「疲れて夜遅くに帰って来たのに、布団に入ってからもなかなか眠れない……」
「寝不足のせいで、翌日の仕事中も集中できずミスをしてしまった……」
寝つきの悪さと睡眠不足に伴う昼間の不調に悩んでいる方は多いのではないでしょうか?
今回の記事では、眠れないときに考えられる原因について詳しく解説した上で、自宅ですぐにできる対処法を紹介します。
眠れない原因が分かり自分に合う適切な対処法を実践できれば、日中の活動パフォーマンス向上にもつながるでしょう。
1.眠れない原因は?
眠ろうとしてもなかなか眠れず、結果的に睡眠時間が短くなり翌日の活動に支障をきたす状態は、「入眠障害」と呼ばれる不眠症状の一種です。
不眠症状には入眠障害の他に「中途覚醒」「早朝覚醒」などがあります。
不眠症状が引き起こされる原因は一つではなく、ストレスや生活習慣の乱れ、薬剤の副作用など多岐にわたり、これらが複合的に作用している場合もあります。
ここで紹介する眠れない代表的な原因は三つです。
【関連情報】 「睡眠不足の悪影響とは?質の高い睡眠をとるためのポイントも解説」についての記事はこちら
1-1.ストレスや緊張・不安
ストレスや緊張・不安などによる自律神経への影響は、眠れない原因になりえます。
自律神経とは、自分の意思とは関係なく、体内を適切な状態に保つためにはたらく神経です。
自律神経は二種類あります。日中の活動的なときは「交感神経」が優位にはたらき、リラックス状態になるときはもう一つの「副交感神経」が優位となり眠気が生じる仕組みです。
しかし、ストレスによって脳が刺激されると、この交感神経と副交感神経のリズムに乱れが生じてしまいます。
その結果、夜になっても副交感神経が優位にならず、眠りたいと思っても、自律神経が活動モードのままのためなかなか寝つけなくなると考えられます。
1-2.刺激物や薬の影響
カフェインやニコチンには覚醒作用があるため、コーヒーや紅茶を飲んだりたばこを吸ったりすると眠りにくくなります。
さらにカフェインは利尿作用があり、眠れたとしてもトイレに行きたくなって起きてしまうという影響もあります。
アルコールは寝つくまでの時間を短縮する効果があるとされます。
しかし、中途覚醒が増加し睡眠の質を落とす恐れがあるため、睡眠導入剤の代わりとしては不適切です。
また、服用中の薬の副作用によって眠りが妨げられている可能性もあります。
不眠症を引き起こす可能性がある薬剤は、「抗がん剤」「降圧剤」「甲状腺製剤」などです。
日中に眠気が強く出るという場合には、「抗ヒスタミン薬」の副作用の影響も考えられます[1]。
1-3.生活習慣の乱れ
不規則な生活による生活習慣の乱れも、夜眠れない原因の一つです。
眠る時間や食事の時間が日によって異なると、体内時計のリズムが乱れ、眠ろうとした時間に自然に寝つくのが難しくなります。
不適切な時間の食事は不眠症だけでなく、生活習慣病を引き起こす原因にもなるため避けるべきです。
また、夜間勤務の後などで昼間に眠ろうとすると、周囲の騒音や明る過ぎる環境のせいで眠れない・眠っても途中で目が覚めてしまい十分な睡眠がとれない場合もあります。
シフトワークだけでなく、平日の睡眠不足を休日の寝だめで解消しようとして起こる就寝・起床時間のズレも「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)」として問題になっています。
2.不眠には病気が隠れていることも
不眠症状は、刺激物・薬の影響や生活習慣の乱れ以外にも、さまざまな病気で引き起こされることがあります。
「高血圧」「心臓病」「呼吸器疾患」「腎臓病」「糖尿病」「関節リウマチ」「アレルギー疾患」などによる体の痛みや咳(せき)、かゆみなどによって眠りが妨げられる場合もあります。
病気が原因の不眠症であれば、不眠症ではなく背後の病気そのものの治療に専念することが大切です。症状が治まれば、自然と不眠の悩みも解決するでしょう。
また、他の原因による不眠だと思っていたら、うつ病だったというケースもありえます。
不眠症状の他に、気分の落ち込みや趣味が手に付かないなど他の症状が見られる場合は、専門医を受診してみましょう。
3.眠れないときの対処法は?
