「健康診断で血圧が高いと言われたけど、改善するにはどうしたら良いのかな……」
「高血圧を予防するためにはどんなことに気を付けたら良いんだろう?」
血圧が高めで、このような心配をされている方もいらっしゃるかもしれませんね。
高血圧とは慢性的に血圧が高い状態です。
自覚症状はあまりありませんが、放置していると脳卒中や心臓病などの重篤な病気を引き起こすリスクがあります。
高血圧を予防・改善するにはどうしたら良いのか気になるところですよね。
この記事では高血圧の診断基準やリスク、予防、改善するためのポイントを解説します。
健康的な生活を続けるために、ぜひ参考にしてくださいね。
1.高血圧とは
高血圧という言葉はよく見聞きしますが、その定義や、高血圧の何が問題であるのかについてはよく分かっていない、という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
「そもそも血圧って何?」
このように疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
血圧とは心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことです。
血圧は体の全ての血管に存在しますが、通常は動脈、なかでも上腕の動脈にかかる圧力のことを指します。
血圧には「上の血圧」「下の血圧」と呼ばれる概念があることは皆さんご存じですよね。
心臓は収縮と拡張を繰り返しており、心臓が縮んで血液を押し出したときには血圧は高くなります。
反対に、次に血圧を送り出す瞬間に備えて心臓が拡張しているときには血圧は低くなります。
心臓の収縮により血圧が最高に達したときの値がいわゆる「上の血圧」で、医学的には「最高血圧」または「収縮期血圧」と呼ばれます。
心臓が拡張して血圧が最低値になっているときの値がいわゆる「下の血圧」、医学的な呼称は「最低血圧」または「拡張期血圧」です。
血圧は状況に応じて変動しますが、高い状態が長期間続くと健康に大きな問題を生じることがあります。
ここでは、高血圧の定義や、高血圧の種類についてご説明しましょう。
1-1.高血圧の基準
「血圧を測ったら高い数値が出たんだけど、これって高血圧なのかな?」
「どれくらい血圧が高ければ高血圧に該当するの?」
このように気になっている方もいらっしゃることでしょう。
高血圧とは繰り返し測定しても血圧の値が正常より高い状態のことを指します。
いつもは正常なのにたまたま血圧が高くなった場合は必ずしも高血圧とはいえません。
なお、数値では病院で測って最高血圧が140mmHg以上または最低血圧が90mmHg以上の場合に高血圧に該当します[1]。
家庭で測った血圧では最高血圧が135mmHg以上または最低血圧85mmHgの場合に高血圧に該当します[1]。
血圧に関する基準はこれだけでなく、病院で測定した血圧に対しては以下のような分類がなされています。
【成人における診察室血圧の分類(mmHg)】
最高血圧 | 最低血圧 | ||
---|---|---|---|
正常血圧 | 120未満 | かつ | 80未満 |
正常高値血圧 | 120〜129 | かつ | 80未満 |
高値血圧 | 130〜139 | かつ/または | 80〜89 |
Ⅰ度高血圧 | 140〜159 | かつ/または | 90〜99 |
Ⅱ度高血圧 | 160〜179 | かつ/または | 100〜109 |
Ⅲ度高血圧 | 180以上 | かつ/または | 110以上 |
(孤立性)収縮期血圧 | 140以上 | かつ | 90未満 |
また自宅で測定した場合の分類は以下のとおりです。
【成人における家庭血圧の分類(mmHg)】
最高血圧 | 最低血圧 | ||
---|---|---|---|
正常血圧 | 115未満 | かつ | 75未満 |
正常高値血圧 | 115〜124 | かつ | 75未満 |
高値血圧 | 125〜134 | かつ/または | 75〜84 |
