「セレンって一体何だろう?」
「セレンは体に必要って聞いたけど、どんなはたらきがあるのかな……」
セレンという名称を聞いても、具体的にどういう栄養素なのか分からないという方が多いのではないでしょうか。
セレンは人体に欠かせないミネラルの一つで、老化やがんなどの生活習慣病を引き起こす活性酸素から体を守るはたらきがあります。
一方で強い毒性を持ち、過剰摂取に注意が必要な物質でもあります。
この記事では、セレンの体内でのはたらきや過不足による影響、1日に摂取すべき量に加えて多く含む食品についても解説します。
セレンを過不足なく摂取して健康な日々を送るための参考にしてくださいね。
1.セレンとは?
「セレンってあまり聞かないけど、どんな栄養素なんだろう?」
セレンという言葉にあまりなじみのない方は多いのではないでしょうか。
セレンは人体に欠かすことのできない「必須ミネラル」の一種です。
セレンは体内では酵素やたんぱく質の形で存在し、老化や生活習慣病などをもたらす「活性酸素」から体を守る「抗酸化作用」を持つことが知られています。
またセレンは「甲状腺ホルモン」の代謝にも関わっています。
甲状腺ホルモンは脈拍数や体温、自律神経などの新陳代謝を活性化し、子どもの体や脳の発育・発達を促進します。
セレンは健康を保ち、若々しく精力的に生きる上で重要な役割を担っているといえるでしょう。
2.セレンの過不足による影響
「セレンが不足したらどうなるんだろう?」
「セレンはたくさん摂り過ぎたら良くないのかな?」
セレンは体に必須なミネラルであると同時に、毒性が強く注意が必要な物質でもあります。
この章では、セレンが不足した場合と過剰摂取した場合にどのような影響が出るのかを説明します。
【関連情報】 「ミネラルとは?体に必要な理由と豊富に含まれる食べ物を種類別に紹介」についての記事はこちら
2-1.セレンが不足した場合の影響
セレンが不足すると、まず筋力低下や筋肉痛、貧血、爪の白色化や変形が起こります。
また長期にわたって欠乏が続いた場合、不整脈などを引き起こす心筋症が発症し、死に至る場合もあります。
爪の白色化や筋力低下などはセレンの摂取によって治りますが、心筋症は治らない可能性が高いため十分注意が必要です。
他にも、セレンが不足している場合は大腸がん、前立腺がん、肺がん、ぼうこうがん、皮膚がん、食道がん、胃がんの発生リスクが高まることが示されています。
しかしセレン欠乏症は、通常の食事を摂っていれば、まず起こることはありません。
主にセレン欠乏症が起こるのは、食事が摂れず静脈栄養剤や経腸栄養剤を用いている場合や、腎不全患者・透析患者である場合です。
また海外では、土壌のセレン濃度が極端に低い地域の居住者にセレン欠乏症が起こることが報告されています。
2-2.セレンを過剰摂取した場合の影響
セレンには強い毒性があり、体に必要な量と中毒に陥る量の差が極めて小さいため、過剰摂取には十分な注意が必要です。
通常の食生活を送っている分には過剰摂取による問題が生じる可能性は低いとされていますが、サプリメントなどを服用し続けることで過剰摂取に陥る危険があります。
セレンを慢性的に過剰摂取すると、脱毛や爪の異常、吐き気や嘔嘔(おうと)、下痢、疲労感、発疹などの皮膚症状、末梢(まっしょう)神経の障害などが起こります。
また吐く息がにんにく臭を帯びることもあります。
大量のセレンを一度に摂取した場合は、震えや立ちくらみ、脱毛などに加えて重症の胃腸障害や神経障害、心筋梗塞、急性の呼吸困難、腎不全、心不全などを引き起こし、死に至る場合もあります。
3.セレンの食事摂取基準と平均摂取量
「セレンはいったいどれくらい摂取すれば良いんだろう?」
セレンは毒性が強いミネラルであるため、どれくらい摂取すれば良いのか気になる方も多いでしょう。
この章では、セレンを1日当たりどの程度摂取すれば良いのか、また日本人は実際にどれくらいセレンを摂取しているのかを解説します。
3-1.1日当たりの食事摂取基準
厚生労働省は、健康のための栄養素の摂取量の基準として「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を公表しています。
