「ビオチンってどんなはたらきがあるんだろう……」
「ビオチンってそもそも何?」
ビオチンは水溶性ビタミンの一種で、糖や脂肪酸、アミノ酸などの代謝やエネルギー産生に関わっています。
しかし、ビオチンについてなじみがない方やどんなはたらきがあるのか知らないという方は多いのではないでしょうか。
今回この記事ではビオチンのはたらきや摂取時の目安量、摂取源となる食品などを紹介します。
ビオチンの摂取時のポイントについても解説するので最後までお読みくださいね。
1.ビオチンとは?
ビオチンとは人間の体内ではつくることができないビタミンB群のうちの水溶性ビタミンです。
ビタミンB群にはビオチンの他にビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸があります。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
ビタミンB群にはどんなものがある?効果や含まれる食品を徹底解説!
ビオチンは腸内細菌によってつくられますが、それだけでは生体に必要な量を維持できないため、食品から摂取する必要があります。
主なはたらきは糖や脂肪酸、アミノ酸の代謝に関わる補酵素として、エネルギー産生をサポートすることです。
ヒトの体のエネルギーとなる栄養素には炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質がありますが、糖は炭水化物(糖質)、脂肪酸は脂質、アミノ酸はたんぱく質を構成する成分です。
つまりビオチンはエネルギー源となる栄養素からエネルギーをつくり出すのに欠かせない栄養素なのですね。
そのためビオチンは血糖値が下がる空腹時や、果物・穀類に含まれる「グルコース」やアミノ酸が余ったときに必要量が高まります。
またビオチンの含有量が国の定めた栄養機能食品の基準量を満たすものには「ビオチンは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。」と表示することができます。
その他にも皮膚の炎症を防止する因子を持っており、抗炎症物質を生成しアレルギー症状を緩和するはたらきもあります。
普段あまり意識して摂取することはありませんが、皮膚の健康を維持するために欠かせない栄養素ともいえそうですね。
2.ビオチンの摂取量による影響
「ビオチンは摂取不足や過剰摂取による影響はあるのかな?」
ビオチンを食品から摂取する際、摂取量によって体にどんな影響が出るのか気になる方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここからはビオチンの摂取量が不足していた場合と過剰に摂取した場合の影響について解説します。
2-1.ビオチンの摂取不足による影響
ビオチンはさまざまな食品に含まれているため、通常の食生活を送っている場合には摂取不足になることはありません。
しかし、ビオチンの吸収を阻害する栄養素を含む食品を長期にわたって摂取している場合や、ビオチンを再利用する酵素や活性化させる酵素が遺伝的に欠損している場合は「ビオチン欠乏症」を発症する可能性があります。
ビオチン欠乏症になると関節に炎症を起こして腫れたり変形したりしてしまう「リウマチ」や、涙腺や唾液腺などの外分泌腺が慢性的な炎症を引き起こす「シェーグレン症候群」、消化管に炎症や潰瘍を引き起こす「クローン病」などを引き起こすリスクが高まります。
その他にも食欲不振や吐き気、むかつき、うつ症状、顔面蒼白(そうはく)、筋肉痛、うろこ状の皮膚炎などさまざまな症状が現れます。
2-2.ビオチンの過剰摂取による影響
ビオチンの過剰摂取によって体に影響が出たという報告はこれまでありません。
ビオチンは過剰に摂取しても尿中に排出されるため、過剰症はないといいます。
遺伝的にビオチンが欠乏している人は、1日に成人男女の摂取目安量の4,000倍にもなる200mgものビオチンを摂取していますが、健康被害が出た例はありません[1][2]。
しかし妊娠中の方がビオチンを過剰に摂取した場合には胎盤や卵巣が萎縮する可能性などがあるといわれています。
3.ビオチンの摂取目安量
「ビオチンは1日にどれくらいの量を摂取すれば良いのかな……」
通常の食事から過剰摂取や摂取不足に陥る心配はないとはいえ1日にどれくらい摂取した方が良いのか「目安量」が知りたい方もいらっしゃるでしょう。
ビオチンの摂取目安量は18歳以上の男女ともに1日50μgに設定されています[3]。
日本人の1日当たりのビオチン摂取量としては、45.1μgという報告もあれば、60.7μgという報告もあります[3]。
通常どおり食事をしていれば目安量分のビオチンを摂取することは難しくないといえるでしょう。
4.ビオチンの摂取源となる食品
「ビオチンを摂取するにはどんな食品を食べれば良いのかな?」
ビオチンはいろいろな食品に含まれているといわれていますが、どんな食品に多く含まれているのか分かれば普段の食事にも取り入れやすくなりますよね。
