「カリンは喉に良いというイメージがあるけど、本当に効果があるのかな?」
「どうやって食べたら良いのかよく分からない……」
果物のカリンについて、このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
カリンには喉の痛みなどを抑える成分が含まれており、漢方でも用いられてきました。
また、インフルエンザを予防するはたらきがあるという研究も進められています。
ただし、カリンは生で食べることができないため、調理をする必要があります。
この記事では、カリンに含まれる成分とそのはたらきや、おすすめの食べ方について詳しく紹介します。
1.カリンの特徴
カリンについて興味はあるけれど、その特徴を詳しく知らないという方もいらっしゃるでしょう。
カリンは中国が原産のバラ科の落葉高木です。
【カリンの基本情報】
原産地 | 中国 |
分類 | バラ科ボケ属 |
収穫時期 | 10月〜11月上旬 |
分布 | 主に中部、関東、東北地方で庭木や盆栽として栽培 |
カリンには観賞用、薬用の樹木として親しまれてきた歴史があります。
また、実はカリンの実は生で食べることができません。
一般的な果物のイメージとは少し違いますよね。
そこで、まずはカリンの特徴について詳しくご説明していきましょう。
1-1.古くから薬として用いられてきた
カリンの果実は古くから薬として用いられてきた歴史があります。
原産地の中国では何千年も前から漢方の生薬として利用されてきました。
カリンは漢方では「木瓜(もっか)」と呼ばれ、咳や痰の症状を軽くするはたらきがあるといわれています。
当時からカリンは喉のケアに効果があるとして人々に知られていたのですね。
中国原産のカリンがいつ頃日本に入ってきたのかは明らかではありませんが、当時の中国などとの交流を通じて古くから親しまれてきたと考えられています。
1-2.生で食べることはできない
カリンの果実は生で食べることができません。
カリンの果実は非常に硬く、強い酸味と渋味があります。
また、カリンには「アミグダリン」という毒性のある成分が含まれており、生の状態で多量に摂取すると吐き気、頭痛、目まいなどの症状が出るといわれています。
アミグダリンは桃や梅、あんずなどにも含まれていることで知られています。
「カリンに毒があるなんて知らなかった……」
と不安に思った方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
アミグダリンが含まれた果実は砂糖やアルコールによって加工することでアミグダリンの分解が促進され、安全に食べられるようになります。
1-3.独特の香りがある
カリンには独特の強い香りがあります。
観賞用、薬用だけでなく香りを楽しむ目的でも古くから親しまれてきました。
例えばかつての中国の宮廷では女性たちが衣装の香り付けにカリンを用いていたといわれています。
今でも芳香剤の代わりにカリンを家の中や車の中に置いて香りを楽しんでいる方もいるようです。
また、湯船にカリンを浮かべてカリン風呂につかることもあります。
香り一つとっても、カリンにはさまざまな楽しみ方があるのですね。
2.喉に効く?カリンに含まれるポリフェノールのはたらき
カリンといえば喉のケアに良いというイメージをお持ちの方も多いでしょう。
実際にカリンに含まれるポリフェノールには喉に対して有効な抗菌、抗炎症作用があるといわれています。
そこで、ここからはカリンに含まれるポリフェノールのはたらきについて詳しく解説していきましょう。
【関連情報】 「ポリフェノールとは?体への効果と摂取できる食品・飲み物を解説!」についての記事はこちら
2-1.菌の繁殖を抑え、痛みを鎮める
カリンに含まれるポリフェノールには菌などの繁殖を抑える抗菌作用と、炎症を抑えて痛みを和らげる抗炎症作用があります。
喉が乾燥してイガイガしたりヒリヒリ痛んだりするのは、粘膜についた菌やウイルスなどに細胞を破壊されることが原因です。
ポリフェノールにはこうした菌やウイルスのはたらきを抑える効果があるといわれており、特にカリンに含まれるポリフェノールは喉に対して有効であるとされています。
喉の粘膜を健康な状態に保ってくれる成分を含むカリンを食べることで、病気の予防効果も期待できるかもしれませんね。
2-2.病気のもととなる物質を取り除く
カリンに含まれるポリフェノールには「抗酸化作用」というはたらきを持つものもあります。
抗酸化作用とは、増え過ぎると身体にさまざまな害をもたらす「活性酸素」という物質を取り除くはたらきのことです。
活性酸素は多量に生成されると動脈硬化、がん、老化、免疫機能の低下などを引き起こすといわれています。
カリンに含まれるポリフェノールはこのようにさまざまな病気の原因となる有害な物質を取り除いてくれるのです。
2-3.インフルエンザを予防する
カリンに含まれるポリフェノールがインフルエンザを予防する効果があるという研究結果が報告されています。
