「痩せたいけど、痩せすぎは健康に良くないのかな?」
と疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
痩せすぎると糖尿病などを発症するリスクが高まる他、高齢になると運動機能が悪化しやすくなったり、女性では生理不順になったりと体にさまざまな悪影響が生じます。
特に女性は痩せている体形への憧れから無理なダイエットをしてしまい、痩せすぎとなることがあるため注意が必要です。
この記事では痩せすぎの定義やリスク、健康的に痩せるためのポイントを詳しく解説します。
ダイエットをしたいと考えている方はぜひ参考にしてみてくださいね。
【関連情報】 「簡単ダイエット!日々の生活で実践できる8つの工夫」についての記事はこちら
1.「痩せすぎ」に定義はある?
「痩せすぎってどのくらい痩せることなんだろう?」
このように気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
体格は「BMI」によって判定され、「痩せ」の基準はありますが、それを超えた「痩せすぎ」についての明確な基準はありません。
BMIは[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で求められ、日本肥満学会の基準では18.5未満を「低体重(痩せ)」、18.5以上25未満を「普通体重」、25以上を「肥満」と分類されています[1]。
例えば身長160cm(1.6m)で体重47kgの方のBMIは、47÷(1.6×1.6)=18.36と算出でき、痩せに該当することが分かりますね。
肥満は動脈硬化などの生活習慣病の原因になることから、健診などでは特に問題視されやすい傾向があります。
一方で痩せもさまざまな病気を引き起こすことがあり、特に若い女性では健康的な体形への誤った認識などによって痩せすぎが起こりやすいため注意が必要だといわれています。
痩せには糖尿病や緑内障などを発症するリスクがあるだけでなく、生理不順を引き起こし妊娠しにくい状態となってしまうこともあります。
さらに、必要以上に痩せたいと感じることによって摂食障害などの精神的な病気を招くことがあるので注意が必要です。
日本人女性での「痩せ(低体重)」の割合は20代で20.7%、30代で16.4%にも及びます[2]。
また実際に自分のことを太っていると思っている若い世代の女性の半数以上が、標準体重以下だといわれています[3]。
健康的な生活を維持するには、適切な体重を理解し 肥満だけでなく痩せすぎにも留意していく必要があるのですね。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「BMI」
[2] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」
2.痩せすぎによって高まるリスク
「痩せすぎると体にどんな影響が表れるんだろう?」
と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
痩せているとさまざまな病気を発症するリスクがあり、運動機能へ影響が出ると将来的には介護が必要な状態を招くこともあります。
この章では痩せが体に及ぼす影響について詳しく解説します。
痩せによって生じるリスクを知ると、早めの対策に取り組むことができるでしょう。
健康的な毎日を送れるように、ぜひ参考にしてみてくださいね。
2-1.糖尿病
痩せている方でも糖尿病を発症するリスクがあり、特に日本は女性の痩せ傾向が高く、痩せた女性は太った女性同様に糖尿病のリスクが高いと考えられます。
糖尿病は「インスリン」というホルモンが不足したり、はたらきが悪くなったりすることが原因で高血糖の状態が続く病気です。
私たちの体では食事によって血糖値が上がると、インスリンの作用によってさまざまな臓器などにブドウ糖が運ばれ、生命活動を維持するエネルギーとして利用されます。
余った糖は肝臓や筋肉などに蓄えられ血糖値が低下します。
反対に空腹などによって血糖値が下がると、蓄えられた糖が分解され再びエネルギーとして活用されます。
このように私たちの体ではインスリンなどのホルモンのはたらきによって、血糖値が調整されているのですね。
しかし遺伝や生活習慣の乱れなどが原因で、インスリンのはたらきが低下すると高血糖となり糖尿病のリスク因子となります。
