「どうして金縛りが起こるんだろう……」
「金縛りの原因って分かっているのかな?」
金縛りは幽霊の仕業だと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし金縛りは心霊現象などではなく、「睡眠麻痺」という睡眠中の症状の一つです。
金縛りは何らかの原因で睡眠リズムが不規則になったときに発生します。
そのため原因を把握し、対策を立てることで予防できます。
この記事では金縛り発生のメカニズムと原因、予防のポイントなどを解説します。
金縛りになったときの対処法もご紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
1.金縛りとは
金縛りが心霊現象だと思っている方も多いのではないでしょうか。
実際には、金縛りは睡眠麻痺という睡眠中の症状の一つです。
この章では金縛りの症状と発生するメカニズムを解説します。
【関連情報】 「睡眠は時間だけでなく質も重要!ぐっすり眠るための7つの秘訣とは?」についての記事はこちら
1-1.金縛りの症状
金縛りは入眠時や睡眠からの覚醒時に体を動かせなくなる現象です。
金縛りの際は声を出せない、息苦しさを感じる、誰もいないはずの部屋に人の気配がある、話し声が聞こえるといった症状が起こります。
自分が浮き上がり、寝ている自分を見ている、いわゆる幽体離脱のような状態を経験する人もいます。
金縛りは「レム睡眠」の最中に起こる症状です。
レム睡眠中は「扁桃(へんとう)体」の活動が高まって恐怖や不安感を覚えやすくなるため、夢を心霊現象と捉えてしまうのです。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「レム睡眠」
1-2.金縛りが発生するメカニズム
金縛りは医学的には睡眠麻痺と呼ばれる状態です。
睡眠麻痺はレム睡眠中に脳だけが突然目覚めた状態、あるいは本来ノンレム睡眠を経た後に生じるレム睡眠が眠りに就いてすぐに生じた状態のことをいいます。
通常、睡眠はまずノンレム睡眠から始まり、その後は一定周期で二つの睡眠が交互に現れます。
ノンレム睡眠は主に脳が休息をとるため「大脳の睡眠」と呼ばれています。
一方、レム睡眠は全身の筋肉が弛緩し体が休まるため「体の睡眠」とも呼ばれます。
ヒトはレム睡眠とノンレム睡眠という二つの睡眠を交互に繰り返すことで疲労やストレスから回復しているのです。
レム睡眠中は脳が活発にはたらいており、記憶の整理と定着が行われます。
しかし、何らかの原因でレム睡眠から眠りが始まると体が休み脳が起きている状態になります。
結果として夢の要素である視覚的な映像をあたかも現実で起こったことのように錯覚してしまうのです。
その証拠に金縛りの最中に何かを「見た」という方もいますが、そういった人を外部から観察しても目を閉じて眠っているだけです。
2.金縛りの原因
「金縛りには原因があるのかな?」
金縛りはレム睡眠とノンレム睡眠のサイクルが乱れることで生じます。
この章では睡眠のサイクルが乱れる原因を八つご紹介します。
2-1.不規則な生活
不規則な生活を送っていると金縛りに遭いやすくなります。
日々の起床・就寝時間がばらばらだと睡眠の質が下がります。
これにより不規則で中途半端なレム睡眠が出現しやすくなるため、金縛りの発生率も上がってしまうのです。
またテレビやスマートフォンを見ながら寝落ちした場合も、眠ってからすぐにレム睡眠が現れやすくなります。
金縛りに遭わないために、できるだけ規則正しい生活を心掛けましょう。
2-2.細切れの睡眠
細切れの睡眠も金縛りの原因の一つです。
例えば夕方や夜に長めの仮眠をとった後、しばらく覚醒し、夜遅くや明け方に再び眠るといった生活を送ると、睡眠のリズムが乱れて突発的なレム睡眠が出現しやすくなります。
長い仮眠をとってしまうとノンレム睡眠が出切ってしまい、夜に寝たときにレム睡眠から睡眠が始まりやすくなります。