Ⅰ度高血圧 | 135〜144 | かつ/または | 85〜89 |
Ⅱ度高血圧 | 145〜159 | かつ/または | 90〜99 |
Ⅲ度高血圧 | 160以上 | かつ/または | 100以上 |
(孤立性)収縮期血圧 | 135以上 | かつ | 85未満 |
高血圧はその度合いによってⅠ度〜Ⅲ度に分類されており、重症度が上がるほどに重大な病気を引き起こすリスクが高いとされています。
正常高値血圧および高値血圧は高血圧の一歩手前、いわば予備軍の段階です。
通常は服薬などの必要はありませんが、他の要素も鑑みて病気になるリスクが高いと判断された場合には治療の対象となることもあります。
また(孤立性)収縮期高血圧とは最高血圧だけが高いもので、高齢者によくみられます。
1-2.高血圧の種類
高血圧は「本態性高血圧」と「二次性高血圧」の2種類に分けられます。
本態性高血圧は直接的な原因が分からない高血圧のことで、生活習慣や遺伝的な要因などが組み合わさって生じます。
本態性高血圧の発症には、食塩の過剰摂取や肥満を招く食事、飲み過ぎ、運動不足、喫煙、ストレスの多い生活などが関わるといわれています。
本態性高血圧は高血圧全体の約90%を占め、改善のためには生活習慣の改善が重要です[2]。
一方、二次性高血圧とは明らかに血圧上昇を引き起こす持病があり、それによって高血圧が生じている状態のことです。
原因となる病気としては甲状腺や副腎などの病気や、睡眠時無呼吸症候群などが挙げられます。
二次性高血圧の改善には、原因となる病気の治療を行うことが不可欠です。
二次性高血圧の原因となる病気が潜んでいる可能性を排除するためにも、血圧が高めの場合にはまずは医療機関を受診した方が良いといえるでしょう。
2.高血圧による健康上のリスク
「高血圧だと何が問題なの?」
このように気になっている方もいらっしゃることでしょう。
高血圧には自覚症状はほとんどありません。
しかし放置していると血管の健康を損ね、全身の血管や心臓に大きな病気を引き起こしてしまう可能性があるのです。
動脈の壁は本来しなやかで弾力性を有していますが、血圧が高い状態によって常に張り詰めた状態に置かれ続けると、次第に硬く厚くなり、「動脈硬化」と呼ばれる状態になってしまいます。
動脈硬化は全身の血管に起こり、放置していると血管の狭まりや、血栓による詰まり、血管の破裂などを招きます。
これにより狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、大動脈瘤(りゅう)、腎硬化症などのさまざまな病気を引き起こしてしまうのです。
狭心症とは、心臓を取り巻く「冠動脈」という動脈が細くなり、血液が流れにくくなった状態です。
血液は全身の臓器に酸素を供給する役割を果たしているため、冠動脈の血流が悪くなると心筋(心臓の筋肉)が酸素不足に陥り、痛みなどの症状を引き起こします。
心筋梗塞は冠動脈がふさがれ、心筋の細胞が壊死してしまう病気です。
壊死が起こると二度と元には戻らないので、迅速な処置をしなければ命が危険にさらされます。
脳梗塞では心筋梗塞と同様に脳の血管がふさがれ、脳の壊死が起こります。
一命を取り留めても後遺症が残ることの多い重大な病気です。
脳出血は脳の細い血管が裂け、脳の組織の中で出血してしまう病気で、出血により脳の機能に障害を来します。
高血圧を放置していると起こりやすく、前触れがないのが特徴です。
大動脈瘤は、動脈がこぶ状に膨らんだ状態のことです。
動脈硬化が進行して血管が脆くなると、血圧によって大動脈の一部がこぶ状に膨らみます。
このこぶを放置しているとやがて破裂し、大量の出血を起こしてしまいます。
腎硬化症は腎臓の血管に動脈硬化を起こし、老廃物をろ過して体外に排出する腎臓の機能が低下してしまう病気です。
このように、高血圧を放置していると命を脅かしたり、大きな後遺症を残して生活の質を大きく下げたりする大きな病気を招きかねません。
そのため高血圧は喫煙とともに日本人の生活習慣病による死亡に最も大きく影響する要因であり、もし高血圧を完全に予防することができれば、年間10万人以上の方が死亡せずに済むとまでいわれているのです[3]。