痩せている女性では糖を取り込む筋肉が少ないことなどが影響し高血糖になりやすいといわれています。
高血糖の状態が続くと動脈硬化などの病気を引き起こす恐れがあるので、注意していきたいですね。
2-2.ロコモ・フレイル
痩せすぎは高齢期におけるロコモ(ロコモティブシンドローム)やフレイルのリスクを高めるといわれています。
ロコモとは運動器の障害のために移動機能の低下を来たした状態をいいます。
私たちは骨や筋肉などの運動器によって、立ったり歩いたりする日常動作を行っています。
しかし痩せている方は食事量が少なく栄養不良が起こりやすいため、骨や筋肉などが衰えやすくなります。
そうすると身体能力が低下して転倒によるけがなどが生じやすくなります。
このようにロコモでは、将来的に要支援や要介護の状態となる恐れが高まるため注意が必要です。
またフレイルは、加齢とともに心身の活力が低下し日常生活に支障を来しているが、適切な介入や支援によって生活機能の維持・向上が可能な状態とされています。
フレイルには体重や筋力の低下に加えて、気力や認知機能の低下などの精神的な変化も含まれます。
フレイルの状態では何らかの病気を発症した際に悪化しやすくなったり、環境の変化に対応できず感情をコントロールできなくなったりする恐れがあるといわれています。
高齢期のロコモやフレイルを予防するには、若いうちからの運動習慣や栄養バランスのとれた食事を心掛けることが重要です。
2-3.月経異常・不妊・低体重出産
女性の痩せでは月経異常などが起こり、不妊や低体重出産などを招く恐れがあります。
女性の痩せでは、栄養不足によって卵巣の機能が低下することがあります。
卵巣は排卵したり、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンを分泌したりするはたらきをします。
女性の体では排卵や月経などのサイクルによって、二つの女性ホルモンの分泌が調整されています。
しかし栄養が不足すると、卵巣から女性ホルモンが正常に分泌されなくなり、月経周期が乱れたり無月経になったりすることがあります。
このように卵巣の機能が低下すると不妊につながる恐れがあるため注意が必要です。
また痩せていて栄養不足の状態で妊娠した場合には、出生時の赤ちゃんの体重が2,500g未満となりやすいともいわれています[4]。
おなかの中にいる赤ちゃんの栄養状態が悪くなると、さまざまな臓器の発育に影響を及ぼし、インスリンが作用しにくくなるなどが生じることがあります。
その影響は出生後も持続するため、栄養をため込みやすい体になります。
このようなことから低体重で生まれた赤ちゃんは将来的に、糖尿病や高血圧などの生活習慣病になるリスクが高まると考えられています。
そのため自分やおなかの赤ちゃんの健康を維持するには、栄養を十分に摂り適切に体重管理をすることが重要なのですね。
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「若い女性の「やせ」や無理なダイエットが引き起こす栄養問題」
2-4.緑内障
痩せている男性は緑内障のリスクが高まるとされています。
緑内障とは目の中の圧力が高くなることで、目の神経が圧迫される病気です。
緑内障になると視力が低下したり視野が少しずつ狭くなったりします。
痩せていることが直接的に緑内障の原因になるとは考えられにくいのですが、痩せている方は「視神経乳頭」のへこみが大きい傾向があるといわれています。
視神経乳頭のへこみは緑内障の指標の一つであり、大きいと緑内障が疑われます。
男性は高齢かつ痩せている場合に視神経乳頭のへこみが大きい傾向があり、緑内障のリスクが高いといわれています。
3.無理なダイエットによる悪影響
「無理なダイエットをすると体にどんな影響が出るんだろう?」
と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日本に痩せた若い女性が多い原因には、適切な体形への認識不足や、痩せている方が良いという価値観、誤ったダイエット方法の実施などがあると考えられています。
無理なダイエットによって生じるリスクを知った上で、健康的な体つくりができるよう参考にしてくださいね。
3-1.栄養の偏り
誤ったダイエット方法は栄養の偏りが生じやすくなります。
極端に食べる量を制限する方法や、特定の食品のみを摂取する方法で栄養が偏ると便秘や貧血、骨粗しょう症などが引き起こされることがあります。
