「貧血を解消するにはやっぱり鉄分だよね。どんな食べ物がいいんだろう……」
「効率的に鉄分を摂取する方法ってないのかな?」
貧血気味の方にとって、真っ先に摂ろうと思う栄養素のひとつが「鉄分」ではないでしょうか。
特に月経のある女性は鉄分が不足しがちだといわれています。
鉄分を効率的に体に取り入れるためには鉄分を多く含む食べ物を選ぶとともに、鉄分の吸収を良くする食べ物を摂ることも重要ですよ。
この記事では、貧血の解消に役立つ鉄分のおすすめの摂り方を詳しく解説していきますね。
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1.そもそも鉄分とは?
鉄分が不足すると貧血になるということはみなさんご存知でしょう。
鉄分は正確には「鉄」といい、体に必要な「必須ミネラル」の一種です。
人の体内では合成することができないため、食べ物から補わなければなりません。
鉄分は体内では赤血球の一部として血液中の酸素を運搬するといった重要なはたらきを果たしています。
鉄分が不足すると全身に十分な量の酸素を運ぶことができなくなり、頭痛や動悸、倦怠感、めまい、顔色が蒼白になるなどの症状が表れることが多くなります。
その他に、爪が薄く平たくなる(さじ状爪)、無性に氷を食べたくなるといった「異食症」の症状が見られることもあります。
こうした鉄分不足による貧血を「鉄欠乏性貧血」といいます。
鉄の不足からくる体調不良を防ぐために、食べ物からしっかりと摂取しておきたいですね。
鉄分不足を補うバランスの良い食事とは?
2.鉄分の男女別・世代別摂取目安量は?
「貧血にならないためには、一日にどれくらい鉄分を摂ればいいんだろう?」
というのが気になるところですよね。
1日当たりの鉄分の摂取推奨量は性別や、女性の場合は月経の有無によって異なります。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、鉄の摂取推奨量は以下のように定められています。
【鉄の1日当たりの摂取推奨量】
年齢 | 男性 | 女性 月経あり |
女性 月経なし |
---|---|---|---|
18〜49歳 | 7.5mg | 10.5mg | 6.5mg |
50〜64歳 | 7.5mg | 11.0mg | 6.5mg |
65〜74歳 | 7.5mg | - | 6.0mg |
75歳以上 | 7.0mg | - | 6.0mg |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
さらに妊娠中・授乳中の女性は年齢に対して定められた推奨量に加えて、以下の量を摂取することが推奨されています。
【妊婦・授乳婦の鉄の1日当たりの摂取推奨付加量】
妊婦 初期 | 2.5mg |
妊婦 中期・後期 | 9.5mg |
授乳期 | 2.5mg |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
同じ年代・性別でも月経があったり、妊娠していたりする場合に鉄分が多く必要になることが分かりますね。
貧血と低血圧の違いって何?
3.鉄分を効果的に摂取するためには?
「自分は鉄分が足りていないかも……。摂取目安量を満たすにはどうしたらいいんだろう?」
貧血のつらい症状を防ぐためにも、どのように鉄分を摂取するか知っておきたいですよね。
実は鉄分は吸収されやすい「ヘム鉄」と吸収されにくい「非ヘム鉄」の二種類に分類されます。
実は日本人が食事から摂取している鉄分の大部分は吸収されにくい非ヘム鉄であることが分かっています。
鉄分を効果的に摂取するためには、ヘム鉄を摂取したり、非ヘム鉄とその吸収率を上げる食べ物を同時に摂ったりすることが重要になります。
詳しくはこれから解説していきましょう。
食事で鉄分を取る前に知っておくべきポイント!
3-1.ヘム鉄を摂取する
不足しがちな鉄分を補うためには、吸収率が高いヘム鉄を多く含む肉や魚のような動物性食品を意識的に摂取することがおすすめです。
ヘム鉄を多く含んでいて、日々の食事に取り入れやすい食品には以下のようなものがあります。
【ヘム鉄を多く含む食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
煮干し(かたくちいわし) | ‐ | 18.0mg |
豚レバー | 生 | 13.0mg |
しじみ | 生 | 8.3mg |
ビーフジャーキー | ‐ | 6.4mg |
赤貝 | 生 | 5.0mg |
ほっき貝 | 生 | 4.4mg |
牛レバー | 生 | 4.0mg |
あさり | 生 | 3.8mg |
ホタテ | 生 | 2.2mg |
牡蠣 | 生 | 2.1mg |
「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに作成
ヘム鉄を含む食材でビタミン不足も解消!?
