「塩分摂取量の目安はどのくらいなんだろう?」
「適切な塩分摂取量を目指すにはどうしたら良いのかな?」
塩分摂取量は控えた方が良いことは分かっていても、どのくらいにしたら良いか分からない方が多いかもしれません。
一般的に塩分摂取量の目安は食品に含まれるナトリウムの量から推定された「食塩相当量」で示されています。
ナトリウムは塩分の主成分で、ヒトの体にとって欠かせない栄養素の一つです。
しかし現在の日本人の塩分摂取量は目標量よりも上回っているため、過剰摂取による悪影響を避けるための対策が必要とされています。
この記事では1日当たりの塩分摂取量の目安、日本人の塩分摂取量の平均値、塩分の過剰摂取による体への影響とその対策について解説します。
1.塩分摂取量の目安
「1日当たりの塩分摂取量はどのくらいが良いのかな?」
このように具体的な数値を知りたい方も多いでしょう。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日当たりの摂取目標量を食塩相当量として18歳以上の成人男性で7.5g未満、同じく女性で6.5g未満と設定しています[1]。
この数値は過剰摂取による生活習慣病の予防を考慮した目標量です。
世界保健機関(WHO)では全ての成人に対して摂取量を食塩相当量で1日当たり5.0g未満にすることを強く推奨しています[1]。
しかし日本ではWHOの基準を満たしている人の割合が極めて低いため、摂取目標量はWHOの推奨する摂取量と「平成28年国民健康・栄養調査」で報告された摂取量の中央値との中間値を取り設定されているのです[1]。
加えて「高血圧」の改善や「慢性腎臓病」の重症化を予防するために、1日当たりの塩分摂取量を食塩相当量として男女ともに6g未満にすることを推奨しています[1]。
なお、食塩相当量とは食品に含まれる「ナトリウム」の量から食塩の量を推定したものです。
ナトリウムについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ナトリウムとは?体内でのはたらきや摂取目標量、摂取の注意点を解説
ナトリウムは食塩以外の形でも食品に含まれています。
例えば、うまみ成分として知られる「グルタミン酸ナトリウム」「イノシン酸ナトリウム」「グアニル酸ナトリウム」もナトリウムを含む物質です。
またラーメンなどの製麺に使用される「かんすい」、パンやケーキなどに使われるベーキングパウダーにもナトリウムが含まれています。
つまり食塩相当量には食塩以外のナトリウムの量も含まれているため、実際の食塩の量とは異なることに注意が必要です。
塩分摂取量の目安は過剰摂取を考慮して多めに見積もったものになっているのですね。
2.日本人の塩分摂取量の平均値
「普段どのくらいの塩分を摂取しているんだろう……」
私たちの塩分摂取量は平均的にどれくらいなのか、気になりますよね。
そこで、この章では日本人の塩分摂取量の平均値を紹介しましょう。
2-1.年代別の塩分摂取量の平均値
厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」によると、年代別の塩分摂取量の平均値は食塩相当量で以下のとおりです。
【年代別の塩分摂取量(食塩相当量)の平均値(g)】
年代 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20代 | 10.6 | 8.3 |
30代 | 10.4 | 8.5 |
40代 | 10.6 | 8.9 |
50代 | 10.6 | 9.2 |
60代 | 11.5 | 10.0 |
70代 | 11.5 | 9.8 |
80代以上 | 10.3 | 9.0 |
1日当たりの塩分摂取量の目標量は食塩相当量として成人の男性で7.5g未満、成人の女性で6.5g未満のため、塩分摂取量の平均値は全年代で目標量よりも大きく上回っています[2]。
