牡蠣に含まれる栄養素とそのはたらきは?食べる際の注意点も解説

牡蠣に含まれる栄養素とそのはたらきは?食べる際の注意点も解説

2024年02月08日

2024年02月21日

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「牡蠣にはどんな栄養が含まれているんだろう?」

牡蠣は生で食べる他にも、鍋やフライなど幅広い調理法でおいしく食べられる食品です。

牡蠣にはたんぱく質やビタミン、ミネラルなどさまざまな栄養素が豊富に含まれており、「海のミルク」とも呼ばれています。

この記事では牡蠣に含まれる栄養素とそのはたらきについて解説します。

牡蠣の選び方や下ごしらえのポイント、食べる際の注意点についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。

1.牡蠣の基礎知識

牡蠣

牡蠣はウグイスガイ目イタボガキ科とベッコウガキ科に属する二枚貝の総称です。

世界には約200種類の牡蠣があるといわれています[1]。

日本で食用として出回っている牡蠣はほとんどが養殖された「マガキ」で、その他に「イワガキ」や「スミノエガキ」「イタボガキ」があります。

養殖牡蠣の年間生産量は広島県が最も多く、次いで宮城県、岡山県となっています。

牡蠣の可食部100g当たりのカロリーは58kcalです[2]。

[1] 農林水産省「 特集2 カキ

[2] 農林水産省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

2.牡蠣に豊富に含まれる栄養素とそのはたらき

殻付きの牡蠣

「牡蠣は健康に良いイメージがあるけど、どんな栄養素が含まれているのかな?」

牡蠣は栄養価が高い食品だと聞いたことはあっても、実際はどんな栄養素が含まれているのか知らないという方も多いのではないでしょうか。

牡蠣には以下のようにたんぱく質やビタミン、ミネラルが豊富に含まれています

【牡蠣に豊富に含まれる栄養素の100g当たりの含有量】

栄養素 含有量
たんぱく質 6.9g
ビタミンE 1.3mg
ビタミンB2 0.14mg
ナイアシン 2.6mg
ビタミンB12 23.0μg
葉酸 39μg
パントテン酸 0.54mg
ビオチン 4.8μg
カリウム 190mg
マグネシウム 65mg
2.1mg
亜鉛 14.0mg
1.04mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

この章では牡蠣に豊富に含まれる栄養素のはたらきや、1日当たりの摂取基準を解説します。

メモ
この章でご紹介する栄養素は、食品表示基準にのっとって100kcal当たりの含有量が「豊富に含まれる」と表現できるものです[3]。牡蠣100kcal当たりを重量に換算すると172gになります[4]。

また各項では成人男女の食事摂取基準もご紹介しています。

食事摂取基準とは
厚生労働省が健康な日本人を対象に、健康の保持や増進、生活習慣病の予防を目的として設定している、1日当たりのエネルギーや栄養素の摂取量の基準です。

摂取量の参考にしてくださいね。

18歳未満の方は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の「乳児・小児の食事摂取基準」をご確認ください。

日本人の食事摂取基準(2020年版)

また妊娠中・授乳中の方は「妊婦・授乳婦の食事摂取基準」をご確認ください。

乳児・小児の食事摂取基準

[3] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック

[4] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

2-1.たんぱく質

牡蠣にはたんぱく質が豊富に含まれます。

牡蠣100g当たりのたんぱく質含有量は6.9gです[5]。

たんぱく質は炭水化物(糖質)や脂質と共に体のエネルギー源となる栄養素で、まとめて「エネルギー産生栄養素」と呼ばれています。

また筋肉や内臓、皮膚、髪の毛など体の組織をつくる材料となります。

体の機能を調整するホルモンや酵素、抗体などもたんぱく質から構成されているため、生命を維持するために欠かせない栄養素だといえるでしょう。

メモ
酵素とは、体の中で起こるさまざまな化学反応に触媒として必要とされる物質のことです。酵素は体内に約5,000種類あるといわれ、それぞれ固有のはたらきを持ちます[6]。

