「最近、朝の吐き気がひどく起きるのがつらい......」
「慢性的な寝不足と吐き気には何か関係があるのかな?」
現代人は、忙しさから睡眠時間が短くなりがちです。十分に眠れない日が続き、上記のような悩みや疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
睡眠が足りないと吐き気やめまいなどの体調不良が現れる場合があります。
また、寝不足や吐き気の背景には、睡眠障害や胃腸・脳神経系などの病気が潜んでいるかもしれません。
この記事では、寝不足が吐き気の原因になるしくみと手軽に試せる対処法を解説します。
寝不足を予防して吐き気を起こりにくくする方法も紹介していますので、すっきりした目覚めを取り戻したい方はぜひご一読ください。
1.寝不足のときの吐き気は自律神経の乱れが要因?
寝不足が続くと吐き気が起こりやすくなるのは、睡眠が及ぼす自律神経への影響が原因だと考えられます。
通常、自律神経は交感神経と副交感神経が体の内側や外側の環境によって自動的に切り替わり、バランスを調整しています。
しかし、自律神経のバランスが乱れることもあり、その要因として挙げられるのが慢性的な睡眠不足です。
自律神経が乱れると、胃腸の調子が悪くなり、吐き気が誘発されることがあります。
他にも自律神経の乱れによって現れやすい症状として挙げられるのが、動悸や頭痛、めまい、立ちくらみなどです。
これらは自律神経失調症の症状であり、吐き気以外にもさまざまな症状がみられる場合は、病院を受診した方が良いでしょう。
【関連情報】 「睡眠不足の悪影響とは?質の高い睡眠をとるためのポイントも解説」についての記事はこちら
2.寝不足による吐き気に隠された病気のサイン
「規則正しい生活を心掛けているのに疲れがとれない......」
「寝たくてもなかなか眠れない......」
吐き気に悩まされている方のなかには、上記のような問題に悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
慢性的な寝不足による吐き気の裏には、睡眠の質に大きく関与する病気が隠れているかもしれません。ここでは、寝不足と吐き気が起こりやすい代表的な二つの病気を解説します。
2-1.睡眠時無呼吸症候群
寝つきが悪く、朝起きたときにひどい吐き気や疲労感に襲われることが頻繁にある場合は「睡眠時無呼吸症候群」の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、眠っているときに何度も呼吸が止まったり、眠りが浅くなったりして、体の低酸素状態が発生する病気です。
息苦しくて熟睡できないため、睡眠時無呼吸症候群を患っている方は慢性的な寝不足に悩まされる傾向があります。
寝不足が続いた結果、自律神経の乱れにつながって吐き気を催す可能性があります。
また、睡眠時無呼吸症候群はメタボリックシンドロームの原因になりやすく、心筋梗塞や脳梗塞の発生率を高める危険性もあるため、放置せずに専門の医療機関を受診することが大切です[1]。
[1]厚生労働省e-ヘルスネット「睡眠時無呼吸症候群 / SAS」
2-2.うつ病
夜になかなか眠れず、日中に吐き気とともに下記のような症状がある方は、うつ病の疑いがあります。
【うつ病の諸症状】
- 悲しい気持ちになる
- やる気が出ない
- 集中できない
- 不安や焦りを感じる
- 不眠など体にも症状が出る
うつ病とは、過度なストレスを主な原因とする精神的な疾患です[2]。
自律神経の乱れによる体の症状が出ているのにも関わらず、そのままの状態で頑張ろうとするとうつ病に発展します。
うつ病になると睡眠に困難が生じる傾向があり、寝不足はうつ症状を悪化させる要因になるため、悪循環に陥りがちです。
うつ病の諸症状に心当たりのある方は、早めにかかりつけ医や精神科・心療内科に相談することをおすすめします。
3.吐き気の原因は寝不足以外にもある?