日本人の高血圧患者は非常に多く、約4,000万人が該当するといわれています[4]。
血圧が高めの人は大きな病気を予防するために改善を目指しましょう。
3.高血圧の主な原因
「高血圧の原因はなんだろう?」
本態性高血圧の原因ははっきりとは特定できませんが、生活習慣や遺伝的な要因だといわれています。
また二次性高血圧はなんらかの病気が原因で引き起こされます。
ここでは、高血圧のほとんどを占める本態性高血圧の主な要因をお伝えしましょう。
原因1 塩分の過剰摂取
日本人の高血圧の最大の原因は塩分の摂り過ぎであるといわれています。
「なぜ塩分を摂り過ぎると血圧が高くなってしまうの?」
と気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
塩分の摂り過ぎで高血圧が引き起こされるのは、食塩に含まれる「ナトリウム」という成分が原因です。
塩分の摂り過ぎによって血中のナトリウム濃度が高まると、浸透圧を一定に保とうと体は血液中の水分量を増やします。
これにより体内を巡る血液量が増え、血管の壁にかかる力が大きくなる、つまり血圧が上昇してしまうのです。
日本人の食生活は塩分の摂り過ぎが起こりやすいといわれているので注意が必要です。
原因2 肥満
日本人の高血圧患者の半数以上は肥満に該当しませんが、近年は若年〜中年の男性において肥満が原因の高血圧が増えているといわれています。
肥満の方が高血圧になるリスクは標準的な体重の方に比べ約2〜3倍もあるのです[5]。
「どうして肥満だと高血圧になるの?」
と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれませんね。
肥満の方に高血圧が起こりやすい理由はいくつかあります。
まず、肥満の方は食事の量が多い傾向にあるため、それに伴って塩分も多く摂っているものと考えられます。
また肥満になるとインスリンの分泌が過剰になり、そのはたらきによって腎尿細管でのナトリウムの再吸収が促され、さらに血中のナトリウム濃度が高まるとされています。
血液中の老廃物や塩分は、腎臓の「糸球体」と呼ばれる毛細血管が球のような形に丸まった器官でろ過され、尿として体の外に排出されます。
しかし実は糸球体でろ過されただけの「原尿」は実際の尿の100倍近い量があり、体に必要な糖やミネラルなどの成分を含んでいます[6]。
そこで体に必要な物質を排せつしてしまわないよう再吸収を行うのが腎尿細管です。
肥満の状態ではインスリンが効きにくくなって分泌量が増加しますが、インスリンには腎尿細管でのナトリウムの再吸収を促す作用があるため、それに伴って血中のナトリウム濃度が上昇してしまうのです。
また、インスリンは交感神経を刺激し、血圧を上昇させる「カテコールアミン」という物質が血中に放出される事態を招きます。
さらに肥大した脂肪細胞から分泌される「アンギオテンシノーゲン」という物質にも血管を収縮させ、血圧上昇を招く作用があるのです。
このように肥満の場合には、さまざまな要素が絡んで高血圧が生じやすくなるのですね。
原因3 過度な飲酒
お酒の飲み過ぎも高血圧の原因となります。
少量のアルコールには血圧を一時的に低下させる作用が認められていますが、長期間にわたる飲酒は血圧を上昇させるといわれています。
またお酒のつまみとされるものには、塩分が多く含まれているものが多いことも問題の一つです。
さらにアルコール自体が1g当たり約7kcalとカロリーが高く、肥満を招く原因にもなり得ることにも注意が必要でしょう[7]。
お酒と一緒にハイカロリーのおつまみを食べると、それもまた肥満を招く原因になります。
アルコールには食欲増進作用があるので、お酒を飲むとつい食べ過ぎてしまうという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
このようにお酒を飲む習慣には高血圧を招く要因が数多く関わっているのですね。
原因4 運動不足
