牛乳に豊富な栄養素とそのはたらきとは?摂取の際のポイントも解説

2024年04月11日

2024年07月03日

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「牛乳といえばカルシウムのイメージがあるけど、他にはどんな栄養素が含まれているんだろう?」

「牛乳に含まれる栄養素にはどんなはたらきがあるのかな?」

実際に牛乳にはカルシウムが豊富に含まれています。

カルシウムには骨や歯をつくる重要なはたらきがあります

また、牛乳にはカルシウムの他にもビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB12、パントテン酸といった栄養素が含まれています。

そこでこの記事では、牛乳に含まれている栄養素やそのはたらき、摂取する際のポイントを詳しく解説します。

ぜひ参考にしてくださいね。

1.牛乳の基礎知識

瓶にはいった牛乳

牛乳とは直接飲用したり、牛乳を原料に食品を製造・加工したりする目的で販売される牛の乳のことです。

牛乳は、文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」において普通牛乳と表記されます。

成分規格が無脂乳固形分8.0%以上、乳脂肪分が3.0%以上のものなどと定められています[1]。

ここまで厳密な定義があるのかと驚いた方もいるでしょう。

牛乳などの「乳」やチーズやバターなどの「乳製品」については、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」で分類されており、成分などに関する細かい規定があります。

メモ
「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」は食品衛生法に基づいて、牛乳や乳製品を安全に消費するために定められているものです。

乳には牛から搾ったたままの牛の乳である「生乳」や牛乳、「成分調整牛乳」「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」および「加工乳」などが含まれます。

スーパーなどで見かける成分調整牛乳や、低脂肪牛乳などは牛乳とは成分規格が異なります。

メモ
成分調整牛乳は無脂乳固形分8.0%以上で、生乳から乳脂肪分などの一部を除去したものです[1]。成分調整牛乳には低脂肪牛乳や無脂肪牛乳などがあり、低脂肪牛乳は乳脂肪分を除去したもののうち無脂肪牛乳以外のもの、無脂肪牛乳は乳脂肪分のほとんどを除去したものをいいます。加工乳は、生乳や牛乳などを原料として製造した食品を加工したものをいいます。

また、牛乳は生乳のみを使用し、水や他の材料を混ぜてはいけないとされています。

このように牛乳や、牛乳に似た製品である成分調整牛乳などは、含まれる乳脂肪分などが細かく規定され、異なる点があるのですね。

[1] 厚生労働省「乳等省令における規定(抜粋)

2.牛乳に豊富に含まれる栄養素

牛乳の波紋

「牛乳に豊富な栄養素ってなんだろう?」

「牛乳のカロリーってどのぐらいなのかな?」

と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

普通牛乳のカロリーは100g当たり61kcalです[2]。

普通牛乳にはさまざまな栄養素が豊富に含まれています。

メモ
この章でご紹介する栄養素は食品表示基準にのっとって100kcal当たりの含有量が「豊富である」と表現できるものです[3]。普通牛乳100kcalは164gに相当します[2]。カルシウムは100g当たりの基準にのっとっても「豊富」と表現できるため、特に豊富だといえるでしょう。

この章では普通牛乳に豊富に含まれる栄養素とそのはたらきを解説します。

【普通牛乳に豊富に含まれる栄養素とその含有量(100g当たり)】

栄養素 含有量
カルシウム 110mg
ビタミンB2 0.15mg
ナイアシン 0.9mg
ビタミンB12 0.3μg
パントテン酸 0.55mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

[2] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[3] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック

2-1.カルシウム

牛乳にはカルシウムが100g当たり110mg含まれています[4]。

カルシウムはヒトの体に最も多く含まれる「ミネラル」です。

ミネラルとは
ヒトの体を構成する主要な元素である酸素、炭素、水素、窒素以外のものを指します。ミネラルは体内でつくり出すことができないため食べ物から摂る必要があります。

