「不眠症になるとどのような症状が出るの?」
「不眠症になってしまったら、どうすれば良いんだろう」
このようなお悩みを抱える方がおられるかもしれません。
不眠症とは寝つきが悪かったり、眠っている間に何度も目が覚めたりすることが原因で、日中にさまざまな不調が現れる病気のことです。
また、不眠症にかかる割合は、男性よりも女性の方が多いといわれています。
この記事では、不眠症の定義をはじめ、不眠が続いた場合の影響や原因、治し方を解説します。
記事を読むことで、自分が不眠症かどうかが分かり、生活の質を上げられるチャンスを掴めるかもしれません。
朝スッキリと目覚めたい方はぜひ読んでみてください。
1.不眠症とは
不眠症とは、以下の二つの症状に当てはまる状態のことを指します。
- 夜間の不眠が続く
- 日中に精神・体が不調であることが分かっており、生活の質が下がる
つまり、ただ単に眠れないだけの状態は不眠症とはいえないのです。
また、不眠症には「慢性不眠症」と「短期不眠症」の2種類があります。
さらに、不眠と睡眠不足も定義が違います。
このように不眠症とはどういう状態かを知ることは大切ですね。
【関連情報】 「睡眠不足の悪影響とは?質の高い睡眠をとるためのポイントも解説」についての記事はこちら
2.不眠が続くとどうなるか
不眠が続くと、どのような症状が起こるのでしょうか。
不眠の状態が続けば、日中にさまざまな不調が現れるようになります。
具体的には次のとおりです。
- 倦怠感
- 意欲低下
- 集中力低下
- 抑うつ
- 頭重
- めまい
- 食欲不振
上記のような症状が出ることで、「また今夜も眠れないのだろうか」「早く眠れるようにならないと」と不眠恐怖により、さらに眠れなくなる悪循環に陥る可能性もあります。
3.不眠症と寿命の関係性は?
不眠症になると寿命にどのような影響を与えるのでしょうか。
実は、不眠症そのものが直接的に寿命に影響するとはいえません。
しかし、不眠症が原因で高血圧や糖尿病などの生活習慣病をはじめとする慢性疾患にかかりやすくなることで、死亡しやすくなることはあります。
また、不眠になるとうつ病の発症リスクも2倍となります[1]。うつ病などの気分障害は、自殺の要因として特に重要であることが分かっています[2]。
例えば、平成19年度以降の警視庁統計における自殺の原因・動機によれば、うつ病が原因で自殺をしている人の割合は健康問題が原因で自殺している人の4割を越えています[2]。
【平成19年以降の警察庁統計における自殺の原因・動機】
自殺者総数 | うち原因・動機特定者 | 健康問題 | 経済・生活力問題 | 家庭問題 | 勤務問題 | 男女問題 | 学校問題 | その他 | |||||
全体 | うつ病 | 統合失調症 | アルコール依存症 | 薬物乱用 | |||||||||
平成21年 | 32,845 | 24,434 | 15,867 | 6,949 | 1,394 | 336 | 63 | 8,377 | 4,117 | 2,528 | 1,121 | 364 | 1,613 |
平成22年 | 32,249 | 23,490 | 15,153 | 6,490 | 1,368 | 310 | 48 | 7,404 | 3,912 | 2,412 | 1,115 | 387 | 1,538 |
平成23年 | 33,093 | 23,209 | 14,684 | 6,060 | 1,273 | 295 | 49 | 7,318 | 3,751 | 2,207 | 949 | 338 | 1,500 |
厚生労働省「自殺・うつ病等対策プロジェクトチームとりまとめについて」をもとに執筆者作成
不眠症が寿命に直接的な影響を与えるわけではないものの、間接的には影響するといえるでしょう。
4.不眠症の症状や特徴
不眠症の症状は以下の四つのタイプに分けられます。
【不眠症の症状タイプと症状】
症状タイプ | 症状 |
---|---|
入眠障害 | 床にはいってもなかなか寝付けない |
中途覚醒 | 眠りが浅く、途中で何度も目が覚める |
早朝覚醒 | 早朝に目が覚め、寝ようとしても寝付けない |
