「糖質と炭水化物は何が違うんだろう?」
糖質と炭水化物は似たような意味だというイメージはあるものの、それぞれの定義や違いはよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
実は糖質は炭水化物の一種に当たります。
炭水化物は糖質の他にも種類があり、炭水化物とされるもの全てが肥満の原因となる訳ではありません。
また糖質は体に必要な栄養素であるため、むやみに摂取を制限するのは健康に良くないとされます。
この記事では、糖質と炭水化物の関係や摂取目標量について解説します。
炭水化物の摂取源となる食べ物についてもご紹介するので、ぜひ最後までお読みくださいね。
1.糖質と炭水化物の関係
「糖質と炭水化物にはどんな関係があるのかな?」
糖質と炭水化物の関係を一言で表すならば「糖質は炭水化物の一種である」という言い方になるでしょう。
炭水化物とは「糖」によって構成される物質のことです。
炭水化物のうち、ヒトの体内で消化・吸収されエネルギー源として使われるものを「糖質」、ヒトの消化酵素では消化できない物質を「食物繊維」といいます。
以下は炭水化物の分類を示した図です。
糖質と食物繊維の定義は機関によって少しずつ異なりますが、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1〜9個の糖から成るものが糖質、10個以上の糖から成るものが食物繊維とされます[1]。
また、それぞれが体に与える影響も異なります。
炭水化物の最も重要なはたらきは、体のエネルギー源となることだといえます。
炭水化物から摂取されるエネルギーのほとんどは糖質に由来するものです。
炭水化物のカロリー(エネルギー量)は、食品によりわずかに異なりますが、おおむね1g当たり4kcalとされています[1]。
一方、炭水化物から食物繊維を差し引いた糖質のカロリーも1g当たり約4kcalであるといわれており、ほとんど変わりはありません[1]。
なお、食物繊維は腸内細菌による発酵分解でエネルギーを生み出しますが、その値は1g当たり0~2kcalと低く、一定ではないと考えられています[1]。
糖質のなかでもブドウ糖は特に重要なエネルギー源として知られています。
ブドウ糖は特別な場合を除き、脳がエネルギー源として利用できる唯一の物質です。
体内に取り込まれた糖質は分解されブドウ糖となり、血中に取り込まれます。
血中にブドウ糖が取り込まれ、血糖値(血中のブドウ糖濃度)が上昇すると、それに反応して膵臓(すいぞう)から「インスリン」というホルモンが分泌されます。
糖質が不足すると、エネルギー不足による集中力の減退や、疲労感などの症状が見られます。
また脳や神経にブドウ糖が供給されないと意識障害を起こす恐れもあります。
糖質の過剰摂取では、エネルギーとして消費し切れなかった糖質が体内で脂肪として蓄えられてしまうため、肥満や生活習慣病の原因となります。
一方、同じ炭水化物でも、食物繊維は消化・吸収されず大腸まで到達します。
食物繊維は便の材料や善玉菌の餌となり、おなかの調子を整える作用があります。
加えて、糖質や脂質、ナトリウムを吸着して体外に排出するため、これらの摂り過ぎが原因となって起こる肥満や脂質異常症、糖尿病、高血圧などの予防・改善効果も認められています。
[1] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2.炭水化物の摂取目標量
「炭水化物はどのくらい摂ると良いのかな?」
と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「糖質制限」や「炭水化物抜き」という言葉を聞いて、むやみに炭水化物の摂取量を制限するのは体に良くありません。
この章では炭水化物(糖質)と食物繊維の摂取目標量をご紹介します。
2-1.炭水化物(糖質)の摂取目標量
厚生労働省は1歳以上の男女に対し、炭水化物から摂取するカロリーの割合を1日に摂取するカロリー(推定エネルギー必要量)の50〜65%にするという目標量を設定しています[2]。
厚生労働省によると、推定エネルギー必要量は以下のとおりです。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
1〜2歳 | ||||||
3〜5歳 | ||||||
6〜7歳 | ||||||
8〜9歳 | ||||||
10〜11歳 | ||||||
12〜14歳 | ||||||
15〜17歳 | ||||||
18〜29歳 | ||||||
30〜49歳 | ||||||
50〜64歳 | ||||||
65〜74歳 | ||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
身体活動レベルは日常的に体をどれくらい動かしているかによって3段階に分けられます。
身体活動レベル | 日常生活の内容 |
---|---|
低い(Ⅰ) | 生活の大部分を座って過ごす場合 |
普通(Ⅱ) | 座って過ごすことが多いが、仕事などで立ったり歩いたりする場合、通勤や買い物などで歩く場合、家事や軽いスポーツを行う場合 |
高い(Ⅲ) | 立ったり歩いたりすることが多い仕事に就いている場合、余暇に活発に運動する習慣がある場合 |
厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」をもとに執筆者作成
例えば、身体活動レベルが普通の20代女性の推定エネルギー必要量は2,000kcalであるため、炭水化物から摂取するカロリーは1,000〜1,300kcalです。
これをグラムに換算するとおよそ250〜325gということになります。
[2] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-2.食物繊維の摂取目標量