セレンの食事摂取基準は以下のように定められています。
【セレンの1日当たりの食事摂取基準】
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 耐容上限量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 耐容上限量 |
18歳~29歳 | 25μg | 30μg | 450μg | 20μg | 25μg | 350μg |
30歳~49歳 | 25μg | 30μg | 450μg | 20μg | 25μg | 350μg |
50歳~64歳 | 25μg | 30μg | 450μg | 20μg | 25μg | 350μg |
65歳~74歳 | 25μg | 30μg | 450μg | 20μg | 25μg | 350μg |
75歳以上 | 25μg | 30μg | 400μg | 20μg | 25μg | 350μg |
また妊娠中、授乳中の女性はセレンの必要量が増加するため、以下のように付加量が設定されています。
【妊婦・授乳婦への付加量】
推定平均必要量 | 推奨量 | |
---|---|---|
妊婦 | +5μg | +5μg |
授乳婦 | +15μg | +20μmg |
3-2.1日当たりの平均摂取量
日本人の成人のセレンの平均摂取量は1日当たり約100μg である[2]と推定されています。
これは男性の推奨量の約3倍、女性の推奨量の約4倍に当たり、日本人は十分にセレンを摂取しているといえるでしょう。
とはいえ、過剰摂取しないための上限である耐容上限量までには余裕があるため、日々の食生活でセレンの摂取を控える必要はありません。
日本人のセレン摂取量が推奨量を上回っている理由は、日本の土壌と食生活にあります。
植物や家畜のセレン含有量は、その土地の土壌や飼料のなかのセレン含有量に依存します。
日本の土壌は適度なセレンを含んでいるため、日本で育つ農作物や飼料には相応のセレンが含まれています。
また日本人が日々の食生活のなかで、セレンを多く含む魚介類を頻繁に摂取していることも大きな理由です。
加えて日本人が多く消費している小麦製品や肉類には、土壌のセレン濃度の高い北米で採れた小麦や家畜飼料を利用しているものが多いことも理由の一つに挙げられます。
これらの理由が重なることで、日本人のセレン摂取量は十分な水準を保つことができているのです。
4.セレンを多く含む食品
「セレンはどんな食品に多く含まれているのかな」
日々しっかりセレンを摂取したいという方もいらっしゃるでしょう。
セレンは魚介類を筆頭に、肉類や穀類などに多く含まれています。
【セレンを多く含む食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
たらこ | 生 | 130μg |
まがれい | 生 | 110μg |
くろまぐろ 赤身 | 生 | 110μg |
かつお 秋獲り | 生 | 100μg |
まつたけ | 生 | 82μg |
まさば | 生 | 70μg |
豚レバー | 生 | 67μg |
ぶり | 生 | 57μg |
牛レバー | 生 | 50μg |
まいわし | 生 | 48μg |
卵黄(鶏卵) | 生 | 47μg |
かき(養殖) | 生 | 46μg |
5.まとめ
セレンは人体に必須なミネラルの一種です。
セレンは老いや生活習慣病をもたらす活性酸素から体を守る抗酸化作用を持ち、代謝を活性化する甲状腺ホルモンにも深く関わっています。
セレンは健康を保ち、若々しく生きるために重要な栄養素といえるでしょう。
しかしセレンは毒性が強いため、サプリメントなどでの過剰摂取には十分注意が必要です。
また日本人は日々の食生活でセレンを十分に摂取できるため、不足を心配する必要はまずありません。
セレンは魚介類や肉類、穀類などに多く含まれているため、若々しく健康でありたいと思う方は日々の食事に意識的に取り入れてみてくださいね。