「わかめにはどんな栄養素が含まれているのかな……」
「毎日わかめを食べたら健康になるのだろうか?」
わかめはみそ汁を筆頭に、酢の物、サラダ、スープ、うどんなどの具材として日本の食卓になじみのある食品です。
しかしそのわかめにどんな栄養素が含まれているのか、しっかり理解している方は多くないでしょう。
わかめは食物繊維や各種ビタミン・ミネラルを豊富に含む海藻です。
栄養が豊富な上にカロリーは高くなく、腹持ちが良いためダイエットの強い味方だといえるでしょう。
また、わかめの食物繊維には健康に良いとされるアルギン酸が含まれています。
この記事ではわかめに豊富に含まれる栄養素や成分を詳しく解説します。
またわかめの選び方や保存方法、栄養を効果的に摂るための食べ方もご紹介します。
わかめを日々の健康に活かすための参考にしてくださいね。
1.わかめの基礎知識
「わかめってどんな食品なのかな?」
わかめは日本人が縄文時代から数千年にわたって食べ続けている海藻です。
大宝律令では税の一つに定められ、万葉集にもわかめについての歌が数多く詠まれるなど、日本人の食の歴史において欠かすことのできない食品だといえるでしょう。
わかめはこんぶやひじき、もずくなどと同じ褐藻類に分類され、宮城県や岩手県、徳島県などで多く収穫されています。
日本人が一般的にわかめと呼ぶのはわかめの葉に当たる葉体の部分です。
他には「くきわかめ」と呼ばれる茎の部分の中芯、「めかぶ」と呼ばれる茎の下部にあるひだ状の部分の胞子葉があります。
この記事ではわかめの葉体について解説していきます。
気になるわかめのカロリーは、100g当たり24kcalとあまり高くありません[1]。
また、わかめに含まれる食物繊維などの栄養素や成分には、ダイエット効果が期待できるといわれています。
わかめはダイエット中の方にうれしい食品だといえるでしょう。
[1] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2.わかめに豊富に含まれる栄養素
「わかめの栄養素って考えたことがなかったな……」
わかめは日本人にとって身近な食品ですが、栄養素までは知らないという方も多いでしょう。
わかめには食物繊維の他、各種ビタミンやミネラルが豊富に含まれています。
18歳未満の方は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の「乳児・小児の食事摂取基準」をご確認ください。また妊娠中・授乳中の方は「妊婦・授乳婦の食事摂取基準」をご確認ください。
以下の表はわかめに豊富に含まれている栄養素をまとめたものです。
【わかめに豊富に含まれる栄養素(100g当たり)】
栄養素 | 含有量 |
---|---|
食物繊維 | 3.6g |
ビタミンA | 79μg |
ビタミンK | 140μg |
ビタミンB1 | 0.07mg |
ビタミンB2 | 0.18mg |
ナイアシン | 1.5mg |
ビタミンB12 | 0.3μg |
葉酸 | 29μg |
パントテン酸 | 0.19mg |
ビオチン | 4.2μg |
ビタミンC | 15mg |
カリウム | 730mg |
カルシウム | 100mg |
マグネシウム | 110mg |
鉄 | 0.7mg |
亜鉛 | 0.3mg |
ヨウ素 | 1,600μg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
では、それぞれの栄養素について詳しくみてみましょう。
[2] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック」
[3] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2-1.食物繊維
わかめには食物繊維が100g当たり3.6g含まれています[4]。
食物繊維は便の容量を増やして腸を刺激し、便通を良くすることが広く知られています。
便秘になると便が腐敗し、悪玉菌が増えて有害物質を発生させるため、肌荒れやニキビなどのトラブルにつながります。
また食物繊維には脂質や糖質、ナトリウム(塩分)などを吸着して体外に排出するはたらきがあります。
そのためこれらが要因となる肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病の予防や改善に効果が期待できます。
特筆すべき点として、わかめには水溶性食物繊維のアルギン酸が含まれています。
アルギン酸は海藻のぬめり成分で、海藻を構成する主成分の一つです。
アルギン酸は「おなかの調子を整える食品」「コレステロールが高めの方に適する食品」として消費者庁により特定保健用食品に指定されています。
さらにナトリウム(塩分)を排出することで高血圧を予防したり、長時間満腹感が持続することから肥満を予防したりといった効果も期待できます。
