「季節の変わり目はくしゃみや鼻水が止まらない」
「もしかして、寒暖差アレルギーかな?」
寒い冬から暖かい春、暑い夏から涼しい秋などの季節の変わり目に、くしゃみや鼻水が頻繁に出て、体調が崩れることはありませんか?
その原因は、寒暖差アレルギーかもしれません。
この記事では、寒暖差アレルギーの症状や原因、効果的な治療法や日常生活でできる対策までを詳しく解説します。
毎年、季節の変わり目の体調不良に悩まされている方は、快適な日常を取り戻すための参考にしてみてくださいね。
1.気温の変化によるくしゃみや鼻水、寒暖差アレルギーかも?
くしゃみや鼻水、鼻づまりといった症状は、気温の急激な変化に反応して現れることがあり、寒暖差アレルギーの典型的な症状です。
一般的に、女性に多く、40歳以降になって発症する割合が高いといわれています。
この症状の多くは「血管運動性鼻炎」であると思われます。
血管運動性鼻炎とは、鼻粘膜の血管の腫れによってくしゃみや鼻水などが引き起こされる鼻炎の一種です。
そのため、寒暖差アレルギーと呼ばれているものの、アレルギーとは異なります。
なお、鼻炎の3〜7%程度が血管運動性鼻炎と言われています[1]。
2.寒暖差アレルギーの原因
寒暖差アレルギーの原因は、はっきりと解明されていませんが、自律神経のはたらきが関与していると考えられています。
自律神経は交感神経と副交感神経に分かれ、それぞれバランスを取りながら体の機能を調整しています。
- 交感神経:体を活発に動かすときにはたらく
- 副交感神経:体がリラックスしているときにはたらく
急激な温度変化があると自律神経のバランスが乱れ、鼻の粘膜の知覚神経が刺激されたり、鼻の粘膜の血管が拡張したりします。
これがくしゃみや鼻づまりの症状を引き起こす一因と考えられているのです。
また寒暖差以外にも、たばこの煙や化粧品、飲酒、精神的なストレス、妊娠などによって、鼻の自律神経のはたらきが異常になるケースがあります。
血管運動性鼻炎は、こうした外的・内的のさまざまな要因によって引き起こされるのです。
3.アレルギー性鼻炎や風邪との違い
同じように鼻水が出るアレルギー性鼻炎や風邪と、寒暖差アレルギーの違いについて以下にまとめました。
【疾患の特徴と症状】
特徴 | アレルギー性鼻炎 | 風邪 | 寒暖差アレルギー |
---|---|---|---|
原因 | 花粉やハウスダスト | ウイルス | 不明 |
鼻水の症状 | 水っぽくサラサラ | 粘り気がある | 水っぽくサラサラ |
眼のかゆみ | あり | なし | なし |
くしゃみ | 3回以上続けて出る | 2~3回程度続く | 一時的に続く |
発熱 | なし | あり(軽症ではなし) | なし |
倦怠感 | なし | あり | なし |
4.寒暖差アレルギーの治療方法
アレルギー性鼻炎の治療では抗原(花粉やハウスダスト)の除去・吸収の回避が一般的ですが、寒暖差アレルギーの場合は対症療法が行われます[2]。
抗ヒスタミン薬 物理的刺激によって分泌され、かゆみなどの炎症を引き起こす「ヒスタミン」のはたらきを抑える薬です。
漢方薬などの内服薬 水分代謝を促し、鼻水・くしゃみなどの症状を抑える漢方薬が使用されます。
例えば、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)や葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)などが挙げられます。点鼻薬 副腎皮質ホルモンや抗ヒスタミン剤が含まれる点鼻薬が使用されます。
主に鼻粘膜の炎症を抑えるはたらきをします。副作用がほとんどないことが特徴です。
ただし、これらに効果がない場合は手術で治療することもあります。例えば、鼻粘膜を固めるレーザー手術や、鼻粘膜を切る鼻粘膜切除術などです。
鼻水の症状が強い場合は、後鼻神経切断術を検討することもあります。
寒暖差アレルギーは完治が難しい症状ですので、専門医と治療方法を相談したり、適切なアドバイスをもらったりして症状の軽減を目指すことが大切です。
5.今日からできる!寒暖差アレルギーの対策
