「足のむくみをどうにかしたい……」
「なんで足がむくんでしまうんだろう?」
足がむくんで靴がきつくなる、ふくらはぎが重くなるといった悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。
不快な足のむくみは、多くの場合日々のちょっとした工夫で対処や予防が可能です。
ただし生理や妊娠、出産などの女性特有の理由や、重大な病気が原因で足がむくむこともあり、その場合は自己判断せず、医療機関を受診する必要があります。
この記事では自分でできる足のむくみの対処法を紹介します。
また足がどのような原因でむくむのか、むくみはどうすれば予防できるかについても解説します。
むくみを解消し、足をすっきりさせるための参考にしてくださいね。
1.足のむくみの対処法
「つらい足のむくみを今すぐどうにかしたい……」
一刻も早く足のむくみを解消させたいと思う方は多いでしょう。
足のむくみの多くは、マッサージやストレッチなどの方法で和らげることができます。
この章では、自分で簡単にできる足のむくみの対処法を紹介します。
1-1.マッサージ
足のむくみを解消するにはマッサージが有効です。
マッサージをする際は心臓から最も遠い足先から始め、太ももに向けて行いましょう。
筋肉をもみほぐすというよりも、滞っている血液やリンパ液を流すイメージでマッサージをしてみてください。
乳液やクリーム、マッサージオイルを用いると滑りが良くなるのでおすすめですよ。
まずは足の指に反対の手の指をつなぐように絡ませて、足首を時計回りに20回、反時計回りに20回大きく回します。
そのまま足首を固定し、手前に向けて押して5秒、奥に向けて倒して5秒キープします。
足裏の土踏まず周辺をつぼ押しの要領でぐりぐりと押しましょう。
その後すねの足首付近に両手を当て、膝に向けて10回なで上げます。
ふくらはぎのくるぶし付近に両手を当て、膝裏に向けて10回しごき上げるようになでます。
さらに太ももまでマッサージしてみましょう。
膝の両側に両手を当て、太ももの表側を脚の付け根に向けて10回、引き上げるように動かします。
膝の裏側に両手を当て、太ももの裏側を脚の付け根に向けて10回、押し下げるように動かします。
片方の脚をマッサージしたら、反対の脚を同じようにマッサージしましょう。
1-2.ストレッチ
足のむくみの解消にはストレッチも有効です。
立った状態でも椅子に座った状態でもできるので、仕事や勉強の合間にも簡単に行えますよ。
立って行う場合は、爪先立ちになってかかとを上げ下げしましょう。
ふくらはぎの筋肉がポンプのはたらきをして血行が良くなるため、むくみが和らぎます。
椅子に座って行う場合は、まず座ったまま両足のかかとを床から離して上げ、戻して足の裏を床につけます。
次に両足の爪先を上げて、また戻して足の裏を床につけます。
この動作を10回程度繰り返しましょう。
デスクワークの方や、飛行機や新幹線などで長時間移動される方は試してみてくださいね。
他にも足首を回したり膝を曲げ伸ばしたりして、凝り固まった筋肉や関節を意識的にほぐし、血行を改善させましょう。
1-3.入浴
足のむくみを解消したい方は、シャワーだけでなく湯船にゆっくりつかることを心掛けましょう。
お風呂に入ってしっかり体を温めることで血行が良くなり、足のむくみの解消につながります。
またお湯の適度な圧力は足で滞った水分を流してくれます。
ただし、多忙や体調などの理由から湯船につかれないという方もいらっしゃるかもしれませんね。
その場合は、洗面器などで足湯をするだけでも効果がありますよ。
1-4.足を上げる
部屋で簡単に足のむくみを解消させたいなら、足を高く上げてみましょう。
重力の関係から、水分は体の下にある足にたまる傾向があります。
こうしてたまった水分は足のむくみにつながります。
そのため、足を上げることでむくみが改善される場合があるのです。
床に寝転んで椅子などに足を乗せる、ベッドに横になって壁に足を預けるなど、足の位置を心臓より高くすることを意識して上げてみましょう。
2.足のむくみの原因
むくみとは血管と細胞の間に水がたまってしまうことです。
血管から染み出す水分が増えたり、血管やリンパ管に吸収される水分が減ったりすると、血管と細胞の間の水分が増え過ぎてむくみが起こります。