体内のカルシウムの大半が骨や歯の構成成分です。

残りのわずかなカルシウムは血液などに存在し血液凝固や心機能、筋収縮などに関わっています

カルシウムが慢性的に不足すると「骨粗しょう症」を招く他、高血圧や肥満なども引き起こす恐れがあるとされています。

骨粗しょう症とは
「骨破壊」が「骨形成」よりも上回りもろく折れやすくなった状態のことです。骨は骨芽細胞によって骨形成され、破骨細胞によって古くなった骨が吸収されます。骨をつくるのに必要な栄養素の不足や運動不足などが原因で骨吸収が上回るといわれています。

特に閉経後の女性の場合は、女性ホルモンの減少に伴い骨粗しょう症のリスクが高まることが分かっているため注意が必要です。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、カルシウムの摂取推奨量が定められています。

カルシウムの1日当たりの摂取推奨量は男性の場合、18〜29歳で800mg、30〜74歳で750mg、75歳以上で700mgです[5]。

女性では18〜74歳で650mg、75歳以上で600mgです[5]。

[4] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[5] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-2.ビタミンB2

牛乳にはビタミンB2が100g当たり0.15mg含まれています[6]。

ビタミンB2には、体内で「エネルギー代謝」に関するはたらきがあります。

メモ
代謝とは食物などを体内で分解したり、他の物質に合成したりするはたらきのことです。エネルギー代謝とはヒトの体と外界の間で生じるエネルギーの出入りや変換をいいます。ヒトが食べ物を摂取すると体内でさまざまなエネルギーに変換され、身体活動や生命維持に利用されます。

ビタミンB2はエネルギー代謝における「補酵素」としてはたらき、体内でエネルギーをつくり出すのをサポートします

補酵素とは
酵素のはたらきを助ける物質です。酵素には体内に取り込んだ食べ物の分解や吸収をするはたらきがあり、多くの酵素は補酵素とつながることで効果を発揮します。補酵素の多くはビタミンからつくられます。

その他にもビタミンB2には成長の促進や皮膚・粘膜の保護といった作用があります

ビタミンB2が不足すると成長障害や口内炎、皮膚炎などの症状が出ることがあるといわれています。

ビタミンB2不足は食事からの摂取量が不十分なことなどが原因です。

ビタミンB2の不足は単独では起こりづらく、その他のビタミンが不足するのと同時に起こるといわれています。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において、ビタミンB2の摂取推奨量が定められています。

メモ
推奨量は「推定平均必要量」を補助する目的で設定された数値で、ほとんどの人が充足している量を意味しています。推定平均必要量は摂取不足の回避を目的として設定され、半数が必要量を満たす量です。

ビタミンB2の1日当たりの摂取推奨量は男性の場合18~49歳で1.6mg、50〜74歳で1.5mg、75歳以上で1.3mgです[7]。

女性では18〜74歳で1.2mg、75歳以上で1.0mgです[7]。

[6] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[7] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-3.ナイアシン

牛乳には「ナイアシン当量(NE)」として、ナイアシンが100g当たり0.9mg含まれています[8]。

ナイアシン当量とは
食品に含まれるナイアシンと、体内で一部がナイアシンに変換される「トリプトファン」を合わせて算出された量のことです。トリプトファン60mgはナイアシン1mgに相当します[9]。

ナイアシンは糖質や脂質、たんぱく質の「代謝」に不可欠で、DNAの修復や合成などにも関与する栄養素です。

またアルコールを代謝する過程で生じる「アセトアルデヒド」という物質を分解する際の補酵素としてもはたらきます。

アセトアルデヒドとは
アルコールが肝臓で代謝される過程で生じる物質です。アセトアルデヒドが急激に体にたまると顔面紅潮・吐き気・動悸(どうき)などが起こります。

アセトアルデヒドは二日酔いの原因にもなるため、飲酒量が多い人ほどナイアシンを積極的に摂り入れると良いとされていますよ。

その他にも、ナイアシンには皮膚や粘膜を正常に保つはたらきがあります

ナイアシンが欠乏すると「ペラグラ」を発症することがあるといわれています。

ペラグラでは主に発疹などを伴う皮膚炎や、下痢、認知機能の低下などが生じるとされています

ペラグラは十分な栄養を摂れない発展途上国で多く、日本での発症はまれといわれています。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、ナイアシンの摂取推奨量が定められています。

