「むくみはなぜ起こるんだろう?」
「むくみにはどう対処したら良いのかな……」
脚や顔のむくみに悩まされた経験のある方は多いのではないでしょうか。
むくみは長時間の同じ姿勢や運動不足、体の冷え、水分・塩分の過剰摂取などさまざまな原因で起こります。
また女性ではホルモンの変動や妊娠・出産などによってむくみが起こることもあります。
こうしたむくみは一過性のもので、自分で予防や対処をすることができます。
しかし病気が原因でむくみが起こることもあるため注意が必要です。
この記事ではむくみの原因と、予防や対処のポイントを解説します。
また病気によって起こるむくみの種類と兆候もご紹介するので、参考にしてくださいね。
1.むくみとは
「むくみって何なんだろう?」
「どういう状態をむくみって呼ぶのかな……」
むくみとは、皮膚のすぐ下にある皮下組織に余分な水分がたまった状態のことです。
細胞と細胞の間には「細胞間質液」という液体があり、これが通常よりも多くなった状態がむくみです。
細胞間質液が増える原因としては、血管から染み出す水分が増えること、血管やリンパ管に吸収される水分が減ることが考えられます。
むくみは特に脚に起こりやすいといわれています。
これは重力の影響で水分が体の下の方にたまりやすいこと、心臓から遠く血液の流れが悪くなりやすいことが原因です。
一方、寝たきりの人は背中や顔などでむくみが起こりやすくなります。
むくみの多くは一過性のもので、一晩眠って治るようであれば特に心配する必要はありません。
しかし、むくみは病気によって起こることもあります。
むくみが徐々にひどくなる、何日もむくみが取れないといった場合は重大な疾患が原因の可能性があります。
また動悸(どうき)や息切れ、極端な体重の増減、尿量の減少、食欲不振、極度の疲労などの症状が併発している場合も要注意です。
こうした場合はただちに医療機関を受診するようにしてください。
[1] 一般社団法人脳神経疾患研究所 「むくみ」
2.一過性のむくみの原因
「むくみの原因はなんだろう?」
体がむくむ原因は生活習慣や食生活などにあります。
また、むくみは女性の体に生じる変化によって起こることもあります。
この章では一過性のむくみの原因を解説します。
日々の生活と照らし合わせ、むくみの原因を探ってみてくださいね。
2-1.長時間の同じ姿勢
長時間同じ姿勢を続けることで脚がむくむことがあります。
脚のむくみはデスクワークで座りっ放しの場合にも、長時間立ち仕事をしている場合にも起こる可能性があります。
これは同じ姿勢で動かずにいることで血液の循環が悪くなり、血管から水分が多く染み出してたまってしまうことによるものです。
この際重力によって体の下の方に水分がたまるため、脚にむくみが起こるのです。
ただし歩いている場合は脚の筋肉がポンプの役割を果たし、血液が循環するためあまりむくみません。
2-2.運動不足
運動不足に伴う筋力低下もむくみの原因になります。
特に脚の筋肉は血液の循環を助けるポンプの役割を果たしているため、筋力が低下すると血液が脚から戻りにくくなってしまいます。
脚はもともと重力によって水分がたまりやすい部位のため、血液をしっかり循環させられないことでよりむくみやすくなるのですね。
2-3.体の冷え
体が冷えるとむくみやすくなります。
体が冷えると血行が悪くなって血管から水分が染み出しやすくなり、むくみにつながります。
また体が冷えると筋肉が硬くなってしまい、血液の循環を助けるはたらきが弱くなります。
こちらもむくみの原因となります。
2-4.水分の摂り過ぎ
水分の過剰摂取でもむくみが起こることがあります。
水分を摂り過ぎると、体内の水分量が増加します。
この際増えた水分が血管の外に染み出してしまい、むくみが起こってしまうのです。
2-5.塩分の摂り過ぎ
塩分の過剰摂取もむくみの原因になります。
塩分を摂り過ぎると、一時的に体内の塩分濃度が高まります。
またヒトの体には体内の塩分濃度を一定に保とうとするはたらきがあります。
塩分を摂り過ぎて体内の塩分濃度が高まると、体は塩分を薄めるため、水分をため込もうとします。
このはたらきによって体内の水分量が増加し、むくみにつながるのです。
2-6.アルコール
アルコールの摂取によってむくみが起こることがあります。
アルコールの摂取により血中のアルコール濃度が上昇すると、血管が拡張します。
血管が拡張すると静脈やリンパ管などでの水分の処理が間に合わなくなるため、血管から染み出す水分が増えてむくみが起こるといわれています。