なかでも体の下の方にある足は、重力によって水分がたまりやすいため、むくみが起こりやすい傾向にあります。
むくみが起こる原因は多種多様で、その多くは生活習慣や環境によるものです。
一方で、むくみは女性特有の理由や重大な病気によって起こることもあります。
この章では、足のむくみの原因にはどのようなものがあるのかを紹介します。
原因1 長時間の同じ姿勢
長時間同じ姿勢を続けると足がむくむことがあります。
これは長時間座りっ放しの場合も、立ちっ放しの場合も該当します。
理由は同じ姿勢のまま動かないことで血液の循環が悪くなり、血管から水分が多く染み出してたまってしまうことにあります。
この際、重力によって下に水分がたまるため、足がむくんでしまいます。
一方、歩いた場合は、足の筋肉がポンプの役割を果たし、血液が循環するためむくみにくい傾向にあります。
原因2 運動不足
運動不足による筋力の低下も足のむくみの原因になります。
足の筋肉は血液の循環を助けるポンプの役割を果たしているため、足の筋力が低下すると血液が足から戻りにくくなってしまうのです。
こうしてもともと重力によって水分がたまりがちな足が、よりむくみやすくなってしまいます。
原因3 体の冷え
体の冷えも足のむくみにつながります。
体が冷えると血行が悪くなり、血管から水分が染み出します。
この際、重力の関係から足に水分がたまりやすいため、足がむくんでしまいます。
また体が冷えると筋肉が硬くなり、血液の循環を助けるはたらきが弱くなります。
そのため体の冷えは足のむくみの原因となってしまうのですね。
原因4 水分の摂り過ぎ
水分の過剰摂取でも足がむくむことがあります。
水分を摂り過ぎると体内の水分量が増加します。
この際増えた水分が血管の外に染み出してしまい、むくみが起こってしまうのです。
原因5 塩分の摂り過ぎ
塩分の摂り過ぎもむくみの原因になります。
塩分を摂り過ぎると、体内の塩分濃度が高まります。
人間の体には体内の塩分濃度を一定に保とうとするはたらきがあり、塩分を摂り過ぎると薄めるために体内に水分をため込もうとします。
このはたらきによって体内の水分量が増加し、むくみにつながるのです。
原因6 女性ホルモンの変動
生理のある女性の場合、生理周期に伴う女性ホルモンの変動によって、足がむくむことがあります。
排卵期が終わると、「プロゲステロン(黄体ホルモン)」と呼ばれる女性ホルモンの分泌量が増加します。
プロゲステロンの体内に水分を蓄える作用によって、生理前の時期は足を含めた全身でむくみが起こりやすくなってしまうのです。
この時期のむくみは「月経前症候群(PMS)」の症状の一つとされています。
原因7 妊娠・出産
妊娠や出産を原因としてむくみが起こることもあります。
妊娠でおなかが大きくなると、下大静脈など脚の静脈を圧迫してしまいます。
そのため血行が悪化し、足がむくみやすくなるのです。
しかし全身のあちこちがむくむ場合は「周産期心筋症」による心不全を発症している可能性があります。
周産期心筋症は命に関わる場合もあるため、全身のむくみが続く場合は医療機関を受診しましょう。
また出産すると羊水が一気になくなる上に母乳をつくるための水分も必要になり、母体は水分不足の状態になります。
その際に体が水分を蓄えようとするため、むくみが起こってしまうことがあります。
原因8 下肢静脈瘤
下肢静脈瘤によって足がむくむ場合があります。
下肢静脈瘤は足の静脈がこぶ状に浮き出て見える疾患を指します。
下肢静脈瘤は静脈の逆流を防ぐ静脈弁が壊れてしまうことで起こり、これにより血液の循環が滞るため、むくみなどの症状が生じます。
下肢静脈瘤によるむくみは、多くの場合静脈瘤のできた片足のみに起こります。
原因9 深部静脈血栓症
?w=600&auto=compress,format
下肢静脈瘤よりも危険な足のむくみの原因に、「深部静脈血栓症」があります。
深部静脈血栓症は足の骨の近くや筋肉の中といった深い部分にある静脈に血栓ができ、詰まってしまう病気で、命に関わる肺塞栓症に直結します。