室温の調整やストレッチ、ツボ押しなどは気軽に試しやすい方法です。
慢性的な不眠に悩まされている人は、医師に相談の上で睡眠導入剤や漢方の服用も検討してみると良いでしょう。
3-1.睡眠環境を整える
睡眠にとって重要なのは、自身の体や神経の状態だけでなく、寝ている体を取り巻く環境です。
例えば、体が沈み込んでしまうほど柔らかいマットレスや、体を圧迫する硬い布団では、快適な寝相が妨げられてしまいます。
また、寝床の温度や湿度によって体温調節がうまくできない状態も、睡眠に影響を与えます。
寝具をちょうど良い硬さや吸湿性・放湿性の良いものにすることで、眠りの質を高められるでしょう。
すぐにできる対処法として、寝室内の温度と湿度を適度に調節するのも重要です。
室温は約20℃、湿度は40~70%に保つのが眠りにとって良いとされています。
また、寒さが厳しいときは就寝前に布団の中を温めておくと眠りにつきやすくなります。
3-2.自分に合うリラックス法を試す
感情を落ち着かせ副交感神経を優位にするために、就寝前にリラクゼーションの時間をつくってみましょう。
ゆったりとした音楽や指圧などのマッサージは、代表的なリラックス方法です。
寝る30分~6時間前に湯船につかって体を温めるのもおすすめです。眠りにつきやすくなる、深い眠りの時間が増えるなどの効果が得られます[2]。
ただし、湯温は高過ぎないように注意しましょう。
就寝直前は40℃程度であればリラックス効果が期待できますが、42℃以上の高温浴を行うと、かえって入眠が妨げられることがあります。
また、適度なストレッチにはストレス解消や感情を落ち着かせる効果があるため、睡眠の促進につながるでしょう。
入浴やストレッチの時間が確保できない人は、アロマセラピーとして寝室にリラックス効果のある香りを取り入れるだけでも、眠りやすくなる可能性があります。
どの方法が最もリラックスできるのかは人によって異なるため、自分に合うリラックス方法を見つけるためにも手軽なものから試してみましょう。
3-3.眠れないときにきくツボを押す
東洋医学において刺激することで症状が良くなるとされている「ツボ」にも、眠れないときに有効なものがあります。
ツボを刺激するタイミングは寝る30分~1時間前に、強く押し過ぎるとかえって目が覚めてしまうので、気持ちが良いと感じるくらいの刺激にとどめましょう。
3-3-1.手・腕にあるツボ「神門」「内関」「労宮」
手・腕にある快眠のツボは、主に以下のとおりです。
【手・腕にあるツボ】
(1)神門(しんもん)
(2)内関(ないかん)
(3)労宮(ろうきゅう)
神門は手のひらの小指側の手首にあるでっぱりの真下のツボです。骨を押し上げるようにツボを押します。
内関は、握りこぶしを作ったときに、手首の内側に浮かび上がる2本の腱(けん)の間にあり、手首のシワから肘側に指3本分の位置にあります。
消化に関する不調の改善にも良いとされています。
また、労宮は、軽く握りこぶしを作ったときに人さし指と中指の先端の間にあるツボです。
リラックスしやすいツボといわれており、ストレスがあるときにおすすめです。
3-3-2.足にあるツボ「三陰交」「失眠」「足三里」
足にある快眠のツボは、以下の三つです。なかでも「失眠」は不眠にきくツボとして代表的なものの一つです。
【足にあるツボ】
(1)三陰交(さんいんこう)
(2)失眠(しつみん)
(3)足三里(あしさんり)
三陰交は内くるぶしから指4本分上にあるツボです。胃の不調や冷え改善などの効果があるといわれています。
失眠はかかとのちょうど中央にあるツボで、名前のとおり不眠に良いとされており、有名なツボの一つです。
また、足三里は、膝の皿の外側のくぼみから指4本分下にあるツボです。さまざまな体の不調に良いと考えられています。
3-3-3.頭・首にあるツボ「百会」「完骨」「安眠」
頭・首にある快眠のツボは、以下の三つです。
【頭・首にあるツボ】
(1)百会(ひゃくえ)
(2)完骨(かんこつ)
(3)安眠(あんみん)