たんぱく質は20種類のアミノ酸から構成されています[7]。

アミノ酸とは
たんぱく質を構成する物質のことで、一つでも欠けるとたんぱく質を合成できません。体内でつくり出せないため食事から摂る必要がある9種類の「必須アミノ酸」と、体内でつくり出せる11種類の「非必須アミノ酸」に分けられます[8]。

たんぱく質の摂取推奨量は18〜64歳の男性で65g、65歳以上の男性で60g、18歳以上の女性で50gとされています[9]。

推奨量とは
ほとんどの方にとって十分な量です。半数の人が必要量を満たす「推定平均必要量」を補助するために設定されています。

牡蠣を含むさまざまな食品からたんぱく質をしっかりと摂取しておきたいですね。

たんぱく質についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

たんぱく質は1日どれくらい必要?効率良く摂取できるおすすめの食品

[5] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[6] 公益財団法人 長寿科学振興財団「 酵素の働きと健康効果

[7] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 たんぱく質

[8] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 アミノ酸

[9] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-2.ビタミンE

牡蠣はビタミンEも多く含んでいます。

牡蠣100g当たりのビタミンE含有量は1.3mgです[10]。

ビタミンEは脂溶性ビタミンの一種です。

脂溶性ビタミンとは
体の機能を正常に保つビタミンのうち、油に溶け水に溶けないものの総称です。ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが該当します。脂溶性ビタミンは体内では主に脂肪や肝臓に蓄えられています。

ビタミンEは活性酸素のはたらきを抑える抗酸化作用を持った「抗酸化ビタミン」の一種です。

活性酸素とは
呼吸で取り込まれた酸素の一部が通常よりも活性化された状態になったものです。微量であれば細胞伝達物質や免疫機能として有用にはたらきますが、増え過ぎると細胞を傷つけ、老化や免疫機能の低下、がんなどの原因となります。

ビタミンEは自らが酸化されることで脂質の酸化を防ぎ、細胞の健康維持を助けます

ビタミンEの目安量は、男性の場合18~49歳で6.0mg、50~74歳で7.0mg、75歳以で6.5mgです[11]。

女性の場合18~29歳で5.0mg、30~49歳で5.5mg、50〜64歳で6.0mg、65歳以上で6.5mgです[11]。

目安量とは
一定の栄養状態を維持するのに十分な量で、この量以上を摂取していれば不足のリスクはほぼないとされています。推定平均必要量と推奨量を設定するための科学的根拠が十分でない場合に設定されます。

牡蠣などビタミンEを豊富に含む食品を積極的に摂取しましょう。

[10] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[11] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-3.ビタミンB2

ビタミンB2は牡蠣に豊富に含まれる栄養素の一つです。

牡蠣100g当たりのビタミンB2含有量は0.14mgです[12]。

ビタミンB2は水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB群に含まれます。

水溶性ビタミンとは
水に溶ける性質を持つビタミンの総称です。ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)とビタミンCが該当します。水溶性ビタミンは血液などに溶け込み、体内でさまざまなはたらきをしています。

ビタミンB2は糖質や脂質、たんぱく質の代謝に関わっており、特に脂質の代謝の際に重要な役割を果たします

代謝とは
食べ物や薬を体内で分解したり、栄養素をエネルギーや生命の維持に必要な物質に変えたりするはたらきのことです。

このため脂っこい食事を好む方やダイエット中の方は意識的に摂取したい栄養素といえるでしょう。

またビタミンB2には成長の促進や、皮膚や粘膜の保護といったはたらきもあります。

ビタミンB2の推奨量は、男性の場合18~49歳で1.6mg、50~74歳で1.5mg、75歳以で1.3mgです[13]。

女性の場合18~74歳で1.2mg、75歳以上で1.0mgです[13]。

ビタミンB2は単独で不足することはあまりなく、他のビタミンB群の不足とともに欠乏症が起こります。

ビタミンB2をはじめとするビタミンB群が不足しないように、バランスの良い食事を心掛けましょう。

ビタミンB群について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ビタミンB群にはどんなものがある?効果や含まれる食品を徹底解説!

