「日中、眠気に襲われるんだけどどうしたら良いんだろう?」
「日中に眠くなるのは睡眠不足なのかな?」
とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日中に眠くなってしまう原因はいくつか考えられ、対策の仕方もさまざまです。
また病気が日中の眠気を引き起こす場合もあります。
どのような睡眠を取れば日中に眠くならないのか、病気が原因の場合はどうすれば良いのか気になるところですよね。
この記事では睡眠のメカニズムをはじめ、日中に眠くなる原因や対策、眠気に関係する睡眠障害や病気について解説します。
快眠のためのポイントや必要とされる睡眠時間についてもご紹介しますので、ぜひお読みくださいね。
1.眠気が生じるメカニズム
「そもそも眠気を感じるのってなぜなんだろう?」
ヒトの睡眠と覚醒のリズムは体内時計がつかさどっています。
体内時計は体温などを調節する自律神経やホルモンの分泌などにも深く関与し、ヒトの1日の活動と睡眠の周期を形作っています。
またヒトの体内時計は約25時間周期のため、光や食事、生活習慣などの刺激(同調因子)によって24時間の地球の自転周期に合うように日々調節されています[1]。
この調節がうまくいかないと、適切な時間に眠ったり起きたりすることができなくなってしまうのです。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「概日リズム睡眠障害」
2.日中に眠くなる原因
「日中に眠くなってしまう原因は何だろう?」
日中の眠気にはいくつかの原因が考えられます。
睡眠不足や質の悪い睡眠はもちろんのこと、食後の血糖値の変動や薬の副作用も原因になり得ます。
また精神疾患、「PMS(月経前症候群)」などの病気が眠気を引き起こす場合もあります。
この章ではこれらの原因について一つずつ解説します。
原因1 睡眠不足
睡眠が不足すると日中に眠気を感じることが多くなります。
私たちは睡眠をとることで疲労回復をしたり、自律神経を整えたりしています。
このため、十分に睡眠がとれない日が続くと心身に悪影響を及ぼし、集中力が低下して日中に眠くなってしまうのです。
長期間睡眠不足が続き、日中に強い眠気に襲われる状態を「睡眠不足症候群」といいます。
睡眠不足症候群の場合は、平日の睡眠が足りない分を補おうと休日に長時間眠ることが特徴です。
この場合、平日の睡眠時間を十分に確保できれば日中の強い眠気をなくすことができます。
【関連情報】 「睡眠不足の悪影響とは?質の高い睡眠をとるためのポイントも解説」についての記事はこちら
原因2 血糖値の変動
日中の眠気には血糖値の変動も関係します。
食後の血糖値の急上昇とその後の急降下は低血糖状態を招き、眠気などの症状を引き起こします。
食事を摂ると血糖値が急激に上昇し、これを抑えるために血糖値を下げるホルモンが分泌されます。
このホルモンによって上昇した血糖値が急激に下降することで低血糖状態になり、眠気が生じるのです。
原因3 薬の副作用
服用している薬の副作用が日中の眠気の原因となる場合もあります。
花粉症やアレルギー性鼻炎など、アレルギー性の症状に対する薬には抗ヒスタミン剤が配合されています。
ヒスタミンはアレルギーを引き起こす物質である一方で、学習能力を高めるといった作用もあるため、ヒスタミンを抑える抗ヒスタミン剤は集中力や注意力の低下、眠気を招きます。
また抗うつ薬や抗精神病薬、抗不安薬、抗てんかん薬なども眠気を招きやすいといわれています。
薬で眠くなるのが心配な方は、医療機関で相談してみましょう。
症状によっては、眠くなりにくい薬を選べる場合もあります。
原因4 体の不調、病気
体の不調や病気が日中の眠気につながっている場合もあります。
PMS(月経前症候群)がひどい方は眠気や睡眠障害の症状が現れる場合があります。
月経前は女性ホルモンが大きく変動する影響で、基礎体温が上がり1日の体温にメリハリがなくなります。
就寝後に体温が低くなると、睡眠の質は向上する傾向にあるため体温が変化しにくい生理前は眠りが浅くなります。
このため日中に眠気を感じたり、睡眠が浅くなったりすると考えられています。