睡眠障害 | 眠りが浅く、睡眠時間のわりには熟睡した感じがしない |
上記の症状は、単独ではなく、同時に複数現れることもあります。
5.不眠症になる原因
不眠症になる原因は主に以下の六つになります。
- ストレス
- 体の病気
- こころの病気
- 環境
- 生活リズムの乱れ
- 薬や刺激物
不眠症になる原因はさまざまです。
適切な対処をするためには正しく原因を知る必要がありますね。
それぞれくわしく解説します。
5-1.ストレス
ストレスとは、外部からの刺激などによって体の内部に生じる反応のことです[3]。
ストレスや緊張は安らかな眠りを妨げます。
生真面目な性格の人ほど、強いストレスを感じやすい傾向にあるようです。
5-2.体の病気
不眠症の原因となる体の病気は以下のようなものが挙げられます。
- 高血圧
- 心臓病
- 呼吸器疾患
- 腎臓病
- 前立腺肥大
- 糖尿病
- 関節リウマチ
- アレルギー疾患
- 脳出血・脳梗塞
上記のような体の病気が原因で不眠症となっている場合は、不眠症よりも原因となっている病気の治療を優先した方が良いでしょう。
原因である病気を治療できれば、不眠症は自然と治ることが多いと考えられます。
5-3.こころの病気
こころの病気が原因で不眠になることが知られています。
また、眠れない理由がうつであったということも少なくありません。
特に不眠症状とともに以下の症状がある方は注意が必要です。
- 気分が激しく落ち込む
- 何をするのも億劫
- 趣味のような以前好きだったことが手につかない
このような場合は、早急に専門医の受診をおすすめします。
5-4.環境
眠っているときの周りの環境が原因で、不眠症となる場合もあります。
周りが騒音でうるさかったり、光が明るかったりすると眠ることが難しいですよね。
また、寝室の温度や湿度も適切でなければ、よく眠れないでしょう。
5-5.生活リズムの乱れ
生活リズムの乱れは不眠症を引き起こす原因になります。
例えば、交代勤務や時差ぼけなどは体内リズムが崩れやすくなる典型的な例でしょう。
現代は昔と違い、昼と夜の区別がつかないくらい活動できるようになりました。
そのため、睡眠リズムが狂いやすく、不眠症を引き起こしやすくなっているのです。
5-6.薬や刺激物
薬や刺激物が不眠症の原因になることもあります。
例えば、以下の薬は特定の病気のための治療薬ですが、睡眠を妨げることがあるのです。
- 降圧剤
- 甲状腺製剤
- 抗がん剤
また、アレルギー症状の改善に使われる「抗ヒスタミン薬」は日中の眠気を引き起こします。
さらに、カフェインやニコチンなどの刺激物には覚醒作用があり、安眠を妨げることが分かっています。
6.男性よりも女性の方が不眠症が多い理由
一般的に、男性に比べて女性の方が不眠になりやすいといわれています。
女性は性ホルモンの動きが活発であり、月経・妊娠・出産・閉経などによりホルモンの影響を受けることで、睡眠不足になりやすいからです。
例えば、厚生労働省が令和2年におこなった 健康実態調査結果の報告によると、睡眠時間が7時間未満の女性の割合は男性よりも多く、7時間~9時間眠っている割合は男性よりも女性の方が少ないと報告されています[4]。
【日本人の睡眠時間】
男性 | (N=647) | 女性 | (N=715) | 計 | (N=1362) | |
件数 | 割合 | 件数 | 割合 | 件数 | 割合 | |
9時間以上 | 28 | 4.3% | 42 | 5.9% | 70 | 5.1% |
8時間以上~9時間未満 | 77 | 11.9% | 61 | 8.5% | 138 | 10.1% |
7時間以上~8時間未満 | 140 | 21.6% | 114 | 15.9% | 254 | 18.6% |
6時間以上~7時間未満 | 219 | 33.8% | 228 | 31.9% | 447 | 32.8% |
5時間以上~6時間未満 | 141 | 21.8% | 187 | 26.2% | 328 | 24.1% |
5時間未満 | 39 | 6.0% | 78 | 10.9% | 117 | 8.6% |