[12] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[13] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-4.ナイアシン

牡蠣にはナイアシンも豊富に含まれています。

牡蠣100g当たりのナイアシン含有量はナイアシン当量で2.6mgです[14]。

メモ
ナイアシンは食品から摂取できますが、その他にも体内で必須アミノ酸の「トリプトファン」から合成できます。このためナイアシンの含有量には双方の数値を合わせたナイアシン当量(mgNE)が用いられます。

ナイアシンはビタミンB群の一種です。

ナイアシンは酵素の成分として体内のさまざまな反応に関わっています。

糖質、脂質、たんぱく質からエネルギーをつくり出すはたらきや、DNAの修復や合成などにおいて重要な役割を果たします。

また皮膚や粘膜の健康維持を助けることが分かっています。

アルコール代謝にも関わっているため、お酒を飲む方は意識的に摂取すると良いでしょう。

ナイアシンの推奨量は、男性の場合18~49歳で15mgNE、50~74歳で14mgNE、75歳以上で13mgNEです[15]。

女性の場合18~29歳で11mgNE、30~49歳で12mgNE、50~74歳で11mgNE、75歳以上で10mgNEです[15]。

ナイアシンについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ナイアシンはどんなビタミン?はたらきや食事摂取基準、摂取源を紹介

[14] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[15] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-5.ビタミンB12

牡蠣はビタミンB群の一種であるビタミンB12を豊富に含みます。

牡蠣100g当たりのビタミンB12含有量は23.0μgです[16]。

ビタミンB12と呼ばれる物質は数種類ありますが、その一部はアミノ酸や脂質の代謝に関わっています。

またビタミンB12は細胞の増殖に関与するといわれています。

その他、ビタミンB12は同じビタミンB群の葉酸と共に赤血球の細胞の形を維持しています。

このため不足すると「巨赤芽球性貧血」と呼ばれる貧血に陥り、動悸(どうき)や息切れ、疲労感といった症状が現れます。

巨赤芽球性貧血とは
ビタミンB12や葉酸の不足を原因とする貧血の総称です。赤血球の細胞の成熟に異常が起こり、大きく未熟な赤血球がつくられるのが特徴です。一方「鉄欠乏性貧血は」鉄が欠乏して生じる貧血で、赤血球が小さくなります。

ビタミンB12の推奨量は、18歳以上の男女共に2.4μgです[17]。

不足しないようにしっかり摂りたい栄養素の一つですね。

ビタミンB12についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ビタミンB12を含む食べ物は?過不足の影響と食事摂取基準も解説

[16] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[17] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-6.葉酸

牡蠣にはビタミンB群の一種である葉酸が豊富に含まれます。

牡蠣100g当たりの葉酸含有量は39μgです[18]。

葉酸はDNAやRNAの合成に関わるビタミンです。

またアミノ酸の代謝、たんぱく質の合成にも関与し、細胞の増殖において重要なはたらきをするといわれています。

葉酸は赤血球の形成にも関わるため、不足すると巨赤芽球性貧血の原因となります。

さらに妊娠初期の女性において葉酸が不足すると、胎児の「神経管閉鎖障害」の発症率が高まることが分かっています。

神経管閉鎖障害とは
脳や脊髄などのもととなる「神経管」が正常につくられないことが原因で起こる障害です。多くの場合は運動や排せつに異常を来します。また重篤な場合には脳が十分に形成されない無脳症となり、この場合は生命を維持できません。

葉酸の推奨量は、18歳以上の男女共に240μgです[19]。

なお、妊娠計画中の女性や妊娠初期の女性は神経管閉鎖障害のリスクを下げるため、葉酸を通常の食べ物からの摂取に加えてサプリメントなどから1日当たり400μg摂取することが望ましいとされています。

牡蠣などからしっかりと葉酸を摂取しておきましょう。

葉酸についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

葉酸が多く含まれている食べ物とは?効果や摂取基準もあわせて解説

[18] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[19] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-7.パントテン酸