ナイアシンの1日当たりの摂取推奨量は男性の場合18~49歳で15mgNE、50〜74歳で14mgNE、75歳以上で13mgNEです[9]。

女性では18~29歳で11mgNE、30〜49歳で12mgNE、50~74歳で11mgNE、75歳以上で10mgNEです[9]。

[8] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[9] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-4.ビタミンB12

牛乳にはビタミンB12が100g当たり0.3μg含まれています[10]。

ビタミンB12には「アミノ酸」や脂質の代謝に補酵素として関わるはたらきがあります。

アミノ酸とは
たんぱく質を構成する20種類の「有機化合物」です[11]。有機化合物は炭素を骨格としている物質をいいます。アミノ酸は一つでも欠けるとたんぱく質を合成することができません。体内でつくることのできないものを必須アミノ酸、体内で糖質や脂質からつくり出すことのできるものを非必須アミノ酸といいます。

ビタミンB12が不足すると「悪性貧血」やうつ病、運動時の動悸や息切れなどが起こるといわれています。

悪性貧血とは
「巨赤芽球性貧血」の一種で、ビタミンB12がうまく吸収できないことなどによって起こります。巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12不足などによって赤血球の細胞を維持できなくなる病気です。赤血球には全身へ酸素を届ける色素が含まれているため、赤血球が減少すると体が酸素不足の状態となる「貧血」を招きます。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、ビタミンB12の摂取推奨量が定められています。

ビタミンB12の1日当たりの摂取推奨量は18歳以上の男性、女性共に2.4μgです[12]。

[10] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[11] 厚生労働省 e-ヘルスネット「アミノ酸

[12] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-5.パントテン酸

牛乳にはパントテン酸が100g当たり0.55mg含まれています[13]。

パントテン酸はエネルギー代謝に関わっており、皮膚や粘膜の健康を保つはたらきをします。

また善玉コレステロールを増やし「動脈硬化」のリスクを抑えるはたらきもあるといわれています。

メモ
動脈硬化とは、動脈の血管が硬くなった状態のことです。「LDLコレステロール」が増え過ぎて血管壁に蓄積されることなどが原因で生じ、進行すると血管が詰まりやすくなります。LDLコレステロールはコレステロールを全身へ運ぶはたらきをするため悪玉コレステロールといわれ、HDLコレステロールは血管内に増え過ぎたコレステロールを取り除くため善玉コレステロールといわれます。

パントテン酸が不足するとエネルギー代謝が正常に行われない他、疲労感や食欲低下などが出現する恐れがあります。

さらに頭痛や動悸などが起こることもあるといわれています。

パントテン酸はさまざまな食品に含まれているため、通常の食事をしている場合であれば不足することはありません。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」ではパントテン酸の摂取目安量が定められています。

メモ
目安量は、十分な科学的根拠が得られず推定平均必要量や推奨量が設定できない場合に設定される数値です。一定の栄養状態を維持するのに十分な量とされています。

パントテン酸の1日当たりの摂取目安量は、男性は18~49歳で5mg、50歳以上で6mg、女性は18歳以上で5mgです[14]。

[13] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[14] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3.牛乳に含まれる栄養素

グラスに注がれた牛乳

牛乳には、これまで紹介した以外にもさまざまな栄養素が含まれています。

メモ
この章でご紹介する栄養素は食品表示基準にのっとって100kcal当たりの含有量が「含まれている」と表現できるものです[15]。普通牛乳100kcalは164gに相当します[16]。