運動不足も高血圧の要因であるといわれています。
運動不足の状態は血行不良を引き起こします。
全身の筋肉は血行を促進するポンプのような役割を果たしていますが、運動不足によって筋力が衰えると、血液を押し出す力が低下してしまいます。
このような状態では、心臓は全身に血液を届けるためにより強い力で血液を送り出すことになり、血管の壁にかかる圧が高くなる、つまり高血圧となってしまうのだと考えられています。
また運動不足は高血圧の原因となる肥満の要因にもなります。
肥満は摂取カロリー(エネルギー摂取量)が消費カロリー(エネルギー消費量)を上回る状態が続くことによって起こります。
運動不足だと消費カロリーが少なくなるので、太りやすくなってしまうのですね。
原因5 喫煙
喫煙の習慣も高血圧の要因になります。
たばこの煙には4,000種類以上の化学物質が含まれており、有害であることが判明しているものは200種類を超えています[8]。
そのなかでもよく知られているのがタールやニコチン、一酸化炭素です。
タールには健康な細胞をがん細胞に変え増殖させる作用があり、ニコチンや一酸化炭素には血圧の上昇を招いたり、血管の健康を損なったりする作用があります。
ニコチンは交感神経を刺激し、血管を収縮させて血圧の上昇を招きます。
また一酸化炭素は体内の赤血球と結びついて体内を酸素不足の状態に陥らせます。
これにより心拍数の増加や血管の収縮を招き、血圧の上昇を引き起こします。
さらに血液の粘度を高めて固まりやすくする性質があり、動脈硬化の原因にもなるといわれています。
体に悪いことで知られているたばこですが、高血圧の原因にもなってしまうのですね。
原因6 ストレス
ストレスも高血圧を招いてしまいます。
病院で測る血圧が家庭で測る血圧よりも高くなりがちであるのも、緊張によるストレスが原因だと考えられています。
ストレスとは外部から何らかの刺激を受けたときに生じる緊張状態のことを指します。
外部からの刺激にはさまざまなものがあり、天候や騒音といった環境的なもの、睡眠不足といった身体的なもの、不安や悩みといった心理的なもの、人間関係や仕事に関連する社会的なものなどが挙げられます。
こうしたストレスを受けると、交感神経が優位になり、血圧の上昇を招きます。
またストレスによる急な血圧上昇は、脳卒中や心筋梗塞の引き金になるため注意が必要です。
原因7 遺伝的要因
高血圧の発症には遺伝的な要因も関わるといわれています。
両親やきょうだいに高血圧の方がいる場合は、高血圧になりやすい傾向にあるのです。
一方で血縁者と同様に高血圧になったからといって遺伝的な要素だけが発症の原因であるとはいえません。
血縁者、特に同居者は同じ食事を摂ったり生活習慣が似ていたりするため、遺伝的な要因だけでなく環境的な要因も合わさった結果、高血圧が発症すると考えられるのです。
つまり血縁者に高血圧の方が多いからといって、必ず高血圧になってしまうとは限りません。
生活習慣を改めることで高血圧を予防・改善できると考えられるでしょう。
4.高血圧を予防・改善するポイント
「高血圧を予防したい……」
「血圧が高めだと言われたけれどどんなことに気を付けたら良いの?」
このようにお悩みの方も多くいらっしゃることでしょう。
さまざまな病気を招いてしまう高血圧ですから、生活習慣を改めてしっかり予防・改善しておきたいものですよね。
ここでは高血圧を予防・改善するポイントをお伝えしましょう。
ポイント1 減塩を行う
高血圧にはさまざまな要因がありますが、なかでも塩分の摂り過ぎは日本人の高血圧の最大の原因とされています。
まずは塩分の摂取量を減らすことを心掛けましょう。
高血圧の予防・改善のためには1日当たりの食塩摂取量を6g未満にすることが望ましいとされています[8]。
またWHOのガイドラインは成人に対し1日の塩分摂取量を食塩相当量で5g未満にすることを強く推奨しています[8]。
ナトリウムは食塩以外にもうまみ成分の「グルタミン酸ナトリウム」や製麺に使われるかんすい、製菓材料となるベーキングパウダーなどにも含まれていますが、多くは塩化ナトリウムの形で摂取されているため、ナトリウムの摂取量は一般的に食塩相当量で表されています。
