「ロコモティブシンドロームって何だろう?」
と疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、英語で移動するための能力があることを意味するロコモティブ(locomotive)が由来となった造語で、日本語では運動器症候群といいます。
筋肉・関節・骨などで構成する運動器の機能が衰えて立ったり歩いたりすることが困難になった状態のことです。
ロコモの原因には骨や筋肉、関節、神経などの病気や痛み、機能低下に加え、運動不足、肥満、痩せ過ぎなどがあります。
これらが重なり合うことで立ったり歩いたりすることが難しくなり、進行すると介護が必要な状態に陥ってしまいます。
骨や筋肉などの機能は加齢とともに低下していくため、ロコモの予防には若いうちから運動と食事に気を付けることが重要です。
この記事ではロコモティブシンドロームの定義や症状、予防するためのポイントについて解説します。
1.ロコモティブシンドロームとは
「ロコモティブシンドロームとは何だろう?」
このように疑問に感じている方もいらっしゃいますよね。
ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、加齢や病気によって「運動器」の機能が衰え、介護が必要になるリスクが高い状態です。
日本語では「運動器症候群」といい、日本整形外科学会が提唱した概念です。
運動器の機能が低下すると立ったり歩いたりする「移動機能」に支障を来します。
このため、ロコモが進行すると自立した生活が送れなくなり、介護が必要になったり寝たきりになったりするリスクが高まります。
現代社会においては移動手段が豊富であるため、運動機能の低下やそれに伴う日常生活での支障を感じにくいといえます。
このため気づかぬうちにロコモになっていたり、すでに進行していたりすることがあるため注意が必要です。
ロコモを予防するためには運動機能が低下してからではなく、若いうちからきちんと対策することが大切です。
またすでにロコモである場合でも適切に対処することで移動する能力は再び向上するといわれています。
制限なく日常生活を送れるようにロコモについて知り、正しい対策を行いましょう。
2.ロコモティブシンドロームの原因
「どんな人がロコモになりやすいのかな?」
「ロコモになる原因はどんなものがあるんだろう?」
このようにロコモの原因についてよく分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここではロコモになる原因について詳しく解説していきます。
2-1.運動器の病気
運動器の病気が原因でロコモになることがあります。
ロコモの原因となる運動器の病気には「骨粗しょう症」や「変形性関節症」、「脊柱管狭窄(きょうさく)症」などがあります。
骨粗しょう症になると全身の骨が折れやすくなりますが、日常生活を送る上では特に症状はありません。
しかし軽く転んだりくしゃみをしたりするだけでも骨折する危険があるため、移動機能に大きな悪影響を及ぼす恐れがあります。
骨粗しょう症による骨折で最も多いのが「脊椎圧迫骨折」です。
脊椎圧迫骨折は自覚しにくいという特徴があり、気が付かないうちに背中が丸くなっていた、背が縮んでいた、という場合があります。
また自覚症状としては腰の痛みが挙げられます。
脊椎圧迫骨折をすると腰痛により日常生活に支障を来す場合もあります。
この他に、骨粗しょう症による骨折で移動機能に問題を生じるものには大腿骨頸部の骨折があります。
大腿骨頸部とは太ももの骨の付け根、骨盤とつながっている付近のことです。
転倒などの衝撃で骨折することもあり、大腿骨頸部を骨折するとそのまま寝たきりになってしまう場合もあるため注意が必要です。
なお骨粗しょう症の発症リスクは閉経後の女性ホルモン減少によって高まることから、中高年女性は特に注意する必要があります。
加えて変形性関節症もロコモになる原因の一つとして挙げられます。
進行すると関節を動かしにくくなったり、完全な曲げ伸ばしができなくなったりといった症状が現れて移動機能が低下します。
また変形性関節症は股関節や膝関節で発症する可能性が高いといわれていますが、脊椎に起こることもあり、その場合は変形性脊椎症と呼びます。
変形性脊椎症は脊柱管狭窄症の原因となります。
脊柱管狭窄症では足の痛みやしびれ、脱力感や腰痛などの症状が生じ、歩行が難しくなります。
関節や骨の病気により移動機能が制限されることでロコモの発症につながるのですね。
定期的に骨密度を検査するほか、気になる症状がある場合は医療機関の受診をおすすめします。
2-2.運動器の痛み
肩こりや腰痛など、加齢や仕事に伴う慢性的な筋肉の疲労から運動器に痛みが生じることがあります。