また、うつ病の症状として日中の眠気が現れる場合もあります。
うつ病の症状は一日中続き、通常の日常生活を送ることが困難になります。
誰にでも起こり得る病気で、睡眠障害の他にもさまざまなつらい症状が現れます。
その他、不眠症や「ナルコレプシー」などの過眠症、「概日リズム睡眠障害」、「睡眠時無呼吸症候群」など、多くの睡眠障害が日中の強い眠気を引き起こします。
もし症状がひどい場合には医療機関で相談するなどの対策を取りましょう。
3.日中の眠気に有効な対策
「日中の眠気対策はあるのかな?」
日中の眠気を解消するには睡眠不足や体調など原因へのアプローチが必要です。
しかし、襲ってくる眠気をすぐに何とかしたいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。
この章では日中の眠気に有効な対策を八つご紹介します。
どれも手軽に行えるものなので、眠気を感じたときにぜひ試してくださいね。
対策1 カフェインを摂取する
カフェインの摂取は眠気を覚ます有効な方法です。
眠気には脳内の「アデノシン」という睡眠物質が関係しています。
カフェインはアデノシンの作用を抑えるため、目を覚ます効果があります。
カフェインはコーヒー、紅茶、緑茶、栄養ドリンクなどの食品に含まれています。
しかし、眠気を覚ましたいがためにカフェインを過剰摂取すると、めまいや震え、心拍数、不眠などを起こす恐れがあるため注意しましょう。
対策2 糖分を補給する
眠気対策にはブドウ糖やショ糖などの糖分の摂取が有効です。
血糖値が低下して脳に必要なブドウ糖が不足すると、集中力が下がり眠気を感じやすくなります。
ブドウ糖やショ糖は摂取後の吸収が早く、低血糖状態を速やかに改善してくれるため眠気対策として効果的です。
また糖分と合わせて、カフェインを摂取することでより目を覚ます効果が高まります。
栄養ドリンクには糖分もカフェインも大量に含まれているため、忙しい方の眠気覚ましにはぴったりですね。
ただし、摂り過ぎると今度は血糖値を下げようとして、食後と同じような眠気に襲われるため注意が必要です。
対策3 ストレッチする
勉強中や仕事中に長時間座っていて眠くなる場合にはストレッチも有効です。
眠気を感じるとき、ヒトの体は副交感神経が優位になっています。
ストレッチを行うことで交感神経が優位にはたらくため、眠気を覚ますことができます。
勉強中や仕事中に眠気を感じたら首や肩を回すなど、簡単なストレッチを行ってみましょう。
対策4 眠気覚ましのツボを押す
ツボ押しは動きが少ないため、すぐにできる眠気覚ましの対策です。
仕事中や試験中など自由な動きが取れないときには、ツボを押してみましょう。
眠気を覚ますツボには「風池(ふうち)」、「合谷(ごうこく)」、「中衝(ちゅうしょう)」、「労宮(ろうきゅう)」などがあります。
風池は首の後ろ、後頭部の際あたり、首の骨の指一本分外側にあります。
両手で頭を支えた状態で上を向き、親指で押します。
合谷は親指と人差し指の骨の交わるところの人差し指側のくぼみにあります。
反対の手の親指で、気持ち良いと感じる程度に押してみましょう。
中衝は中指の爪の生え際にあります。
反対の手の親指と人差し指でつまんで、引っ張るようにして押すと効果的です。
労宮は手を握ったときに中指と薬指が当たるちょうど間にあります。
ツボを中心に手のひら全体を強めに指圧すると心地良く感じられます。
また耳たぶには無数のツボがあり、眠気に効くツボもあります。
耳たぶをつまんで引っ張るだけでも、眠気を覚ます効果を期待できます。
対策5 冷たい水で顔を洗う
冷たい水で顔を洗うことも眠気を覚ます対策になります。
皮膚に冷たいものが当たると交感神経が刺激され、体が活動的な状態になります。
このため水の温度を低くすることがポイントです。
また冷たい水で顔を洗う以外にも、冷却グッズなどで首や頭を冷やすことも有効です。
対策6 メントールを首に塗る
メントールで皮膚に直接的な刺激を与えることも眠気の解消に役立ちます。
これはメントールが皮膚の冷たさを感じるセンサーを刺激するためです。
メントールを皮膚に塗ると清涼感を感じ、交感神経が活性化されます。