夜に飲酒してそのまま横になることで顔がむくみ、翌朝パンパンになるのですね。
2-7.女性ホルモンの変動
生理周期に伴う女性ホルモンの変動によってむくみが起こることがあります。
排卵期の後、女性の体内ではプロゲステロン(黄体ホルモン)と呼ばれる女性ホルモンの分泌量が増加します。
プロゲステロンには体内に水分を蓄える作用があるため、生理前の時期はむくみが起こりやすくなります。
この時期のむくみは「月経前症候群(PMS)」の症状の一つとされています。
PMSによるむくみのひどい方は、基礎体温をつけて自分の生理の周期を把握することである程度事前にタイミングを予測し、対処できますよ。
[2] 公益社団法人日本産科婦人科学会 「月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)」
2-8.妊娠・出産
妊娠や出産によってむくみが起こることがあります。
妊娠で子宮が大きくなると、腹部にある脚につながる静脈を圧迫してしまいます。
このため血行が悪くなり、脚がむくみやすくなります。
ただし全身のあちこちがむくむ場合は「周産期心筋症」による心不全を発症している恐れがあります。
周産期心筋症は命に関わる場合もあるため、全身のむくみが続く場合は医療機関を受診しましょう。
また出産すると羊水が一気になくなる上に母乳をつくるための水分も必要になり、母体は水分不足の状態になります。
その際に体が水分を蓄えようとするため、むくみが起こってしまうことがあります。
3.一過性のむくみを予防するポイント
「むくみはどうすればどうすれば予防できるのかな?」
むくみを予防できる方法があるのなら知っておきたいものですよね。
一過性のむくみの多くは日々の生活習慣を見直すことで起こりにくくなります。
この章では、自分でできるむくみの予防法を紹介します。
無理せずにやりやすそうなものから取り組んで、むくみ予防に役立ててくださいね。
ポイント1 適度に運動する
むくみの予防には適度な運動が有効です。
運動するとふくらはぎなどの筋肉が動いてポンプの役割を果たし、血行が良くなるためむくみにくくなります。
特に下肢に筋肉が付くとむくみが起こりにくくなるため、ウォーキングやジョギングなど足を使う運動がおすすめです。
忙しくてあまり運動できない方は普段から階段を使う、できるだけ早足で歩くなどの方法で足を動かしてみましょう。
またストレッチもむくみ予防に有効なため、運動と併せて普段から行うと良いでしょう。
ポイント2 体を冷やさない
むくみの予防には体を冷やさないことが重要です。
体が冷えると、血行が悪くなってむくみやすくなります。
そのため寒い季節はできるだけ暖かく過ごすことを心掛けましょう。
特に脚はむくみやすい部位のため、レッグウォーマーや厚手の靴下などでしっかり防寒対策しましょう。
暑い季節でも冷房で体が冷えてしまうことがあるため、室温や服装に注意してくださいね。
ポイント3 入浴の習慣を付ける
むくみ予防のためにはシャワーだけで済まさず、しっかり湯船につかる習慣を付けましょう。
温かいお湯につかると血行が改善されるため、むくみの予防になります。
特に寒い季節や、冷房などで体が冷えたと感じた日はしっかり湯船につかって温まるようにしましょう。
忙しくて時間がない場合は、洗面器などで足湯をするだけでも違いますよ。
ポイント4 負担の掛かる靴や服を避ける
むくみの予防には体に負担のかかる靴や服をできるだけ避けることが重要です。
ヒールの高い靴やサイズの合わない靴など、足に負担のかかる靴を履いていると下肢の血行が悪くなってしまいます。
また下着を中心に、きつめの服や体を締め付ける服を着ることでも血行が妨げられ、むくみが起こることがあります。
自分の体にフィットした靴や服を身に着けることがむくみの予防に重要だといえるでしょう。
仕事などで負担のかかる靴や服を身に着けなければならない方は、空き時間にストレッチなどで体を動かしてみてくださいね。
ポイント5 塩分を控える
むくみを予防するには塩分を控えましょう。
塩分を摂り過ぎると、体内の塩分濃度を一定に保とうとするはたらきによって水分がため込まれます。
これがむくみの原因になります。
塩に加えてしょうゆやみそをよく使用する日本人は、男女ともに塩分を過剰摂取しがちであることが報告されています。