単なる老化だと思って放置すると、筋力が低下したり「関節可動域」が小さくなったりして体が動かしにくくなります。
体を動かさなくなると、より筋力が低下していくという悪循環に陥り、移動機能に悪影響が生じます。
また痛みの原因として骨粗しょう症や変形性関節症、変形性脊椎症などの運動器の病気がある場合もあり、放置すると病状が進行し重篤化するため注意が必要です。
足の痛みやしびれ、腰痛などの症状がある方は放置せずに早めに医療機関を受診しましょう。
2-3.運動器の機能低下
運動器の機能低下もロコモの原因になるといわれています。
運動器の機能が低下する要因として加齢に伴う四肢・体幹の筋力やバランス能力の低下が挙げられます。
筋力やバランス能力が低下することで、ふらつきや転倒を起こしやすくなり、思わぬけがにつながってしまうのです。
けがによって活動量が減少すると、さらにロコモが悪化する可能性が高まるといえるでしょう。
また日頃から移動手段としてエレベーターや自動車などを利用している場合、活動量が減少し運動器の機能低下が起こりやすくなります。
普段の生活から意識して移動の際は階段を使う、ひと駅多く歩くなどして運動器の機能低下を防ぎましょう。
2-4.運動不足
運動習慣のない生活を送っていると将来、ロコモになる可能性が高くなります。
運動器は負荷をかけることで機能が維持されるため、運動不足では筋肉や体力が低下していきます。
その結果、歩く・立つといった移動機能が低下して外出の機会が減りがちになり、運動不足が進行するという悪循環に陥ります。
文部科学省の調査では、20歳を過ぎた頃から体力が緩やかに低下するというデータが示されています[1]。
また近年では運動不足により体の柔軟性がない、バランス能力が低下している「子どもロコモ」が増えているともいわれています。
体力を維持しロコモを予防するためには子どものうちから意識的に運動習慣を身につけることが大切だといえるでしょう。
[1] 文部科学省スポーツ庁「平成27年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について」
2-5.肥満・痩せ過ぎ
太り過ぎや痩せ過ぎの方はロコモになるリスクが高まります。
肥満の方は普段から運動不足の傾向があるため、筋力の低下や筋肉量の減少が生じやすいといわれています。
また太っていることで膝や腰へ負担がかかり、変形性関節症などを引き起こすことがあります。
変形性関節症を患うと負担がかかる箇所に痛みを生じるため、体を動かす機会が減り、さらに体重が増えるという悪循環に陥ってしまうのです。
結果としてロコモのリスクも高まります。
また痩せている方は食事量が少ないため、骨や筋肉に必要な栄養が不足しがちになります。
栄養不足や筋力低下からふらつきや転倒を起こしやすく、骨の強度も低下するため骨折にもつながります。
特に痩せ過ぎの方は骨に掛かる負担が少ないことから骨が弱くなりやすく、骨粗しょう症のリスクが高いため注意が必要です。
このように肥満や痩せ過ぎが原因で疾患を発症し、さらに活動量が減少することでロコモになるリスクが高まるのですね。
2-6.がんの発症
がんの発症がロコモの原因になることがあります。
がんそのものや、がんの治療によって運動器に障害が起こり、移動機能が低下した状態を「がんロコモ」といいます。
「骨転移」などで骨にがんを発症することがあり、運動器の痛みや骨折、麻痺(まひ)を生じ、移動機能が障害されます。
また抗がん剤の副作用で下肢にしびれや脱力感が出現したり、手術後、長期間の安静で筋力が低下したりすると移動機能が低下します。
がんロコモを放置すると日常生活に支障を来すだけでなく、通院が困難になるなど、がんの治療にも悪影響を及ぼすことがあります。
がんロコモを予防するためにはがん治療とロコモ対策を同時に行っていくことが大切です。
主治医の指示のもとご自身の病状に合った適切な治療を受けましょう。
がんロコモの知識が豊富な医師に相談できるよう、近くの「がんロコモドクター」を検索することができます。
3.ロコモティブシンドロームの見分け方
「気付かないうちにロコモになってしまっているかも……」
このように不安に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ロコモかどうか判断する方法に「ロコモ度テスト」があります。
ロコモ度テストは下肢の筋力を調べる「立ち上がりテスト」、歩行能力を調べる「2ステップテスト」、運動器の不調に関する質問に答える「ロコモ25」で構成されています。
これらのテストにより、移動機能の状態を確認できます。
ロコモになっている場合、進行具合により1〜3のロコモ度に分けられます[2]。
各ロコモ度の判定は以下のとおりです。
ロコモ度 | 判定 |
---|---|