肩や首など頭に近い部分や、鼻周りに塗ると特に効果的ですよ。
メントール入りのリップクリームやウェットシートなどを常備しておくのも良いかもしれませんね。
対策7 換気する
眠気覚ましには室内の換気を行うことも有効です。
空気中の二酸化炭素の濃度が高くなると、頭がぼんやりとしてしまいます。
このため、換気で空気の入れ替えを行うことで二酸化炭素の濃度を下げる必要があります。
換気が難しい場合はサーキュレーターなどを置いて空気の循環を促すのも良いでしょう。
対策8 短時間の仮眠をとる
睡眠不足で眠気が生じている場合は仮眠をとることも対策の一つです。
仮眠をとると寝不足が少し解消されるため、眠気を和らげることができます。
仮眠で眠り過ぎてしまうと目覚めが悪くなったり夜に寝付けなくなったりするため注意しましょう。
15分程度の長さで眠気解消の効果が十分期待できます[2]。
仮眠をとる前にカフェインを摂取すると、ちょうど目覚めるタイミングでカフェインの作用が表れるためすっきりと目覚めることができます。
アイマスクなども仮眠の効果を上げます。
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
4.眠気を防ぐための快眠のポイント
「眠りたいのに眠れない……」
「日中の眠気を防ぐために快眠するための方法を知りたい」
このようにお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
この章では日中の眠気を防ぐための快眠のポイントを八つご紹介します。
ポイント1 起床時に日光を浴びる
起床時に浴びる日光は快眠と深い関係があります。
ヒトの体内時計は24時間よりも長めにできているため、毎日早めなければ後ろにずれてしまいます[3]。
日光には、後ろにずれた体内時計を修正する効果があります。
起床直後の朝日が最も効果的なため、起きたらすぐにカーテンを開ける習慣をつけましょう。
なお曇りや雨の日でも光量は十分なため、天候にかかわらずカーテンを開けてくださいね。
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
ポイント2 規則正しく食事を摂る
規則正しく食事を摂ることは快眠につながるポイントの一つです。
食事は体内時計のリズムの調整に関係しています。
日中の脳のエネルギー源として、朝食は糖分を摂取することを意識しましょう。
エネルギー不足で日中の活動量が少なくなると、睡眠に影響する場合があります。
また消化活動は睡眠を妨げる原因となってしまいます。
就寝に近い時間の夜食などは避け、夕食から就寝までの間隔も余裕を持って空けると良いでしょう。
ポイント3 就寝時間・起床時間を決める
就寝時間と起床時間を決めることも快眠のためには重要です。
体内時計は睡眠と覚醒のタイミングを決める役割に加え、体温やホルモンの分泌などを調整しています。
このため就寝や起床の時間がずれると、体内時計のリズムが乱れてしまうのです。
体内時計は自分の意思で調整できないため、規則正しい睡眠をとることが重要なのですね。
布団に入る時間を決めて、休日も平日と同じくらいの時間に就寝・起床することを心掛けましょう。
ポイント4 適度に運動する
快眠には運動の習慣化も重要です。
運動を行うことで寝付きが良くなるため、運動習慣のある人は不眠になりにくいといわれています[4]。
激しい運動は睡眠の妨げになるため、習慣化しやすく負担の少ないウォーキングやランニングなどの有酸素運動を行うと良いでしょう。
また運動を行うタイミングも重要で、睡眠の質を上げるには夕方から夜就寝3時間前くらいまでが良いといわれています[4]。
これは就寝の数時間前に体温を上げることで、就寝時に脳の温度が大きく低下して眠気を感じやすくなるためです。
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
ポイント5 入浴する
睡眠の質を高めるには入浴も有効です。
入浴すると一時的に体温が上がります。
このため就寝の2~3時間前に入浴すると就寝時の脳の温度低下が大きくなり、眠りやすくなります[5]。