また表のとおり年齢を重ねるごとに塩分摂取量の平均値は上昇する傾向にあり、男性は60・70代、女性は60代で最も高い数値を示しています。
全ての年代において塩分を過剰に摂取しているのですね。
2-2.地域別の塩分摂取量の平均値
「塩分摂取量は地域によって傾向があるのかな?」
と気になる方もいらっしゃるかもしれません。
そこで塩分摂取量の平均値が高い都道府県を男女別に紹介しましょう。
【塩分摂取量(食塩相当量)が多い都道府県(20歳以上の男性)】
都道府県 | 平均値(g) |
---|---|
宮城県 | 11.9 |
福島県 | 11.9 |
長野県 | 11.8 |
福岡県 | 11.7 |
秋田県 | 11.6 |
【塩分摂取量(食塩相当量)が多い都道府県(20歳以上の女性)】
都道府県 | 平均値(g) |
---|---|
長野県 | 10.1 |
福島県 | 9.9 |
山形県 | 9.8 |
青森県 | 9.7 |
千葉県 | 9.7 |
表のとおり福島県などの東北地方や長野県の塩分摂取量が多い傾向にあります。
東北地方の塩分摂取量が多い理由として、気候が大きく関係しているとされます。
東北地方は雪が多く寒い地域であることから、収穫した食料を保存するために塩蔵し体温を維持するために塩分を摂取していました。
そのため東北は全国でも塩分摂取量が多い傾向にあるのです。
一方で長野県は漬物を食べながらお茶を飲んだり食事で塩魚や味の濃いみそ汁など塩分の多いものを摂ったりする習慣があるため、塩分摂取量が多くなりやすいといわれています。
地域の食文化によって塩分摂取量が多くなりやすい場合もあるのですね。
3.塩分を過剰に摂取した場合の体への影響
塩分を過剰摂取すると口が渇いたりむくんだりする他、高血圧などのさまざまな病気のリスクが高まります。
通常、体内のナトリウムは一定の濃度に保たれています。
しかし塩分を過剰摂取すると体内のナトリウムの濃度が高くなり、この濃度を正常に戻すために体内に水分をため込もうとして水分量が増加します。
この結果、体がむくんだり血液量が増加して血圧が高くなったりします。
さらに慢性的な塩分の過剰摂取は、高血圧や胃がんなどの生活習慣病を引き起こす場合があるため注意が必要です。
特に高血圧は20歳以上の日本人の約半数が該当するとされており、最も患者数の多い病気として知られています[3]。
自覚症状がほとんどないため、気付かないうちに進行して血管が厚く硬くなり本来の弾力性を失う「動脈硬化」という状態になります。
動脈硬化になると血管が詰まったり破れたりしやすくなり、「心臓病」や「脳卒中」など命に関わる生活習慣病を引き起こす可能性があります。
高血圧の最大の原因は塩分の摂り過ぎであるため、高血圧の予防・改善には塩分摂取量を制限することが重要とされています。
高血圧をはじめさまざまな病気を引き起こさないためにも、塩分の過剰摂取には注意したいですね。
4.塩分の過剰摂取による悪影響を避けるためのポイント
「塩分の過剰摂取を避けるためにはどうすれば良いかな?」
健康への悪影響を防ぐためにも、塩分の過剰摂取を避けたいですよね。
塩分過多の影響を避けるためには、塩分を含む食品の摂取を控える他、カリウムや食物繊維を多く含む食品を摂ることが必要です。
この章では塩分の過剰摂取による悪影響を避けるためのポイントを詳しく解説します。
ポイント1 塩分を控える
塩分の過剰摂取による悪影響を避けるためには、何よりもまず塩分自体の摂取を控えることが重要です。
日本人の食生活は塩分が多くなりやすい特徴があり、実際に日本人の塩分摂取量は目標量を大きく上回っています。
まずは塩分を多く含むしょうゆやみそなどの調味料、漬物やソーセージなどの加工食品の摂取を減らすようにしましょう。
料理の味付けを薄めにするように心掛けることもポイントです。
しょうゆやソースをかける習慣がある場合はつける習慣に変える、漬物を多く食べたり汁物をよく飲んだりする習慣がある場合は1回の量と摂取頻度を減らすなどの工夫で塩分摂取量を抑えることができます。
