「高血圧を改善するには、どんな食事を摂れば良いんだろう?」
「減塩が大切って聞くけど、上手に減らすにはどうすれば良いのかな」
高血圧の予防や改善には、食事の塩分を控えることが重要です。
他にもカリウムや食物繊維を十分に摂ったり、カロリーを摂り過ぎないようにしたりすることが重要です。
この記事では減塩のための食事ポイントや、減塩以外で高血圧を改善させるためのポイントなどを解説します。
ぜひ参考にしていただき、高血圧を予防しましょう。
1.高血圧とは
高血圧とは、慢性的に血圧が高い状態のことです。
一時的に血圧が高いだけでは高血圧と診断されず、いつも血圧が高い場合に高血圧と診断されます。
これは血圧が測定する時間帯や季節、気温などの環境や食事、運動といった日常生活、受けている精神的なストレスといった多くの要因によって常に変動しているためです。
血圧の基準値は診察の場で測定した場合と、家庭で測定した場合とで異なります。
病院のような診察の場で測定した血圧を「診察室血圧」といい、高血圧と診断される基準値は最高血圧140mmHg以上かつ/または最低血圧90mmHg以上です[1]。
家庭で測定した血圧を「家庭血圧」といい、高血圧の基準値は最高血圧135mmHg以上かつ/または最低血圧85mmHg以上です[1]。
診察室で血圧を測ると緊張により高めに出るケースもあるため、診察室血圧の正常血圧は少し高めに設定されているのです。
高血圧は目立った自覚症状がありませんが、「動脈硬化」を進行させて心筋梗塞や脳梗塞のような重篤な病気を引き起こす危険があるため、早期の発見と治療が欠かせません。
高血圧が見られる場合、医療機関を受診した上で食生活や運動習慣などの改善を行いましょう。
高血圧については、以下の記事でも解説しています。
高血圧とは?基準値や健康上のリスク、改善のポイントを徹底解説
[1] 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
2.高血圧の改善には減塩が重要
高血圧と食塩摂取量は関連が強く、高血圧の改善には減塩が欠かせません。
食塩(塩化ナトリウム)の主成分の一つであるナトリウムは、細胞の浸透圧を調節するという重要な役割を担っています。
人体にとって不可欠な物質ですが、過剰に摂取すると細胞内の水分が細胞外へ移動し、血液中の水分量が増加します。
血液中の水分量が増加すると血管内部の圧力が高まり、血圧が上がってしまうのです。
高血圧の予防や改善のためには1日のナトリウム摂取量を6g未満にすることが望ましいとされています[2]。
しかし現代日本人のナトリウム平均摂取量(食塩相当量)は成人男性で10.9g、女性で9.3gと、目標を大きく上回っています[3]。
高血圧予防や改善には減塩が極めて重要であるため、まずは減塩に取り組みましょう。
次の章では、減塩のための食事ポイントについて解説します。
[2] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
[3] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」
3.減塩のための食事のポイント
「高血圧を防ぐためには減塩が大切って聞くけど、どうすれば良いのかな」
減塩するための食事のポイントには、食塩を使用していない主食を選ぶことや麺類のつゆを飲まないこと、食塩以外の調味料や香辛料を活用することなどがあります。
いずれも日々の食生活に手軽に取り入れられるため、できそうなものから試してくださいね。
それぞれ詳しく解説します。
ポイント1 食塩を使用しない主食を選ぶ
減塩するには、白いご飯や玄米など食塩が使用されていない主食を選ぶようにしましょう。
主食として食べることが多いうどんやそうめん、パンには食塩が含まれています。
これらに対して、白いご飯や玄米には食塩は含まれていません。
日頃、口にすることが多いものから見直していきましょう。
ポイント2 汁物や麺類のつゆを飲まない
塩分を控えるためには、汁物や麺類のつゆを飲まないように心掛けましょう。
みそ汁やすまし汁、スープといった汁物には、おわん1杯で約1.5~2gの食塩が含まれているといわれています[4]。
また、麺類のつゆを飲み干すと5g以上の食塩を摂取することにもなります[4]。
汁物や麺類のつゆはできるだけ控え、減塩に努めましょう。
[4] 地方独立行政法人 東京都立病院機構「高血圧の食事」
ポイント3 漬物やつくだ煮を控える
漬物やつくだ煮を控えることも減塩につながります。
以下は、代表的な漬物やつくだ煮に含まれる食塩相当量について記した表です。
食品名 | 含有量 |
---|---|
昆布のつくだ煮 | |
きゅうりのぬか漬け | |
福神漬け | |
しば漬け | |
キムチ | |
きゅうりの塩漬け | |
たくあん |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
食べ過ぎると塩分摂取量が過剰となるため、控えましょう。
ポイント4 卓上調味料をむやみに使わない
塩やしょうゆ、ソースといった卓上調味料をむやみに使用すると高血圧を招く恐れがあります。
卓上調味料は味を濃くする際に気軽に使用しがちですが、塩分が多く含まれています。
使用する場合は、食品にかけるのではなく皿に出して少量ずつ付けて食べるようにしましょう。
日常的にコツコツ取り組むことが、高血圧予防につながります。
ポイント5 外食や市販の惣菜をできるだけ控える
塩分を控えるためには、外食や市販の惣菜をできるだけ控えましょう。