一方で日本人はナトリウムを摂り過ぎる傾向にあり、20歳以上の平均摂取量(食塩相当量)は男性で10.9g、女性で9.3gと前述の目標量を大きく上回っています[9]。
欧米の研究から少なくとも1日当たりの食塩摂取量を6g台前半まで減らさなければ血圧低下の効果はみられないことが分かっているので[9]、高血圧の予防・改善のためにはかなり厳しい減塩に取り組む必要があるといえるでしょう。
「でも、塩を減らしたら食事が味気なくなるんじゃない?」
と不安に思った方も多くいらっしゃることでしょう。
もちろん、全体的に薄味を心掛けることは重要です。
しかしちょっとした工夫を行うことでも食塩の摂取量を減らすことができます。
例えばしょうゆやソースなどの調味料を食べ物にかけて食べる習慣のある方は、小皿に調味料を出してつける方式に変えるだけで塩分の摂取量を減らせるといわれています。
また漬物やみそ汁を多く食べる方は量を減らすことを心掛けましょう。
ラーメンなどの麺類の汁を飲んでしまうとそれだけで6g近い塩分を摂ってしまうので[10]、残すのもポイントです。
また調理の際には、新鮮な食材をさまざまに使うことで食材の持ち味を活かして調味料の量を減らすことができます。
むやみに調味料を加えず、味見しながら必要な分だけ使うようにしましょう。
酢やケチャップ、マヨネーズといったナトリウムの少ない調味料や、こしょう、しょうが、柑橘(かんきつ)類といった香辛料・香味野菜・果汁を利用すると、減塩による物足りなさを緩和できると考えられます。
外食や加工食品は多くの塩分を含んでいるのでできるだけ控えるようにしましょう。
できることから少しずつ、減塩に取り組んでいってくださいね。
[10] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」
ポイント2 カリウムを十分に摂取する
高血圧の予防・改善のためにはカリウムを十分に摂取することも重要です。
カリウムにはナトリウムの排せつを促す作用があり、血圧を下げる効果があるとされています。
そのためWHOは成人に対して1日当たり3,510mgのカリウム摂取を推奨しています[11]。
しかし20歳以上の日本人のカリウムの平均摂取量は男性で2,439mg、女性で2,273mgとこの目標に達していません[12]。
カリウムの摂取量を増やすことが必要なのですね。
カリウムは野菜類や果物類、いも類、海藻類、豆類などに多く含まれています。
水溶性で煮たりゆでたりすると水に溶け出してしまうので、食材は生で摂るか、加熱する場合は蒸したり電子レンジを使ったりするのがおすすめです。
野菜料理を毎食欠かさず取り入れたり、果物を食べる習慣を身に付けたりして積極的にカリウムを摂取しましょう。
カリウムを豊富に含む食べ物が知りたいという方は以下の記事をご覧くださいね。
ポイント3 食物繊維を十分に摂取する
高血圧の予防・改善のためには食物繊維も積極的に摂取するようにしましょう。
食物繊維には消化・吸収されずに大腸にまで達し、便の材料となったり、腸内に住む善玉菌を増殖させたりするはたらきがあります。
そのため食物繊維は「おなかの調子を整える」成分として知られています。
また食物繊維にはナトリウムや脂質、糖質を吸着して体外に排出する作用もあり、これらが原因で起こる高血圧や肥満、糖尿病などの予防・改善にも効果が認められているのです。
ナトリウムの摂り過ぎや肥満は高血圧の原因となるので、それを解消できるなら積極的に摂取しておきたいですよね。
厚生労働省は成人の理想的な食物繊維摂取量は1日当たり24g以上であるとしています[13]。
しかし日本人の食物繊維摂取量は理想に遠く及ばず、1日の平均摂取量は20歳以上の男性で19.9g、同じく女性で18.0gです[14]。
少しでも多くの食物繊維を摂るよう心掛けることが重要なのですね。
食物繊維は野菜類、いも類、豆類、きのこ類、海藻類、果実類などに多く含まれている傾向にあるので、こうした食品を積極的に食事に取り入れましょう。