食物繊維の1日当たりの摂取目標量は男性では18~64歳で21g以上、65歳以上で20g以上です[5]。
女性では18~64歳で18g以上、65歳以上で17g以上です[5]。
食物繊維については以下の記事で詳しく解説しています。
糖質と炭水化物の関係は?両者の違いやはたらきを分かりやすく解説
[4] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[5] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-2.ビタミンA
わかめにはビタミンAが100g当たり79μg含まれています[6]。
ビタミンAは活性酸素のはたらきを抑える抗酸化作用を持つ脂溶性ビタミンです。
またビタミンAには目の正常な機能を維持したり、皮膚や粘膜を正常に保持したりといったはたらきがあります。
このためビタミンA不足は皮膚や粘膜の乾燥につながり、夜盲症をもたらします。
ビタミンAは、植物性の食品では摂取後体内でビタミンAに変化する「プロビタミンA」の形で含まれています。
プロビタミンAのなかでも、β-カロテンには抗酸化作用があることが分かっています。
わかめにはβ-カロテンが多く含まれているため、活性酸素が気になる方にはうれしい食品といえるでしょう。
ビタミンAの1日の摂取推奨量は男性では18~29歳で850μgRAE、30~64歳で900μgRAE、65~74歳で850μgRAE、75歳以上で800μgRAEです[7]。
女性では18~29歳で650μgRAE、30~74歳で700μgRAE、75歳以上で650μgRAEです[7]。
ビタミンAについては以下の記事で詳しく解説しています。
ビタミンAを多く含む食べ物は?効果や摂取基準についても詳しく解説
[6] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[7] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-3.ビタミンK
わかめにはビタミンKが100g当たり140μg含まれています[8]。
ビタミンKは血液の凝固作用に深く関わる脂溶性ビタミンです。
ビタミンKは血液を凝固させるはたらきを持つ「プロトロンビン」などを活性化することで血液凝固を促進します。
そのためビタミンKが不足すると出血が止まりにくくなり、血尿や消化器官からの出血、月経過多などが起こります。
またビタミンKにはカルシウムを骨に吸着させて骨の形成を促したりコラーゲンを生成して骨質を改善したりする他、動脈の石灰化を防止することで動脈硬化を防ぐはたらきもあります。
ビタミンKが慢性的に不足すると骨粗しょう症のリスクが高まるため注意しましょう。
ビタミンKの1日の摂取目安量は18歳以上の男女で150μgです[9]。
ビタミンKについては以下の記事で詳しく解説しています。
ビタミンKにはどんな効果がある?摂取目安量とおすすめの食材を紹介
[8] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[9] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-4.ビタミンB1
わかめにはビタミンB1が100g当たり0.07mg含まれています[10]。
ビタミンB1は水溶性のビタミンB群の一種で、糖質や脂質、たんぱく質からエネルギーをつくり出す際に重要な役割を担っています。
特にビタミンB1はブドウ糖をエネルギーに変えるという重要なはたらきに関わっています。
このためビタミンB1が欠乏すると糖質を十分にエネルギーに変えられず、疲労やだるさを覚えるようになります。
特に脳はブドウ糖のみをエネルギー源としており、深刻な障害につながる危険があるため注意が必要です。
またビタミンB1には皮膚や粘膜の健康維持を助けるはたらきもあります。
ビタミンB1の1日の摂取推奨量は男性では18~49歳で1.4mg、50~74歳で1.3mg、75歳以上で1.2mgです[11]。
女性では18~74歳で1.1mg、75歳以上で0.9mgです[11]。
ビタミンB1については以下の記事で詳しく解説しています。
ビタミンB1が豊富に含まれる食べ物は?効果や摂取基準も詳しく解説
[10] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[11] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-5.ビタミンB2
わかめにはビタミンB2が100g当たり0.18mg含まれています[12]。
ビタミンB2は水溶性のビタミンB群の一種で、糖質や脂質、たんぱく質からエネルギーをつくり出す代謝に関する補酵素としてはたらきます。
ビタミンB2は特に脂質の代謝に深く関わるため、ダイエット中の方や脂っこい食事を好む方には重要な栄養素といえるでしょう。
