「最近寝不足が続いて頭が痛い……」
「寝不足で頭痛になる原因は何?」
仕事や子育てなど、現代社会に生きる人々は忙しい生活を送っています。
十分な睡眠がとれず、寝不足による頭痛でお悩みの方も多いのではないでしょうか。
実は、寝不足による頭痛は2種類に分類されます。
本記事では、日常生活に支障をきたす頭痛に悩む方向けに、寝不足による頭痛の原因や対処方法、予防方法を解説します。寝不足による頭痛を改善したい方は、ぜひご覧ください。
1.寝不足による頭痛はなぜ起こる?
寝不足によって引き起こされる頭痛は「片頭痛」「緊張型頭痛」の2種類です。
片頭痛は寝不足やストレスなどで脳の血管が拡張し、顔の感覚をつかさどる「三叉神経(さんさしんけい)」を圧迫することで発生すると考えられています。
一方、緊張型頭痛は日々の緊張感や長時間のデスクワークによって発症する頭痛です。
寝不足によるストレスから筋肉が疲労し、脳の痛みの調節がうまく機能しないことで、神経が刺激され痛みが生じます。
【関連情報】 「睡眠不足の悪影響とは?質の高い睡眠をとるためのポイントも解説」についての記事はこちら
1-1.片頭痛(偏頭痛)の原因
片頭痛は血管の拡張により頭部の片側がズキズキと脈動する痛みが生じる頭痛で、「偏頭痛」とも表記されます。
光や音、においを敏感に感じとり、場合によっては吐き気を伴うことがあります。
主に仕事や家事などによるストレスや、天気・気温の変化などから発症しやすいですが、詳しいメカニズムは解明されていません。
通常数時間〜3日間程度持続し、起き上がる際や階段の昇り降りなどの日常的な運動により痛みが増強しやすい傾向があります。
また、睡眠不足以外にも睡眠のとり過ぎによって引き起こされる場合もあります。
1-2.緊張型頭痛の原因
「緊張型頭痛」は、ストレスや疲れによる刺激で起こる筋肉収縮が原因で発症する頭痛です。
頭蓋骨周辺の筋肉の収縮運動によって、頭の両側から締め付けられるような痛みを感じます。
片頭痛とは異なり、日常生活に支障をきたす症状はないものの、首や肩こり・めまいと併発しやすい点が特徴です。
緊張型頭痛は、月に15日未満の頻度で発症する「反復型」と月に15日以上と長期的に起こる「慢性型」に分けられます。
発症時は30分〜7日間程度症状が続き、無理な姿勢を長時間とることで悪化する傾向があります。
2.寝不足による頭痛の治し方は?
寝不足によって頭痛を発症した場合は、体を十分に休ませることで症状を和らげられます。症状が改善しない場合は、薬の服用やツボ押し、適度な運動によって回復する可能性があります。
以下で詳しく確認しましょう。
2-1.十分な睡眠をとる
寝不足による頭痛を治すためには、まずは十分な睡眠をとりましょう。睡眠は心と体の疲れを回復するはたらきがあります。
健康的に生活するためには、量・質ともに十分な睡眠をとることが大切です。
日本人の理想的な睡眠時間は8時間とされていますが、実は年齢を重ねるうちに一晩で実際に眠ることができる時間は減少していきます。
厚生労働省によると10代前半までは8時間以上、25歳では約7時間、その後20年ごとに約30分ずつ減っていくそうです[3]。
質の良い睡眠をとるためのポイントは、量・リズム・質の三点です。以下の方法で睡眠の質を向上させられます。
【睡眠の質を向上させる方法】
- 日中に日光を浴びる
- 入浴を就寝の2時間から3時間前までに済ませる
- 適度なストレッチをする
- 就寝前にパソコンやスマートフォンのブルーライトを浴びない
- 体に合った寝具を使用する
日常生活のなかで、できることをとりいれてみましょう。理想的な睡眠といっても個人差があるため、日中の活動が問題なく行えるように意識することがポイントです。
2-2.薬を服用する
日常生活に支障をきたすほど頭痛が悪化した場合は、市販の鎮痛薬を服用することで抑制できます。
鎮痛薬を服用すると、頭痛の原因である「プロスタグランジン」の生成を抑えることが可能です。痛みが悪化する前に予防として服用する使い方もできます。
ただし、市販の鎮痛薬を月に10日以上服用しても改善されない場合は、薬剤の使用過多によって生じる「薬物乱用頭痛」の疑いがあります。
「薬物乱用頭痛」とは、薬を服用し続けることで脳が痛みに敏感になり、薬の効き目が悪いと錯覚することで起こる頭痛です。