牡蠣にはパントテン酸が豊富に含まれています。

牡蠣100g当たりのパントテン酸含有量は0.54mgです[20]。

パントテン酸はビタミンB群の一種で、エネルギーを生み出すはたらきや、糖および脂質の代謝に深く関わっています。

このためパントテン酸が欠乏するとエネルギー代謝に異常を来します。

またパントテン酸は抗体の合成に関わったり、皮膚や粘膜の健康状態を保ったりもしているといわれています。

パントテン酸の名前は「至る所に存在する酸」という意味のギリシャ語に由来し、さまざまな食品に含まれているため不足する心配はほとんどありません。

パントテン酸の目安量は、男性の場合18〜49歳で5mg、50歳以上で6mg、女性の場合18歳以上以上で5mgです[21]。

パントテン酸についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

470_パントテン酸

[20] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[21] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-8.ビオチン

牡蠣にはビオチンも豊富に含まれます。

牡蠣100g当たりのビオチン含有量は4.8μgです[22]。

ビオチンはビタミンB群の一種で、糖質、脂質、たんぱく質を代謝してエネルギーを生み出すはたらきに関わっています。

また抗炎症物質を生成してアレルギー症状を和らげたり、皮膚や粘膜、髪の毛などの健康を維持したりといったはたらきもあります。

ビオチンの目安量は、18歳以上の男女共に50μgです[23]。

ビオチンはさまざまな食品に含まれているため、通常の食生活を送っていれば欠乏症の心配はありません。

ビオチンについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ビオチンとは?はたらきや摂取の目安量、摂取源となる食品を解説

[22] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[23] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-9.カリウム

牡蠣には100g当たり190mgとカリウムが豊富に含まれています[24]。

カリウムは「必須ミネラル」の一種で、そのほとんどが体の細胞内に存在しています。

ミネラルとは
体をつくる材料のうち、酸素、炭素、水素、窒素以外の元素の総称です。そのうち栄養素としてヒトの体に欠かせない16種類を必須ミネラルと呼びます[25]。

カリウムは主に細胞内液の浸透圧を調節します。

また神経の興奮や筋肉の収縮、pHバランスの調節などにも関わっています。

カリウムにはナトリウムを体外に出しやすくするはたらきもあるため、塩分の摂取が多い日本人にとって、特に重要な栄養素といえるでしょう。

ナトリウムとは
必須ネラルの一種で、食事からは主に食塩(塩化ナトリウム)の形で摂取されます。浸透圧の調整などに欠かせない栄養素ですが、摂り過ぎると高血圧や胃がん、食道がんの原因となります。

厚生労働省はカリウムの目標量を設定しています。

目標量とは
生活習慣病の発症予防のために、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量のことです。なお、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」における生活習慣病とは、基本的に高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病のことを指します。

カリウムの目標量は、18歳以上の男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上です[26]。

牡蠣などカリウムを豊富に含む食べ物を摂取しましょう。

カリウムを豊富に含む食べ物については以下の記事でご紹介しています。

カリウムを豊富に含む食べ物は?効果と摂取基準も解説

[24] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[25] 国立研究開発法人国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識

[26] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-10.マグネシウム

牡蠣はマグネシウムも多く含みます。

牡蠣100g当たりのマグネシウム含有量は65mgです[27]。

マグネシウムは必須ミネラルの一種で、多くの酵素が関わる反応に関与しています。

たんぱく質の合成や筋肉・神経の機能、血糖や血圧の調整など幅広いはたらきに関係し、ほぼ全ての代謝に必要だといわれています。

さらにカルシウムなどと共に骨をつくるはたらきもあります。

男性のマグネシウム推奨量は18~29歳の場合340mg、30~64歳の場合370mg、65~74歳の場合350mg、75歳以上の場合320mgです[28]。

また女性の推奨量は18~29歳の場合270mg、30~64歳の場合290mg、65~74歳の場合280mg、75歳以上の場合260mgです[28]。

マグネシウムについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

マグネシウムとは?はたらきや食事摂取基準、摂取源となる食品を解説

[27] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[28] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-11.鉄