またレム睡眠は睡眠の後半、つまり深夜に現れやすいので、夜更かしをすると寝入りばなにレム睡眠が出現しやすくなるのです。
このような眠り方は受験生に多く、思春期に初めて金縛りに遭うケースが多いのはこのためだと考えられています。
2-3.長時間の昼寝
長時間の昼寝も金縛りの原因になります。
午後3時までに30分以内の昼寝をすることには、疲労の回復や予防、作業効率のアップなど、さまざまなメリットがあります[2]。
しかし昼寝が長時間になるとノンレム睡眠が出現し、夜の入眠直後にレム睡眠が始まってしまう可能性が高まります。
昼寝のし過ぎを防ぐには、寝る前のカフェイン摂取がおすすめです。
カフェインはコーヒーやお茶、エナジードリンクなどに含まれる成分で、覚醒作用があります。
カフェインの効果が現れるのは摂取後30分ほどたってからなので、昼寝をする前に摂取するとちょうど良い時間に目覚めることができます[3]。
また覚醒作用は3時間ほど持続するので、目覚めた後も眠気を感じにくくなるのもポイントですよ[3]。
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」
[3] 厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」
2-4.あおむけ寝
他の寝姿勢と比べて、あおむけ寝は金縛りに遭いやすいとされています。
横向きなどの不安定な姿勢だと、仮に入眠直後にレム睡眠が発生しても体が動きます。
体の動きがきっかけになってレム睡眠が中断するため、金縛りになる確率も下がります。
しかし、あおむけ寝は安定した寝方のため体が動きにくく、金縛りを解きにくいのです。
2-5.ストレス
ストレスも金縛りの原因になります。
ストレスがたまると「自律神経」が乱れます。
本来、眠りに就くときは心身がリラックスしたときにはたらく「副交感神経」が優位になります。
しかし、ストレスがたまると活動時にはたらく「交感神経」が優位になってしまうのです。
結果としてなかなか眠りに就くことができなかったり、夜に目覚めることが増えたりします。
過度なストレスは、金縛りが発生する条件を満たしてしまうのですね。
2-6.寝酒
寝酒は睡眠を不安定にするため、金縛りの原因になります。
寝酒は寝付きを良くしてくれますが、明け方の眠りを妨げ、夜に目が覚めることも多くなります。
結果として眠りの質が下がり、金縛りに遭う確率も上がってしまうのですね。
また習慣的にアルコールを飲んでいる人がお酒をやめた場合、入眠直後にレム睡眠が現れやすくなることも分かっています。
2-7.精神疾患・睡眠障害
病気の症状として金縛りが現れることもあります。
例えば日中に強い眠気を感じ起きていられない「ナルコレプシー(過眠症)」という睡眠障害の方は、頻繁に金縛りに遭うことが分かっています。
また、うつ病や「双極性障害」といった精神疾患の症状として金縛りが現れる場合もあります。
金縛りに遭う頻度が高い、日中に眠気を感じることが多い場合は早めに精神科、心療内科、脳神経内科などを受診しましょう。
2-8.遺伝的な因子
金縛りには遺伝も関係しているといわれています。
家族に金縛りになりやすい方がいる場合、他の家族の方も同じ体質である可能性があります。
特に女性は遺伝による影響を受けやすいとされています。
3.金縛りの対処法
金縛りになったときは無理に体を動かそうとせず、パニックにならないように呼吸を整えましょう。
力が入らないためいきなり深呼吸をするのは難しいですが、呼吸に集中することで全身の感覚を少しずつ取り戻せます。
目を開けられるようになったら部屋の中を観察すると良いでしょう。
天井や照明、壁などを冷静に観察することで現実感が戻ってきます。
金縛りは放っておいても数秒から数分で解けますが、無理やり体を動かそうとすると翌日に疲労感が残ることがあるため注意が必要です。
4.金縛りを予防するポイント