またラーメンなどの麺類の汁を全て飲み干すと6g程度の塩分を摂取してしまうため、飲み干さないよう注意しましょう[4]。
近年では減塩みそや減塩しょうゆなど減塩タイプの調味料や加工品などが販売されています。
これらを上手に取り入れると良いでしょう。
減塩食品については特定非営利活動法人 日本高血圧学会の「さあ、減塩!〜減塩・栄養委員会から一般のみなさまへ〜」というサイトで情報を公開しているので、参考にしてくださいね。
その他には、レモンや酢などの酸味やしょうがやこしょうなどの香辛料を使用すること、ハムやソーセージをゆでることも有効です。
自分の生活に合った方法で塩分摂取量を減らしてくださいね。
ポイント2 カリウムを十分に摂る
塩分摂取量を減らすだけではなく、塩分を排出するはたらきのあるカリウムを十分に摂るようにしましょう。
カリウムはミネラルの一種で、ナトリウムを体外に排出するはたらきがあります。
そのためカリウムを十分に摂ることで、血圧低下や脳卒中を予防する効果が期待できます。
カリウムを多く含む食品には野菜類や果実類、豆類、海藻類などがあります。
カリウムは水溶性であるためゆでたり煮たりすると水に溶け、加工や精製が進むと含有量が減少します。
そのため野菜や果物を生のままで摂ることで、効率良くカリウムを補給することができるでしょう。
加熱して摂取する場合は、ゆで汁に流れた分も摂取することができるスープなどにするのがおすすめです。
カリウムの効果や多く含む食べ物などについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ポイント3 食物繊維を十分に摂る
カリウムだけでなく食物繊維を摂ることで、塩分の過剰摂取による悪影響を防ぐことができます。
食物繊維は食品中に含まれているヒトの体内で消化・吸収されないものをいいます。
便の材料となり便の量を増加させるとともに、腸内細菌の餌となり腸内環境を整えます。
さらに食物繊維には体内の糖や脂肪、ナトリウムなどを吸着して体外に排出する作用もあるため、血圧上昇や肥満などを予防・改善する効果が期待されています。
このように積極的に摂りたい栄養素ですが、現在はほとんどの日本人が摂取不足だといわれています。
食物繊維は野菜類、果実類、豆類、きのこ類、海藻類、穀類などの植物性食品に含まれており、これらの食品を積極的に摂ることが重要です。
特にそば、ライ麦パン、しらたき、切り干し大根、ごぼう、ブロッコリー、納豆、おから、しいたけ、ひじきなどでは1食当たり2〜3gの食物繊維を摂取できるとされます[5]。
まずは普段の食事にこれらの食品を取り入れて食物繊維の摂取量を増やすと良いでしょう。
食物繊維の効果や多く含む食べ物などについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
食物繊維を手軽に摂れる食べ物は?効果や食事摂取基準も徹底解説
5.1日の塩分摂取量の目安についてのまとめ
厚生労働省は1日当たりの塩分摂取量の目標量を食塩相当量として、18歳以上の成人男性では7.5g未満、同じく女性では6.5g未満と定めています[6]。
この数値は塩分の過剰摂取による体への悪影響を予防するために定められた目標量です。
しかし、現在の日本人の塩分摂取量は目標量を大きく上回っています。
長期にわたり塩分を過剰摂取していると、高血圧をはじめとした生活習慣病を引き起こし命に関わるリスクが高くなります。
そのため、できるだけ早めに対策することが重要です。
塩分の過剰摂取による悪影響を避けるためには、調味料や加工食品など塩分を含む食品の摂取を控えるようにしましょう。
またカリウムや食物繊維を積極的に摂ることで、血圧上昇や病気を予防する効果が期待できます。
塩分摂取量の目安や平均値を知り、日々の健康に役立ててくださいね。