便秘は食物繊維が欠乏したり、食事量を極端に減らしたりすることによって起こります。
食物繊維には腸の動きを活発にし、便通を良くするはたらきがあります。
そのため食物繊維が欠乏して便秘が起こると、便が腐敗して体に良くない物質が正しく代謝・排出できず肌荒れなどの原因になります。
さらに必要な栄養素が不足していると基礎代謝が低下して脂肪が燃えづらくなるため、痩せにくい体になるともいわれています。
また鉄が不足すると貧血を生じることがあります。
貧血とは簡単にいうと血液が薄くなった状態です。
ヒトの血液中の赤血球にある「ヘモグロビン」は、酸素を全身に送る重要なはたらきをしています。
鉄はヘモグロビンを作る材料であるため、不足するとヘモグロビンが十分に作られず貧血となります。
貧血では体が酸素不足の状態となり、体のだるさや疲れやすさなどの症状が出現しやすくなります。
特に女性は月経があるため鉄分を十分に摂ることが重要です。
その他にもカルシウムや、カルシウムの吸収を促進するビタミンDが不足すると骨粗しょう症の原因となります。
骨粗しょう症は骨が脆くなり、骨折しやすい状態になることです。
体では、カルシウムが骨に取り込まれることによって骨の強さが保たれています。
しかし骨の強さの指標の一つである「骨密度」は男女とも20歳頃がピークで、その後加齢に伴い低下します。
特に女性が閉経すると骨を作るのに関与するエストロゲンが減少するため、骨粗しょう症を発症しやすくなるといわれています。
その他にもカルシウムの摂取量が慢性的に不足することで、骨からカルシウムが溶け出してしまい骨粗しょう症になるリスクが高まります。
高齢になり骨粗しょう症による骨折が起こると、寝たきりや要介護になる恐れがあるため、早めの予防が重要です。
このように食事量を極端に制限したり、特定の食品のみを摂ったりする偏ったダイエットをすると、健康を損なうリスクが大きいため避けるようにしましょう。
3-2.摂食障害
「痩せ願望」が強くなると摂食障害を引き起こす恐れがあります。
摂食障害とは食行動に関して重大な障害が生じる精神疾患のことで、主に「拒食症」や「過食症」があります。
拒食症は太ることを恐れて食べることを避けるようになり、極端に痩せてしまう状態をいいます。
一方過食症では、週に数回・数カ月間にわたって過食が見られ、それと同時に体重増加を防ぐための嘔吐や下剤の使用などの行動が現れます。
摂食障害が続くと無月経や低血圧、不整脈などを招く恐れがあります。
摂食障害は強い「痩せ願望」や太ることへの恐怖、不安、ストレスなどが原因で起こるといわれています。
そのため摂食障害を防ぐには、必要以上に痩せたいと思い込まないことや日頃からストレスをため込まないことが重要です。
4.健康的に痩せるためのポイント
「健康を維持したまま痩せるには何に気をつけたら良いんだろう?」
と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まずは自分のBMIを求め、痩せる必要があるかどうかを確かめてみましょう。
その上で食事や運動などの生活習慣を改善していくようにしてくださいね。
ポイント1 バランスの取れた食生活を心掛ける
健康的に痩せるためにはバランスの取れた食生活を送ることが重要です。
まずは糖質や脂質、たんぱく質をバランス良く摂るように心掛けましょう。
糖質や脂質を摂り過ぎたり、摂取カロリーが消費カロリーを上回ったりすると中性脂肪として蓄積されやすく肥満の原因となります。
特にご飯のおかわりや、お酒、ジュース、甘いお菓子、油ものの食べ過ぎはカロリーの過剰摂取となりやすいため注意が必要です。
食事の際は主食や油もの、間食、お酒を控えるようにしましょう。
日常的に甘い飲み物を飲む方は無糖のお茶類に変えるなど工夫をしてくださいね。
一方でたんぱく質は筋肉を作る材料であり、筋力を維持・向上させる上で特に重要な栄養素です。
筋肉量を増やすと「基礎代謝」を高めることができるため、痩せやすく太りにくい体作りに効果的だといわれています。
たんぱく質が不足すると筋力が落ちることが分かっています。
たんぱく質のなかでも卵や肉などの「良質なたんぱく質」はたんぱく質の含有量が多く、体内で有効活用されやすいとされています。
良質なたんぱく質には卵類や肉類などが該当しますが、肉や魚は脂質も多いため食べ過ぎには注意しましょう。
食事の際には卵などの動物性たんぱく質と、大豆などの植物性たんぱく質をバランス良く摂るようにしてくださいね。