また主食を玄米や麦ご飯、胚芽米ご飯、全粒粉パンなどに置き換えることでも食物繊維摂取量を増やすことができますよ。
食物繊維を多く含む食べ物が知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
ポイント4 摂取カロリーを適切に抑える
高血圧の原因である肥満は摂取カロリーが消費カロリーを上回ることによって起こります。
そのため摂取カロリーを制限し減量を目指すことも重要です。
成人の1日当たりの推定必要カロリー(推定エネルギー必要量)は以下のとおりです。
【成人の推定エネルギー必要量(kcal)】
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
18〜29歳 | 2,300 | 2,650 | 3,050 | 1,700 | 2,000 | 2,300 |
30〜49歳 | 2,300 | 2,700 | 3,050 | 1,750 | 2,050 | 2,350 |
50〜64歳 | 2,200 | 2,600 | 2,950 | 1,650 | 1,950 | 2,250 |
65〜74歳 | 2,050 | 2,400 | 2,750 | 1,550 | 1,850 | 2,100 |
75歳以上 | 1,800 | 2,100 | - | 1,400 | 1,650 | - |
身体活動レベルについては以下のボックス内の内容を参照しご自身に合ったものを確認してください。
必要以上のカロリーを摂取してしまっている方は上記の表を参考に摂取カロリーを抑えるよう心掛けましょう。
ただし前掲の推定必要カロリーは平均的な体格かつ健康な方を対象に設定されたものです。
身長が著しく平均と離れているなど、ご自身の体格に合った推定必要カロリーを計算したいという方は以下の記事をご覧ください。
ポイント5 飲酒量を適切に抑える
高血圧の予防・改善のためには節酒を行うことも重要です。
「どれくらいのお酒なら飲んでも良いの?」
というのが気になるところですよね。
アルコールの濃度はお酒によって違い、心身への影響は飲んだお酒の量ではなく、摂取した純アルコール量に左右されます。
厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」を「1日平均純アルコールで約20g程度」と定義しています[16]。
純アルコール20gに相当する代表的なお酒の量は以下のとおりです。
ただし、アルコールの分解能力は人によって異なるため、自分の体質や状況に合わせて量を調整することが重要です。
女性は一般的に男性よりお酒に弱い傾向にあるため、男性より少ない量が適当であるといわれています[16]。
また65歳以上の高齢者の方も飲酒量を減らすように心掛けましょう[16]。
お酒を飲むときはおつまみの塩分量やカロリーにも注意してくださいね。
[16] 厚生労働省「健康日本21」
ポイント6 有酸素運動を適度に行う
適度に有酸素運動を行うことも高血圧の予防・改善における重要なポイントです。
高血圧の運動療法としては、30分以上の「ややきつい」と感じられる程度の有酸素運動を定期的に、できれば毎日行うことが勧められています[17]。
続けて運動を行うことが難しい場合には1回につき10分以上の運動を合計して1日40分以上行っても良いとされています[17]。
しかし、運動習慣がなく、急に体を動かすことが難しく感じられる方もいらっしゃるかもしれませんね。
いきなり激しい運動を行うのは体にとっても負担になるので、掃除や洗車をしたり、子どもと遊んだり、買い物に自転車で行ったりと初めは生活のなかで活動量を増やすことから始めても構いません。
その場合、1週間当たりの総運動時間、あるいは総消費カロリー(総エネルギー消費量)で考え、1回当たりの運動時間を長くして運動回数を減らしたり、運動強度を下げる代わりに運動回数を増やしたりして調節すると良いでしょう[17]。
