「最近寝付きが悪いけど、これは不眠なのかな?」
と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
不眠とは心身の不調などによって十分に眠れない状態をいいます。
精神的なストレスや身体的な苦痛などがあるときには、寝付きが悪い経験をしたことがある方も多いでしょう。
不眠が一時的で、心身共に健康であれば問題はありません。
しかし不眠の状態が改善せず長期的に続くと、日常生活に支障を来たし不眠症を発症する恐れがあるため注意が必要です。
そこでこの記事では不眠の症状や原因、改善するためのポイントを詳しく解説します。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
1.不眠症とは
「眠れない日があるけど、不眠なのかな?」
このように気になる方もいらっしゃるでしょう。
不眠とはストレスや体の不調などによって十分に眠れない状態のことです。
不眠は多くの方が経験しますが、大半は自然に改善し再び眠れるようになります。
しかし不眠が長期的に続くと不眠症を発症することがあります。
不眠症は、夜間の不眠が続くことによって日中に心身の不調が生じ、生活の質が低下する病気です。
不眠と日中の不調が週に3日以上認められ、それがどの程度続いているかによって「短期不眠症」と「慢性不眠症」に分けられます。
3カ月未満の場合は短期不眠症、3カ月以上続く場合は慢性不眠症と診断されます[1]。
不眠症では、日中に倦怠(けんたい)感や意欲低下、集中力低下、抑うつ、頭重感、目まい、食欲不振などさまざまな症状が現れます。
十分な睡眠がとれないと作業能率が低下して学業や仕事に支障を来したり、運転中の注意力の低下によって交通事故などを引き起こしたりする危険性もあります。
心と体の健康を保ち、生き生きとした毎日を過ごすためには十分な睡眠が必要なのですね。
一時的な不眠が慣性不眠症に発展し適切な治療をしないと改善しにくくなるといわれているため、不眠で悩んでいる場合には放置せず早めの対策を心掛けましょう。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 不眠症」
【関連情報】 「睡眠不足の悪影響とは?質の高い睡眠をとるためのポイントも解説」についての記事はこちら
1-1.不眠症状の分類
不眠症は症状により「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」「熟眠障害」に分類されます。
分類ごとに不眠の原因を探ったり、病院で適切な治療を受けたりすることができます。
入眠障害は寝付きが悪く布団に入ってもなかなか寝付けない状態、中途覚醒は眠りが浅く途中で何度も目が覚める状態をいいます。
また、早朝覚醒は早朝に目が覚めて二度寝ができない状態を指し、熟眠障害は睡眠時間が十分に取れていても眠りが浅くぐっすり寝たという感じがしない状態です。
不眠症状は加齢とともに現れやすく、特に中途覚醒や早朝覚醒は高齢者によく見られるといわれています[2]。
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 高齢者の睡眠」
1-2.不眠症の原因
不眠症はストレスや生活リズムの乱れ、心身の病気などが原因で発症するといわれています。
試験の前日や旅行先などで不安やストレスを感じているとき、不眠を経験したことがある方も多いでしょう。
不眠が一時的で、心身への不調が生じていない場合には大きな心配はないとされています。
しかし近年はライフスタイルの変化に伴って、不眠を招く危険因子が多く存在しているため注意が必要です。
現代社会では夜勤を伴うシフトワーク(交代勤務)や、通勤・受験勉強をこなすための短時間睡眠、夜型生活などが増加しています。
不規則な生活によって「体内時計」が乱れると、睡眠・覚醒リズムに影響を及ぼします。
ヒトの体では体内時計によって体温やホルモン分泌、睡眠・覚醒リズムなどが約1日の周期で調整されています[4]。
体内時計は太陽の光や食事などの影響を受けるため、不規則な生活習慣で体内時計が乱れると、睡眠・覚醒リズムが調整できず不眠を招くのです。
また不眠は心身の病気の影響によって生じることもあります。
心臓病による胸の苦しさ、呼吸器の病気による咳や発作、アレルギーによるかゆみなどの他、うつ病などの精神的な病気の影響で不眠が生じることがあります。
心身の病気が原因の不眠は、病気の治療を優先的に行うことによって改善が期待できるといわれています。
その他にもコーヒーなどに含まれるカフェインや、タバコに含まれる「ニコチン」、薬の副作用、騒音や光などの環境によって睡眠が妨げられるケースもあります。
このように不眠は生活リズムの乱れや心身の病気、睡眠を妨げる生活習慣などが原因で引き起こされるのですね。
さらに不眠は、眠れないことに対して不安や焦りが生じると悪化するため適切な対策を取ることが重要です。
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 体内時計」