またビタミンB2には成長の促進、皮膚や粘膜の保護などのはたらきもあります。
そのため不足すると成長障害や皮膚炎・口内炎の原因となります。
ビタミンB2の1日の摂取推奨量は男性では18~49歳で1.6mg、50~74歳で1.5mg、75歳以上で1.3mgです[13]。
女性では18~74歳で1.2mg、75歳以上で1.0mgです[13]。
ビタミンB2については以下の記事で詳しく解説しています。
ビタミンB2が手軽に摂れる食べ物は何?効果や食事摂取基準も紹介
[12] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[13] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-6.ナイアシン
わかめにはナイアシンが100g当たり1.5mg含まれています[14]。
ナイアシンは水溶性のビタミンB群の一種で、糖質やたんぱく質、脂質の代謝に不可欠です。
またナイアシンは多くの酵素の補酵素となり、DNAの修復や合成に関わって皮膚や粘膜の健康維持を助ける他、脂肪酸やステロイドホルモンを体内で合成するなど多くの役割を担っています。
二日酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解する酵素の補酵素でもあるため、お酒をよく飲む方は意識的に摂取すると良いでしょう。
ナイアシンの1日の摂取推奨量は男性では18~49歳で15mgNE、50~74歳で14mgNE、75歳以上で13mgNEです[15]。
女性では18~29歳で11mgNE、30~49歳で12mgNE、50~74歳で11mgNE、75歳以上で10mgNEです[15]。
[14] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[15] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-7.ビタミンB12
わかめにはビタミンB12が100g当たり0.3μg含まれています[16]。
ビタミンB12は水溶性のビタミンB群の一種で、DNAの生成を助ける重要な栄養素です。
またビタミンB12には赤血球の生成を助け、血液細胞や神経を正常に保つはたらきがあります。
ビタミンB12の不足は疲労や体力低下をもたらす「巨赤芽球性貧血」という貧血の原因となる他、神経障害や感覚異常、記憶障害やうつ病などのリスクも高めます。
ビタミンB12は植物性の食品にはほとんど含まれない栄養素です。
このため動物性の食品を摂らない厳格なベジタリアンやビーガンの方にとって、わかめは貴重なビタミンB12の摂取源といえるでしょう。
ビタミンB12の1日の摂取推奨量は18歳以上の男女で2.4μgです[17]。
ビタミンB12については以下の記事で詳しく解説しています。
ビタミンB12が不足する原因とよくある症状は?摂取しやすい食品も紹介
[16] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[17] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-8.葉酸
わかめには葉酸が100g当たり29μg含まれています[18]。
葉酸は水溶性のビタミンB群の一種で、ビタミンB12と共に赤血球の生成を助ける重要な役割を担います。
またDNAやRNA、たんぱく質の合成といった多くのはたらきに関わっています。
さらに葉酸は細胞の分裂や増殖にも深く関与しており、胎児の正常な発達においても重要な役割を担います。
葉酸の1日の摂取推奨量は18歳以上の男女で240μgです[19]。
葉酸については以下の記事で詳しく解説しています。
葉酸が多く含まれている食べ物とは?効果や摂取基準もあわせて解説
[18] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[19] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-9.パントテン酸
わかめにはパントテン酸が100g当たり0.19mg含まれています[20]。
パントテン酸は水溶性のビタミンB群の一種で、糖質、脂質、たんぱく質によるエネルギー代謝に関わっています。
また脂質の代謝を促す善玉コレステロールや免疫抗体の生成を助けるなど、さまざまなはたらきを持ちます。
パントテン酸の1日の摂取目安量は男性では18~49歳で5mg、50歳以上で6mgです[20]。
女性では18歳以上で5mgです[21]。
[20] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[21] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-10.ビオチン
わかめにはビオチンが100g当たり4.2μg含まれています[22]。