吐き気の原因は寝不足だけとは限りません。消化器系や脳神経系の病気を発症した場合も、急に強い吐き気に襲われるケースがあります。
吐き気が出る消化器疾患として代表的なものは「感染性胃腸炎」です。
感染性胃腸炎とは、ウイルスや細菌などの感染症病原体によって下痢や嘔吐(おうと)などの症状を発症する感染症を指します。
急な強い吐き気と腹痛に伴う激しい嘔吐・下痢が主症状であり、脱水による症状や意識障害に気をつけなければなりません[3]。
感染性胃腸炎以外にも、消化器系の病気全般において吐き気が出やすい傾向があるため、胃腸の調子が気になる方は内科や消化器科を受診しましょう。
また、片頭痛や脳の感染症などの脳・中枢神経の病気が、嘔吐を引き起こす神経を活性化させる場合もあります。
吐き気に加え、頭痛・めまいやしびれが出ているときや、気分的な変調がある方は、脳神経内科や精神科・心療内科などに相談してみてください。
4.寝不足による吐き気の治し方は?
吐き気がひどいと動くに動けず「少しでも吐き気を和らげたい...... 」と考える方も多いでしょう。
寝不足で気分が悪くなったときは病院で診察を受け、吐き気止めを処方してもらうのが最善ですが、どうしても行けないときもありますよね。
ここでは、気分が悪いときでも自分で簡単にできる吐き気の治し方を紹介します。
4-1.体を温めて眠る
寝不足が原因の吐き気に襲われたら、体を温めてリラックスさせ、しっかり眠る時間をとりましょう。
睡眠不足の解消におすすめのリラックス方法は入浴です。入浴には、体を芯から温めて寝つきを良くする効果があります。
負担を抑えて睡眠の質を上げるには、就寝の2時間〜3時間前に入浴するのが最適です[4]。
午前中や午後の早い時間の入浴では睡眠への効果がないため、夕方くらいに入浴すると良いでしょう。
また、入浴時は半身浴でも良いとされています。吐き気がひどくて入浴が難しい場合は、体調に合わせて入浴方法を選択することをおすすめします。
[4]厚生労働省 e-ヘルスネット 「快眠と生活習慣」
4-2.室内の換気をして楽な姿勢になる
吐き気があるときは、悪化の原因となる要素をできる限り取り除いてください。室内に臭いがこもると気分がさらに悪くなりやすいため、換気して風通しを良くしましょう。
芳香剤で消臭する方法もありますが、強い香りで吐き気が悪化する方も少なくありません。
また、腹部を締め付けない衣服に着替え、自分が最も楽だと思う姿勢で休みましょう。
吐き気を感じたら、楽だと感じる姿勢をみつけ、ゆっくり深呼吸することをおすすめします。
4-3.消化に良い・吐き気解消の効果がある食事を摂る
吐き気が弱まって何か食べられそうになったら、消化に良い食物で栄養補給をすると良いでしょう。
おすすめの食べ物には、次のようなものがあります。
【おすすめの食べ物】
- ヨーグルト
- みかん
- ひやむぎ
- 卵豆腐
- ゼリー
臭いが少ない、柔らかい、喉ごしが良い、冷たい食べ物がおすすめです。
また、1日3食必ず食べることにこだわらず、少しずつ食事をして胃に食べ物が残っている状態を少なくすると良いでしょう。
食事量が少なくなる場合は、水分を忘れずに摂って脱水を予防することが大切です。
4-4.吐き気に効くツボを押す
吐き気は、ツボを押すことで緩和できる可能性があります。
吐き気の解消に効果的といわれている代表的なツボは以下の三つです。
【吐き気に効くツボ】
(1)内関(ないかん)
(2)足三里(あしさんり)
(3)裏内庭(うらないてい)
「内関」は手のひら側の手首のつけ根にあるシワ部分から指3本分のところのツボです。吐き気や嘔吐を抑える特効ツボといわれています。
また、「足三里」は、ひざ横のくぼみに人さし指から4本置いた小指の下にあるツボです。嘔吐しそうになったときに、胃の内容物が出ないようにしてくれるといわれています。
「裏内庭」は足の裏側にあり、人さし指と中指のつけ根の間に存在し、嘔吐や腹痛などにも効果があるといわれています。
5.寝不足による吐き気の予防法は?