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 睡眠・覚醒リズム障害」
2.適切な睡眠時間とは
「睡眠はどのぐらいとれば良いんだろう?」
と気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
日本人の睡眠時間は平均して7時間半程度とされますが、個々に必要な睡眠時間は異なります[5]。
短時間の睡眠でも十分だと感じる人がいれば、長時間の睡眠ができないと寝足りないと感じる人もいるでしょう。
また、健康な人でも加齢に伴い必要な睡眠時間は短くなるといわれています。
そのため、自分が日中快適に過ごせるための睡眠時間を確保することが重要です。
[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 不眠症」
3.不眠を改善するための生活のポイント
「不眠を改善するためにはどうしたら良いんだろう?」
と気になっている方もいらっしゃるでしょう。
不眠を改善するためには規則正しい生活を送り、睡眠の妨げになることを避けることなどが重要です。
ただし家庭で取り組んでも不眠が改善されない場合には、無理せず専門医に相談するようにしましょう。
ポイント1 規則正しい生活を送る
不眠を改善するためには、規則正しい生活を送るようにしましょう。
週末の夜更かしや休日の寝坊などの生活習慣は、体内時計を乱す原因になります。
そのため、学校や仕事が休みの日でも就寝時間や起床時間を一定にすることが重要です。
しかしシフトワークなどで十分な睡眠時間が確保できず、日中の眠気に悩まされることもあるかもしれません。
その場合には昼寝することが効果的です。
ただし昼寝のし過ぎは体内時計を乱すので、午後3時までに30分以内にとどめるようにしましょう[6]。
短時間の昼寝でも疲れを取ることができますよ。
[6] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 不眠症」
ポイント2 太陽の光を浴びる
朝起きたらまずカーテンを開けて太陽の光を浴びるようにしましょう。
ヒトの体内時計は約1日の25時間の周期、地球は1日24時間の周期で回っているため、約1時間のずれが存在します[7]。
このような周期のずれを修正するのに最も有効なのは朝の太陽の光で、食事や運動、出勤、登校なども効果的です。
起床後に太陽の光を浴びると体内時計のリズムがリセットされ、就寝時間に合わせて眠気が出現すると分かっています。
一方夜でも明るい照明の元では体内時計を遅らせる原因になるため注意が必要です。
理想的な睡眠・覚醒リズムを得るためには、毎朝太陽の光を浴びるよう心掛けてくださいね。
[6] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 概日リズム睡眠障害」
ポイント3 睡眠時間にこだわり過ぎない
睡眠をとる際には睡眠時間にこだわり過ぎないことが重要です。
眠れない状態が続くと、眠れないことに対する不安や焦りが生じます。
睡眠状態に対する強いストレスや不安を持つことを「不眠恐怖」といいます。
そうすると次第に寝床に向かうことに緊張し、睡眠状態へのこだわりが表れ、不眠がさらに悪化します。
また、眠れないのに無理して眠ろうとすることも不眠を悪化させるといわれています。
そのため睡眠時間の目標を立てたり、目覚めの回数などを気にし過ぎないようにしたりすることがポイントです。
眠気がない場合は思い切って寝床から出て、眠くなったら寝るようにするくらい割り切るようにしましょう。
ポイント4 適度な運動をする
運動により程良く体が疲れると寝付きが改善され深い睡眠が得られます。
単発的な運動は効果が弱いため、習慣的に続けることが重要です。
継続しやすく体に負担がかかりにくい程度の「有酸素運動」がおすすめです。
ただし就寝直前に運動したり、激しい運動をしたりすると「交感神経」を興奮させ、かえって寝付きを悪くする恐れがあるため注意が必要です。
運動によって脳の温度が一過性に高まり、それが低下するときに眠気が出現しやすくなります。
運動は就寝の3時間ほど前には済ませると快眠の効果が得られますよ[8]。
[8] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 快眠と生活習慣」
ポイント5 ストレスを解消する
良質な睡眠を得るにはストレスをため込まないようにしましょう。
就寝前には体をリラックスさせ副交感神経を活発にすることが重要です。
ぬるめのお風呂にゆっくり入り、好きな音楽の鑑賞や読書などを取り入れてリラックスする時間を設けると心身の緊張をほぐすことができます。
特に半身浴は心臓への負担が少なく、睡眠の質が向上するといわれています。
寝付きを良くするには、就寝時に体温が落ち着くよう就寝の2~3時間前の入浴が理想的です[9]。