深部静脈血栓症およびそれによって引き起こされる肺塞栓症は狭い場所で長時間足を動かさず水分が欠乏した場合に起こりやすく、飛行機に長時間に乗った際などに発生するため、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれています。
また災害時の避難生活や車中泊などの際に深部静脈血栓症を発症したケースも報じられています。
深部静脈血栓症になった場合、急激にそちら側の足がむくんで腫れ上がり、痛みや違和感を覚えます。
原因10 その他の病気
心不全や腎臓病、肝硬変、甲状腺機能低下症、リンパ浮腫などによって足がむくむことがあります。
これらの病気が原因の場合は、足だけに限らず全身がむくんでしまうことがあります。
心不全は心臓が何らかの異常で必要な血液を送り出せなくなった状態で、血液が体内をうまく循環せずに滞るため、むくみが起こりやすくなります。
腎臓病には多くの種類がありますが、腎臓機能が大幅に低下する「腎不全」では腎臓が水分をうまく尿として排出できなくなり、体内に水分がたまってむくみやすくなります。
また腎臓で炎症が起こり、血液中の「アルブミン」が流出する「ネフローゼ症候群」でもむくみが起こります。
肝硬変は肝炎ウイルスやアルコール、食べ過ぎなどによる慢性肝疾患で、肝臓内に線維組織が広がって硬くなった状態のことです。
肝硬変になると肝臓でアルブミンがつくられにくくなるため、血液中の水分が血管の外に漏れてむくみが起こります。
また甲状腺機能低下症では体の新陳代謝を促進する甲状腺ホルモンの分泌機能が低下するため、体内の水分などの代謝が滞ってむくんでしまうことがあります。
その他に、がんの手術でリンパ管やリンパ節を切除した際や、放射線治療を行った際などに「リンパ浮腫(ふしゅ)」と呼ばれるむくみが起こることがあります。
リンパ管は全身に広がって体液を排出するはたらきがあるため、切除されるとリンパ液の流れが滞り、むくみにつながります。
これらの病気によるむくみの特徴は、何日も続いたり徐々にひどくなったりすることです。
むくみにこうした特徴が見られた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
また、薬の副作用でむくみが起こることがあります。
ロキソプロフェンやアセトアミノフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、血管を広げて血圧を下げるカルシウム拮抗(きっこう)薬、血圧を上げるホルモンに必要な物質(ACE)を阻害することで血圧を下げるACE阻害薬、細菌を壊したりその増殖を抑えたりする抗生剤、抗がん剤などでむくみが起こることが知られています。
薄毛治療で用いられるミノキシジルもむくみを引き起こします。
投薬治療を開始してむくみが起こった場合は、自己判断せず担当の医師に相談してください。
3.足のむくみの予防法
「足がむくまないようにするには、どうすれば良いのかな?」
足をむくませないための方法を知りたい方も多いでしょう。
足のむくみの多くは日々の生活習慣を見直すことで起こりにくくなります。
この章では、自分でできる簡単な足のむくみの予防法を紹介します。
できるものから無理せず取り組んで、足のむくみの予防に役立ててくださいね。
予防法1 適度に運動する
適度な運動は足のむくみを予防するためにとても重要です。
運動するとふくらはぎなどの筋肉が動いてポンプの役割を果たし、血行が良くなるため足がむくみにくくなります。
特に下肢に筋肉が付くとむくみが起こりにくくなるため、ウォーキングやジョギングなど足を使う運動がおすすめです。
忙しくてあまり運動できないという方は、階段を使ったり、できるだけ早足で歩いたりして極力足を動かすようにしましょう。
また足のむくみを解消させるためのストレッチは予防にも有効なので、普段から行うようにすると良いでしょう。
運動不足は足のむくみの原因の一つとなる下肢静脈瘤を引き起こす可能性があるため、十分注意してくださいね。
予防法2 体を冷やさない
足のむくみの予防には体を冷やさないことも重要です。
体が冷えると、血行が悪くなってむくみやすくなります。
そのため寒い季節は暖かく過ごすことを心掛けましょう。
足は特にむくみやすい部位なので、レッグウォーマーや厚手の靴下などでしっかり防寒対策しましょう。
