「血圧って何だろう?」
「血圧はどれくらいならちょうど良いのかな……」
血圧が高めだから注意するよういわれたり、低血圧でつらいという話を聞いたりしたことはありませんか?
血圧が健康に関わることは知っていても、具体的に何を指していて体にどのような影響を及ぼすかまでは詳しく知らないという方も多いでしょう。
血圧とは血液が血管の内壁を押す力のことです。
血圧は高過ぎると動脈硬化を引き起こし、多くの致命的な病気の原因になります。
また低過ぎても日々の生活に支障を来す場合があります。
この記事では血圧とは何か、また血圧が高い場合や低い場合の基準についても詳しく解説します。
また高血圧と低血圧の定義や分類、健康に及ぼす影響や予防・改善のポイントについてもご紹介します。
血圧について理解を深め、健康の維持や改善のための参考にしてくださいね。
1.血圧とは
血圧とは心臓から送り出された血液が血管の内壁を押す際の圧力のことです。
なお一般的に血圧という場合は、上腕にある動脈(上腕動脈)の血圧のことを指します。
血圧には心臓の脈動に関連した「最高血圧」と「最低血圧」と呼ばれる二つの値があります。
最高血圧は血液を送り出すために心臓が収縮した際の、血管に最も強い圧力がかかっている状態の血圧です。
この値は「収縮期血圧」とも呼ばれます。
最低血圧は次に血液を送り出すために心臓が拡張した際の、血管への圧力が最も下がっている状態の血圧です。
この値は「拡張期血圧」とも呼ばれます。
俗に「上の血圧」と呼ばれるのは最高血圧、「下の血圧」と呼ばれるのは最低血圧のことです。
血圧の値は主に心臓から送り出される血液の量や血管のしなやかさによって決まり、他には血液の粘度なども影響します。
また腎臓や神経系のはたらき、食塩の摂取量といった要素の影響も受けます。
血圧の調整は主に自律神経やホルモンによって行われます。
例えば自律神経のうち交感神経が優位になると血圧や心拍数が上がり、副交感神経が優位になると血圧や心拍数が下がります。
これらの因子が体の活動や精神の状態に応じて体の機能を調節し、血圧が正常に維持できるようはたらいているのですね。
このため、血圧は測定する時間帯や季節、気温などの環境、食事、運動といった日常生活、精神的なストレスなど多くの原因によって常に変動します。
通常血圧は睡眠時には低く、目覚めと共に上昇して日中には高くなります。
その後夜になると低下してゆき、睡眠と共に再び低い状態になります。
また一般的に冬は熱を逃がさないよう血管が収縮するため、夏よりも血圧が高くなりがちです。
こうした理由により血圧が高いか低いかを判定するには一度だけではなく、繰り返し測定する必要があります。
次の章では血圧の基準値について解説します。
2.血圧の基準値
血圧には世界的に共通の基準があり、病院や健康診断などで測定した「診察室血圧」と家庭で測定した「家庭血圧」によって値が異なります。
診察室血圧における正常値血圧は、年齢や性別にかかわらず最高血圧120mmHg未満かつ最低血圧80mmHg未満です[1]。
また診察室血圧における高血圧は最高血圧140mmHg以上かつ/または90mmHg以上です[1]。
診察室血圧の基準値は以下のとおりです。
分類 | 最高血圧 | 最低血圧 | |
---|---|---|---|
正常血圧 | |||
正常高値血圧 | |||
高値血圧 | |||
高血圧(Ⅰ度) | |||
高血圧(Ⅱ度) | |||
高血圧(Ⅲ度) |
特定非営利活動法人日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」をもとに執筆者作成
また家庭血圧の基準値は以下のとおりです。
分類 | 最高血圧 | 最低血圧 | |
---|---|---|---|
正常血圧 | |||
正常高値血圧 | |||
高値血圧 | |||
高血圧(Ⅰ度) | |||
高血圧(Ⅱ度) | |||
高血圧(Ⅲ度) |
特定非営利活動法人日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」をもとに執筆者作成
診察室血圧の方が家庭血圧より高い基準値が設定されているのは、病院では緊張から血圧が上昇してしまう傾向にあるためです。
なお高血圧の判定では家庭血圧の結果が診察室血圧よりも優先されます。
ご自身が高血圧かどうかをしっかり把握したいという方は、自宅で血圧を測る習慣をつけると良いでしょう。
[1] 特定非営利活動法人日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
3.高血圧とは
「高血圧になる原因はなんだろう?」
「高血圧だと何が問題なのかな……」
高血圧は体に悪いと聞いたことはあっても、高血圧の原因や体への影響、改善するための方法までは知らない方も多いでしょう。
この章では高血圧の定義や分類、起こりうる悪影響に加えて予防や改善のためのポイントを解説します。