「金縛りを予防するにはどうすれば良いのかな?」
と考えている方も多いのではないでしょうか。
この章では金縛りを予防するポイントを四つご紹介します。
ポイント1 生活リズムを整える
金縛りを予防するには生活リズムを整えることが重要です。
生活に一定のリズムを持たせるには「体内時計」を意識する必要があります。
ヒトの体内時計は地球の自転周期である24時間よりも若干長くなっています[4]。
このずれをうまく修正できないと体内時計が乱れ、生活リズムも狂ってしまうのです。
光には体内時計のずれを修正するはたらきがあるため、朝起きたらできるだけ日光を浴びるようにしましょう。
逆に夜にたくさん光を浴びると体内時計のずれが助長されてしまうため注意が必要です。
スマートフォンやパソコンのディスプレーから発せられるブルーライトも体内時計を遅らせる作用を持ちます。
そのため就寝前にはなるべくスマートフォンを見ないようにしましょう。
また、平日と休日で生活リズムを大きく変えると体内時計が乱れてしまうので気を付けてくださいね。
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
ポイント2 睡眠の質を高める
金縛りには睡眠の質が深く関わっています。
睡眠の質が下がるとレム睡眠の時間が長くなるため、眠りが浅くなります。
睡眠の質を高めるには適度な運動をすることと湯船につかること、寝酒をしないことなどが重要です。
習慣的に運動をしている方には不眠が少ないことが分かっています。
激しい運動はかえって睡眠を妨げることがあるので、早足の散歩やジョギングなどの軽い「有酸素運動」を選ぶと良いでしょう。
また就寝する3時間ほど前に運動をすると、眠りに就きやすいことが分かっています[5]。
運動をすると一時的に上がった脳の温度が就寝時に下がり始めます。
眠気は脳の温度が下がったタイミングで発生するので、スムーズに入眠できるのです。
これと同じ理由で就寝する2〜3時間前に入浴すると眠りに就きやすくなります[5]。
一方で睡眠薬代わりにアルコールを摂取する、いわゆる「寝酒」はおすすめできません。
アルコールは寝付きを良くするものの、明け方の眠りを妨げてしまいます。
[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
ポイント3 ストレスをためない
金縛りを予防するにはストレスをためないことも重要です。
趣味に時間を割く、信頼できる相手に話を聞いてもらうなど、ストレスを上手に発散する方法を見つけましょう。
自分をいたわり、リラックスできる時間を確保できれば、ストレスと向き合いやすくなります。
ポイント4 横向きで眠る
横向きで眠ると金縛りに遭いにくくなります。
金縛りになると体の力が抜けるため、横向きのように不安定な姿勢で寝ていると体が動きます。
この体の動きがきっかけとなってレム睡眠が中断するため、金縛りが生じにくくなるのです。
普段あおむけ寝で金縛りに遭いやすい方は横向きで眠ることを試してみても良いかもしれませんね。
5.金縛りについてのまとめ
金縛りは睡眠麻痺という睡眠障害の症状の一つで、心霊現象ではありません。
金縛りは何らかの原因で睡眠のサイクルが乱れた際に発生し、体が動かない、声が出ない、息苦しさを感じるといった症状が現れます。
金縛りの原因には不規則な生活や細切れの睡眠、長時間の昼寝、ストレスなどがあります。
また精神疾患や睡眠障害の他、遺伝的な因子や寝酒、寝るときの姿勢なども原因になり得ます。
金縛りになったら無理に体を動かそうとせず、パニックにならないように呼吸を整えましょう。
放っておいても数秒から数分で金縛りは解けます。
金縛りを予防するには生活リズムを整えること、睡眠の質を高めること、ストレスをためないこと、横向きで眠ることが重要です。
この記事で金縛りがどのようなものかを知り、予防や対処をするための役に立ててくださいね。