寝不足からくる吐き気は、対処法を把握することも大切です。しかし、根本的な原因を解決するには、吐き気の予防法を知ることが重要といえるでしょう。
ここからは、吐き気の予防法として睡眠の質を向上させる方法をみていきます。
5-1.睡眠負債を作らない
寝不足を解消して吐き気をなくすためには「睡眠負債」を作るサイクルを断ち切る必要があります。睡眠負債とは、数日間寝不足が続いている状態のことです。
仕事で平日に寝不足が続き、休日に寝だめをする方もいるでしょう。しかし、平日と休日の睡眠時間がずれると体内時計が乱れ、疲労感や眠気が起こる可能性があります。
睡眠負債によって注意力が低下してミスが増えるだけではなく、生活習慣病を引き起こす危険性もあるといわれています。
睡眠負債については下記記事で詳しく解説していますので、気になる方はご確認ください。
睡眠負債とは?睡眠不足が及ぼす深刻な影響や解消法などを解説!
5-2.運動習慣を取り入れる
睡眠の質を高めるには、運動習慣を取り入れましょう。運動を習慣づければ、適度な疲労がスムーズな入眠を促し、毎日の睡眠の質を高められます。
寝不足と吐き気の解消におすすめの運動方法は、ウォーキングやストレッチ・ヨガなどの有酸素運動です。激しい運動は交感神経を刺激するため、寝つきが悪くなる恐れがあります。
大切なポイントは運動を無理なく継続することです。時間や方法にこだわらず、自分にとって気持ち良く続けられる運動を探してみると良いでしょう。
5-3.アルコールやカフェインを控える
寝不足のときにアルコールやカフェインを摂取し過ぎるのは控えましょう。
十分な睡眠がとれていない状態で多量に飲酒した場合、二日酔いで吐き気が起こりやすいだけではなく、急性アルコール中毒になる危険性もあります。
また、コーヒーや栄養ドリンク剤などカフェインが多く含まれる飲料は覚醒作用があるため、就寝する直前には飲まないことをおすすめします。
カフェインの覚醒作用が効きやすい方は、就寝する5~6時間前から控えた方が良いです。
さらに、カフェインは過剰摂取によって消化器官が刺激され、吐き気をもたらす場合もあります。
カフェインとアルコールを一緒に摂取することも控えた方が良いともいわれているため、寝不足のときや吐き気があるときはできる限り摂取しない方が良いでしょう。
5-4.起床時に日光を浴びる
吐き気の原因となりやすい自律神経の乱れを整えるためには、朝一番に日光を浴びて体内時計をリセットすることをおすすめします。
強い光にはメラトニンの分泌を抑制して概日リズムを24時間周期に整える効果がありますが、室内灯の明るさでは不十分です[5]。
朝に体内時計がリセットできなかった場合、眠気が訪れる時間が少しずつ遅くなっていきます。
そのため、寝る前にスマートフォンを操作したり、起きた後にカーテンを開けずに長時間過ごしたりするのは極力避けることをおすすめします。
[5]厚生労働省e-ヘルスネット「メラトニン」
6.寝不足と吐き気の関係についてのまとめ
寝不足だと自律神経が乱れやすくなり、吐き気を催す場合があります。吐き気は安静にしたりツボ押しをしたりなどの手軽な方法でも緩和できます。
しかし、根本的な問題を解決するには十分な睡眠を摂ることが大切です。規則正しい生活を心掛け、睡眠負債を蓄積しないようにしましょう。
ただし、睡眠時無呼吸症候群やうつ病が寝不足の原因になっている可能性もあります。また、寝不足とは直接関係ない体の病気が吐き気を誘発している場合も考えられるでしょう。
吐き気の他にも気になる症状がある方は、病気のサインを見逃さないよう注意し、早めに専門の医療機関を受診することをおすすめします。