「最近おなかを下しがちなんだけど、もしかしてストレスのせいかな?」
「おなかの調子を良くするためにはどうしたら良いんだろう?」
このようにお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ストレスは心身にさまざまな影響を及ぼすため、下痢につながってしまうこともあります。
この記事ではストレスと下痢の関係や、下痢を予防するためにはどうしたら良いのかを解説します。
1.ストレスで下痢が起こる理由
「下痢」とは一般的に水分が多く、液状かそれに近い状態の便をたびたび排せつする状態のことをいいます。
「ストレスを感じるとおなかを下す気がする……」
「どうして気持ちの問題が体調に出てしまうんだろう?」
このようにお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
脳の中には心をつかさどる領域と体の状態を調節する領域が存在し、互いに密接に関わり合っています。
そのため心理的なストレスを受けると体にも影響が及んでしまうことがあるのです。
ストレスによる症状にはさまざまなものがありますが、その一つとして下痢が生じる場合もあります。
ここでは、ストレスと下痢の関係についてご説明しましょう。
1-1.過敏性腸症候群
これといって原因がないにもかかわらず下痢や腹痛が長期間続いている場合、「過敏性腸症候群」という疾患の症状である可能性もあります。
過敏性腸症候群の場合、脳から腸に向かう信号と腸から脳に向かう信号がどちらも強くなることが分かっています。
過敏性腸症候群は約10人に1人患者がいるといわれるほどよくある病気で、命に関わるものではありませんが日常生活に支障を来す場合もあります[1]。
原因は不明ですがストレスや不安、緊張などの精神的な負担や疲労、睡眠不足などで症状が悪化するのが特徴の一つです。
過敏性腸症候群は、以下の3タイプに分けられ、突然おなかを下してしまう下痢型は特に若い男性に多いといわれています。
ストレスは脳から腸に向かう信号を強くし消化器運動に影響を与えるといわれており、不安状態になると腸の収縮運動が激しくなってしまいます。
腸の動きが激しくなると便が腸を通過する速度が高まり、便から水分を吸収できずに下痢を引き起こす場合があるのです。
このとき痛みを感じやすい状態になるのも過敏性腸症候群の特徴です。
[1] 日本消化器病学会「過敏性腸症候群(IBS)」
1-2.自律神経失調症
また自律神経のバランスが崩れて下痢が引き起こされている可能性もあります。
私たちの体の機能は通常、意思とは無関係にはたらく「自律神経」によって常にベストな状態に保たれています。
食後に胃のはたらきを活発にするなど、消化器をコントロールしているのも自律神経です。
自律神経は互いに相反するはたらきをする「交感神経」と「副交感神経」に分けられ、胃や腸においては交感神経が動きを遅くし、副交感神経が動きを速めるはたらきを担っています。
健康なときであれば交感神経と副交感神経がバランスを取り合ってうまく消化を進めてくれますが、自律神経のバランスが崩れることで胃腸のはたらきが活発になり過ぎてしまう場合があるのです。
このように自律神経のバランスが乱れ何らかの症状が現れている状態を「自律神経失調症」といいます。
自律神経のバランスを崩す直接的な原因を特定することは不可能ですが、ストレスや生活習慣の乱れが間接的に影響しているものと考えられます。
ストレスがかかったり生活習慣が乱れたりしている状態が長く続くと体が耐えきれず自律神経やホルモンのバランスが崩れ、不快な症状が現れてしまうのです。
またその症状がさらなるストレスとなって悪循環が生じてしまうこともあります。
過敏性腸症候群の原因が自律神経失調症にあることも考えられます。
おなかの調子が悪い状態が続いているという方は適宜医療機関を受診するようにしてくださいね。
2.下痢予防のために気を付けるべきポイント
下痢は「運動亢進性下痢」「分泌性下痢」「浸透圧性下痢」の3種類に分けられ、精神的ストレスによって引き起こされるのは主に運動亢進性下痢です。
運動亢進性下痢とは何らかの原因から腸管の運動が異常に活発になることで便が腸を通過するスピードが速まり、便から水分を吸収できなくなって生じる下痢のことです。
つまり、過剰になった腸管の運動を抑えることができれば下痢を防げると考えられるでしょう。
ここでは下痢を予防するために普段から気を付けておきたいポイントをご紹介します。
ポイント1 ストレスを軽減する
ストレスが原因だと思われる下痢は、ストレスを軽減することで防げるものと考えられます。