牡蠣には鉄も豊富に含まれています。

牡蠣100g当たりの鉄含有量は2.1mgです[29]。

鉄は必須ミネラルの一種で、赤血球の「ヘモグロビン」や筋肉中の「ミオグロビン」を構成し全身に酸素を供給するはたらきをしています。

鉄が不足するとヘモグロビンがつくれなくなるために酸素が全身へ運ばれにくくなり、集中力の低下や頭痛、食欲不振といった鉄欠乏性貧血の症状を引き起こします

また鉄は体の成長や神経の発達、細胞の機能に関わったり、一部のホルモンを合成したりしています。

鉄の推奨量は、男性の場合18~74歳で7.5mg、75歳以上で7.0mgです[30]。

女性の場合、月経の有無で推奨量が異なります。

月経がある場合、18~49歳で10.5mg、50~64歳で11.0mgです[30]。

月経がない場合は18~64歳で6.5mg、65歳以上で6.0mgです[30]。

月経のある方や妊娠中、授乳中の方は鉄が不足しやすいため、牡蠣などからしっかり鉄を摂取しておきましょう。

鉄を豊富に含む食べ物については以下の記事でご紹介しています。

鉄分が多く含まれる食べ物と効果的な摂り方は?貧血気味の方必見!

[29] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[30] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-12.亜鉛

牡蠣には亜鉛も豊富に含まれています。

牡蠣100g当たりの亜鉛含有量は14.0mgです[31]。

亜鉛は必須ミネラルの一種で、多くの酵素に欠かせない成分です。

たんぱく質の合成や遺伝子の発現に深く関わり、細胞の成長や分化においても中心的な役割を担います。

さらに免疫機能や生殖機能、皮膚、味覚などを健康に保つはたらきもあります。

亜鉛不足は食欲不振や皮膚炎、味覚障害の原因となります。

亜鉛の推奨量は、男性の場合18~74歳で11mg、75歳以上で10mg、女性の場合18歳以上で8mgです[32]。

なお、体に必要な栄養素である亜鉛ですが、摂り過ぎると体に悪影響を及ぼします。

牡蠣には非常に多くの亜鉛が含まれるため食べ過ぎには要注意です。

牡蠣の食べ過ぎによる亜鉛の過剰摂取については第5章で解説します。

亜鉛についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

亜鉛のはたらきと1日の適切な摂取量とは?亜鉛を多く含む食品も紹介

[31] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[32] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-13.銅

牡蠣には銅も豊富に含まれています。

牡蠣100g当たりの銅含有量は1.04mgです[33]。

銅は必須ミネラルの一種で、主に骨や筋肉、血液に存在します。

銅は鉄と共に血をつくるはたらきに関与する他、神経伝達物質の代謝や活性酸素の除去などに関わっています

メモ
活性酸素は細胞伝達物質や免疫機能として有用にはたらく物質です。しかし活性酸素が増え過ぎると、老化やがんなどの原因となります。

また酵素の成分として体内の幅広い反応に関わり、骨の形成にも関与します。

銅の推奨量は、男性の場合18~74歳で0.9mg、75歳以上で0.8mg、女性の場合18歳以上で0.7mgです[34]。

銅は通常の食生活を送っていれば欠乏する心配はないといわれていますが、牡蠣などさまざまな食品から摂取しておきましょう。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所が「『健康食品』の安全性・有効性情報」というサイトで銅の情報を公開しているので、参考にしてみてくださいね。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 『健康食品』の安全性・有効性情報

[33] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[34] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

3.牡蠣に含まれる栄養素とそのはたらき

殻付きの牡蠣

牡蠣には豊富とまではいえないものの、ビタミンAやビタミンB1などの栄養素が含まれています。

【牡蠣に含まれる栄養素の100g当たりの含有量】

栄養素 含有量
ビタミンA 24μg
ビタミンB1 0.07mg
ビタミンB6 0.07mg
ビタミンC 3mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