外食や市販の惣菜は、おいしさを求めて塩分が多めに使用される傾向があります。
高血圧予防のためにも、外食の回数を減らしたり市販の惣菜ばかりを食べることを控えたりしましょう。
ポイント6 塩分の少ない調味料を使う
調理の際には塩分の少ない調味料を使いましょう。
トマトケチャップ、マヨネーズやドレッシングは、みそやしょうゆほど塩分が多くありません。
また、最近では特殊な製法による減塩しょうゆや、塩化ナトリウムが他の物質に置き換えられたしょうゆが売られています。
このような調味料を活用し、おいしさを保ちながら上手に減塩していきましょう。
ポイント7 香辛料や香味野菜、柑橘類を活用する
塩分を控えるためには、香辛料や香味野菜、柑橘(かんきつ)類を活用しましょう。
塩分以外のとうがらしやこしょうといった香辛料、しょうがやねぎなどの香味野菜、ゆずやレモンなどの柑橘類を活用することでも食べ物をおいしく食べられます。
無理に減塩をして食事自体の楽しさが損なわれないよう、うまく取り入れましょう。
ポイント8 料理は味見しながら作る
塩分の摂り過ぎを防ぐためには、味見しながら料理をしましょう。
料理の際に調味料をむやみに入れると、塩分を過剰摂取してしまうかもしれません。
調味料を目分量で入れず味付けを確認しながら調味料を加えることがポイントです。
また、調味料を入れる際にはきちんと計量するよう心掛けてくださいね。
ポイント9 新鮮な食材を使って調理する
鮮度が良い食材を使い、塩分摂取量を減らしましょう。
新鮮な食べ物は、食材自体の持ち味が豊かで薄味でもおいしく食べられることから減塩につながります。
時期に合わせて旬な食材を取り入れることも良いでしょう。
ポイント10 汁物は具だくさんにする
汁物を作る際は具をたくさん入れることで塩分が抑えられます。
具材をたくさん入れるとおわんの中の汁の量は少なくなるため、結果的に減塩につながります。
多くの食材を入れることで栄養素も豊富に摂取できますよ。
4.その他の高血圧改善のための食事のポイント
「減塩以外にも高血圧を改善するために気を付けるべき食事のポイントはあるのかな?」
減塩以外でも高血圧対策となる方法があるのか気になる方もいるでしょう。
この章では、高血圧の改善につながる減塩以外の方法を解説します。
ポイント1 カリウムを十分に摂取する
高血圧対策には、ナトリウムの排せつを促す作用があるカリウムの摂取が有効です。
カリウムとは、人体にとって不可欠なミネラルの一つです。
ナトリウムの排出を促して細胞内液の浸透圧を一定に保つはたらきがあります。
高血圧をもたらすナトリウムを減らしてくれるため、高血圧の改善が期待できるのですね。
理想的なカリウムの摂取量は1日当たり3,510mg以上といわれていますが、多くの日本人の摂取量はこれに及んでいません[5]。
このため厚生労働省は実現可能性を考慮して成人男性に対し1日2,500mg以上、成人女性に対し1日2,000mg以上の目安量を設定しています[5]。
カリウムを豊富に含む食べ物は、果実類や野菜類、いもおよび豆類などさまざまです。
これらを積極的に摂取し、高血圧の改善に努めましょう。
カリウムについては以下の記事で解説しています。
[5] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
ポイント2 食物繊維を十分に摂取する
食物繊維を十分に摂取することは、高血圧の改善に有効です。
食物繊維にはナトリウムを吸着して体の外へ排出するはたらきがあるため、高血圧の予防につながるのです。
食物繊維はナトリウムに加えて脂質や糖質も体外へ排出するため、肥満や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病の予防も期待できます。
成人の理想的な食物繊維摂取量は1日25g以上であるとされていますが、現代日本人の食物繊維摂取状況は全年代の男女でこれを大きく下回ります[6]。
厚生労働省は、実現可能性を考慮し目標量を設定しています。
成人の食物繊維の目標量は以下のように定められています。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢など | 目標量 | 目標量 |
18~29歳 | ||
30~49歳 | ||
50~64歳 | ||
65~74歳 | ||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
食物繊維は野菜類や果実類、きのこ類、豆類、海藻類に多く含まれています。
また主食を玄米ごはんや麦ごはん、全粒小麦パンなどに置き換えることでも食物繊維の摂取量を増やせますよ。
食物繊維については以下の記事で解説しています。
食物繊維を含む食べ物は?摂取目標量と摂取量を増やすコツも解説
[6] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
ポイント3 摂取カロリーを適切に制限する
摂取カロリーを適切に制限することで、高血圧の予防や改善が期待できます。
肥満は高血圧の原因の一つで、肥満の人は標準体重の人に比べて高血圧の可能性が2~3倍高いといわれています[7]。
肥満は食事からの摂取カロリー(エネルギー摂取量)が、生命維持や運動などによる消費カロリー(エネルギー消費量)を上回ることで起こるため、摂取カロリーを適切に制限することが重要です。
1日に必要な摂取カロリー目安は、目標とする体重に体重1kg当たりの推定必要カロリーを掛け合わせることで求めることができます。