入浴時間は38℃のぬるめのお湯で25〜30分、42℃の熱めのお湯なら5分程度、半身浴であれば約40℃のお湯で30分ほど汗をかく程度に入浴すると良いとされています[9]。
また日頃から自分の好きな趣味によって気分転換をはかり、ストレスをため込まないようにしてくださいね。
[9] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 快眠と生活習慣」
ポイント6 睡眠の妨げになる習慣を避ける
就寝前にはカフェインやアルコールの摂取、喫煙は避けるようにしましょう。
コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインやたばこに含まれるニコチンには覚醒作用があり、入眠を妨げたり睡眠を浅くしたりするといわれています。
さらにカフェインには利尿作用もあるため、尿意によって中途覚醒が生じることもあります。
カフェインの覚醒作用は3時間程度持続するといわれているため、就寝する3〜4時間前からは摂取を控えるようにしましょう[10]。
またニコチンの作用は約1時間持続するため、就寝前や中途覚醒時の喫煙は避けた方が良いとされています[10]。
その他、アルコールの摂取は睡眠の質の低下を招きます。
飲酒をしたときに眠たくなったことがある方がいらっしゃるかもしれません。
実際にアルコールを摂取すると入眠が促されるといわれています。
しかし、その効果は一時的であり中途覚醒を増やすため、かえって熟睡感を得られにくくすると分かっています。
良質な睡眠を得るには、就寝前のカフェインやアルコールの摂取、喫煙を控えるようにしてくださいね。
[10] 厚生労働省「 健康づくりのための睡眠指針 2014」
ポイント7 寝室の環境を整える
不眠を改善するには眠りやすい環境づくりも重要です。
快眠のためには、寝室の温度を20℃前後、湿度を40~70%程度に保つと良いといわれています[11]。
また寒い季節では、前もって電気毛布などで寝具内を温めておくことがおすすめです。
寝具内が冷えていると筋肉が緊張し体温を高めようとはたらき、不自然な寝相になることがあります。
そのため事前に寝具を温めておくと、スムーズに入眠できるようになります。
寝室の明るさは自分が不安にならない程度の暗さに調整すると良いといわれています。
その他にも、寝具を自分に合ったものにすることも重要なポイントです。
枕が高過ぎたり低過ぎたりすると首や肩、胸の筋肉に負担がかかり、寝心地が悪くなることがあります。
近年の研究では、高すぎる枕は脳卒中の原因の一つである特発性椎骨動脈解離の発症割合が高い傾向にあるとの報告があります[12]。
枕は呼吸がしやすく、頭部が支えられる弾性があるものを選ぶようにしましょう。
掛け布団は保温性や吸湿性、放湿性がありフィット感があるものがおすすめです。
睡眠中は体から熱が奪われやすく発汗することがあるため、保温性・吸湿性・放湿性があると体温を正常に保つことができます。
また、軽くて体にフィットするものであれば寝返りがしやすくなります。
マットレスや敷き布団は柔らか過ぎると腰痛の原因になり、硬過ぎると痛みで熟睡できなくなる恐れがあります。
適度な硬さがあり、自分にとって楽な寝相を保ちやすいものを選ぶようにしてくださいね。
[11] 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」
[12] Egashira S, Tanaka T, Yamashiro T, et al.「High pillow and spontaneous vertebral artery dissection: a case-control study implicating “Shogun pillow syndrome”」(European Stroke Journal. 2024;0(0))
(日本語のサイトはこちら)
4.不眠症についてのまとめ
不眠とは心身の不調などによって十分に眠れない状態のことです。
不眠症とは不眠が長期的に続き、日中に心身に不調が現れて生活の質が低下する病気です。
不眠症では倦怠感や意欲低下、集中力低下、抑うつ、食欲不振などの症状が現れます。
不眠症状は「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」「熟眠障害」に分類することで、原因を追求し適切に治療していくために役立ちます。
不眠はストレスや生活リズムの乱れ、心身の病気などが原因で起こります。
必要な睡眠時間は個々で異なるため、自分が快適に過ごせる睡眠時間を確保することが重要です。
不眠を改善するためには、就寝時間や起床時間を一定にすること、起床時に太陽の光を浴びること、適度な運動をすること、ストレスを解消することなどが必要です。
不眠は慢性不眠症へと発展し適切な治療をしないと改善しにくくなるため、不眠で悩んでいる方は早めの対策を心掛けましょう。
ただし、家庭で不眠の改善に取り組んでも効果が表れない場合には、我慢せず専門医に相談してくださいね。