この章では普通牛乳に含まれる栄養素とそのはたらきを解説します。

【普通牛乳に含まれる栄養素とその含有量(100g当たり)】

栄養素 含有量
たんぱく質 3.3g
ビタミンA 38μg
ビタミンD 0.3μg
ビタミンB1 0.04mg
ビタミンB6 0.03mg
ビオチン 1.8μg
カリウム 150mg
マグネシウム 10mg
亜鉛 0.4mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

[15] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック

[16] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

3-1.たんぱく質

牛乳にはカルシウムが100g当たり3.3g含まれています[17]。

たんぱく質は筋肉や臓器、皮膚、毛髪などの構成成分である他、「ホルモン」や酵素などの体の機能を調節する重要な成分です。

ホルモンとは
主に腎臓などの内分泌臓器でつくられ、各組織で体の機能を維持するはたらきをもつ情報伝達物質です。血流に乗ってさまざまな臓器などへ運ばれて作用します。

たんぱく質は生命を維持するのに欠かせない栄養素といえますね。

たんぱく質が不足すると筋力や体力、免疫機能が低下するといわれています。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において、たんぱく質の摂取推奨量が定められています。

たんぱく質の1日当たりの摂取推奨量は男性の場合18~64歳で65g、65歳以上で60gです[18]。

女性の場合18歳以上で50gです[18]。

[17] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[18] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-2.ビタミンA

牛乳には「レチノール活性当量」としてビタミンAが100g当たり38μg含まれています[19]。

メモ
レチノール活性当量(RAE)とは食品に含まれるレチノールと、体内でビタミンAと同様の効力を示す物質(プロビタミンA)に変換されるものを合わせた量のことです。

ビタミンAには目の正常な機能の維持、皮膚や粘膜の健康保持などのはたらきがあります。

そのためビタミンAが不足すると皮膚や粘膜の乾燥、「夜盲症」などを引き起こす恐れがあります。

夜盲症とは
暗い所で物が見えにくくなる病気です。通常ヒトが明るい場所から暗い場所に入ると、目の「暗順応」によって次第に暗さに慣れて周りが見えるようになります。しかしその機能に障害が起こると夜や暗い所で物が見えにくくなります。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、ビタミンAの摂取推奨量が定められています。

ビタミンAの1日当たりの摂取推奨量は男性の場合、18〜29歳で850μgRAE、30〜64歳で900μgRAE、65~74歳で850μgRAE、75歳以上で800μgRAEです[20]。

女性の場合、18〜29歳で650μgRAE、30〜74歳で700μgRAE、75歳以上で650μgRAEです[20]。

[19] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[20] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-3.ビタミンD

牛乳にはビタミンDが100g当たり0.3μg含まれています[21]。

ビタミンDはカルシウムや「リン」の吸収を促進し、骨の代謝などに関わっています。

リンとは
ヒトの体に必要なミネラルの一種で、カルシウムと共に骨や歯を構成しています。たんぱく質や脂質とくっつき細胞膜、DNAやRNAなどの核酸、体内でエネルギーを発生させる物質の構成成分になります。

ビタミンDが不足すると子どもでは「くる病」を発症します。

くる病は、ビタミンD不足などによってカルシウムやリンが十分に吸収されず、弱い骨がつくられてしまう病気です。

また高齢者では慢性的な不足により骨粗しょう症や骨折のリスクが高まるとされています。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」ではビタミンDの摂取目安量が定められています。

ビタミンDの1日当たりの摂取目安量は男性、女性共に18歳以上で8.5μgです[22]。

[21] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[22] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-4.ビタミンB1