3-2.非ヘム鉄とビタミンC・たんぱく質を合わせて摂る
野菜などの植物性食品に含まれる非ヘム鉄にはヘム鉄よりも吸収されにくいという特性があります。
「吸収率が低いなら、非ヘム鉄を摂っても意味がないってこと?」
と気になっている方も多いのではないでしょうか。
実は非ヘム鉄はたんぱく質やビタミンCの摂取量が増加すると体への吸収率が高まることが分かっています。
一緒に食べる食材を工夫することで非ヘム鉄も体に役立つということですね。
非ヘム鉄は以下のような食品に多く含まれていますよ。
【非ヘム鉄を多く含む食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
小松菜 | 生 | 2.8mg |
枝豆 | 生 | 2.7mg |
サラダ菜 | 生 | 2.4mg |
水菜 | 生 | 2.1mg |
ほうれんそう | 生 | 2.0mg |
サニーレタス | 生 | 1.8mg |
高菜 | 生 | 1.7mg |
春菊 | 生 | 1.7mg |
ルッコラ | 生 | 1.6mg |
ブロッコリー | 生 | 1.3mg |
「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに作成
卵や肉、魚、乳製品、豆類といったたんぱく質を多く含む食品、野菜や果物、いも類といったビタミンCを多く含む食品を同時に摂るようにしてみましょう。
鉄分だけでなく、他の栄養素も意識したバランスの良い食事を心掛けることが重要だといえますね。
「たんぱく質」の摂取目安は?その食材は?
「ビタミンC」の摂取目安は?その食材は?
4.鉄分に関するよくある疑問
「そもそも女性が貧血になりやすいのはどうしてなんだろう?」
「鉄分って、摂り過ぎても体に悪影響はない……?」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここからは、鉄分に関してよくある疑問をひとつひとつ解決していきましょう。
【鉄分に関するよくある疑問】
- なぜ女性は鉄分が不足しやすいの?
- 鉄分不足になりやすいのは女性だけ?
- 鉄分は摂りすぎても大丈夫?
疑問1 なぜ女性は鉄分が不足しやすいの?
女性に貧血の方が多い原因は、月経によって血が失われること、妊娠や授乳によって鉄の必要量が増加することだといえるでしょう。
個人差もありますが、経血の量が多い女性は特に鉄が欠乏するリスクが高まります。
疑問2 鉄分不足になりやすいのは女性だけ?
「鉄分不足は月経のある女性に多いんだ。自分には関係ないかな」
と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、油断は禁物です。
月経のある方でなくとも、栄養バランスに偏りが生じていたり、不規則な食生活を送っていたりする場合は鉄分不足の症状が出る可能性があります。
極端な偏食や、ついつい朝ご飯を抜いてしまう、食事をしないで済ませてしまうといった荒れた食生活は、鉄分不足の原因になります。
鉄の吸収を促進するビタミンCや、血を作るのに必要なたんぱく質やビタミンB6、ビタミンB12、葉酸が不足している場合も鉄分不足を招くリスクがあります。
また、一度にたくさんの鉄分を摂取しても全てが吸収されるわけではありません。
鉄分は一度に吸収される量が決まっているため、吸収できる量以上の鉄分を摂取しても排泄されてしまうのです。
1日3回栄養バランスの良い食事をきちんと摂り、こまめに鉄分を摂取するようにしましょうね。
鉄分を補えるバランスの良い食事とは?
その他の栄養素の基礎知識と含まれる食材について
疑問3 鉄分は摂りすぎても大丈夫?
「鉄分を摂り過ぎて体に不調が表れたら怖いな……」
という不安を感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、深刻に考える必要はありません。
厚生労働省の発表する「日本人の食事摂取基準(2020年版)」においても、鉄分は通常の食事で摂り過ぎることはないといわれているので、ご安心くださいね。
ただし、サプリメントや鉄を強化した食品、鉄剤の摂り過ぎによって過剰摂取となってしまう可能性はあります。
鉄分を過剰摂取すると、便秘、吐き気、嘔吐といった胃腸の障害のほか、体内に鉄が過剰にたまりさまざまな症状が現れる鉄沈着症などの悪影響が生じます。
基本的に不足しがちだといわれている鉄分ですが、1日当たりの耐容上限量(これ以上摂らない方がいい量)は以下のとおりです。
【鉄の1日当たりの耐容上限量】
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
18歳以上 | 50mg | 40mg |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
5.鉄分を含む食べ物についてのまとめ
鉄分とは正確には「鉄」といい、ヒトの体に欠かせないミネラルの一種です。
体内では、赤血球の一部として血液中の酸素を運搬するといった重要なはたらきを担っています。
鉄が不足すると全身の器官に酸素を十分に供給することができなくなり、頭痛や動悸(どうき)、倦怠(けんたい)感、目まいなどの症状が生じます。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、月経のある女性は特に必要とされる量が増えるためしっかりと摂取することが重要です。
鉄は動物性の食品に含まれる「ヘム鉄」と植物性の食品に含まれる「非ヘム鉄」に分けられます。
ヘム鉄は吸収率が高く、煮干しや豚や牛のレバー、貝類などの食品に多く含まれています。
非ヘム鉄にはヘム鉄に比べ吸収率が低いという特性がありますが、たんぱく質やビタミンCを多く含む食品と同時に摂取することで吸収率が高まるとされています。
非ヘム鉄は小松菜や枝豆、サラダ菜、水菜などに多く含まれています。
他の食品との食べ合わせも意識しつつ、鉄を十分に摂取するよう心掛けましょう。
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