百会は、両耳の先端を結んだ線と、鼻と頭頂を結んだ線が交わった点にあるツボです。不安や緊張などで眠れないときにおすすめです。
完骨は耳裏の骨の斜め後ろのくぼみにあるツボです。肩や首がこっていて眠れないときに良いとされています。
また安眠は、完骨と耳たぶ裏のくぼみとの中間地点から少し下にあるツボです。自律神経を落ち着かせるといわれています。
3-4.薬を服用する
眠れないときの解決策として、薬の服用も一つの方法です。不眠症状に悩んでいる場合は、睡眠導入剤や漢方薬などを検討すると良いでしょう。
いずれの薬であっても、服用の際には医師や薬剤師へ相談の上、適切に服用することが大切です。
3-4-1.睡眠導入剤
睡眠薬は睡眠導入剤ともいわれ、不眠状態に使われる薬の総称です。
同じ眠気を誘発させるための薬であっても、構造による分類や作用時間による分類があります。
現在多く使われているのは、脳の興奮を抑制する神経伝達物質「ギャバ」のはたらきを強めるベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤です[3]。
他の疾患を併発していたり、他の薬剤と併用したりすることで副作用の恐れがあるため、使用に際しては医師の診断が必要です。
また、突然服用をやめると、症状が悪化する可能性があります。不眠が改善したと感じても服用の中止は自分で判断せず、医師の指示に従いましょう。
3-4-2.漢方薬
漢方薬は、睡眠薬のように直接睡眠へ誘導するのではなく、抑うつや不安など、睡眠を妨げている心理的な原因を取り除きます。
不眠症状の改善におすすめなのが、抗ストレス作用のある柴胡(さいこ)を配合した「柴胡剤(さいこざい)」や気の流れを整え閉塞(へいそく)感や息苦しさを解消する「理気剤(りきざい)」などです。
柴胡剤は、「大柴胡湯(だいさいことう)」「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」「四逆散(しぎゃくさん)」「加味逍遙散(かみしょうようさん)」などがあります。
理気剤は、「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」「柴朴湯(さいぼくとう)」などがあります。なお、漢方薬を使用する際も、医師や薬剤師に相談しましょう。
4.眠れないときが続く場合は?
対処法を試しても眠れない場合もあるでしょう。眠れないことに対して不安が強まると悪循環に陥りやすいため、落ち着いた対応が必要です。
ここでは、眠れないときが続く場合にどうしたら良いか詳しく解説します。
4-1.焦らずに寝床から出る
眠気がないのに無理に眠ろうとしているのであれば、一度ベッドや布団から出て気分を落ち着かせることをおすすめします。
眠れないことがストレスとなって眠りを妨げる場合があるためです。
特に不眠が続くうちは、「また眠れないのではないか」と寝床に向かうだけで不安を覚え、心配や緊張が悪化しやすくなります。
一度寝床を出た際には、頭がさえてしまうような行動は避け、落ち着いた音楽を聴いたりマッサージ・ストレッチをしたりなどのリラクゼーション法を実践し、不安を落ち着かせましょう。
たとえ事前に決めた就寝時間に眠れなかったとしても、翌日の起床時間は遅らせず一定に保ち、できるだけ生活リズムを整えるのが大切です。
4-2.医師に相談する
対処法に効果が感じられず、眠れない夜が続いて日中の生活に影響を及ぼしているのであれば、早めに医師に相談しましょう。
一人で悩まずに医師に自身の不眠症状について話し理解を得るだけでも、気持ちが楽になるでしょう。
睡眠薬の処方に限らず、睡眠習慣についての客観的な判断と助言を受けることで、自分では思いつかなかった睡眠改善の対処法を教えてもらえる可能性もあります。
また、医師に相談することで、不眠症状の陰に隠れている他の体や心の病気の早期発見にもつながります。
医師に限らず、看護師や保健師、薬剤師、管理栄養士など身近な専門家に相談するのも良いでしょう。
5.眠れるようになるために普段から気を付けること