1 | 移動機能の低下が始まっている状態 |
2 | 移動機能の低下が進行している状態 |
3 | 移動機能の低下が進行し、社会参加に支障を来している状態 |
ロコモ チャレンジ!推進協議会 ロコモONLINE「ロコモ度判定方法」をもとに執筆者作成
ロコモ度が2や3の方で、痛みの症状がある場合は運動器疾患を患っている可能性があるので医療機関を受診しましょう。
該当したロコモ度のうち、最も移動機能低下が進行している段階が判定結果となります。
なお、どの段階にも該当しない場合はロコモではありません。
この章ではロコモの見分け方について詳しく解説します。
[2] ロコモ チャレンジ!推進協議会 ロコモONLINE「ロコモ度判定方法」
3-1.立ち上がりテスト
立ち上がりテストは下肢の筋力を測定するテストです。
以下の方法で測定します。
【立ち上がりテスト(両脚)の方法】
- 高さ40cmの台を用意します
- 両腕を組んで両足は肩幅に広げすねの角度が70度になるように台に腰掛けます
- 反動をつけずに立ち上がり、そのまま3秒キープします
ロコモ チャレンジ!推進協議会 ロコモONLINE「ロコモ度テスト立ち上がりテスト 」をもとに執筆者作成
できなかった方はロコモ度3です。 できた方は左右どちらかの片脚をあげて行います。
片脚でもできた場合、台の高さを10cmずつ低くして上記のテストを片脚で行ってください。
片脚で40cmの台から立ち上がれなかった方は、上記のテストを10cmずつ低い台で行います。
両脚で立ち上がれた一番低い台がテストの結果になります。
ロコモ度1 | どちらか一方の脚で40cmの台から立ち上がれないが、両脚で20cmの台から立ち上がれる |
---|---|
ロコモ度2 | 両脚で20cmの台から立ち上がれないが、30cmの台から立ち上がれる |
ロコモ度3 | 両脚で30cmの台から立ち上がれない |
ロコモ チャレンジ!推進協議会 ロコモONLINE「ロコモ度テスト立ち上がりテスト」をもとに執筆者作成
なお、立ち上がりテストの詳細は下記を参照してください。
日本整形外科学会ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトの「立ち上がりテスト」をご確認ください。
3-2.2ステップテスト
2ステップテストは歩幅からロコモ度を判定します。
歩幅を測ることで下肢の筋力やバランス能力、柔軟性などを含めた歩行能力を総合的に評価します。
方法は以下のとおりです。
【2ステップテストの方法】
- スタートラインを決めて、両足の爪先をそろえて立ちます
- できる限り大股で2歩歩き、両足をそろえて止まります(バランスを崩したらはじめからやり直します)
- 2歩分の歩幅(スタートラインから止まったときの爪先までの距離)を測定します
- 以上を2回行い、長い方の記録を用いて以下の計算を行います
- 2歩幅(cm)÷身長(cm)=2ステップ値
ロコモ チャレンジ!推進協議会 ロコモONLINE「ロコモ度テスト2ステップテスト」をもとに執筆者作成
計算して算出された2ステップ値は以下の判定方法を参考にしてください。
2ステップ値の値 | ロコモ度 |
---|---|
1.1~1.3未満 | ロコモ度1(移動機能の低下が始まっている状態) |
0.9~1.1未満 | ロコモ度2(移動機能の低下が進行している状態) |
0.9未満 | ロコモ度3(移動機能の低下が進行し、社会参加に支障を来している状態) |
ロコモ チャレンジ!推進協議会 ロコモONLINE「ロコモ度テスト2ステップテスト」をもとに執筆者作成
ロコモ度が2や3の場合は何らかの運動器疾患が発症している可能性があるため整形外科などの専門医を受診するようにしましょう。
また2ステップ値は加齢とともに低下していくといわれます。
定期的にロコモ度テストを行うことで体の機能が低下してないか確認することも大切ですね。
2ステップテストについての詳細は以下を参考にしてください。
日本整形外科学会ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトの「2ステップテスト」をご確認ください。
3-3.ロコモ25
ロコモ25は25項目の質問に答えてロコモ度を測定します。
直近の1カ月の間に体の痛みや日常生活で困難なことがあったかについて5段階で回答します。
25項目の質問と回答の仕方は以下を参照してください。
日本整形外科学会ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイトの「ロコモ度テストロコモ25」をご確認ください。
5段階の回答にそれぞれ0~4点が配点され、25問の合計値からロコモ度を判定します。