この章では牡蠣に含まれる栄養素のはたらきや、1日当たりの摂取基準を解説します。

メモ
この章でご紹介する栄養素は、食品表示基準にのっとって100kcal当たりの含有量が「含まれている」と表現できるものです[35]。

[35] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック

3-1.ビタミンA

牡蠣にはビタミンAが含まれます。

牡蠣100g当たりのビタミンA含有量は24μgです[36]。

脂溶性ビタミンの一つであるビタミンAはレチノールとも呼ばれ、体内ではレチノール、レチナール、レチノイン酸という3種類の形で作用しています。

またビタミンAとして作用する物質はレチノールとして食品に含まれるもの以外に、体内でビタミンAとしてはたらく物質に変換される「プロビタミンA」があります。

このため食品のビタミンA含有量や食事摂取基準は、レチノールの含有量とプロビタミンAから変換されるビタミンAを合わせた「レチノール活性当量(μgRAE)」という単位で表されています。

メモ
レチノールは動物性食品、特に卵やレバーなどに多く含まれます。またプロビタミンAでは植物性食品に含まれる赤や黄色の色素、カロテノイドがよく知られています。カロテノイドは植物性食品、なかでも色の濃い野菜や果物に多く含まれています。

ビタミンAは活性酸素のはたらきを抑える抗酸化ビタミンの一種です。

またビタミンAには目の機能を正常に保ったり、皮膚や粘膜を正常に保持したりといったはたらきがあります

このためビタミンAが不足すると皮膚や粘膜の乾燥につながる他、夜盲症をもたらす可能性があります。

夜盲症とは
暗い場所で物が見えづらくなる病気のことです。

ビタミンAの推奨量は男性の場合18~29歳で850μgRAE、30~64歳で900μgRAE、65~74歳で850μgRAE、75歳以上で800μgRAEです[37]。

女性の場合18~29歳で650μgRAE、30~74歳で700μgRAE、75歳以上で650μgRAEです[37]。

ビタミンAについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ビタミンAにはどんな効果がある?目標摂取量とおすすめの食品を紹介

[36] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[37] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-2.ビタミンB1

牡蠣はビタミンB1を含んでいます。

牡蠣100g当たりのビタミンB1含有量は0.07mgです[38]。

ビタミンB1はビタミンB群の一種で、糖質の代謝に欠かせないはたらきをします。

このため、糖質やアルコールの摂取が多い方はビタミンB1の必要量が増えます

ビタミンB1が不足すると、糖質を主なエネルギー源とする脳や神経に悪影響を及ぼすため注意が必要です。

またビタミンB1には皮膚や粘膜の健康維持を助けるはたらきもあります。

ビタミンB1の推奨量は、男性の場合18~49歳で1.4mg、50~74歳で1.3mg、75歳以上で1.2mgです[39]。

女性の場合18~74歳で1.1mg、75歳以上で0.9mgです[39]。

ビタミンB1についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ビタミンB1が豊富に含まれる食べ物は?効果や摂取基準も詳しく解説

[38] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[39] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-3.ビタミンB6

牡蠣はビタミンB6を含んでいます。

牡蠣100g当たりのビタミンB6含有量は0.07mgです[40]。

ビタミンB6はビタミンB群の一種で、糖質や脂質、たんぱく質の代謝に深く関わります。

またこの他にもさまざまな代謝に関与する栄養素です。

特にたんぱく質の代謝において重要なはたらきをしており、筋トレなどのためにたんぱく質を多く摂取している場合は必要量が増加します。

この他にも正常な免疫機能の維持などに関わっています。

皮膚や粘膜の健康を保つはたらきもあるといわれていますよ。

成人のビタミンB6推奨量は男性の場合1.4mg、女性の場合1.1mgです[41]。

ビタミンB6の不足は他のビタミンの不足と同時に起こるといわれています。

牡蠣でビタミンB6をはじめさまざまなビタミンを摂取しておきましょう。

ビタミンB6についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ビタミンB6を豊富に含む食べ物は?効果や食事摂取基準も解説

[40] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[41] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-4.ビタミンC

牡蠣にはビタミンCが含まれます。

牡蠣100g当たりのビタミンC含有量は3mgです[42]。

ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で、皮膚や腱(けん)、軟骨などを構成するたんぱく質の「コラーゲン」を生成するのに欠かせない栄養素です。