なお、目標とする体重は次のBMIの範囲を参考にしてください。
年齢 | 目標とするBMI |
---|---|
18〜49歳 | |
50〜64歳 | |
65歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
目標とするBMIのときの体重は、[身長(m)の2乗]×[目標のBMI]で求められます[8]。
目標体重が決まったら、以下の体重1kg当たりの推定必要カロリーを掛け合わせましょう。
身体活動レベル | 低い | 普通 | 高い |
---|---|---|---|
18〜29歳 | |||
30〜49歳 | |||
50~64歳 | |||
65~74歳 | |||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
なお、身体活動レベルとは、運動や日常生活など1日にどのくらいの活動をしているかを表す指標となるものです。
活動の強度によって3段階に分けられているため、ご自身に合った身体活動レベルを選んでくださいね。
身体活動レベル | 日常生活の内容 |
---|---|
低い | 生活の大部分を座って過ごしている場合 |
普通 | 座って過ごすことが多いが、立った状態での作業や徒歩移動、家事、軽いスポーツなどをしている場合 |
高い | 歩いたり立ったりしている時間が長い場合、あるいは活発な運動習慣がある場合 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
身体活動レベルと体重1kg当たりの推定必要カロリーをもとに、例を挙げて計算してみましょう。
40代女性で身体活動レベルは普通、標準体重が50kgの場合の1日の推定必要カロリーは、50(kg)×38.3(kcal)=1,915(kcal)となります。
出た数値を参考に、1日の摂取カロリーを適切に制限しましょう。
また、体にとってのエネルギー源になる栄養素は炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質です。
炭水化物(糖質)は1g当たり4kcal、たんぱく質は1g当たり4kcal、脂質は1g当たり9kcalのエネルギーを生み出します[9]。
どれかを極端に減らすのではなく、バランス良く抑えることが大切です。
エネルギー産生栄養素については以下の記事で解説しています。
エネルギー産生栄養素とは?それぞれのはたらきや理想のバランス
[7] 一般社団法人 日本肥満症予防協会「肥満により高血圧が起こるメカニズム」
[8] 厚生労働省 健康づくりサポートネット「肥満と健康 」
[9] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
ポイント4 アルコールを適度に控える
高血圧を予防するためには、アルコールを適度に控えましょう。
飲酒は少量であれば一時的に血圧を下げますが、長期間の飲酒は血圧を上げるとともに、循環器疾患をはじめさまざまな疾患のリスクも高めます。
厚生労働省は、節度ある適度な飲酒を1日平均純アルコールで約20g程度としています[10]。
主な種類の純アルコール量20gに相当する量は以下のとおりです。
公益社団法人 アルコール健康医学協会「お酒と健康 飲酒の基礎知識」をもとに執筆者作成
なお、アルコールに弱い体質の人や女性、高齢の人の場合はより少量に抑えることが適切です。
週に1日以上の休肝日を設けることも忘れないようにしましょう[12]。
[10] 厚生労働省 健康日本21「アルコール」
[11] 厚生労働省 e-ヘルスネット「飲酒量の単位」
[12] 厚生労働省 e-ヘルスネット「栄養・食生活と高血圧」
5.血圧が高い場合は受診しよう
健診や家庭での測定で血圧が高めだった場合、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
医療機関で高血圧と判断された場合、食事や運動といった生活習慣の改善に加え、降圧剤などによる服薬治療が必要となる場合があります。
治療の方針は血圧の高さの程度に加え、動脈硬化に関わる糖尿病や脂質異常症などの病気や、加齢や喫煙などの危険因子の有無や数によっても変わります。
高血圧は自覚症状から気付くことは難しいため、早い段階で診断を受け、医師の指導のもとで改善を目指すことが重要です。
6.高血圧を改善するための食事のポイントのまとめ
高血圧とは、血圧が慢性的に高い状態のことです。
血圧の値は心臓が血液を押し出す力や血管の弾力性などが影響するほか、気温や季節、運動や食事などの多くの要因によって変動します。
高血圧は多くの場合自覚症状がありませんが、放置すると動脈硬化を進行させて脳梗塞や心筋梗塞など重篤な疾患を引き起こす危険があります。
高血圧を予防するためには、塩分を控えることが重要です。
具体的には麺類のスープを飲み干さないこと、漬物や加工食品、外食を控えること、みそ汁を具だくさんにすることなどがポイントとなります。
塩やしょうゆ、みそなどの調味料を避け、塩分の少ないマヨネーズや酢、香辛料、香味野菜、柑橘類などに置き換えることも有効です。
減塩以外では、ナトリウムを排出してくれるカリウムや食物繊維を十分に摂取しましょう。
また肥満の予防・改善、節酒でも血圧の改善が期待できますよ。
血圧の高さが気になる方や対処方法が分からない方は、一度医療機関を受診し医師に相談してください。
この記事を、食生活を通じて高血圧を予防・改善するための参考にしてくださいね。