ビオチンは水溶性のビタミンB群の一種で、糖質、脂質、たんぱく質によるエネルギー代謝に関わっています。
また抗炎症物質を生成することでアレルギー症状などを和らげます。
さらに皮膚や粘膜、髪の毛などの健康を維持するはたらきもあります。
ビオチンの1日の摂取目安量は18歳以上の男女で50μgです[23]。
ビオチンについては以下の記事で詳しく解説しています。
ビオチンとは?はたらきや摂取の目安量、摂取源となる食品を解説
[22] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[23] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-11.カリウム
わかめにはカリウムが100g当たり730mg含まれています[24]。
カリウムにはナトリウム(塩分)の排出を促して血圧を下げるはたらきがあります。
日本人は塩分を過剰摂取しがちなため、カリウムは非常に重要な栄養素だといえるでしょう。
またカリウムは細胞の浸透圧を調整して一定に保つ他、筋肉の収縮や神経の伝達といった生命維持に欠かせない多くの役割を担っています。
カリウムの1日の摂取目標量は18歳以上の男性で3,000mg以上、18歳以上の女性で2,600mg以上です[25]。
カリウムについては以下の記事で詳しく解説しています。
カリウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を紹介
[24] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[25] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-12.カルシウム
わかめにはカルシウムが100g当たり100mg含まれています[26]。
人間の体内のカルシウムのほとんどは骨や歯の形で存在しています。
残りは筋肉や神経、血液中にあり、筋肉の収縮や血液の凝固作用などの重要な役割を担っています。
心臓の筋肉を正常に動かすためにもカルシウムは必須なため、生命維持の根幹に関わる栄養素だといえるでしょう。
カルシウム不足が長く続くと骨量が減少し、骨粗しょう症のリスクが高まるため注意が必要です。
カルシウムの1日の摂取推奨量は男性では18~29歳で800mg、30~74歳で750mg、75歳以上で700mgです[27]。
女性では18~74歳で650mg、75歳以上で600mgです[27]。
カルシウムについては以下の記事で詳しく解説しています。
カルシウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を解説
[26] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[27] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-13.マグネシウム
わかめにはマグネシウムが100g当たり110mg含まれています[28]。
マグネシウムはたんぱく質の合成の他、多くの酵素やエネルギーの代謝に関わる重要な栄養素です。
マグネシウムにはたんぱく質の合成や筋肉・神経の機能、血糖や血圧の調整など多くのはたらきがあります。
またマグネシウムはカルシウムやリンと共に骨を形成する栄養素でもあります。
マグネシウムの1日の摂取推奨量は男性では18~29歳で340mg、30~64歳で370mg、65~74歳で350mg、75歳以上で320mgです[29]。
女性では18~29歳で270mg、30~64歳で290mg、65~74歳で280mg、75歳以上で260mgです[29]。
マグネシウムについては以下の記事で詳しく解説しています。
マグネシウムとは?はたらきや食事摂取基準、摂取源となる食品を解説
[28] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[29] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-14.鉄
わかめには鉄が100g当たり0.7mg含まれています[30]。
体内の鉄の多くは赤血球に含まれるたんぱく質「ヘモグロビン」の成分として、全身の細胞に酸素を運ぶ役割を担っています。
また鉄は筋肉中のたんぱく質「ミオグロビン」の成分として、筋肉での代謝や組織の維持にも深く関わっています。
鉄の1日の摂取推奨量は男性では18~74歳で7.5mg、75歳以上で7.0mgです[31]。
月経のない女性では18~64歳で6.5mg、65歳以上で6.0mg、月経のある女性では18~49歳で10.5mg、50~64歳で11.0mgです[31]。
鉄については以下の記事で詳しく解説しています。
鉄分が多く含まれる食べ物と効果的な摂り方は?貧血気味の方必見!