合計値が16点以上の場合にロコモ度2または3と判定され、整形外科専門医の受診が推奨されます。
4.ロコモティブシンドロームを予防するポイント
ロコモは栄養バランスの良い食事と適度な運動を習慣化することで予防できます。
加齢に伴い筋肉量や骨密度は減少、低下していくため若いうちから対策することが大切です。
ここではロコモを予防するためのポイントを紹介します。
ポイント1 栄養バランスの取れた食事を摂る
バランス良くさまざまな食品を摂ることはロコモの予防につながります。
食事でどれくらい多様な食品を摂取しているかが、身体機能と関連することが報告されています[3]。
上記の研究では、さまざまな食品を取り入れた食事をしている人ほど握力や歩行速度といった身体機能が維持できていることが分かっています[3]。
体に必要な栄養素を意識的に摂取するだけでなく、多様な食品を食事に取り入れることも心掛けましょう。
[3] Yuri Yokoyama「Dietary variety and decline in lean mass and physical performance in community-dwelling older Japanese: A 4-year follow-up study」(『ScienceDirect』第21巻第1号,p11 -16, 2017)」
ポイント1―1 適切なエネルギー量を摂取する
適切な量のエネルギーを摂取することは筋肉の減少を防ぐことにつながります。
エネルギーが不足すると、体は筋肉を構成するたんぱく質を使ってエネルギーを生み出そうするため筋肉が減少する要因となります。
また必要以上にエネルギーを摂取すると肥満になり、不足すると痩せの原因になってしまいます。
肥満や痩せ過ぎはロコモの原因となる疾患を発症しやすく、将来寝たきりになる可能性が高くなるため適切なエネルギー量を摂取するよう心掛けましょう。
1日活動するために必要なエネルギー量(カロリー)は年齢や身体活動の強さによって変わります。
身体活動の強さは3段階の「身体活動レベル」で表されます。
生活のほとんどを座って過ごす場合は、身体活動レベルは「低い(Ⅰ)」に該当します。
また座って過ごすことが多いものの、立ったり歩いたりする時間がある場合、通勤や買い物などで歩く場合、家事や軽いスポーツを行う場合などは「普通(Ⅱ)」に該当します。
立ったり歩いたりすることが多い場合、スポーツなどで活発に体を動かす習慣がある場合は「高い(Ⅲ)」に該当します。
それぞれの身体活動レベルで1日に必要なエネルギー量(カロリー)は以下のとおりです。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(ふつう) | Ⅲ(高い) | Ⅰ(低い) | Ⅱ(ふつう) | Ⅲ(高い) |
18~29(歳) | ||||||
30~49(歳) | ||||||
50~64(歳) | ||||||
65~74(歳) | ||||||
75以上(歳) |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
自分にとって必要な量のエネルギーを摂取できるよう心掛けましょう。
ポイント1-2 十分にたんぱく質を摂る
ロコモ予防するためにはたんぱく質を積極的に摂りましょう。
たんぱく質はエネルギー源となる他、筋肉や臓器、肌、髪の毛、骨などの材料となる栄養素です。
十分なたんぱく質を摂取することは筋肉量や骨の健康の維持に役立ちロコモ予防につながるといえるでしょう。
厚生労働省は1日のたんぱく質の摂取について、以下のように推奨量を設定しています。
年齢(歳) | 男性 | 女性 |
---|---|---|
18~29(歳) | ||
30~49(歳) | ||
50~64(歳) | ||
65~74(歳) | ||
75以上(歳) |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
たんぱく質は肉類や魚類、卵や大豆食品などに含まれています。
たんぱく質を豊富に含む食品には以下のようなものがあります。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
真あじ | ||
鶏肉(ささみ) | ||
豚肉(ロース) | ||
紅鮭 | ||
牛肉(サーロイン) | ||
納豆 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
たんぱく質を多く含む食品については以下の記事で解説しています。
たんぱく質を多く含む食べ物は?摂取量の目安やおすすめの食材を解説
ポイント1-3 十分にカルシウムを摂る
ロコモを防ぐには、骨の主な材料であるカルシウムを十分に摂りましょう。