3-1.高血圧の定義や分類
高血圧とは繰り返し測定しても慢性的に血圧が基準値よりも高い状態のことです。
血圧は時間帯や季節、気温や食事、運動といった多くの要因によって絶えず変動しているため、ある時点で血圧が高かったとしてもそれだけでは高血圧とは診断されないのです。
高血圧は「本態性高血圧」と「二次性高血圧」に大別されます。
このうち本態性高血圧は生活習慣や遺伝的体質などの複数の要因が関係して原因のはっきりしないものです。
主に食塩の過剰摂取や肥満、飲酒、運動不足、ストレスなどが組み合わさることで起こります。
一方の二次性高血圧は腎臓や血管、内分泌系などの病気や服用する薬剤によって起こるもので、原因が特定可能です。
二次性高血圧は原因となる病気の治療などによって改善が見込めます。
また、診察室血圧が正常で家庭血圧が高い状態は「仮面高血圧」と呼ばれます。
仮面高血圧は高血圧の治療薬を服用している人や、仕事などで日常のストレスが大きい人、喫煙者、多量に飲酒する人などに多いといわれています。
仮面高血圧では、高血圧の診断が遅れて長期間治療が行き届かないケースが多く、健康に悪影響が出やすいため注意が必要です。
一方、家庭血圧が正常で診察室血圧が高い状態は「白衣高血圧」と呼ばれます。
これは白衣を着た医師の前で緊張して血圧が上がってしまうことで起こります。
白衣高血圧の人は普段の血圧は問題ないため、多くの場合直ちに治療する必要はありません。
ただし将来的に高血圧になる可能性が高いともいわれています。
[2] 一般社団法人日本内分泌学会「二次性高血圧症(腎血管性高血圧を含む)」
3-2.高血圧の健康への影響
「高血圧は恐いと聞くけど、どんな悪影響があるんだろう……」
と気になる方も多いのではないでしょうか。
高血圧にはほとんど自覚できる症状がないものの、多くの致命的な病気の原因となることから「サイレントキラー」とも呼ばれます。
血圧が高い状態が続くと、血管が長期間張り詰めた状態に置かれるため「動脈硬化」が起こります。
高血圧になると、脳や心臓を含む全身の血管でこの動脈硬化が起こってしまうのです。
動脈硬化は命にも関わるさまざまな病気の原因となります。
動脈硬化で心臓に血液を送る「冠動脈」が狭くなると、心臓に十分な血液が送られずに酸素が不足することで「狭心症」が起こります。
また狭心症が進行し冠動脈が詰まると、酸素が供給されずに心臓の筋肉が壊死する「心筋梗塞」が起こります。
同様のことが脳の血管で起こり、脳細胞が壊死するのが「脳梗塞」です。
また脳の血管が破れる「脳出血」や、脳の表面の血管にこぶができて破裂し、出血を引き起こす「くも膜下出血」のリスクも高まります。
腎臓では腎機能が低下する「腎硬化症」や「慢性腎不全」といった病気が引き起こされます。
加えて心臓から血液の流れ出す体で最も太い大動脈にこぶのできる「大動脈瘤」や、網膜から出血して視力が低下する「眼底出血」などの原因ともなります。
高血圧はこのようにさまざまな病気の原因となるため、予防や早めの発見・治療が重要なのですね。
動脈硬化については以下の記事で詳しく解説しています。
動脈硬化とは?原因や病気のリスク、進行を防ぐポイントを徹底解説
3-3.高血圧を予防・改善するポイント
「高血圧にならないためにはどうしたら良いのかな?」
「高血圧を改善したいけど、自分でできることはあるのかな……」
致命的な病気をもたらす高血圧をどうすれば予防・改善できるのか、気になりますよね。
生活習慣や遺伝的体質などが絡んで起こる本態性高血圧と、特定の病気を原因とする二次性高血圧では対策が異なります。
本態性高血圧の主な原因は、食塩の過剰摂取や肥満、飲酒、運動不足、ストレスなどです。
このため本態性高血圧を予防・改善するには、食事や運動などの日常生活のなかで以下のようなポイントを押さえると良いでしょう。
【高血圧を予防・改善するポイント】
- 減塩
- カリウムの十分な摂取
- 食物繊維の十分な摂取
- 肥満の解消
- 適度な有酸素運動
- 節酒
- 禁煙
- ストレス解消
- 十分な睡眠
これらのうち、できるものから日々の暮らしに取り入れていきましょう。
一方、二次性高血圧の改善には原因となる病気の治療が必要です。
本態性高血圧の予防・改善ポイントを取り入れても血圧が下がらない場合が多いため、自己判断せずに必ず主治医に相談してください。
本態性高血圧の原因や予防策、改善方法についてはそれぞれ以下の記事で詳しく解説しています。
高血圧の原因は?生活習慣を改善し血圧を下げるためのポイントも解説
高血圧を改善するために自分で気を付けるべきことは?ポイントを解説
4.低血圧とは
「低血圧だとどんな問題があるんだろう?」
「低血圧は改善した方が良いのかな?」
高血圧が健康に悪いことは知っていても、低血圧でどのような影響が生じるかは知らないという方も多いかもしれません。
血圧は低ければ良いというわけではなく、低過ぎるとさまざまな悪影響が生じます。