[30] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[31] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-15.亜鉛
わかめには亜鉛が100g当たり0.3mg含まれています[32]。
亜鉛は多くの酵素の必須成分となる他、たんぱく質の合成や遺伝子の発現にも深く関わり、細胞の成長や分化においても中心的な役割を担っています。
このため亜鉛は胎児や乳幼児の成長にとって重要な栄養素であるといえるでしょう。
その他にも、亜鉛には免疫機能や生殖機能、皮膚、嗅覚、味覚などを健康に保つというはたらきがあります。
亜鉛の1日の摂取推奨量は男性では18~74歳で11mg、75歳以上で10mgです[33]。
女性では18歳以上で8mgです[33]。
亜鉛については以下の記事で詳しく解説しています。
亜鉛のはたらきと1日の適切な摂取量とは?亜鉛を多く含む食品も紹介
[32] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[33] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-16.ヨウ素
わかめにはヨウ素が1,600μg含まれています[34]。
ヨウ素は体内に吸収されると甲状腺に取り込まれ、甲状腺ホルモンの材料となります。
ヨウ素には甲状腺ホルモンは交感神経にはたらきかけて基礎代謝を上げる作用があり、また糖質や脂質、たんぱく質の代謝を促してヒトの生殖、成長、発達を制御します。
これ以外にも、胎児の脳や体の発達と成長を促すという重要なはたらきがあります。
ヨウ素が不足すると甲状腺が肥大して脱毛、貧血、体力の低下、倦怠(けんたい)感などが起こる他、甲状腺機能低下症になる可能性があります。
また成長期に不足した場合は発達異常や精神遅延が起こることが知られています。
特に妊娠中にヨウ素が欠乏すると死産や胎児の先天異常および、先天性甲状腺機能低下症などをもたらす危険があります。
しかしヨウ素はわかめを含む海藻類に高濃度で含まれていることから、普通の食生活をしている日本人がヨウ素不足に陥ることはまずありません。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、日本人は1日1~3mgのヨウ素を摂取しているとされています[35]。
日本人はむしろヨウ素の過剰摂取に注意する必要があるといえるでしょう。
ヨウ素の摂取量が多少増えても短期間であれば排せつされるため大きな問題になりませんが、長期間過剰摂取が続くと発育の異常や甲状腺肥大、甲状腺腫などが生じる可能性があります。
またヨウ素との関連は明らかではありませんが、海藻を多く食べる閉経後の女性は甲状腺がんになるリスクが高まる可能性があるとの報告もあります。
ヨウ素の1日の摂取推奨量は18歳以上の男女で130μgです[35]。
一方で、ヨウ素の1日の耐容上限量は3,000μg(3mg)とされています[35]。
ヨウ素を含め健康維持に役立つ栄養素を多く含むわかめですが、極端に食べ過ぎることなく、バランス良く食生活に組み込むことが重要だといえるでしょう。
[34] 文部科学省 「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[35] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3.わかめに含まれる成分
わかめに多くの栄養素が豊富に含まれていることをご紹介してきましたが、実は栄養素以外にも健康維持に寄与する成分が含まれています。
この章ではわかめに含まれる成分をご紹介します。
3-1.フコキサンチン
わかめにはフコキサンチンが含まれています。
フコキサンチンはわかめやこんぶなどの褐藻類に含まれる、鮮やかなオレンジ色をしたカロテノイドの一種です。
フコキサンチンには抗酸化作用があるため、老化を防いで動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果が期待できます。
また脂肪を燃やすはたらきもあるため、肥満の予防に効果があるとされます。
加えてフコキサンチンは糖質の代謝を促進し、血糖値を下げることが分かっています。
肥満や高血糖も生活習慣病の原因となるため、フコキサンチンは生活習慣病を防ぐ複数の効果を併せ持っているといえるでしょう。
これだけでなく、がん細胞の増殖を抑えることで発がんを抑制する効果も知られています。
フコキサンチンは生のわかめ100g当たり約11mg、乾燥わかめには100g当たり約8.4mg含まれています[36]。
また生のこんぶには100g当たり約19mg、乾燥こんぶには100g当たり約2.2mg含まれています[36]。
わかめはみそ汁や酢の物など多くの料理で使いやすい上に、乾燥させてもフコキサンチンの減少幅が小さいという特徴があります。