カルシウムは体内で合成できないため、食べ物から摂取する必要があります。
十分に摂取できないと骨がもろくなり、ロコモの原因となる骨粗しょう症などを発症する可能性が高まります。
厚生労働省はカルシウムの1日当たりの摂取量について、以下のとおり推奨量を定めています。
年齢(歳) | 男性 | 女性 |
---|---|---|
18~29(歳) | ||
30~49(歳) | ||
50~64(歳) | ||
65~74(歳) | ||
75以上(歳) |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
カルシウムは主に乳製品や魚介類、海藻類、豆類などに含まれています。
カルシウムを多く含む食品には以下のようなものがあります。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
干しえび | ||
干しひじき | ||
プロセスチーズ | ||
切干しだいこん | ||
わかさぎ | ||
油揚げ |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
カルシウムを多く含む食品については以下の記事で解説しています。
カルシウムを多く含む食品と効果的な摂り方は?骨の健康を守ろう!
日本人のカルシウム摂取量は推奨量を下回っているため、積極的に摂取しましょう。
ポイント1-4 十分にビタミンDを摂る
ビタミンDもロコモ予防のために重要な栄養素です。
ビタミンDにはカルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にするはたらきがあります。
厚生労働省は、18歳以上の男女のビタミンDの1日の摂取について目安量を8.5㎍と定めています[4]。
ビタミンDは主に魚類やきのこ類に含まれています。
ビタミンDを豊富に含む食品には以下のようなものがあります。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
きくらげ | ||
しらす干し | ||
紅鮭 | ||
卵(鶏卵) |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
ビタミンDが不足するとカルシウム不足に陥り、骨の強度が不足して骨折しやすくなる「骨軟化症」のリスクが高まります。
骨軟化症では骨や関節の痛みに加えて骨の変形も生じ、移動機能に支障を来す可能性があります 。
またビタミンD不足が長期間に及ぶと骨粗しょう症による骨折のリスクも高まるため注意が必要です。
ビタミンDを含む食品については以下で解説しています。
ビタミンDはどんな食べ物に含まれる?1日の摂取基準やはたらきは?
[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント1-5 十分にビタミンKを摂る
ビタミンKはロコモ予防のために重要な栄養素です。
ビタミンKにはカルシウムの骨への沈着を促し、丈夫な骨の形成を助ける作用があります。
またコラーゲンを生成し、骨の質を改善するはたらきもあります。
厚生労働省は、18歳以上の男女のビタミンKの1日の摂取について目安量を150㎍と定めています[5]。
ビタミンKは主に納豆や緑黄色野菜に含まれています。
ビタミンKを多く含む食品には以下のようなものが挙げられます。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
カットわかめ | ||
納豆 | ||
味付けのり | ||
ブロッコリー | ||
ほうれん草 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
ビタミンKが不足すると骨がもろくなり、骨粗しょう症や骨折のリスクが高まります。
骨の健康を保つためにはカルシウム、ビタミンDとともにビタミンKも十分に摂取することが重要だといえるでしょう。
ビタミンKについては以下の記事で解説しています。
ビタミンKにはどんな効果がある?摂取目安量とおすすめの食材を紹介
[5] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント1―6 さまざまな食品を摂る
さまざまな食品を摂ることはロコモの予防につながります。
日頃の食生活でどのような種類の食品を食べているか評価するものに「食品摂取の多様性スコア」があります。
食品摂取の多様性スコアでは、以下の10の食品群のうち、何をどの頻度で食べているか評価することができます。
【食品摂取の多様性スコアにおける10の食品群】
- さかな(魚)
- あぶら(油)
- にく(肉)