ここからはビオチンの摂取源となる食品を動物性食品と植物性食品に分けて紹介します。
毎日の食事からビオチンを摂取するためにも、ぜひ参考にしてくださいね。
4-1.ビオチンを含む動物性食品
ビオチンは肉類、魚介類、卵類などの動物性食品に多く含まれています。
ビオチンを含む動物性食品は以下のとおりです。
【ビオチンを多く含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
鶏レバー | 生 | 230.0μg |
豚レバー | 生 | 80.0μg |
牛レバー | 生 | 76.0μg |
全卵(鶏卵) | 生 | 24.0μg |
あさり | 生 | 21.6μg |
たらこ | 生 | 18.0μg |
まいわし | 生 | 15.0μg |
鶏や豚、牛のレバーは動物性食品のなかでもビオチンの含有率が高いことがこの表から分かりますが、なかなか取り入れづらいという方もいらっしゃるかもしれません。
レバーより含有量は少なくなりますが、肉類ならソーセージやベーコン、ハム、魚介類ならしらす干しやうなぎのかば焼き、さばなどの食品からも摂取できますよ。
4-2.ビオチンを含む植物性食品
ビオチンはきのこ類や種実類などの植物性食品にも多く含まれています。
ビオチンを含む植物性食品は以下のとおりです。
【ビオチンを多く含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
らっかせい | いり | 110.0μg |
ヘーゼルナッツ | フライ、味付け | 82.0μg |
アーモンド | フライ、味付け | 60.0μg |
きな粉(黄大豆) | - | 31.0μg |
まいたけ | 生 | 24.0μg |
カシューナッツ | フライ、味付け | 19.0μg |
まつたけ | 生 | 18.0μg |
きのこ類は炒め物や鍋、みそ汁の具材にも使えるので日常的に摂取しやすい食品といえるでしょう。
5.ビオチンを摂取する際に気を付けたいポイント
「ビオチンを摂取するときに気を付けた方が良いことって何かあるのかな?」
ビオチンを摂取する際の注意点を把握することで、より効率良くビオチンを摂取できるようになるでしょう。
ここからは調理法に関する注意点と摂取する食品に関する注意点について解説します。
ポイント1 調理法を工夫する
ビオチンを摂取する際には調理法を工夫するようにしましょう。
ビオチンには水に溶けやすいという特徴があります。
そのためビオチンを含む食品をゆでると、ゆで汁に溶け出し流出してしまう恐れがあります。
ビオチンを流出させずに摂取するには煮汁まで飲むスープ料理がおすすめです。
またビオチンは加工や保存の方法によっては失われてしまうことが分かっています。
魚介類はビオチンを多く含む食品といわれていますが、練り製品などの加工品に含有量が少ないのはこの特性が関わっていると考えられます。
ポイント2 生卵の白身を摂取し過ぎない
生卵の白身部分にはビオチンの吸収を阻害する栄養素が含まれているため、摂取し過ぎには注意が必要です。
卵白に含まれる「アビジン(糖たんぱく)」にはビオチンと結合し「ビオチン-アビジン結合体」をつくるはたらきがあり、ビオチンの吸収を妨げてしまいます。
しかし、ビオチン欠乏症は長期間にわたり生卵白を大量に摂取した場合に発症する可能性があるといわれているものなので、摂取し過ぎなければ発症する心配はないでしょう。
また卵を加熱することでアビジンは不活性化するため、調理法によってもビオチンの吸収を阻害するはたらきを抑えられるといいます。
6.ビオチンについて まとめ
ビオチンはビタミンB群のうちの水溶性ビタミンの一種です。
ビオチンは哺乳類には生合成できないため、食品から摂取する必要があります。
ビオチンは補酵素として糖や脂肪酸、アミノ酸の代謝やエネルギーの産生に関わっています。
ビオチンには抗炎症物質を生成するはたらきもあるため、皮膚を炎症から守ったり、アレルギー症状を緩和したりしてくれる効果も期待できるでしょう。
一方でビオチンが不足するとリウマチやシェーグレン症候群の他、食欲不振や吐き気、むかつき、うつ症状などさまざまな症状が現れることがあります。
ただし、ビオチンはいろいろな食品に含まれているため、通常の食事をしていれば摂取不足になることはありません。
またビオチンは過剰に摂取しても尿中に排出されるため、過剰症になる心配もないでしょう。
ビオチンの1日の摂取目安量は18歳以上の男女ともに50μgと設定されています[4]。
魚介類や肉類、卵類、きのこ類、種実類などビオチンの含有量が多い食品を普段の食事から取り入れてみてくださいね。
調理法は煮汁に流出したビオチンまで効率良く摂取できるスープがおすすめですよ。
また生卵白の過剰摂取はビオチンの吸収を妨げる恐れがあるため、注意が必要です。