また狭心症などの持病がある場合には運動を行うことで健康を損なってしまうことがあるので、事前に医療機関で健康状態を確認してくださいね。
運動を行う際には準備運動を行うのも重要ですよ。
ポイント7 禁煙する
禁煙も高血圧の予防・改善に重要だと考えられます。
「ずっとたばこを吸ってるから、今更禁煙しても意味がないんじゃない?」
このようにお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
確かに禁煙による効果は早く行うほど大きくなりますが、何歳であっても遅過ぎるということはありません。
30歳までに禁煙すればばたばこを吸う習慣がなかった方と同様の余命が期待でき、50歳で禁煙しても余命が6年延びることが分かっています[18]。
禁煙の効果は短期的なものも長期的なものもさまざまです。
血圧に関連する代表的なものをご紹介しましょう。
最後にたばこを吸ってから20分経つと、喫煙によって上昇していた血圧と脈拍が正常値まで下がります[18]。
また24時間後には心臓発作のリスクが低下します[18]。
2週間〜3カ月が経過すると喫煙によって低下していた心臓や血管などの循環器系の機能が改善します[18]。
2〜4年後には、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を発症する可能性が喫煙を続けていた場合と比較して35%も低下します[18]。
さらに10〜15年後にはさまざまな病気にかかるリスクがたばこを吸っていない方と同じレベルまで低下するのです[18]。
その他にも味覚や嗅覚が改善したり、たばこによる咳が出なくなったりと禁煙には多くのメリットがあります。
しかしいくらメリットがあると分かっていても、依存性のあるたばこを自分の意思だけでやめるというのは難しいものですよね。
たばこをやめたことによる口寂しさを軽減するものから血中のニコチン濃度を低い状態で維持することでニコチン切れの症状を緩和するものまで、さまざまな禁煙グッズが市販されています。
またたばこをやめたい方向けの専門外来「禁煙外来」もあり、一定の基準を満たす方には健康保険が適用されます。
これらを適宜活用して、たばこを吸わない健康的な生活を目指しましょう。
ポイント8 ストレスを解消する
ストレスを感じると交感神経が刺激され血圧の上昇を招いてしまいます。
適宜ストレスを解消することも高血圧の予防・改善につながると考えられるでしょう。
睡眠と入浴はストレス解消の基本といえます。
睡眠不足は交感神経を優位にし、高血圧を招いてしまうともいわれているので、しっかりと睡眠をとることが重要です。
ストレスがあると脳の緊張状態が続いて寝付きが悪くなるため、なかなか眠りにつけないという方もいらっしゃるかもしれませんね。
ヒトの体は体温が下がると眠気を感じる仕組みになっているので、入浴で一時的に体温を上げることで寝付きやすくなるといわれています。
就寝の2、3時間前の入浴がおすすめです。
湯船につかることで心身をリラックスさせる効果も期待できます。
38度のぬるめのお湯に25〜30分程度つかると寝付きの改善が期待できるでしょう[19]。
また腹部まで約40度のお湯につかり、30分ほど入浴する半身浴にも効果が認められています[19]。
ただし熱めのお湯は交感神経を優位にし、血圧の変動を招きやすいので注意が必要です。
布団に入ってもなかなか寝付けない場合は無理に眠ろうとせず、好きな本を読んだり、音楽を聴いたりすることで脳をリラックスさせられると考えられますよ。
ただしお酒やたばこ、考えごとは安眠を妨げてしまうのでやめてくださいね。
その他のストレス解消法が知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
ポイント9 こまめに血圧をチェックする
高血圧の予防のためには毎日の血圧チェックも重要です。
高血圧には自覚症状がほとんどなく気づかないことが多いので、普段から血圧を測定して自分の血圧を把握しておきましょう。