日本人がむくみを予防するには、日々の食生活での塩分摂取量を減らすことが重要だといえるでしょう。
塩分が多い即席麺などは控え、食べるときもスープは飲まずに残しましょう。
みそ汁や漬物、つくだ煮といったおなじみの和食も塩分が多いため、食べる量や回数に注意が必要です。
また減塩表示がある調味料や食品を選択することも有効です。
適切な塩分量や減塩のコツについては以下の記事で詳しく解説しています。
[3] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[4] 厚生労働省 「令和元年 国民健康・栄養調査」
ポイント6 アルコールを控える
アルコールを控えることもむくみの予防につながります。
アルコールを飲むと、一時的に血管が広がって血行は良くなりますが、静脈やリンパの水分の処理が間に合わなくなり、むくみやすくなります。
またアルコールを摂取すると喉が渇いて水分摂取量が増える場合が多く、これもむくみの原因となります。
さらに、おつまみには味が濃いものが多く、塩分過多になりやすいこともむくみにつながってしまいます。
そのため、むくみが気になる方はアルコールの摂取はほどほどにして休肝日を設けましょう。
また一度にたくさん飲むのではなく、時間をかけて少しずつ飲むこともポイントです。
ポイント7 カリウムを十分に摂取する
カリウムはナトリウム(塩分)の排出を促すはたらきを持つミネラルです。
塩分を過剰摂取しがちな日本人にとって、カリウムの摂取はむくみの予防に有効だといえるでしょう。
しかし現在、日本人のカリウム摂取量は全ての年代の男女で目標量を下回っています。
日々の食生活で塩分の摂取量を減らし、カリウムの摂取量を増やすことを目指してみましょう。
カリウムを多く含む食品には、バナナやキウイフルーツなどの果物、さつまいもやながいもなどの芋類、アボカドやほうれん草などの野菜、わかめや昆布などの海藻類があります。
また納豆や肉類、魚介類などにもカリウムは含まれています。
なおカリウムは水溶性のため、食材をゆでたり水にさらしたりすると流出してしまいます。
生のままで食べたり、煮汁ごと食べたりすることで無駄なくカリウムを摂取できるため、調理方法を工夫してみてくださいね。
カリウムについては以下の記事で詳しく解説しています。
ポイント8 弾性ストッキングを着用する
足のむくみに悩んでいる方には、弾性ストッキングの着用がおすすめです。
弾性ストッキングを着用すると、足首やふくらはぎに圧力がかかって血管やリンパ管が刺激されます。
そのため足にたまりやすい血液やリンパ液が巡りやすくなり、むくみが抑えられます。
また弾性ストッキングを日常的に着用することで、足のむくみの原因となる下肢静脈瘤を予防することもできます。
4.一過性のむくみに対処するポイント
「むくんでしまった場合はどうしたら良いんだろう……」
しっかり予防していたつもりでも、脚や顔がむくんでしまうことはあります。
一過性のむくみは時間と共に解消されますが、自分で対処することも可能です。
この章では日常生活のなかで簡単にできる対処のポイントをご紹介します。
ポイント1 むくんだ箇所をマッサージする
むくみが起こったらマッサージを試してみましょう。
この際、筋肉をもみほぐすというよりも滞っている血液やリンパ液を流すことを意識しながら行いましょう。
ポイントは心臓から離れた場所からマッサージを始め、徐々に近い方へ向かっていくことです。
脚であれば足先から始めて、太ももに向かって行います。
また滑りを良くするため乳液やクリーム、マッサージオイルなどがあれば使いましょう。
ここからはむくみやすいとされる脚と顔のマッサージ方法をご紹介しますね。
まず足の指の間に手の指を入れるようにして爪先を持ち、足首を時計回りに20回、反時計回りに20回大きく回します。
そのまま足首を固定し、甲側に向けて押して5秒、足裏側に向けて倒して5秒キープします。
足裏の土踏まず周辺をつぼ押しの要領でぐりぐりと押しましょう。
次にすねの足首付近に両手を当て、膝に向けて10回さするようになで上げます。
ふくらはぎのくるぶし付近に両手を当て、膝裏に向けて10回さするようになで上げます。
続いて膝の両側に両手を当て、太ももの表側を脚の付け根に向けて10回押し下げるように動かします。
膝の裏側に両手を当て、太ももの裏側を脚の付け根に向けて10回引き上げるように動かします。
片方の脚をマッサージしたら、反対の脚を同じようにマッサージしましょう。