ここからは、寒暖差アレルギーの症状を軽減するために、以下4つの対策をご紹介します。
- 温度差を小さくする
- たばこの煙やほこりを吸わない
- 自律神経を整える
- 適度な運動で体力を付ける
すぐに取り組み始められるものが多いので、ぜひ今日から実践してみてください。
5−1.温度差を小さくする
寒暖差アレルギーは7℃程度の急激な温度差が原因で引き起こされると考えられています。まずは、体が感じる温度差を小さくすることから始めましょう。
外出する際には、季節に合わせた衣類を選ぶことが大切です。寒い時期には防寒具を活用して、室内へ戻ったときとの温度差を小さくしてください。
首元や手首、足首には太い血管が通っているため、マフラーや手袋、厚手の靴下を着用すると効率良く血流が促進されます。
空気が冷たい場所へ行くときはマスクをすることで、寒暖差の刺激を和らげることができます。
暑い時期に空調の効いた室内へ行くときには、冷房が直接肌に当たるのを防ぎましょう。
また、自宅や職場ではエアコンの設定温度を調整し、室内の温度を下げ過ぎない・上げ過ぎないようにキープすることも大切です。
家の各部屋で温度差が生じる場合もあるため、できるだけ一定の温度になるようドアを解放したり扇風機で空気の循環を促したりするなど工夫してみてください。
5−2.たばこの煙やほこりを吸わない
寒暖差アレルギーを軽減するための対策の一つとして、たばこの煙やほこりを避けることも重要です。
たばこの煙やほこり、排気ガス、化粧品などの香料などを吸い込むと、寒暖差アレルギーの症状を悪化させる可能性があります。
外出時にはマスクの着用や喫煙室に近づかないなどの対策で、できるだけ避けるよう意識してください。
5−3.自律神経を整える
自律神経を整えるために最も重要なのは、規則正しい生活を心掛けることです。
自律神経は24時間周期でバランスを取っているといわれていますので、起床・睡眠、食事、運動など生活のリズムを一定にすることが大切です。
起床時に太陽の光を浴びると自律神経がリセットされるため、おすすめです。
一方、ストレスは自律神経に悪影響を与えます。リラクゼーションを取り入れたり、趣味や運動を通じてストレス解消を心掛けたりしましょう。
特に、仕事などで忙しい日々を過ごしている方は交感神経が優位になっている可能性が高いため、休息の時間を十分に取ることを意識してください。
また、バランスの整った健康的な食事を摂るようにしましょう。暴飲暴食や血糖値の急上昇・急降下を避けることが大切です。
5−4.基礎代謝を上げる
基礎代謝が低下すると、わずかな気温の低下でも体が冷えやすくなります。寒暖差アレルギーを予防するためには、基礎代謝を上げることが重要です。
有酸素運動や筋トレは、基礎代謝を向上させる効果的な方法です。
これまで運動習慣がなかった方は、ウォーキングやラジオ体操などの軽い運動から始めてみても良いでしょう。
一方で、冷たい食べ物や飲み物ばかりを摂取していると臓器のはたらきを鈍くし、基礎代謝が低下してしまいます。
コーヒーやお酒も体を冷やすといわれているため、注意が必要です。
普段から温かい食べ物や飲み物を選んだり、入浴して体を温めたりする生活習慣を身に付けましょう。
6.寒暖差アレルギーについてのまとめ
寒暖差アレルギーは自律神経の乱れや外部要因によって引き起こされ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が現れます。
治療法としては抗ヒスタミン薬や漢方薬、点鼻薬の使用が一般的です。
また、寒暖差を軽減し症状を緩和するためには、温度差の調整、自律神経を整える、基礎代謝の向上といった対策が有効となります。
症状が強い場合には医師へ相談し、適切な治療や対策を行いましょう。
この記事の監修者
内科認定医・がん治療認定医
【経歴】
国立大学医学部医学科卒業後、公立病院にて初期研修の2年を終了後、3年目からはがん治療を専門としながら幅広く内科疾患の診療に従事。治療が必要となる前の生活習慣の改善、また病気についての正しい知識が大事であることを実感し、病気についての執筆活動にもあたっている。