暑い季節でも室内の冷房で体が冷えることがあるので、室温や服装に注意してくださいね。
予防法3 入浴の習慣を付ける
シャワーだけで済まさず、しっかり湯船につかる習慣を付けることも効果的です。
温かいお湯につかると血行が改善されるため、むくみの予防になります。
特に寒い季節や、冷房などで体が冷えたと感じた日はしっかり湯船につかって体を温めるようにしましょう。
忙しくて時間がない場合などでも、洗面器などで足湯をすることを心掛けましょう。
予防法4 負担のかかる靴や服を避ける
体に負担のかかる靴や服をできるだけ避けることも、足のむくみの予防には重要です。
ヒールの高い靴やサイズの合わない靴など、足に負担のかかる靴を履いていると足の血行が悪くなってしまいます。
また下着を中心に、ゆとりの少ない服や体を締め付ける服を着ることでも血行が妨げられ、むくみが起こることがあります。
自分の体にフィットした靴や服を身に着けることはむくみの予防につながります。
仕事などで負担のかかる靴や服を身に着けなければならない方は、空き時間にストレッチなどで体を動かしてみてくださいね。
予防法5 弾性ストッキングを着用する
足がむくみやすいと悩んでいる方には、弾性ストッキングの着用がおすすめです。
弾性ストッキングを着用すると、足首やふくらはぎに圧力がかかって血管やリンパ管が刺激されます。
そのため足にたまりやすい血液やリンパ液が巡りやすくなり、むくみが抑えられるのです。
また弾性ストッキングを日常的に着用することで、足のむくみの原因となる下肢静脈瘤を予防することもできます。
予防法6 塩分を控える
足のむくみを予防したい方は塩分(ナトリウム)を控えましょう。
塩分を摂り過ぎると、体内の塩分濃度を一定に保とうとするはたらきによって水分がため込まれます。
これが足のむくみの原因になります。
日本人は塩分を過剰摂取しがちだといわれています[2]。
足のむくみを予防するのであれば、塩分摂取量を減らしましょう。
特に塩分が極めて多い即席麺などは控え、食べるときもスープは飲まずに残すようにしましょう。
みそ汁や漬物、つくだ煮といったおなじみの和食も塩分量が多いため、食べる量や回数に注意が必要です。
また減塩表示がある調味料や食品を選択することも有効です。
塩分の摂り過ぎは⾼⾎圧やがんなどのリスクも高めてしまうため、減塩は足のむくみだけでなく健康全般のためにも重要といえるでしょう。
適切な塩分量や減塩のコツについては以下の記事で詳しく解説しています。
塩分の摂り過ぎには要注意!適切な摂取量と手軽にできる減塩のコツ
予防法7 カリウムを多めに摂取する
塩分を過剰摂取しがちな日本人が足のむくみを予防するには、カリウムの摂取がおすすめです。
カリウムはナトリウムの排出に関連するミネラルです。
しかし現在、日本人のカリウム摂取量は全ての年代の男女で目標量を下回っています[4][5]。
日々の食生活で塩分の摂取量を減らし、カリウムの摂取量を増やすことを目指してみましょう。
カリウムを多く含む食品には、バナナやキウイフルーツなどの果物、さつまいもやながいもなどの芋類、アボカドやほうれん草などの野菜、わかめや昆布などの海藻類があります。
また納豆や肉類、魚介類などにもカリウムは含まれています。
ただしカリウムは水溶性のため、ゆでたり水にさらしたりすることで流出してしまいます。
生のままで食べたり、煮汁ごと食べたりすることで無駄なくカリウムを摂取できるので、工夫して摂取しましょう。
カリウムについては以下の記事で詳しく解説しています。
4.足のむくみ まとめ
足のむくみはマッサージやエクササイズ、入浴や足を上げることなどによって対処できます。
むくみは皮膚と細胞の間に水がたまる現象で、重力の関係から体の下にある足は最もむくみやすいといえるでしょう。
むくみの多くは長時間の同じ姿勢や運動不足、体の冷え、水分・塩分の摂り過ぎなど生活習慣が原因です。
また生理周期や妊娠・出産といった女性特有の理由や病気が原因で足がむくむこともあります。
こうした足のむくみを予防するには、適度な運動や入浴、減塩やカリウムの摂取など、生活習慣の改善が有効です。
しかし何日もむくみが続いたりむくみがひどくなったりする場合は重大な病気の可能性があるため、医療機関を受診しましょう。