からの危険信号だといわれています。
発熱などに比べるとあまり危機感のない疲労ですが、重要な生体システムの一つなのですね。
*1 一般社団法人 日本疲労学会「抗疲労臨床評価ガイドライン」
1-2.疲労の原因
疲労の原因は、運動することで筋肉中に増える「乳酸」であると考えられていました。
しかし近年この説は否定され、代わりに疲労の原因と考えられているのが自律神経のダメージです。
自律神経は互いに相反するはたらきをする「交感神経」と「副交感神経」に分けられ、体を活発に動かしたり緊張したりしているときには交感神経、体を休めているときやリラックスしているときには副交感神経が優位になります。
生体機能のコントロールを行う自律神経がダメージを受け、交感神経と副交感神経のバランスが崩れると「活性酸素」が過剰に作られることになるのです。
通常、ヒトの体内には活性酸素のはたらきから細胞を守る機能が備わっており、活性酸素を速やかに除去してくれます。
しかし、活性酸素の発生がこの処理能力を上回るような場合は、十分処理できなかった活性酸素により細胞が傷つけられることで疲労を感じてしまうとされています。
なお、疲労は脳で感じますが、疲労を感じるための信号を脳に送る役割を担っているのが「免疫細胞」です。
免疫細胞が細胞や器官が傷ついていることを見つけた際に放出する物質が脳や神経に届くと、だるさなどが生じ、疲れを感じるようになるのです。
しかし、好きなことをしていたり夢中になって作業をしたりしていると、あまり疲れを感じないこともありますよね。
意欲や集中力が高まっている場合には、疲労を感じず過剰に活動してしまうことがあります。
その結果、気付かないうちに疲労が蓄積し対処が遅れてしまうことも考えられます。
疲労を蓄積させないためには、疲労感の有無にかかわらず自分の生活状況などを振り返ることも大切なのかもしれませんね。
【関連情報】 「自律神経」についてもっと知りたい方はこちら
2.疲労の種類
体はあまり動かしていないのに何となく疲れた、と感じることもありますよね。
疲労には体の疲れだけではなく、精神・神経的な疲労や、病的な疲労などが存在します。
疲労にも種類がありますが、体の疲れでも精神的な疲れでも、原因は自律神経のダメージであるということに違いはありません。
ここでは、疲労の種類について詳しく解説していきましょう。
2-1.肉体的な疲労
体を動かすことで生じる肉体的疲労は「末梢性疲労」とも呼ばれます。
体を動かし続けることで筋肉に蓄えられたエネルギーが枯渇している状態が末梢性疲労です。
筋肉を使い過ぎることで、老廃物や過労物質が蓄積し筋肉の張りやだるさとして現れます。
また、使い過ぎて傷ついてしまった筋肉では炎症が起こり、筋肉痛を引き起こします。
2-2.精神的な疲労
精神的なストレスや緊張状態が続くことで感じる疲労は「中枢性疲労」です。
中枢性疲労は、視神経や脳の緊張状態から発生します。
人間関係のストレスや長時間のパソコン作業などにより疲れを感じることも多いですよね。
脳が活発にはたらくことで脳内での酸素消費量が増えると、それに伴い生体内で除去できないほどの活性酸素が発生してしまいます。
そのことにより細胞が傷つけられ、だるさなどとして疲れを感じるようになります。
2-3.病的な疲労
]肉体的な疲労や精神的な疲労は、休息や気分転換により回復させることができるため「生理的な疲労」であるといえます。
一方、休息を取っても回復しない「病的な疲労」もあります。
疲労感や倦怠(けんたい)感を伴う病気は非常にたくさんあります。
例えばがんでは、がん自体の影響によるものの他、抗がん治療の影響やがんに伴ううつ病や睡眠障害などの精神障害の症状として出現する場合もあります。
その他に疲労感を伴う病気としては、うつ病や睡眠障害、内分泌疾患、肝炎、AIDS、脳血管障害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などが挙げられ、症状や原因、病気の生じる部位はさまざまです。
病的な疲労の場合は、十分な休息を取っても疲労感を軽減することは難しく、病気の治療を優先させることになります。
3.疲労を回復させるためには?