血圧は朝と夜の2回、座った状態で測定し、結果を毎回記録します[20]。
また仕事中などにストレスを強く感じている方は、可能であればそのときにも血圧を測ると良いでしょう。
ただし測定するときは毎回条件を守ることが重要です。
朝は起床後1時間以内、夜は就寝前の決まった時間に測定を行いましょう[20]。
測定前は1〜2分間安静にし[20]、喫煙や飲酒、カフェインの摂取は避けてください。
血圧計は手首ではなく、上腕にカフ(巻き付ける部分)を付けるタイプの方が正確性に優れているのでおすすめです。
測定する際は血圧計の腕に巻く部分(カフ)の高さを心臓の高さと合わせ、測っている間に話したり力んだり動いたりしないよう注意してください。
またトイレや服薬、食事、入浴など血圧の変動が起こりやすいことからは時間を空けて測定するようにしてくださいね。
[20] 特定非営利活動法人 日本高血圧学会、特定非営利活動法人 日本高血圧協会、認定特定非営利活動法人 ささえあい医療人権センターCOML「一般向け『高血圧治療ガイドライン2019』解説冊子 高血圧の話」
5.血圧が高い場合は医療機関を受診しよう
健康診断で血圧が高いことを指摘された、あるいは自宅で血圧を測定して高めの数値が続けて出た、という場合などには速やかに医療機関を受診しましょう。
血圧が高い状態が続くと動脈硬化を招き、さまざまな病気を引き起こす可能性があるため、できるだけ早く改善に取り組むことが勧められます。
また高血圧は何らかの病気によって引き起こされている場合もあるので、原因となる病気がないか確認しておくことも重要です。
「高血圧が疑われたら何科を受診すべきなの?」
と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。
高血圧の診療は内科や循環器科が行っています。
最寄りの病院に足を運んでみましょう。
6.高血圧についてのまとめ
血圧とは心臓から送り出された血液が上腕動脈の壁を押す力のことです。
高血圧とは血圧が慢性的に高い状態のことで、病院で測った場合は最高血圧140mmHg以上、あるいは最低血圧90mmHg以上の場合に該当します[21]。
また家庭で測った血圧の基準値は最高血圧135mmHg以上、または最低血圧85mmHgです[21]。
高血圧は生活習慣や遺伝的要因が組み合わさって起こる本態性高血圧と、高血圧を引き起こす何らかの病気が原因となっている二次性高血圧に分けられ、多くの場合は前者に該当します。
高血圧には自覚症状はほとんどありませんが、放置していると動脈硬化の進行を招きます。
動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中、腎臓病など命に関わる大きな病気を引き起こすため、高血圧を予防・改善し進行を防ぐことが重要なのです。
本態性高血圧は食塩の過剰摂取、肥満、飲酒、運動不足、喫煙、ストレスなどに加え、遺伝的要因などが原因となって引き起こされます。
そのため生活習慣を改めることで、血圧の改善が期待できます。
特に日本人の高血圧の最大の原因は食塩の摂り過ぎであるといわれているため、減塩は必須です。
食塩の主成分であるナトリウムは血圧上昇の原因となってしまうので、1日当たり6g未満を目標に食塩の摂取量を減らしましょう[22]。
また食事面では、ナトリウムの排せつを促すカリウムや食物繊維の摂取、肥満の予防・改善のためのカロリー制限も効果的だと考えられます。
その他に節酒や禁煙、有酸素運動を行うことも重要です。
ストレスを解消し、血圧をこまめに測定することも心掛けましょう。
ただし高血圧が疑われる場合にはご自身の判断で改善に取り組むのではなく、まずは医療機関を受診してくださいね。
この記事の情報を参考に、末長く健やかな日々を過ごせるよう生活を改善していきましょう。
[21] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」
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