この章では低血圧とはどういう状態か、また起こり得る症状や予防・改善のポイントについて解説します。
4-1.低血圧の定義や分類
低血圧とは、血圧が正常な範囲よりも低いことです。
高血圧よりも心臓や血管の病気のリスクが低いことから基準はあまり重視されていませんが、世界保健機関(WHO)は最高血圧100mmHg以下、最低血圧60mmHg以下の場合に低血圧であるとしています[3]。
低血圧は若い女性や子どもに多く、病気と見なされないこともありますが、背後に何らかの病気が潜んでいる場合もあるため注意が必要です。
低血圧には「本態性低血圧(一次性低血圧)」「症候性低血圧(二次性低血圧)」「起立性低血圧」「食後低血圧」などがあります。
本態性低血圧は遺伝的要因や体質によるとされますが、原因がはっきりと分からないものです。
このタイプの低血圧になる体質の特徴としては、やせ型や青白い顔色、疲れやすさ、冷え性など挙げられます。
一方、症候性低血圧は何らかの病気やけがなどが原因で起こるものです。
主な原因としては心臓病や大量の出血、熱中症、胃腸の疾患、内分泌の異常、末期がんなどがあります。
また起立性低血圧は普段は正常血圧でも、急に立ち上がったり体を動かしたりした際に血圧が急低下して目まいや立ちくらみを起こすものです。
原因が特定できない「特発性起立性低血圧」と、糖尿病や心臓病、内分泌の異常、服用している薬剤などが原因となる「二次性起立性低血圧」に分けられます。
食後低血圧は食後に限って血圧が過度に低下するものです。
寝たきりの高齢者などが体を起こして食事をする場合にみられます。
一口に低血圧といってもいくつかの種類があるのですね。
[3] 一般社団法人愛知県薬剤師会「低血圧」
4-2.低血圧の症状
低血圧の主な症状は立ちくらみと目まいです。
これに加えて頭痛や倦怠(けんたい)感、肩こり、動悸(どうき)、胸痛、食欲不振などが起こる場合もあります。
これらの症状は特に朝に強く、朝起きるのがつらいなど午前中の生活に支障が出ます。
また季節では夏に症状が出やすいとされ、食欲が出ずに夏バテしやすくなります。
4-3.低血圧を予防・改善するポイント
低血圧の予防・改善には日常生活の自己管理が重要だといわれています。
低血圧の多くに遺伝的な体質が関わっているとされるため、予防や改善には以下のような生活習慣からのアプローチが必要だといえるでしょう。
【低血圧を予防・改善するポイント】
- 早寝早起き
- 栄養バランスの良い食事
- 適度な運動
- 湯船につかる入浴
また立ち上がる際はゆっくりと立つように気を付け、目まいを感じたらすぐに座るようにしましょう。
夏場は水分が不足して低血圧の症状が出やすいため、こまめな水分補給を心掛けることも大切です。
加えてお酒を飲むと血管が拡張して血圧が下がるため注意が必要です。
5.定期的に血圧を測定しよう
血圧を自宅で定期的に測定することで、高血圧や低血圧の早期発見につなげることができます。
高血圧は自覚症状がほとんどないため、自分で気付くことは困難です。
しかし定期的に健康診断を受けたり、家庭で日常的に血圧を測る習慣をつけたりすることで早いうちに発見することが可能です。
低血圧の場合も、病院で測ると緊張して血圧が上がって発見が遅れる可能性があるため、できるだけ自宅で測る習慣をつけると良いでしょう。
なお心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを予測する上では、診察室血圧よりも家庭血圧が優れているといわれています。
測った血圧値はすべて血圧手帳などに記録して残しておき、健康診断のときやかかりつけ医を受診するときに見せるようにしましょう。
特に家族に高血圧の患者がいる場合は、高血圧のリスクが高いといわれています。
こうした家庭では、15歳を過ぎたら年に1回は血圧を測定するようにすると良いでしょう[4]。
[4] 特定非営利活動法人日本高血圧学会「高血圧の話」
6.血圧についてのまとめ
血圧は心臓から送り出された血液が血管の内壁を押す際の圧力のことで、一般的には上腕動脈の血圧を指します。
血圧には血液を送り出すために心臓が収縮した際の最高血圧と次に血液を送り出すために心臓が拡張した際の最低血圧の二つがあります。
血圧は測定する時間帯や季節などの環境をはじめ、食事や運動、精神的なストレスなどの原因によって常に変動します。
その上で、繰り返し測定しても慢性的に血圧が高い状態を高血圧といいます。
高血圧は動脈硬化をもたらし、致命的な病気の原因となることから速やかに改善する必要があります。
また血圧が低い状態が低血圧で、目まいや立ちくらみを引き起こすことから日常生活に支障が出る場合があります。
高血圧と低血圧のどちらも予防・改善のためには生活習慣を見直すことが重要です。
また高血圧や低血圧を早期に発見するために、家庭で定期的に血圧を測定するようにしましょう。
この記事を、血圧について知り正常に保つための参考にしてくださいね。