「麹ってなんだろう?」
「麹はどんな食品に使われているのかな?」
麹(こうじ)というものが発酵食品に使われているということを、なんとなく知っているという方も多くいらっしゃいますよね。
しかし麹の種類など、麹がどのようなものなのかを詳しく知っているという方は多くないのではないでしょうか。
麹とは米や麦、大豆などの穀物に「麹菌」を繁殖させたもののことをいいます。
また麹そのものや麹菌にもさまざまな種類があり、つくる発酵食品によって使い分けられているのです。
この記事では麹とは何か、種類など詳しく説明し、麹を使った代表的な発酵食品をご紹介します。
また麹と糀(こうじ)の違いについても解説します。
ぜひ参考にして、日々の食事に麹を使った発酵食品を取り入れてみてくださいね。
1.麹とは
麹とは米や麦、大豆などの穀物に麹菌を繁殖させたもので、日本の発酵食品をつくるのに欠かせない存在です。
そして麹をつくるための糸状菌を麹菌といいます。
麹菌は日本をはじめ、東アジアや東南アジアなどの湿度の高い地域にしか生息していません。
また日本の麹菌はコウジカビと呼ばれ、他のアジアの国に生息するものとは異なります。
麹菌は多くの酵素を生成することで、発酵食品のうまみや甘みを引き出したり素材を柔らかくしたりすることで知られています。
2.麹の種類
「麴にはどんな種類があるんだろう?」
多くの食品に使用されている麹にどのような種類があるのか気になりますよね。
一口に麹といってもさまざまな種類があり、麹をつくる材料によって、また麹菌によって異なります。
ここでは麹の種類について、材料による分類、麹菌による分類ごとにご紹介します。
2-1.材料による分類
麹はどのような食材に菌を繁殖させるかによって種類が異なります。
なかでも代表的なのが、米麹、麦麹、豆麹です。
米麹は蒸した米に麹菌を繁殖させたもので、米みそや日本酒、甘酒、酢などをつくる際に用いられます。
また調味料の塩麹の原料も米麹です。
麦麹は蒸した麦に麹菌を繁殖させたもので、麦みそや麦焼酎に使われています。
豆麹は蒸した大豆に麹菌を繁殖させたもので、豆みそや「八丁みそ」に用いられます。
同じ麹ですが、何を材料とするかによってさまざまな麹に分けられるのですね。
2-2.麹菌による分類
麹菌にもさまざまな種類があります。
麹菌を培養して胞子を乾燥させた「種麹」は「もやし」とも呼ばれ、麹づくりのスターターの役割を持ちます。
代表的な麹菌は、黄麹菌、黒麹菌、白麹菌、紅麹菌、カツオブシ菌です。
黄麹菌はみそやしょうゆ、清酒をつくるのに使われている麹菌です。
緑がかった黄褐色をしているという特徴があります。
黒麹菌は泡盛や焼酎をつくるのに用いられるもので、クエン酸を生み出すという特徴を持ちます。
白麹菌は黒麹から突然変異した麹菌で、主に焼酎をつくるのに使われます。
黒麹菌と同じくクエン酸を生成する特徴があります。
紅麹菌は中国や台湾で古くから使われている麹菌で、「豆腐よう」や「紅酒(アンチュウ)」の製造に用いられています。
カツオブシ菌はその名前のとおり、かつお節づくりに利用される麹菌です。
このように多くの種類の麹菌が存在します。
3.麹を使う代表的な発酵食品
「麹を使った発酵食品にはどんなものがあるのかな?」
普段何気なく口にしている発酵食品ですが、どのような食品に麹が利用されているのか気になりますよね。
麹は日本食に欠かせない数々の調味料などに利用されています。
この章では麹を使う代表的な発酵食品をご紹介します。
3-1.みそ
日本で定番の調味料であるみそは麹を利用した発酵食品の一つです。
みそは多くの種類があり、用いる麹によって米みそ、麦みそ、豆みそに分類されます。
米みそは原料に米麹を使用したみそで、国内生産量の大半を占めています。
赤みそや白みそと呼ばれているものも米みその一種です。
麦みそは麦麹を使用したみそで、麦特有の香ばしさが特徴です。
主に九州や中国・四国地方で製造されています。
豆みそは豆麹を使用したみそで、渋味と酸味を持った個性的な味わいが特徴です。
主に三重・岐阜・愛知県などで製造されています。