未回答 | 3 | 0.5% | 4 | 0.6% | 7 | 0.5% |
不詳 | 0 | 0.0% | 1 | 0.1% | 1 | 0.1% |
計 | 647 | 100.0% | 715 | 100.0% | 1,362 | 100.0% |
【睡眠時間の分布】
厚生労働省「令和2年度 健康実態調査結果の報告」をもとに執筆者作成
また、女性が不眠になりやすい原因は、ホルモン以外にもストレスが考えられます。
例えば、女性は子どもを出産した後は育児中心の生活になることで、自分だけの時間を取ることが難しくなります。
また、更年期には子どもの自立や体の衰えに対してストレスを感じることもあるでしょう。
このように、女性は男性と比べて、ホルモンのような身体的理由とともに、ライフステージの変化によって不眠症になる割合が高くなるのです。
7.不眠症の治し方
不眠症になってしまった場合も、きちんとした治療法は存在します。
具体的には次の三つです。
- 生活習慣の見直し
- 非薬物療法
- 薬物療法
それぞれくわしく解説します。
不眠症の疑いがあれば診察を受け、医師の指導に従って対処してくださいね。
7-1.生活習慣の見直し
不眠になったと感じたら、まずは生活習慣を見直しましょう。
病院に行かなくても、対処できる上に、不眠症予防としての効果も期待できるためです。
具体的には次の行動が良いとされています。
- 就寝起床時間を一定にする
- 睡眠時間にこだわらない
- 太陽の光を浴びる
- 適度な運動をする
- ストレス解消する
- 寝る前はリラックスする
- 寝酒しない
- 快適な寝室環境をつくる
「最近よく眠れないな」と感じたら、ぜひ上記の対処法を試してみてください。
7-2.非薬物療法
非薬物治療法とは、「認知行動療法」というアプローチで不眠症の改善をはかる方法です。
具体的には、寝床ではテレビの視聴や読書など、眠る以外の行動を禁止したり、寝床に入っても眠れない場合は寝床から離れたりします。
非薬物療法は欧米では実施されていますが、日本では保険適用がされていないため、一般的な治療法としては確立されていません。
7-3.薬物療法
薬物療法は睡眠薬を使った治療法のことで、不眠症に最も多く用いられています。
睡眠薬には以下の特徴があります。
- 脳の抑制系の働きを促すもの
- 脳内の眠りホルモンの作用を助けるもの
- 脳の覚醒系の働きを抑えるもの
睡眠薬は医師に処方してもらい、使用期間や使用量なども判断に従う必要があります。
一般的には、睡眠習慣の見直しをした後に、短い期間で使われることが望ましいですが、場合によっては長期間使われることもあります[5]。
8.不眠症は自力で治せるのか?
ここまでで不眠症の治し方についてご説明しましたが、不眠症を自分の力だけで治すことはできるのでしょうか。
結論としては、不眠の症状が日常生活に支障がないのであれば、自力で治せる可能性があります。
ただし、不眠症だと診断された場合は自力で治そうとせずに、専門医の指示に従うようにしましょう。
また、不眠症の診断がなくても、以下の症状があれば、他の病気も患っている可能性があるため、自力で治すのは難しいかもしれません。
- 眠っている間に無呼吸やいびきが見られる
- 足に虫が這うような感覚がする
- 就寝時間や起床時間などがバラバラである
- 何に対しても関心がもてずに気分が沈む
- 悪夢に反応して大声を上げたり、暴れたりする
このような場合は、自分の力だけで対処せず、すみやかに専門医にかかりましょう。
9.不眠症の原因や治し方についてのまとめ
この記事では、不眠症の症状や原因、対処法について解説しました。
不眠症とは単なる不眠や睡眠不足ではなく、日常生活に支障をきたすほど、慢性的な症状があることです。
「眠れない」と悩んでいる方は、生活習慣を見直したり、ストレッチをしたりして、改善のためのアクションを起こすことが大切ですね。
ただし、日常生活が円滑に送れないほど悩まれている場合は、別の病気にかかっている可能性もあります。
決して無理をせず、適切な治療を受けることも視野に入れましょう。