顔がむくんでしまった場合は、クリームや乳液を顔全体と首、手に付けてマッサージしましょう。
まず顔の中心から外側に向かって手のひらで顔をさすっていきます。
次に耳から鎖骨に向かって指の腹で首の横側をさすります。
最後に鎖骨の上にあるくぼみを指先でゆっくりと押します。
ポイント2 ストレッチをする
むくみの解消には足のストレッチも有効です。
マッサージと違って立ったままや椅子に座った状態でもできるため、仕事や勉強の合間に簡単に行えるのが大きなメリットといえるでしょう。
立って行う場合は、爪先立ちになって10回程度かかとを上げ下げしてみましょう。
ふくらはぎの筋肉がポンプのはたらきをして血行が良くなるため、むくみが和らぎます。
椅子に座って行う場合は、まず座ったまま両足のかかとを床から離して上げ、戻して足の裏を床につけます。
次に両足の爪先を上げて、また戻して足の裏を床につけます。
この動作を10回程度繰り返しましょう。
デスクワークの方や、飛行機や新幹線などで長時間移動される方はぜひこのストレッチを試してみてくださいね。
他にも足首を回したり膝を曲げ伸ばしたりするなど、凝り固まった筋肉や関節を意識的にほぐし、血行を改善させましょう。
ポイント3 入浴する
むくみを和らげるには、シャワーだけでなく湯船にゆっくりつかることが重要です。
お風呂に入ってしっかり体を温めることで血行が良くなり、むくみの解消につながります。
またお湯の適度な圧力によって、体内の滞った水分が流れます。
多忙や体調などの理由から湯船につかれない方は、洗面器などで足湯をするだけでも効果がありますので試してくださいね。
ポイント4 足を上げる
自宅で気軽に足のむくみに対処するには、足を高く上げてみましょう。
重力の関係から、水分は体の下にある脚にたまる傾向があります。
そのため逆に重力を利用し、足を心臓よりも高い位置に上げることでむくみが改善できるのです。
床に寝転んで椅子などに脚を乗せる、ベッドに横になって壁に脚を立て掛けるなど、リラックスしながら対処できることも大きなメリットといえるでしょう。
5.むくみの生じる病気とそれぞれの兆候
「むくみが何日経っても引かない……」
「むくみがどんどんひどくなってきたけど大丈夫かな?」
むくみには、生活習慣や環境によって起こる一過性のものだけでなく、病気を原因として起こるものもあります。
この章では病気に起因するむくみとそれぞれの兆候や特徴を解説します。
いずれの場合も自己判断せず、必ず医師の判断を仰いでください。
5-1.下肢静脈瘤
下肢静脈瘤によって脚がむくむ場合があります。
下肢静脈瘤は脚の静脈がこぶ状に浮き出て見える疾患です。
下肢静脈瘤は静脈の逆流を防ぐ静脈弁が壊れてしまうことで起こり、血液の循環が滞るためむくみなどの症状が現れます。
血管がこぶ状になる病気のなかでも「動脈瘤」は破裂して命を脅かす危険がありますが、下肢静脈瘤にはこのような恐れはありません。
症状としては患部付近のむくみの他にだるさ、かゆみ、湿疹、出血などがあります。
多くの場合、下肢静脈瘤の治療は痛みやかゆみなどの改善、外見上の問題の解消のために行われます。
ただし血流が滞ったことにより血栓ができ、感染や炎症が起こったり、けがをしたりすると「蜂窩織炎」と呼ばれる急性の化膿性炎症を引き起こすことがあり、この場合はすぐに治療する必要が生じます。
下肢静脈瘤によるむくみは多くの場合、静脈瘤のできた片脚のみに起こるといわれています。
5-2.深部静脈血栓症
下肢静脈瘤よりも危険な脚のむくみには深部静脈血栓症があります。
深部静脈血栓症は脚の骨の近くや筋肉の中といった深い部分にある静脈に血栓ができ、詰まってしまう病気で、命に関わる肺塞栓症に直結します。
狭い場所で長時間足を動かさず水分が欠乏した場合に起こりやすく、飛行機に長時間搭乗した方によく見られたため、かつてはエコノミークラス症候群とも呼ばれていました。
また災害時の避難生活や車中泊などの際に深部静脈血栓症を発症したケースも報じられています。
深部静脈血栓症になった場合、血栓が生じた方の脚が急激にむくんで腫れ上がり、痛みや違和感を覚えます。
5-3.内臓の病気
むくみは心臓や腎臓、肝臓といった内臓の病気が原因の場合があります。
これらの病気によるむくみの特徴は、何日も続いたり徐々にひどくなったりし、脚や顔などだけでなく、全身がむくんでしまう場合もあります。