ある研究では、細胞レベルの試験においてインフルエンザウイルスの感染を抑制する効果があることが分かりました[1]。
まだ細胞実験を行っている段階でヒトでの効果は検証されていませんが、さまざまな型のインフルエンザウイルスを抑制する可能性があるともいわれています。
今後研究が進められ、カリンに含まれるポリフェノールのはたらきがさらに詳しく分かるようになることを期待したいですね。
[1] Sawai R., Kuroda K., Shibata T., Gomyou R., Osawa K., Shimizu K.: Anti-influenza virus activity of Chaenomeles sinensis, Journal of Ethnopharmacology 2008,118(1):108-112
3.カリンのおすすめの加工方法
「カリンが体に良いことは分かったけど、どうやって食べるのがいいんだろう?」
「生で食べられないなら、どうやって調理すればいいのかな?」
というのが気になるポイントですよね。
カリンは生で食べることができないため食べる際に一手間加える必要がありますが、ちょっとしたアレンジでおいしく味わうことができますよ。
ここではカリンのおすすめの食べ方について詳しくご紹介していきましょう。
3-1.カリン酒
カリン酒はカリンを手軽に味わうことができるレシピの一つです。
カリンを切って種を取り、瓶に入れてホワイトリカーを注いだら、ふたをして保存します。
カリンの色がホワイトリカーに移るのをじっくりと待ちましょう。
大体6カ月後に飲み頃を迎え、冷暗所であれば2~3年の間は保存することができます。
氷砂糖やグラニュー糖などは入れずに漬けることがポイントです。
カリン本来の香りが際立つようになるのに加え、そのままカリン酒を料理に活かすこともできます。
もし甘味が欲しい場合はカリン酒を飲む際に調節すると良いでしょう。
3-2.カリンシロップ
カリンシロップはそのまま飲んで味わうこともでき、料理に使うこともできる便利さが魅力です。
カリンを切って種を取り除いたら、瓶に入れて蜂蜜を加えましょう。
ふたをしてからおよそ1~2カ月たつとカリンの風味が染み出して飲み頃を迎えます。
飲み頃が来るまでの保存期間中は1日1回瓶を振ってカリンと蜂蜜をよく混ぜるようにするのがポイントです。
カリンの生の果実に漬けたままにしていると発酵して酸味が出てきてしまいます。
発酵を防ぐために瓶を振って混ぜる必要があるのです。
完成したカリンシロップはそのまま飲むだけでなく、さまざまな料理やドリンクに加えて楽しむこともできますよ。
【関連情報】 「氷砂糖のカロリー」についてもっと知りたい方はこちら
4.カリンについてよくある疑問
「カリンとそっくりなマルメロという果物を見たことがあるけど、一体何が違うんだろう?」
「カリンって一体どこで手に入るんだろう?」
なかにはこのような点が気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
カリンとマルメロはよく似ている果物ですが、見分けるポイントがあります。
また、カリンはどこで買うことができるのかも知っておきたいですよね。
ここからはカリンについてよくある疑問にお答えしていきましょう。
4-1.マルメロとの違いは?
カリンと見た目がよく似ているマルメロという果物があります。
カリンとマルメロをどちらも「カリン」と呼んで区別をしていない地域もあります。
それくらいカリンとマルメロは混同しやすい果物だといえますが、実はいくつか細かな違いがあるのです。
カリンがバラ科ボケ属であるのに対し、マルメロは同じバラ科でもマルメロ属の植物です。
また、カリンとマルメロを見分けるポイントもあります。
カリンの実は硬く表面がつるつるとしていますが、マルメロの実は比較的柔らかく皮に細かい毛のようなものが生えています。
実の手触りでカリンかマルメロかを判断すると良いでしょう。
4-2.カリンはどこで手に入る?
「カリンってあまり店頭で見たことがないけど、どこで手に入るんだろう?」
と疑問を持っている方もいらっしゃるかもしれません。
カリンの果実は青果店などやネット販売などで入手することができます。
ただし収穫量や時期が限定されているため、青果店などの店頭に必ず出るわけではありません。
インターネットなどでカリンを取り扱っている農家や果樹園を探してみるのも良いでしょう。
5.カリンの特徴 まとめ
カリンは古くから薬用の目的を中心に親しまれてきた果物です。
漢方では生薬として利用され、喉のケアに効果があることが知られていました。
実際にカリンに含まれるポリフェノールには喉の粘膜に菌が繁殖することを防ぐ作用や、痛みを鎮めるはたらきがあります。
ただし、カリンは生で食べることができないため口にする際は加工が必要です。
カリン酒やカリンシロップなどは出来上がるまで時間がかかります。
しかし、大きな手間はかからない上、いろいろな料理のアレンジに使うことができますよ。
ぜひこの機会に試してみてくださいね。