- ぎゅうにゅう(牛乳)
- やさい(緑黄色野菜)
- かいそう(海藻)
- いも(芋)
- たまご(卵)
- だいず(大豆)
東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チーム「地域高齢者の栄養疫学研究とエビデンスに基づく健康支援」をもとに執筆者作成
「ほぼ毎日食べる」に1点、「2日に1回食べる」「週に1、2回食べる」「ほとんど食べない」の摂取頻度は0点とし、その合計点を計算します。
運動機能を維持するには7点以上が理想とされています。
ロコモ チャレンジ!推進協議会は各食品の項目の頭文字から「さあにぎやか(に)いただく」を合言葉としロコモ予防の一環としていろいろな食品を取り入れることを推奨しています。
ロコモチャレンジ!推進協議会ロコモONLINE「食生活でロコモ対策」をご確認ください。
また食事でどのくらい多様な食品を摂取しているかが、身体機能と関連することが報告されています[6]。
上記の研究では、65歳以上を対象として4年間、上記のような10項目の食品を1週間にどれくらい摂取しているかアンケートを行い、身体能力を測定しました[6]。
その結果、さまざまな食品を取り入れた食事をしている人とそうでないで人は筋力維持、歩行速度に明らかな差があることが分かったのです[6]。
ロコモを予防するためにはさまざまな食品からいろいろな栄養素を摂取できるよう心掛けましょう。
[6] Yuri Yokoyama「Dietary variety and decline in lean mass and physical performance in community-dwelling older Japanese: A 4-year follow-up study」(『ScienceDirect』第21巻第1号,p11 -16, 2017)」
ポイント2 適度な運動を行う
適度な運動を行うこともロコモ予防につながります。
ロコモを予防するためには下半身の筋力を鍛える「ロコトレ」が有効です。
まずはバランス能力を鍛えるためのロコトレを紹介します。
【片脚立ち】
- 姿勢を真っすぐにして右脚で立ちます
- このとき、左脚は床につかない程度に上げます
- この状態を1分間キープします
- 左右1分間ずつで1セットとし、朝昼晩の1日3セット行います
転倒に十分注意し、必要に応じて机に手や指をついて行いましょう。
次に紹介するのは下肢筋力を鍛えるロコトレです。
リスト見出し
- 足を肩幅に広げて立ちます
- 2~3秒かけてゆっくりと膝を曲げ、ゆっくり元に戻ります ※この際、膝が爪先より前に出ないようにします
- 5~6回で1セットとし、1日3セット行いましょう
支えが必要な場合は机に手をついて行いましょう。動作中は呼吸を止めないよう意識し、膝を曲げ過ぎないようにしましょう。
ロコトレは家で気軽に行えるので継続しやすいですね。
毎日できる範囲で続けてロコモを予防しましょう。
5.ロコモが疑われる場合は整形外科を受診しよう
筋肉や関節などの運動器に気になる症状がある場合は専門医を受診しましょう。
特に膝や腰など体の痛みがある場合は要注意です。
体の痛みがある場合、ロコモの原因となる疾患が背景にあることがあります。
早期発見、治療を行うことでロコモの進行を防ぐことにつながります。
この記事を読んで自分はロコモかもしれないと思った方は整形外科などの専門医を受診しましょう。
6.ロコモティブシンドロームについてのまとめ
ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは筋肉や関節、骨といった運動器の機能が衰えることで立ったり歩いたりすることが困難になる状態のことです。
運動器の病気や痛み、機能低下、加齢、運動不足、肥満、やせ過ぎなどの要因が関連し合うことで移動機能を低下させ、ロコモを発症・進行させます。
ロコモが進行すると自立した生活が送れなくなり、介護が必要になるリスクが高くなります。
便利な移動手段の多い現代社会では、移動機能の低下を自覚しないうちにロコモが進行する場合もあるため注意が必要です。
加齢に伴って筋肉量や骨密度が減少し、運動器の機能が低下していくため、若いうちからロコモの対策をすることが重要です。
ロコモは栄養バランの良い食事と適度な運動を習慣化することで予防できます。
たんぱく質やカルシウムなどの栄養素を積極的に摂り、バランスの良い食生活を送りましょう。
また運動器の機能を低下させないため運動習慣を身につけることも大切です。
また定期的にロコモ度テストを行い、運動機能の低下が起こっていないかチェックしましょう。
もしロコモ度テストの結果に不安を感じた方や、体に痛みがある場合は整形外科などの専門医を受診してくださいね。