慢性的な頭痛で薬を常備している方は特に注意する必要があります。
2-3.寝不足による頭痛にきくツボを押す
寝不足による頭痛を手軽に改善するには、「ツボ療法」もおすすめです。
全身には361カ所のツボがあるといわれており、そのなかでも頭痛に良いとされるツボがいくつか存在します。
いつでも手軽に実践できるため、各部位の場所と指圧方法を押さえておくと良いでしょう。
2-3―1.手や足にあるツボ
頭痛にきく腕や手と足のツボは以下のとおりです。
【手や足にあるツボ】
(1)合谷(ごうこく)
(2)手三里(てさんり)
(3)陽陵泉(ようりょうせん)
(4)足臨泣(あしりんきゅう)
(5)崑崙(こんろん)
上記のツボは、片頭痛によるズキズキとした痛みを和らげることができます。
特に足にある「足臨泣」や「崑崙」は、「胆経(たんけい)」と呼ばれる体の側面の不調に通じるツボです。
崑崙の位置は、外くるぶしとアキレス腱の間のくぼみにあり、足臨泣は足の薬指と小指の付け根に存在します。
指圧する際は、親指や人さし指の腹をツボの位置に当てて、優しくていねいに押しましょう。
さらに股関節から指先までの体の外側を、トントンと軽く3〜4回たたくと全体に刺激を与えられます。
肩こりや生理痛、寝違えによる痛みを併発している場合は、手に位置する万能的なツボ「合谷」や「手三里」を指圧しましょう。
合谷は手の甲の親指と人さし指の骨の交差地点から、人さし指側を押すと痛む部分にあります。
手三里は、肘を曲げたときにできるシワの外側から手先へ指3本分向かったあたりに存在するツボです。
合谷は親指をツボに当て、残りの4指で手のひらを支えると安定して指圧できます。手三里は反対の手で腕を支えながらくるくると回すように刺激を加えましょう。
2-3―2.顔にあるツボ
ストレスや目の疲れ、不眠症におすすめのツボは、顔にある「太陽(たいよう)」と「印堂(いんどう)」です。
太陽は目尻と眉尻の中間地点から指2本外側に位置します。
太陽を指圧する際は、押しやすい指の腹で左右同時に優しく圧をかけましょう。
太陽は目の周りの筋肉をほぐすことができ、緊張型頭痛と肩こりを併発している場合におすすめのツボです。
印堂は眉間のちょうど中心に存在します。
印堂を指圧する場合は、片方の親指を使って痛気持ち良い程度の力加減で押します。自律神経と関連のある経路の督脈(とくみゃく)とつながっています。
息を吐くリズムに合わせて圧力をかけることで、よりリラックス効果を高められるでしょう。
2-3-3.頭・首にあるツボ
頭痛と併発しがちな肩こりやめまいにもアプローチしたい場合は、頭部から肩にかけて存在するツボ「百会(ひゃくえ)」「あ門(あもん)」「天柱(てんちゅう)」を指圧しましょう。
百会は眉間と左右の耳が交わる頭頂部に位置し、指圧することでめまいや頭頂部の痛みを和らげる効果があります。
百会は頭部の痛みを緩和しやすいツボであることから、外出先で急な痛みが発生した場合に即効性が期待できます。
あ門は後頭部のうなじの生え際に存在し、指圧すると頭痛の原因となる首のこりをほぐすことが可能です。
天柱は首の太い2本の筋肉のくぼみに位置しており、指圧することで頭痛に加え、肩こりや疲れ目などにもアプローチできます。
指圧する際は後頭部で両手を組み、親指のはらをツボにあてます。そのまま頭を後ろに倒せば自然とツボ押しが可能です。
無理に指圧する必要はなく、気持ち良いと感じる程度で適度にこりをほぐすイメージで押しましょう。
2-4.適度に運動する
睡眠不足を解消するには、適度な運動がおすすめです。運動をして脳の温度を一時的に上げると、睡眠時の脳の温度が大きく低下します。
脳の温度が下がっているとき睡眠は現れやすいため、結果的に睡眠不足解消につながります。
さらに、精神を安定させるといわれる「セロトニン」が分泌されるため、頭痛の原因になりやすいストレスを解消することも可能です。
運動は緊張型頭痛の予防・緩和にもおすすめです。筋肉の緊張で引き起こされるため、適度な運動やストレッチで体をほぐすことで改善が期待できます。
ただし、激しい運動をすると、体が興奮状態に陥って寝つきにくくなるため、軽度の運動を心掛けましょう。
3.寝不足による頭痛を予防するには?