「疲労回復のためには何をすれば良いんだろう?」
休息を取ることで回復が見込まれるのが疲労ですが、具体的にはどういった方法で解消すればよいのでしょうか。
ここでは、疲労を回復させる方法についてご説明します。
3-1.適度に体を動かす
適度な運動により血液循環を良くすることは疲労からの回復を促してくれます。
デスクワークや長時間同じ姿勢を続ける作業をしていると、血液循環が滞ってしまいます。
仕事中でも定期的に立ち上がって屈伸や足踏みをしたり、肩周りを動かしたりするなどしてみるのも良いかもしれませんね。
時間があれば散策やウォーキングなどもおすすめですが、体力を消耗するほど強い運動になってしまうと、かえって逆効果です。
気持ちも体もリラックスできるペースでの、軽めの運動が良いでしょう。
3-2.質の良い睡眠を十分に取る
疲労回復には、睡眠が大きく関係しています。
必要な睡眠時間は個人差があるため、自分に必要な睡眠時間を見極めることが大切です。
適切な睡眠時間の目安は、日中に眠気がないかどうかに注意してみると良いでしょう。
仕事など日中の活動に支障を来すほどの眠気がなければ、普段の睡眠時間としては足りているといえます。
仕事で忙しいなどの理由から睡眠時間を十分に確保できない方もいらっしゃるかもしれませんが、睡眠不足が続くと疲れが取れないのでしっかりと睡眠時間を確保するよう意識してみましょう。
また、時間だけではなく睡眠の「質」に注目することも重要です。
質の高い睡眠は心身の休息につながります。
睡眠は、脳を休ませて疲労を回復するという役割も担っているのです。
3-3.入浴する
忙しい、面倒くさいといった理由からシャワーを浴びるだけで済ませてしまっているという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
湯船にゆっくりつかることも疲労回復には効果的です。
入浴によるリラックス効果で副交感神経が優位になり、質の良い睡眠につながります。
スムーズな入眠のためには就寝の2~3時間前にぬるめのお湯にゆっくりつかることが理想的*2です。
*2 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
3-4.栄養バランスの取れた食事を摂る
「疲労回復に効果的な成分はあるのかな?」
このように気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
「クエン酸」など一般的に「疲労回復に良い」といわれている物質はさまざまにありますが、ヒトにおける明確な疲労回復効果は証明されていません。
まずは栄養バランスの取れた食事を摂ることが重要だと考えられます。
ヒトの体には、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルといった栄養素が不可欠です。
炭水化物・たんぱく質・脂質は体のエネルギー源となるためまとめて「エネルギー産生栄養素」といわれています。
またビタミンは代謝、ミネラルは体の組織の構成や機能の維持・調節に欠かせません。
特にビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6はエネルギー産生栄養素からエネルギーを作り出すはたらきに関わっているため、エネルギー産生栄養素とともに不足しないようしっかり摂取しておきましょう。
また疲れの原因は活性酸素によるダメージだといわれているため、抗酸化作用のある栄養素も積極的に摂っておきたいところです。
抗酸化作用のある物質の代表的なものとして、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEが挙げられます。
日ごろからしっかりと栄養素を摂るよう心掛けましょう。
【関連情報】 「疲労回復に食事が重要な理由」についてもっと知りたい方はこちら
4.疲労について まとめ
疲労は発熱や痛みと並んでヒトの体の危険信号です。
疲労の原因は活性酸素が細胞を傷つけることで免疫細胞が放出する物質が、脳に疲れを感じさせることだと分かっています。
疲労は肉体的な疲労、精神的な疲労、病的な疲労に分けられるといえます。
疲れを感じているときには心身を休め、病気に伴うものである場合には適切な治療を受けることが重要です。
疲れを取るためには休息を取る他に、適度に体を動かしたり、湯船にゆっくりつかったり、栄養バランスの取れた食事を摂ることも心掛けましょう。