牛乳にはビタミンB1が100g当たり0.04mg含まれています[23]。

ビタミンB1は糖質などの代謝における補酵素として、エネルギー産生を助けるはたらきをします。

その他にも皮膚や粘膜の健康を維持するはたらきがあります。

ビタミンB1の不足は、食事からの摂取が慢性的に足りなかったり、糖質の多い食品やアルコールを大量に摂取したりすることが原因で起こりやすくなります。

ビタミンB1が不足すると、糖質を主なエネルギー源としている神経や脳に影響が出ることがあります

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において、ビタミンB1の摂取推奨量が定められています。

ビタミンB1の1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~49歳で1.4mg、50〜74歳で1.3mg、75歳以上で1.2mgです[24]。

女性の場合18〜74歳で1.1mg、75歳以上で0.9mgです[24]。

[23] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[24] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-5.ビタミンB6

牛乳にはビタミンB6が100g当たり0.03mg含まれています[25]。

ビタミンB6はたんぱく質、脂質、糖質の代謝の補酵素、神経伝達物質の代謝の補酵素、ホルモン調整の因子などとしてはたらいています。

ビタミンB6が不足すると湿疹、口角炎などの皮膚炎が生じることがあります

また貧血や聴覚過敏、免疫機能の低下などを引き起こすこともあるため注意が必要です。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、ビタミンB6の摂取推奨量が定められています。

ビタミンB6の1日当たりの摂取推奨量は男性の場合18歳以上で1.4mg、女性では18歳以上で1.1mgです[26]。

[25] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[26] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-6.ビオチン

牛乳にはビオチンが100g当たり1.8μg含まれています[27]。

ビオチンは体内で糖質の産生や脂質の合成、エネルギー代謝などにおける補酵素としてはたらきます

ビオチンは腸内細菌によって合成することができますが、それだけでは必要量を維持することは難しいとされています。

ビオチンが不足すると食欲不振や吐き気を覚えたり、うつ症状が出たりすることがあります

しかしビオチンはさまざまな食品に含まれているため、通常の食生活で不足することはないといわれていますよ。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、ビオチンの摂取目安量が定められています。

ビオチンの1日当たりの摂取目安量は、男女共に18歳以上で50μgです[28]。

[27] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[28] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-7.カリウム

牛乳にはカリウムが100g当たり150mg含まれています[29]。

カリウムは多くが細胞内にあり、血液などの体液や骨にもわずかに存在します。

カリウムには細胞内液の「浸透圧」を一定に保って水分量を調整したり、ナトリウム(塩分)を体外に出しやすくしたりするはたらきがあります

浸透圧とは
水と食塩水など濃度の異なる水を「半透膜」で隔てた際に、濃度の低い方から濃度の高い方に水が引っ張られる力をいいます。半透膜とは、ある大きさ以下の粒子のみを通す膜のことです。

その他に体液の「pH」のバランスを保つはたらきもあります

pHとは
水の性質を示す単位の一つで数値によって酸性、中性、アルカリ性に分類されます。ヒトの体では栄養素の代謝に伴って酸がつくられますが、尿として排せつされるなどして体液が中性に近い弱アルカリ性に保たれています。

カリウムが不足することによって起こる症状は、脱力感や食欲不振、不整脈などです。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、カリウムの摂取目標量が定められています。

メモ
目標量は、生活習慣病の予防のため日本人が当面目標とすべき摂取量とされているものです。

カリウムの1日当たりの摂取目標量は18歳以上の男性で3,000mg以上です[30]。

女性の場合18歳以上で2,600mg以上です[30]。

カリウムはサプリメントなどを使用しない限り、過剰摂取の心配は少ないといわれています。

ただし腎臓の機能が低下している場合には、カリウムをうまく排出できず体に悪影響を及ぼす恐れがあるため注意しましょう。

[29] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[30] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-8.マグネシウム

牛乳にはマグネシウムが100g当たり10mg含まれています[31]。

マグネシウムにはカルシウムなどと共に骨を形成するはたらきがあります。

また体内のさまざまな酵素を活性化させ、筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温や血圧の調整などに関与します。