これらのみそを2種類以上合わせてつくられたみそのことを、合わせみそ(調味みそ)といいます。
大豆に含まれるたんぱく質は消化されにくいといわれていますが、発酵することで吸収率が高まるといわれています。
3-2.しょうゆ
日本の食文化のベースともいえるしょうゆにも麹が使われています。
広く流通しているのは本醸造しょうゆで、大豆、小麦粉、塩水、麹菌からつくられます。
蒸した大豆と炒った小麦に麹菌を付着させてしょうゆ麹をつくり、塩水を加えて「もろみ」というしょうゆのもとをつくります。
これを寝かせて発酵・熟成、かくはん、火入れやろ過という過程を踏んで、しょうゆがつくられるのです。
3-3.酢
酢の物や酢飯などに使われている酢も、麹を使った発酵食品です。
他にも酢の物や酢漬け、甘酢あんやドレッシングなど多くの料理に利用されていますよね。
たくさん種類がある酢のなかでも、純米酢がどのようにつくられるか説明しましょう。
まず蒸した米に麹菌を加えることで、米のでんぷんが糖に変わります。
さらに酵母を加え、この糖をアルコール発酵させお酒をつくります。
このお酒に酢酸菌を加えると、アルコールが酢酸に変わり酢が完成するのです。
3-4.日本酒
日本酒の醸造にも麹が用いられます。
日本酒は蒸した米と水、米麹を原料としており、これらをアルコール発酵させたものです。
酒をつくるためには糖が必要ですが、日本酒の原料である米には糖が含まれていません。
このため、麹の酵素を利用して米のでんぷんを糖に変換して、酵母によるアルコール発酵を行っているのです。
また麹は日本酒の味わいをつくる上でも重要です。
麹が持つたんぱく質分解酵素が米のたんぱくを質分解してアミノ酸を生成することにより、日本酒にコクやうまみが生まれます。
麹は日本酒づくりにおいて必要不可欠といえる存在なのですね。
3-5.焼酎
焼酎をつくる際にも麹は欠かせません。
日本酒と同じく、麹は焼酎づくりにおいてでんぷんを糖に変換する役割を持ちます。
また糖から大量のクエン酸が生成されることにより、もろみを酸性にします。
このことにより雑菌の増殖が抑えられるため、気温の高い地域でももろみが腐りません。
焼酎の名前で「黒」や「白」など色の付く銘柄をご存じの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
これは焼酎に使われている種麹の種類を表しています。
種麹には黄麹、黒麹、白麹があり、どれを用いるかによって焼酎の味や香りが異なります。
種類が豊富な焼酎づくりにおいても、麹は深く関わっているのですね。
4.麹と糀の違い
「麹と糀って、どちらもこうじと読むけど何が違うんだろう?」
こうじを表す漢字には「麹」と「糀」の二つがありますが、違いがよく分からないという方もいらっしゃいますよね。
麹は中国から伝来した文字で、糀は明治時代に日本でつくられた国字です。
中国では麹をつくるのに主に麦が用いられていたため麹という字がつくられました。
しかし日本では米麹の方が一般的であるため、これを表すために糀という字がつくられたのです。
漢字だけではなく麹のつくり方も異なっており、中国では穀物をだんご状にして麹がつくられる一方で、日本では蒸してほぐした穀物に麹菌を散布することでつくられます。
麹と糀の使い分けは明確に定められているわけではありませんが、麹全般を指す場合には麹が使われることが一般的です。
一方で「糀」と書くときには米麹を指すことが多いといえるでしょう。
5.麹についてのまとめ
麹とは、米や麦、大豆などの穀物に麹菌と呼ばれるカビを繁殖させたもので、しょうゆやみそといった日本の発酵食品をつくるのには欠かせない存在です。
麹はどのような食材を原料とするかによって種類が異なり、なかでも代表的なのが米麹、麦麹、豆麹です。
麹菌にも黄麹、黒麹、白麹などの種類があり、つくる発酵食品によって使い分けられています。
「糀」という漢字が使われることもありますが、これは麦麹を主に使う中国から伝来した「麹」という字に対し、米麹を主に使う国内でつくられた国字です。
日本に普及しているさまざまな食品に用いられる麹は、日本の食文化においてとても重要な存在だといえるでしょう。