「昼にはどうしても眠たくなってしまう……。」
「昼寝をすると夜眠れなくならないかな?」
このようなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ヒトの体は昼頃眠くなるようにできている上、食後は眠気を感じやすくなるため、昼寝をしたくなるのは自然なことといえます。
また昼寝には疲労の回復や仕事の作業効率のアップ、ストレス解消などといったさまざまな効果があることが分かっています。
しかし、昼寝は適切にとらないとかえってマイナスの結果につながってしまうこともあるので注意が必要です。
この記事では昼寝のメリットや、昼寝を適切にとるためのポイントなどをご紹介しています。
昼寝をとるときの注意点も解説しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
1.昼に眠たくなる理由
「昼に眠くなるのはどうしてなんだろう?」
まずはどうしてヒトは昼に眠くなるのかを解説しましょう。
日中の眠気は「体内時計」の影響で生じることがあります。
ヒトの体では体内時計によって、体温やホルモン分泌などの他に、睡眠・覚醒のリズムも調整されています。
その体内時計の影響で、私たちは深夜から早朝にかけてと昼過ぎにかけて眠気を感じやすくなっているのです。
また、食後に血糖値が大きく変動することで眠気が生じることもあります。
血糖値は血液内のブドウ糖濃度のことで、健康な人でも食後に上がり、空腹になるにつれて下がります。
食後に血糖値が上がると膵臓(すいぞう)からは「インスリン」が分泌され、上昇した血糖値が正常に戻ります。
しかし、ドカ食いや早食いなどによって血糖値が急激に高まると、インスリンが過剰に分泌され、血糖値が急低下します。
そうすると脳に供給されるブドウ糖が不足し、眠気が現れるというわけです。
その他、夜間の睡眠不足も日中の眠気につながります。
特に日本人は海外と比較しても睡眠時間が短いことが分かっています。
各国の就労者の睡眠時間を比べた図は以下のとおりです。
厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠と生活習慣病との深い関係」をもとに執筆者作成
日本人の睡眠時間がいかに短いかが分かりますね。
さらに厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査」によれば、20歳以上の男女のうち、「睡眠時間が足りない」「睡眠の質に満足できていない」と答えた人はそれぞれ2割程度います [2]。
これらのことから、昼に眠たくなってしまうのはある意味自然なことなのが分かりますね。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「体内時計」
[2] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」
2.昼寝のメリット
「昼寝をするとどんなメリットがあるんだろう?」
適度な昼寝は心身に良い影響をもたらすことが分かっています。
この章ではメリットを五つご紹介します。
メリット1 疲労の回復と予防
昼寝の一つ目のメリットは疲労の回復と予防です。
昼寝には脳の疲労をとる作用があるとされています。
そのためアメリカのビジネスパーソンの間で昼寝は「パワーナップ」と呼ばれ、活力を取り戻すためのスキルとして広く浸透しています。
パソコンを集中して操作したり、体力的な負荷の大きい仕事をしたりした後にたまった疲労やストレスは、昼寝を挟むことで回復できることがあります。
昼寝で疲労の回復と予防をすれば、午後からの仕事や授業にもしっかり集中できますね。
メリット2 作業効率のアップ
昼寝をすると仕事の作業効率アップが見込めます。
実際、負荷の高いパソコン作業を、仮眠をとった場合とそうでない場合との両方で実施したとき、仮眠をとったときの方が課題の成績が良かったというデータがあります。
さらに強い眠気を感じたまま仕事をした人は、昼寝をした人と比べて仕事に対する自己評価が低くなることが分かっています。
眠気が強いまま仕事をすると、作業効率が下がるだけではなく達成感を得にくくなってしまうのですね。
メリット3 眠気によるミスの防止
眠気によるミスや事故の防止につながることも、昼寝のメリットの一つです。
ヒトの体は昼過ぎに眠気を感じるようにできています。
実際、昼過ぎにはコンピューターの操作ミスや交通事故が多くなるというデータもあります。
午後に眠気を感じないようしっかり昼寝をとっておけば、ミスを減らすことにつながるかもしれませんね。
メリット4 ストレス解消
昼寝にはストレス解消効果も見込めます。
ヒトが何かに集中している間、脳細胞は活発にはたらいている状態になります。
しかし、負荷がかかり続けるとオーバーヒートしてしまうため、自己防衛の手段として眠気を発します。
眠気は脳が発するSOSでもあったのですね。