体温は少し上昇するだけで効果があるため、ぬるめのお湯でも問題ありません。
ぬるま湯なら25〜30分、熱めのお湯なら5分程度で効果を感じることができます[5]。
眠りやすくするためにも、自分の体調や好みに合った入浴法を見つけてくださいね。
[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
ポイント6 就寝前のカフェインなどの刺激物は避ける
睡眠の質を高めるには、就寝前のカフェインやニコチン、アルコールなどの刺激物の摂取を避けましょう。
カフェインは脳の覚醒作用を持ち、コーヒーや緑茶、チョコレート、栄養ドリンクなどに含まれています。
敏感な方は、5〜6時間前から控えることをおすすめします[6]。
ニコチンも脳を覚醒させて睡眠を妨げるため、就寝前のたばこはやめましょう。
アルコールは寝付きを良くしますが、深い睡眠を妨げて早く目が覚めてしまいます。
睡眠薬代わりの寝酒は避けましょう。
[6] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
ポイント7 寝室の環境を見直す
快眠には快適な睡眠環境を整えることもポイントです。
寝具は吸湿・放湿性が高く、保温性に優れたものを選びましょう。
また枕の高さを自分に合ったものにするのも重要です。
さらにエアコンや加湿器などで寝室を快適な温度と湿度に調整することも大切です。
睡眠に適した温度は20℃前後で、湿度は40~70%程度だといわれています[7]。
[7] 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」
5.ひどい眠気が続く場合は受診しよう
「眠気がひどいけど一向に治らない」
「何か病気と関係しているのかな」
眠気は病気によって生じている場合もあります。
健康な人でも日中に眠くなることはありますが、通常は意思の力で起きていられます。
しかし夜に十分に眠れていても、何らかの原因で日中に起きていられないほどの眠気に襲われる場合があります。
これを「過眠」といい、深刻な睡眠障害を患っている可能性があります。
過眠は学業や仕事に支障が出るだけでなく、突然の眠気によって転倒や事故を起こす危険性があります。
過眠を引き起こす病気は慢性的な睡眠不足によって起こるものと、脳の睡眠を調節する部分がうまくはたらかず眠気を生じるものに分けられます。
前者の代表例としては睡眠時無呼吸症候群が、後者では「ナルコレプシー」が挙げられます。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まって酸欠状態になり、深い眠りが妨げられて慢性的な睡眠不足に陥る病気です。
睡眠時無呼吸症候群は日中に眠くなるだけでなく、夜間の酸欠状態が原因で高血圧や動脈硬化を引き起こす場合があります。
このため中等症以上の睡眠時無呼吸症候群を放置すると10年後に3〜4割の確率で死亡してしまうといわれています[8]。
ナルコレプシーは、夜間に十分睡眠がとれていても日中に耐え難い眠気に襲われる病気です。
この眠気は、体内で目を覚まし続ける役割を持つたんぱく質を作り出すことができなくなるため起こります。
これらの病気が原因の過眠は、原因となる病気をしっかりと治療する必要があるため専門医を受診しましょう。
[8] 厚生労働省 e-ヘルスネット「昼間の眠気」
6.日中の眠気対策についてのまとめ
日中の眠気の原因には睡眠不足や睡眠の質の低下の他、食後の血糖値の変動や薬の副作用、病気などがあります。
眠気を感じる場合は、カフェインやブドウ糖などの糖分を摂取したり、体を動かしたりすると良いでしょう。
またツボ押しやメントール、洗顔、換気も有効です。
睡眠不足による眠気に対しては、仮眠で対応することがすすめられます。
日中の眠気を予防するためには生活リズムを整えて適度に運動をする、睡眠の妨げとなる刺激物を避ける、睡眠環境を整えるといったことがポイントです。
しっかり眠れていても日中に耐えられないような眠気に襲われる場合は過眠の場合があるため、専門医を受診しましょう。
この記事を日中のつらい眠気を解消するための参考にしてくださいね。