そうはいってもストレスのもととなっている仕事や人間関係などから離れるのはなかなか難しいですよね。
ストレスをため込み過ぎないよう、適度に発散するのが重要です。
親しい人と話したり趣味に没頭したり、自分に合ったストレス発散法を見つけましょう。
とにかくぐっすり眠ったり、こまめにストレッチをしたりと体をいたわることもポイントです。
ポイント2 規則正しい生活を送る
生活習慣の乱れは自律神経のバランスを崩し、おなかの調子を悪くしてしまう可能性があります。
規則正しい生活を送るよう心掛けましょう。
毎日決まった時間に寝起きし、食事の時間もできる限り一定にするのがポイントです。
生活リズムが整えば自律神経が安定し、お通じのリズムも整ってくるものと考えられます。
仕事などやむを得ない理由で不規則な生活になってしまっているという方も多くいらっしゃるかもしれませんが、できることから試してみてくださいね。
ポイント3 胃腸に負担をかける食べ物を避ける
ストレスがたまるとつい脂っこいものやお菓子をたくさん食べてしまう、という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
脂っぽい料理や糖分を多く含む食べ物は腸に負担をかけてしまうため、下痢のときには禁物です。
またカレーなど香辛料の効いた料理も避けておきたいところです。
香辛料は腸を刺激して運動を活発にさせる作用があるので、症状を悪化させてしまう可能性があります。
さらに下痢をしてしまっているときには食物繊維の多い食品も避けておきましょう。
おなかの調子に良い影響を与えるといわれる食物繊維ですが、下痢のときには腸の動きを活発にして症状を悪化させてしまう恐れがあるのでおすすめできません。
おなかの調子が悪いときは消化に良い以下のような食べ物を選ぶようにしましょう。
ゆっくりよく噛んで食べ、食べ過ぎないことも重要ですよ。
【関連情報】 「ストレス」についてもっと知りたい方はこちら
3.無理せず病院を受診しよう
下痢はストレスや暴飲暴食の他にも食当たりや食物アレルギーなどで起こる場合もあります。
激しい腹痛や発熱、嘔吐(おうと)を伴ったり、血便、水のような便が出たり場合する場合は細菌やウイルスなどによる感染性の症状かもしれません。
普段より激しくおなかを下している、他にひどい症状があるといった場合にはすぐに病院を受診しましょう。
また長く続く場合も要注意です。
慢性的に下痢が起こる場合、なんらかの病気が原因となっていることが考えられます。
腫瘍や炎症がないか、一度専門医で検査を受けるようにしましょう。
また腫瘍や炎症がないにもかかわらず下痢や腹痛、便秘などの症状が現れる場合には過敏性腸症候群などの病気も疑われます。
参考までに過敏性腸症候群の診断基準は以下のとおりです。
【過敏性腸症候群診断基準】
- 最近3ヵ月の間に、週に1日以上にわたってお腹の痛みが繰り返し起こり、その痛みが
- 下記の2項目以上の特徴を示す
1)排便に関連する
2)症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
3)症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)
検査によって大腸に腫瘍や炎症などの病気がないことが確認された上で、以上が当てはまる場合、過敏性腸症候群だと考えられます[2]。
気付かぬうちに病気にかかっている可能性もあるので自己判断せず、長く続く場合には医師に相談しましょう。
[2] 日本消化器病学会「過敏性腸症候群(IBS)」
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4.ストレスと下痢を改善する生活のコツについてのまとめ
心と体は相関関係にあります。
ストレスをため込み過ぎるとさまざまな症状が現れる可能性があり、下痢もそのうちの一つです。
ストレスがたまっているな、と感じるとき頻繁に下痢が起こるようであれば、過敏性腸症候群や自律神経失調症といった病気になってしまっている可能性もあるといえるでしょう。
ストレスで下痢が起こっているときは「運動亢進性下痢」といって腸の運動が激しくなり、便の移動速度が上がることで便の水分が吸収されないまま出てきている状態だと考えられます。
下痢予防のためには原因となっているストレスを適宜解消するだけでなく、規則正しい生活を送ることで自律神経のバランスを整え、腸に負担がかからないよう消化に良い食事を摂ることが重要です。
また他の症状が出たり、長く続いたりする場合には無理せず速やかに医療機関を受診するようにしましょう。