またむくみに加え、動悸や息切れ、極端な体重の増減、尿量の減少、食欲不振、極度の疲労などの症状が併発することもあります。
ここからはむくみの起こる可能性のある内臓の病気について解説します。
5-3-1.腎臓病
むくみが起こる病気の原因として最も多いのが腎臓病だといわれています。
腎臓病は腎臓のはたらきが悪化する病気の総称で多くの種類があり、それぞれに原因や症状が異なります。
腎臓のはたらきが大幅に低下する腎不全では、腎臓が水分をうまく尿として排出できなくなるため、体内に水分がたまってむくみやすくなります。
また腎臓で炎症が起こり、血液中の「アルブミン」が流出する「ネフローゼ症候群」でもむくみが起こります。
5-3-2.心不全
むくみは心不全によって起こることがあります。
心不全は心臓の何らかの異常により、体に必要な血液を送り出すポンプの役割を十分に果たせなくなった状態です。
心不全になると血液が体内をうまく循環せずに滞るため、むくみが起こりやすくなります。
5-3-3.肝硬変
肝硬変もむくみの原因になります。
肝硬変は肝炎ウイルスやアルコール、食べ過ぎなどを原因とする慢性肝疾患により、肝臓内に線維組織が広がって硬くなった状態のことです。
肝硬変になると肝臓でアルブミンがつくられにくくなり、血中のアルブミン濃度が減少します。
アルブミンは血管中に水分を引き込むはたらきを持っているため、減少すると血液中の水分が血管の外に漏れてむくみが起こります。
5-3-4.甲状腺機能低下症
むくみの原因として甲状腺機能低下症も挙げられます。
甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンには体の新陳代謝を促進するはたらきがあります。
そのため、甲状腺の機能が低下することで体内の水分などの代謝が滞り、むくんでしまうことがあります。
5-3-5.リンパ浮腫
がんの治療でリンパ管やリンパ節を切除した際や、放射線治療を行った際などにもむくみが起こることがあります。
こうしたむくみはがんの治療部位に近い腕や脚などで起こりやすく、特に「リンパ浮腫」と呼ばれます。
リンパ管は全身に広がって体液を排出するはたらきがあることから、切除されるとリンパ液の流れが滞るため、むくみにつながるのです。
リンパ浮腫は治療直後に起こることもあれば、治療から10年以上経ってから起こる場合もあります[5]。
[5] 国立研究開発法人国立がん研究センター 「リンパ浮腫」
5-4.薬の副作用
病気だけでなく、病気の治療のために服用している薬の副作用でむくみが起こることがあります。
むくみが起こる可能性のある薬には薄毛治療で用いられるミノキシジルや細菌を壊したり増殖を抑えたりする抗生剤(抗生物質)、解熱や鎮痛などに用いられる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などがあります。
また血圧を下げるACE阻害薬、血圧を下げ狭心症の発作を抑えるカルシウム拮抗(きっこう)薬、抗がん剤などでもむくみが起こることが知られています。
投薬治療開始後にむくみが起こった場合は、自己判断せず担当の医師に相談するようにしてください。
6.むくみについてのまとめ
むくみとは血管や細胞の外側に水分が染み出してたまってしまった状態です。
むくみは重力の関係から、体の下部にある脚に起こりやすいことが知られています。
むくみには生活習慣や環境による一過性のものと、病気によるものがあります。
一過性のむくみの原因は長時間の同じ姿勢や、運動不足、体の冷えなどによって血行が悪くなることや、水分や塩分の摂り過ぎによって体内の水分が増え過ぎることなどがあります。
また女性では月経周期に伴う女性ホルモンの変動や妊娠・出産に伴ってむくみが起こることがあります。
むくみは適度に運動し、体を冷やさないようにし、窮屈な靴や服装をやめることで予防することができます。
また塩分やアルコールを控え、食事でカリウムを十分に摂取することも有効です。
むくみが起こった場合はマッサージやストレッチ、入浴、足を上げることで和らげることができます。
しかしむくみが何日も収まらない、徐々にひどくなるといった場合は病気が原因となっていることも考えられます。
例えば片足だけがむくむ場合は下肢静脈瘤や、命を脅かすこともある深部静脈血栓症の危険もあります。
いずれの場合もすぐに医療機関を受診し、医師の判断を仰いでください。
この記事を参考に、むくみの予防や解消に取り組んでみてくださいね。