そのためマグネシウムが不足すると骨粗しょう症や高血圧などのリスクが高まります

その他に筋肉のけいれんや、「抑うつ」感などが生じたりすることもあります。

抑うつとは
気分の落ち込みや憂うつさを強く感じるようになり、心身にさまざまな影響を及ぼすことです。

マグネシウムは通常の食生活で過剰摂取となる心配はありませんが、サプリメントなどで摂り過ぎると下痢を起こすことがあるので注意が必要です。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、マグネシウムの摂取推奨量が定められています。

1日当たりの摂取推奨量は18〜29歳の男性で340mg、30〜64歳で370mg、65〜74歳で350mg、75歳以上で320mgです[32]。

女性では18〜29歳で270mg、30〜64歳で290mg、65〜74歳で280mg、75歳以上で260mgです[32]。

[31] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[32] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-9.亜鉛

牛乳には亜鉛が100g当たり0.4mg含まれています[33]。

亜鉛は多くの酵素に含まれており、体内では筋肉や骨、皮膚、肝臓などに存在しています。

亜鉛はたんぱく質の合成、細胞の成長や分化などにおいて重要な栄養素です。

亜鉛が不足すると皮膚炎や味覚障害、慢性下痢などが起こることがあります。

また子どもでは成長障害が起こることがあるといわれています。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、亜鉛の摂取推奨量が定められています。

亜鉛の1日当たりの摂取推奨量は18~74歳の男性で11mg、75歳以上で10mgです[34]。

女性の場合は18歳以上で8mgです[34]。

[33] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[34] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

4.牛乳の摂取の際のポイント

牛乳

「牛乳を飲むときに気を付けることってあるのかな?」

「牛乳は1日にどのくらい飲んだら良いんだろう?」

と気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

農林水産省の「食事バランスガイド」では、牛乳は1日当たり200mLを目安に飲むことが推奨されています[35]。

牛乳に含まれるカルシウムの吸収効率を上げるには、ビタミンDを摂ることが重要です。

ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収が低下し、骨代謝が滞る恐れがあります。

せっかく牛乳を摂ってもカルシウムがしっかり吸収されないのは避けたいですね。

牛乳を飲む際にはビタミンDを豊富に含む、きくらげやしらす干しなどを意識的に食べるようにしましょう

その他にもインスタントラーメンなどに含まれるリンやコーヒーなどに含まれるカフェイン、アルコールはカルシウムの吸収を妨げます。

また食塩などに含まれるナトリウムは、カルシウムの尿への排せつを促進することが分かっています。

これらを含む食べ物や飲み物の過剰摂取は控えるようにしてくださいね。

牛乳を飲む際にはこの章で紹介したことを参考に取り組むようにしましょう。

[35] 農林水産省 実践食育ナビ「食事バランスガイド早分かり

5.牛乳の栄養についてのまとめ

牛乳とは直接飲用したり、牛乳を原料に食品を製造・加工したりする目的で販売される牛の乳のことです。

普通牛乳100kcal当たりに豊富に含まれる栄養素にはカルシウム、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB12、パントテン酸があります。

また普通牛乳100kcal当たりに含まれる栄養素はたんぱく質、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB1、ビタミンB6、ビオチン、カリウム、マグネシウム、亜鉛です。

骨や歯の健康維持のために、カルシウムが豊富に摂れる牛乳を飲むようにしている方も多いでしょう。

牛乳に含まれるカルシウムの吸収効率を上げるには、ビタミンDを摂ることが重要です。

カルシウムの吸収率を上げるには、ビタミンDを豊富に含むきくらげやしらす干しなどを併せて摂るようにしましょう。

加えて、カルシウムの吸収を妨げるリンやカフェイン、アルコール、カルシウムの尿への排せつを促進するナトリウムを含む飲食物の過剰摂取は控えるようにしてくださいね。

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