このためわかめはフコキサンチンを摂りたい方にとって、優秀な摂取源であるといえそうです。
[36] 公益社団法人日本食品科学工学会 「フコキサンチン」
3-2.モリン
わかめにはモリンが含まれています。
モリンは抗酸化作用を持つフラボノイドの一種で、脂質の酸化を防いでくれます。
またモリンには筋肉の萎縮を抑制する効果があり、高齢者のサルコペニアの予防に効果が期待されています。
またモリンにはがん細胞の増殖抑制効果もあり、がんに由来する筋肉の萎縮にも効果があるとされています。
加えて、動物実験では筋肉の萎縮を防ぐことにより寿命を延ばす効果も報告されています。
4.わかめの選び方と保存方法
「わかめはどうやって選んだら良いのかな?」
日常的にわかめを摂取していても、わかめをどう選べば良いか、どう保存すれば良いかまでは知らないという方も多いでしょう。
この章ではおいしいわかめの選び方と保存方法をご紹介します。
4-1.わかめの選び方
わかめには、加工法から大きく分けて三つの種類があります。
一つ目は冬の終わりから春にだけ出回る生わかめです。
生わかめのなかでも湯通しをしていないものは褐色で、湯通しされているものは緑色をしています。
生わかめは時間がたって傷んでくると粘りやとろみが出てくるため、買う際には粘りやとろみがないかを確認し、厚みと弾力があるものを選びましょう。
湯通ししてある生わかめは緑色が鮮やかで濃いものを選ぶのがポイントです。
生わかめはどちらのタイプも傷みやすいため、すぐに食べるか適切な方法で保存しましょう。
二つ目は湯通しした生わかめを塩漬けにした塩蔵わかめです。
食べる前には数分間水に漬けて塩分を抜く「塩抜き」を行う必要がありますが、生わかめに近い食感を楽しめます。
三つ目は塩抜きをした塩蔵わかめをカットして干した乾燥カットわかめです。
水に浸けて戻すだけで食べられる手軽さが魅力です。
季節や自分の食生活のスタイルに合わせてわかめを選んでくださいね。
4-2.わかめの保存方法
塩蔵わかめと乾燥カットわかめは保存食品のため特別に保存方法を考える必要はありませんが、生わかめはすぐに食べない場合は早急に保存する必要があります。
湯通しされていない生わかめを買ったら、すぐに食べる場合も保存する場合もまずは湯通しをしましょう。
最初に生わかめの茎と葉を切り分け、茎の部分を数十秒ゆでます。
そこに葉の部分を入れてまた数十秒ゆで、流水で冷やしてください。
最後にボウルに氷水を入れてしっかりと冷やしたら湯通しは完了です。
数日以内に食べる場合はこのまま保存容器などに入れて冷蔵庫で保存しましょう。
長めに保存する場合は湯通し後のわかめを使いやすい大きさにカットし、小分けしてラップに包みます。
包んだわかめは冷凍用保存袋に入れ、冷凍庫で保存しましょう。
5.わかめの効果的な食べ方
「どんな食べ方をすればわかめの栄養素を無駄なく摂取できるのかな?」
せっかく食べるなら、わかめの栄養素をしっかり摂取したいですよね。
この章ではわかめに含まれる栄養素を吸収しやすくするための効果的な食べ方をご紹介します。
まずわかめは一度に大量に食べるのではなく、調理法に変化を付けて毎食食べるようにしましょう。
酢の物やサラダなどで酢と一緒に摂取すると、酢に含まれるクエン酸がカルシウムの吸収を助けてくれます。
一方で、炒め物などで油と一緒に摂取すると、脂溶性ビタミンやヨウ素などの油に溶けやすい栄養素を効果的に吸収できます。
油揚げと一緒に調理したり、油を用いたドレッシングでサラダにしたりするのもおすすめですよ。
水に溶ける性質のある水溶性ビタミンやカリウムは煮たりゆでたりすると煮汁に溶け出してしまいますが、煮汁ごと食べるスープや汁物にすると無駄なく摂取できます。
わかめの入ったスープやみそ汁は、こうした栄養素を摂取するのに適したメニューだといえるでしょう。
わかめを使ったいろいろなメニューを食事に取り入れることで、わかめの栄養素を幅広く効果的に摂取できるのですね。
6.わかめの栄養についてのまとめ
わかめは日本人が縄文時代から食べ続けているなじみの深い海藻です。
わかめには食物繊維や各種ビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。
特にわかめの食物繊維には肥満や高血圧を予防するアルギン酸という成分が含まれています。
わかめには他にも、がん細胞の増殖を抑制し生活習慣病を予防するフコキサンチン、筋肉の萎縮を抑制するモリンといった成分も含まれています。
私たちが購入するわかめには大きく分けて冬の終わりから春に食べられる生わかめと保存用の塩蔵わかめ、乾燥カットわかめの3種類があります。
生わかめは傷みやすいのですが、すぐに湯通しして冷凍することで保存が利くようになります。
わかめの栄養素を効果的に摂取するには一度に多く食べるのではなく、さまざまな料理法で日々の食事に取り入れるようにしましょう。