厚生労働省は3歳以上の男女に対し、食物繊維の目標量も年代別に設定しています[3]。
性別 | ||
---|---|---|
年齢 | 男性 | 女性 |
3~5歳 | ||
6~7歳 | ||
8~9歳 | ||
10~11歳 | ||
12~14歳 | ||
15~17歳 | ||
18~29歳 | ||
30~49歳 | ||
50~64歳 | ||
65~74歳 | ||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
ただしこれは実現可能性を考慮して設定されたもので、成人の理想的な食物繊維摂取量は1日当たり24g以上とされています[3]。
[3] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3.炭水化物の摂取源となる食べ物
「炭水化物はどんな食品に含まれているんだろう?」
主食になる食べ物=炭水化物というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
確かに炭水化物は主食となる食べ物に多く含まれていますが、他の食品にも多く含まれています。
この章では炭水化物(糖質)と食物繊維の摂取源となる食べ物をご紹介します。
3-1.炭水化物(糖質)の摂取源となる食べ物
糖質は主食となる穀類やいも類、果物類、砂糖や甘味料、それらを用いたお菓子やジュースなどに多く含まれています。
具体的な食品としては、主食類にはコーンフレーク、食パン、白米など、いも類にははるさめ、さつまいもなどがあります。
炭水化物を多く含む食べ物についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
3-2.食物繊維の摂取源となる食べ物
食物繊維は野菜類や豆類、きのこ類、海藻類、果実類などに多く含まれています。
特に、切り干し大根やかぼちゃ、ごぼう、たけのこ、ブロッコリー、モロヘイヤ、納豆、おから、しいたけ、ひじき、しらたきなどの食品は1食当たりの摂取量に2〜3gの食物繊維を含んでいます[4]。
また、主食を玄米ご飯や麦ご飯、胚芽米ご飯、全粒粉パン、ライ麦パン、そばなどに変えることで食物繊維の摂取量を増やすことができます。
食物繊維を多く含む食べ物についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
食物繊維を含む食べ物は?摂取目標量と摂取量を増やすコツも解説
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
4.炭水化物(糖質)を健康的に摂取するポイント
「炭水化物を摂取するポイントはあるのかな?」
と気になっている方も多いのではないでしょうか。
炭水化物(糖質)を摂取すると血糖値が上昇します。
血糖値が急激に上昇すると多量のインスリンが分泌されるため、脂肪の蓄積を招きます。
また血糖値の急上昇とそれに伴う急降下(血糖値スパイク)は血管を傷つけ、動脈硬化を進行させるリスクが高いといわれています。
このため、糖質を摂取する際は血糖値の急上昇を起こさないよう心掛けることが勧められます。
この章では健康的に炭水化物(糖質)を摂取するポイントをご紹介します。
ポイントを押さえて、血糖値の急上昇を防いでいきましょう。
ポイント1 食事の際は野菜から食べる
食事の際は食物繊維を多く含む野菜などから食べ始めましょう。
食事の最初に野菜を摂る食べ方を「ベジファースト」といいます。
食物繊維には血糖値の急激な上昇を抑えるはたらきがあるため、食事の最初に食べることで血糖値の急上昇を防ぐことができます。
順番としては食物繊維の多い食品を最初に食べ、その次はたんぱく質の多い食品、最後にご飯や麺などの糖質が多い食品を食べます。
食べる順番を変えるだけなのですぐに取り入れることができますね。
ポイント2 GI値の低い食品を選ぶ
血糖値の急上昇を防ぎ糖質を健康的に摂取するには、GI値の低い食品を選ぶこともポイントです。
例えば、白米よりも玄米、うどんよりもそば、食パンよりも全粒粉パンの方がGI値は低く、血糖値を上昇させにくいとされています。
ポイント3 甘いものは食後のデザートに
空腹時にいきなり甘いものを食べると血糖値の急上昇を招きます。
また、3食の食事以外のときに甘いものを食べると、血糖値が下がる時間がなくなりインスリンを作る膵臓への負担も増えてしまいます。
甘いものを食べたくなったら、食後のデザートとして食べるようにしましょう。
5.糖質と炭水化物の関係についてのまとめ
糖質は炭水化物の一種です。
炭水化物は糖質と食物繊維に分けることができ、エネルギー源として使われるものが糖質、ヒトの消化酵素では消化できないものが食物繊維です。
炭水化物から摂取されるエネルギーのほとんどは糖質に由来するもので、炭水化物のカロリー(エネルギー量)は1g当たり4kcalとされています。
糖質が不足すると、エネルギー不足による集中力の低下や疲労感などの症状が見られます。
また、糖質が過剰になると消費されなかった分は中性脂肪として蓄えられ、肥満や生活習慣病の原因となります。
このため、厚生労働省は炭水化物から摂取するカロリーの割合を1日に摂取するカロリー(推定エネルギー必要量)の50〜65%にするという目標を設定しています[5]。
糖質は主食となる穀類やいも類、果物類、砂糖や甘味料、それらを用いたお菓子やジュースなどに多く含まれています。
一方、食物繊維は野菜類や豆類、きのこ類、海藻類、果実類などに多く含まれています。
炭水化物を摂取する際のポイントには、食物繊維の豊富なものから先に食べる、低GIの食品を選ぶ、甘いものは食後に食べるなどがあります。
この記事を参考に、適切な炭水化物の摂り方を意識して食事の内容を見直してみてくださいね。
[5] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」