夜になって眠れないときに行う対処法で効果が得られたとしても、根本的な睡眠の改善には至りません。
眠れない状態が慢性化している人にとっては、眠るときだけでなく日中も含めた生活全体の改善が重要です。
眠れない日数を減らし良い睡眠をとる上で、普段から気を付けなければならないポイントを紹介します。
5-1.規則正しい生活をする
十分な運動を行い、食事を適切に摂っていても、規則正しい生活でなければ快適な睡眠にはつながりません。
規則正しい生活が睡眠にとって重要なのは、体内時計を24時間に調節する効果があるためです。
布団に入る時間・起きる時間を毎日変えずに一定のリズムで生活を続けることで、体内時計が調節され、眠るタイミングに合わせて体も睡眠に備えてくれるようになります。
ホルモン分泌や生理的な活動など、自分の意思でコントロールできない体の仕組みは、規則正しく日々を過ごすことによって正常に保(たも)てます。
毎朝決まった時間に光を浴びるのは体内時計の調節に効果があるため、起床直後には部屋の中に光を取り込むようにしましょう。
5-2.アルコールやカフェインを控える
寝る前には、覚醒作用のあるアルコールやカフェインの入った飲食物は控えることが大切です。
カフェインの入っていないハーブティーなどであれば、眠りの妨げにならず、香りのリラックス効果によって寝つきの改善も期待できるでしょう。
アルコールは寝つきを良くする一面もあるため、あえて寝る前に飲んでいる方もいるかもしれません。
しかし、寝つきは良くなるものの、眠りは浅くなり中途覚醒が増えるため、睡眠の質は落ちてしまいます。
睡眠導入剤の代わりにアルコールを摂取するのは控え、特に寝る直前の飲酒は避けるようにしましょう。ニコチンも刺激物として作用するため、就寝前の喫煙も良くありません。
5-3.眠る直前にスマホやパソコンの画面を見ない
寝る前にスマートフォン・パソコンの画面を見るのは控えた方が良いでしょう。ブルーライトは体内時計をずらすため、眠りにつきにくくなります。
安定して良い睡眠をとるためには、体内時計を調節し体の機能を適切に作用させることが大切です。
朝の光には、徐々に遅れて行ってしまう体内時計を24時間に調節する力があります。
反対に夜に光を浴びると体内時計を遅らせ、整っていたリズムが乱れる原因となってしまいます。
就寝する90分前には、スマホやパソコンの画面、テレビ画面を見るのはやめましょう。
寝室にはスマホを持ち込まない、眠る準備をしたら通知を切るなど、ルールを決めて習慣化するのが効果的です。
5-4.運動する習慣を身に付ける
運動習慣を身に付けることで、寝つきが良くなり、深い睡眠を得ることができます。
一度きりの運動では不眠の根本的な改善にはならないため、習慣的に運動を行うことが大切です。
運動する時間を毎日確保するのが難しい人は、週に2回程度で適度な運動を続けてみると良いでしょう。
激し過ぎる運動はかえって睡眠の妨げとなるため、軽いランニングやウォーキングのような有酸素運動がおすすめです。
軽い運動にとどめておくことで、負担が軽くなり習慣化しやすくなります。
ただし、就寝直前の運動は体を興奮させ寝つきを悪くしてしまうので避けましょう。効果的な運動のタイミングは、就寝の約3時間前までといわれています。
6.眠れないときの原因や対処法についてのまとめ
どうしても眠れないときの原因は多様にあります。ストレスや、寝る前に飲んだ刺激物の影響、生活習慣の乱れなどが原因で不眠を引き起こしている場合が考えられます。
眠れないときの対処法として、睡眠環境の改善、感情を落ち着かせるためのリラクゼーション法の実施、ツボ押しやストレッチが効果的です。
また、無理に寝ようとすると不安が増して寝つけなくなってしまうこともあるため、どうしても眠れないときは一度寝床から出てみるのをおすすめします。
眠れない悩みを長期間抱え続けているのであれば、早めに医師に相談してみることが大切です。
睡眠導入剤や漢方薬なども一つの対処法ですが、必ず医師の指導のもとで服用しましょう。