また、ヒトは起きている間、さまざまなストレスにさらされています。
眠りはストレスの源をシャットアウトするため、昼寝をすると気分をリフレッシュすることができます。
メリット5 睡眠リズムの維持
昼寝には睡眠のリズムを維持する作用もあります。
午後の早い時間に昼寝をすると、夕方の居眠りが減ったという研究結果があります。
ただし、夕方以降に眠ってしまうと、寝付きが悪くなるなど、夜間の睡眠に悪影響が及ぶことがあるため注意が必要です。
適度な昼寝は夕方以降に眠気が生じるのを防ぎ、結果として夜の睡眠の質が向上するのですね。
3.昼寝を適切にとるためのポイント
「昼寝をとるときのポイントってあるのかな?」
昼寝にはいろいろなメリットがある半面、適切にとらないとかえってデメリットをもたらすことがあります。
この章ではポイントを四つご紹介します。
ポイント1 昼寝の時間帯と長さを調節する
昼寝をするときは眠る時間帯と長さに気をつけましょう。
昼寝は午後3時まで、30分以内を心掛けてください [3]。
午後3時以降に昼寝をしてしまうと、夜にうまく寝付けなくなってしまうことがあります。
また昼寝を長くとり過ぎると深い眠りに入ってしまい、その分夜間の眠りが浅くなる恐れもあります。
夜にしっかり眠るには、午後の早い時間にコンパクトな昼寝をとることが重要です。
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」
ポイント2 眠るのに適した環境を用意する
眠るのに適した環境を用意すると、より気持ち良く昼寝をすることができます。
騒音と明るい光にはそれぞれ入眠を妨げる作用があります。
そのため昼寝はできるだけ暗くて静かな場所でとるようにしましょう。
しかし、職場や学校などでは周囲の音や光を完全にシャットアウトするのが難しいこともあるかもしれません。
そんなときはノイズキャンセリング機能付きのイヤホンやアイマスクを使用すると良いでしょう。
完全に横になるのが難しいときは机にうつ伏せ寝の姿勢で寝てしまって構いません。
昼寝をするときには、周囲の状況に合わせた工夫をすることが重要なのですね。
ポイント3 眠る前にカフェインを摂取する
昼寝をとる前にカフェインを摂取しておくと、目覚めが良くなることがあります。
カフェインはコーヒーやお茶、エナジードリンクなどに含まれる成分の一種で、覚醒作用があります。
個人差はあるものの、カフェインは摂取してから30分〜1時間程度で血中にてピークを迎えます[4]。
そのため起きると決めた時間から逆算して30分ほど前にカフェインを摂取すると、すっきりと目が覚めやすくなります。
また、カフェインの効果は3時間ほど持続するため、目覚めた後も眠気を感じにくいところもポイントです [4]。
カフェインについて詳しいことを知りたい方は以下の記事をご覧ください。
カフェインの効果と摂取できる飲み物・食べ物5選!眠気には何が効く?
[4] 厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」
ポイント4 起きたら光を浴びる
昼寝をした後に光を浴びると目覚めが良くなります。
光には覚醒作用があるため、起きたら意識的に太陽光などの明るい光を浴びるようにしましょう。
また昼間にしっかり光を浴びておくと、催眠作用を持つ「メラトニン」というホルモンが夜に多く分泌され、昼夜のメリハリがつきやすいことも分かっています。
4.昼寝をとるときの注意点
長過ぎる昼寝は夜の睡眠を浅くしてしまうことがあるため注意が必要です。
やることがないからといって惰性で昼寝をしたり、夜眠れなかった分を取り戻すために昼に長く寝たりすることは避けましょう。
また、昼寝をし過ぎると目が覚めた後もぼーっとする、疲労感や倦怠(けんたい)感が増すといった弊害も起こります。
昼寝は計画的かつコンパクトにとることが重要です。
5.昼寝についてのまとめ
ヒトの体は昼頃眠くなるようにできているため、昼寝をするのは自然なことです。
昼寝には疲労の回復と予防、仕事の作業効率アップ、ストレスの解消などの効果が見込めます。
また昼寝をして夕方以降の居眠りを減らすことが、夜間の睡眠の質向上につながることも分かっています。
夜ぐっすり眠れるように、昼寝はなるべく30分以内、15時までにすると良いでしょう[5]。
眠るのに適した環境を用意することも重要です。
眠る前にカフェインを摂取し、起きたら明るい光を浴びることですっきり目覚めることができますよ。
ただし、カフェインの摂取量が多過ぎたり、遅い時間に摂取したりすると、かえって睡眠を妨げる原因になることがあるため注意が必要です[6]。
また、長過ぎる昼寝は夜間の睡眠を妨げることがあります。
この記事を、昼間の眠気を解消するために役立ててくださいね。
[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」
[6] 厚生労働省「良い睡眠の概要(案)」