その他にも偏ったダイエットによる便秘や骨粗しょう症、貧血などを防ぐために食物繊維やカルシウム、鉄分なども上手に取り入れるようにしましょう。
食物繊維はにんじんやキャベツ、海藻類、きのこ類などに含まれており、カルシウムは小松菜などの緑黄色野菜、ひじき、豆腐などから摂ることができます。
カルシウムの吸収を促進するビタミンDは鮭やしいたけなどに含まれているので、一緒に摂るようにしてくださいね。
また、鉄は豚レバーやかつおなどの赤身の魚、糸引納豆、小松菜などから摂ることができます。
また、鉄の吸収を促進するビタミンCはほうれん草やにんじんなどの緑黄色野菜などに含まれているため、併せて摂ると良いでしょう。
このように日々の食事ではバランス良く栄養を摂取するよう心掛けてくださいね。
ポイント2 適度な運動をする
健康的に痩せるには、適度な運動を取り入れることが有効です。
ダイエット効果を期待できる運動には有酸素運動と筋トレがあります。
有酸素運動は筋肉を動かすエネルギーに脂質や糖質が使われる運動で、水泳やウォーキング、ジョギング、サイクリングなどがあります。
有酸素運動で効果的に体脂肪を燃焼させるには、1日で合計30分の運動に取り組むことが重要です[5]。
まとまって30分取れない場合には数回に分けて取り組むと良いでしょう[6]。
また筋トレは基礎代謝を高め、痩せやすい体を作るのに有効です。
筋トレはダンベルなどの器具を使った方法以外にも、スクワットや腕立て伏せなど自宅で手軽に行える方法があります。
筋トレは基礎代謝を上げて消費エネルギーを増やすことができる他、有酸素運動の脂肪燃焼効果をアップさせる効果があるといわれています。
まずは筋トレによって体脂肪が燃えやすい状態を作り、続けて有酸素運動を行うことでより効果的に体脂肪を燃焼させることができるのです。
筋トレ後に有酸素運動という順番で行い、効率よく健康的な体を目指していきましょう。
[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症を改善するための運動」
[6] 厚生労働省 e-ヘルスネット「内臓脂肪減少のための運動」
ポイント3 ストレスを解消する
健康的に痩せるにはストレスを溜め込まないことが重要です。
食事量を極端に制限するような無理なダイエットでは、一時的に体重を減らすことができます。
しかし食事量を過度に減らすと、少ないエネルギーで生命を維持するために脂肪としてエネルギーをため込みやすい体になってしまいます。
そのため食事量を元に戻すとリバウンドを招いてしまいます。
また無理なダイエットでストレスがかかると、ストレスホルモンが分泌されて食欲がコントロールしにくくなる恐れもあります。
そのためダイエットを成功させるには、無理をせずに取り組んでいくことが重要です。
ストレスを解消する方法には適度な運動や十分な睡眠などがあります。
適度な運動をすると、一般に幸せホルモンとして知られている「セロトニン」が分泌され、食欲が抑えられるだけでなくストレスを和らげる効果が期待できます。
また、睡眠をしっかりとることによって食欲が抑えられるため間食などを防ぐことができます。
最適な睡眠時間は個人差があるため、朝すっきり目覚められる睡眠時間を確保できるようにすると良いでしょう。
その他にも、カラオケに行ったりゆっくり入浴したりすることでストレス解消することもできます。
自分に合った方法で日々ストレスをため込まないようにしてみてくださいね。
5.痩せすぎの影響についてのまとめ
痩せすぎは体に多くの悪影響を及ぼします。
糖尿病や緑内障を招く恐れがある他、高齢になるとロコモやフレイルなどによって寝たきりや要介護のリスクが高まったり、女性であれば無月経から妊娠しにくくなったりすることがあります。
日本の若い女性は必要以上に痩せたいと思う傾向があり、無理なダイエットによって栄養が偏って貧血になったり将来的な骨粗しょう症のリスクが高まったりすることもあります。
痩せたい気持ちや太ることへの恐怖が強くなると、摂食障害に陥る危険性もあるため注意が必要です。
健康的に痩せるには必要な栄養素をバランス良く摂取し、有酸素運動で脂肪を燃焼させると同時に筋トレで基礎代謝を上げるようにしましょう。
リバウンドや挫折を避けるには、適切にストレスを解消していくことも重要です。
肥満と同様に痩せすぎも健康への悪影響をもたらすため、無理せず健康を維持したままダイエットに取り組むようにしてくださいね。