寝不足による頭痛を予防したい場合は、生活習慣や環境の改善に努めましょう。寝不足はストレスが生じる原因となり、心身にさまざまな影響をおよぼします。
また、寝不足は頭痛を引き起こすだけにとどまらず、免疫機能の低下や生活習慣病の発症を招きます。寝不足の健康面への影響に関して詳しく知りたい方は、下記記事を参考にしてください。
睡眠不足が及ぼす影響とは?適切な睡眠時間や生活習慣を詳しく解説
さらに頭痛を予防するには、睡眠時間の確保のほかに睡眠の質を向上させる必要があります。
睡眠の質と寝不足の関係性に興味がある方は、下記記事も併せてご覧ください。
3-1.規則正しい生活を送る
寝不足による頭痛の頻度を減らすためには、現状の生活の見直しが必要です。
毎日の起床時間や食事時間、就寝時間を乱さないように意識することで、ストレスがたまりにくくなり、頭痛の原因を解消できます。
特に、片頭痛の場合は十分な睡眠時間を確保し、寝不足や寝過ぎによる体調の乱れを起こさないように努めましょう。
また、食事は1日3食、朝昼晩でバランス良く摂ることが大切です。
間食として摂取しがちなチョコレートやナッツなどは、片頭痛のきっかけとなりやすいため、食べ過ぎないようにしましょう。
3-2.睡眠の質改善に努める
必要以上に長く睡眠をとっても、頭痛や体調不良がない健康的な体になるわけではなりません。朝までぐっすり寝て疲れをとるには、睡眠の質を改善する心掛けが大切です。
睡眠の質を向上させるには、入浴や運動のほかに、寝室の環境を整える必要があります。特に冬場は電気毛布や湯たんぽを活用して寝床を暖めておくと良いです。
ほかにも、保湿性や吸湿性、放湿性が高い寝具にすることにより、快適な寝床内環境が維持できます。
さらに、首や肩に負担がかかると首こり・肩こりにつながり緊張型頭痛のリスクが高まるため、使っている枕やベッドが自身の体に負担をかけていないか確認しましょう。
なお、眠る姿勢は横向きやうつぶせではなく、あおむけの状態の方がよりリラックスできるとされています。
3-3.ストレス解消に努める
仕事や家事・育児でストレスをため込むことは、頭痛や不眠を発症する原因になります。ストレスは、人によって感じ方が異なるのが特徴です。
大きなストレスではないと感じていても、積み重なると心身の不調にもつながりやすいため、こまめに疲れを癒やしましょう。
仕事がストレスになっている場合は、仕事に関係しない趣味を持つことがおすすめです。仕事を忘れて趣味に没頭する時間をつくることでストレスを解消できます。
日常生活のなかで趣味に没頭する時間がとれない場合は、親しい人と積極的に交流する機会を設けると良いでしょう。
親しい人との会話のなかで自身の気持ちも整理されて、ストレスへの対処方法が見つかる可能性もあります。
ほかにも、「笑い」はストレスに良いとされています。免疫力を正常にしたり、自律神経を整えたりするため、日常で笑えるようなことを取り入れると良いでしょう。
ただしストレス解消法には、健康面から推奨されないものもあります。例えば飲酒や喫煙・過食や、激しい浪費・ギャンブルなどは心身に大きな負担を与えやすいため、避けましょう。
3-4.カフェインやアルコールは適度に摂取する
睡眠の質を低下させないためには、コーヒーやお茶に含まれている「カフェイン」や、酒類に含まれる「アルコール」の摂取量に気を配りましょう。
カフェインとは、茶葉やコーヒー豆の食品成分であり、眠気の軽減や集中力の向上効果がある成分です。
適切な量を守れば健康的な被害は発生しませんが、過剰に摂取すると覚醒成分の「ヒスタミン」が多く分泌され、寝つきを悪くしてしまいます。
アルコールは酒の主成分であり、少量の摂取で血行促進やストレス解消に役立ちます。
しかし、あくまで適量の摂取が前提であり、習慣的に多量を飲み続けると、高血圧や高血糖などの生活習慣病を招きます。
また、アルコールを摂取すると動悸や吐き気などをもたらす「アセトアルデヒド」を生成するため、入眠しても夜中に目覚めてしまう可能性が高いです。
カフェインやアルコールは、過剰に摂取すると睡眠の質の低下を招きやすいです。意識的に控えることで、寝つきを改善できるでしょう。
[6]厚生労働省「アルコール」
4.寝不足による頭痛についてのまとめ
寝不足によって引き起こされる頭痛は「片頭痛」と「緊張型頭痛」の2種類です。精神的なストレスや肉体の疲労が重なることで引き起こされます。
対処方法は、十分な睡眠をとることやツボ押し、市販薬の服用が基本です。片頭痛の場合は、無理な運動を行わず安静に過ごす必要があります。
緊張型頭痛の場合は凝り固まった筋肉をほぐすため、軽いストレッチをこまめに行うと良いでしょう。
つらい頭痛を引き起こさないためには、日頃の生活リズムを整えつつ睡眠の質を向上させることが大切です。
仕事や子育てで慌ただしく過ごすなかで、頭痛を慢性化させないように、自分にとって気軽に取り組める方法を実践しましょう。