また皮膚のメラニン色素の生成を抑制し、しみやそばかすを防ぐはたらきもあります。

こうしたはたらきからビタミンCは肌に良いといわれるのですね。

他にもビタミンCには鉄の吸収を促す役割や、活性酸素を取り除く抗酸化物質としての役割があります。

ビタミンCが不足すると、倦怠(けんたい)感や気力低下といった症状が現れます

重度の欠乏に至るとコラーゲンがつくれず血管がもろくなり、「壊血病」を発症する危険があるため注意が必要です。

メモ
壊血病を発症すると歯肉や皮下からの出血、貧血、筋肉の減少、心臓障害、呼吸困難などの症状が見られます。

ビタミンCの推奨量は、男女共に18歳以上で100mgです[43]。

牡蠣の他にも、さまざまな食品からビタミンCを摂取しておきたいですね。

ビタミンCを豊富に含む食べ物については以下の記事でご紹介しています。

ビタミンCはどんな食べ物に含まれるの?健康維持に必要な摂取量を解説

[42] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

[43] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

4.牡蠣に含まれる成分

牡蠣鍋

牡蠣には栄養素の他に「タウリン」という成分も含まれています。

タウリンはいかやたこ、貝類などに含まれるアミノ酸に似た物質で、牡蠣の含有量はこれらのなかでも多いことが分かっています。

タウリンにはコレステロールを減少させる、心臓や肝臓の機能を高める、心臓や肝臓の機能を高める、視力を回復させる、高血圧を予防するなど、さまざまな効果が期待できるといわれています。

栄養ドリンクの成分として聞いたことのある方も多いのではないのでしょうか。

タウリンは水溶性のため、牡蠣を鍋やシチューにして汁ごと食べることで効率良く摂取できますよ

5.牡蠣をおいしく安全に食べるポイント

牡蠣をおいしく食べるにはいくつかのポイントがあります。

また牡蠣には食中毒や亜鉛中毒の原因となる恐れがあるため、安全に食べるために注意すべき点もあります。

ここでは、牡蠣をおいしく、安全に楽しむためのポイントをお伝えしましょう。

ポイント1 ツヤがありふっくらしたものを選ぶ

生の牡蠣

殻付きの牡蠣の場合、殻がしっかり閉じていて重いものを選びましょう。

またむき牡蠣の場合は身にツヤがありふっくらとしていて、ふちの黒い部分がくっきりと濃いものがおすすめです。

新鮮な牡蠣は身の色がやや黄色みがかっているので、選ぶ際に注目してみてくださいね。

ポイント2 塩と片栗粉で汚れを落とす

牡蠣をおいしく食べるためには、下ごしらえも大切なポイントです。

ボウルに牡蠣の身を入れ、塩と片栗粉を加えて軽くもみ洗いすると汚れやぬめりが取れます

その後、塩水ですすぎ、キッチンペーパーでやさしく水気を拭き取りましょう。

メモ
塩水ですすぐことで、牡蠣の身が小さくならずにふっくらした状態を保てます。塩水は海水と同じ3.0〜3.5%程度の塩分濃度にすると良いとされています[44]。

[44] 農林水産省「 カキの生態の世界的権威に聞いた カキの不思議

ポイント3 加熱用の牡蠣は十分に加熱する

加熱用の牡蠣にはノロウイルスが蓄積している恐れがあり、食中毒の原因になり得ます。

十分加熱して食べるようにしましょう。

ノロウイルスは腹痛や嘔吐(おうと)、激しい下痢などを引き起こすウイルスです。

牡蠣などの二枚貝やノロウイルスに感染した人の手が触れたもの、便、嘔吐物などから感染します。

本来二枚貝にはノロウイルスは生息しておらず、体内で増殖することもありません。

しかしノロウイルスに感染した人間の排泄物にいたウイルスは下水処理場でも完全には死滅せず、一部が河川から海へ流れ込んでしまうことがあります。

このため特定の海域に生息する牡蠣は餌と共に海水を体内に取り込む過程でノロウイルスも取り込んでしまっている恐れがあるのです。

牡蠣には生食用と加熱用がありますが、これは生息する海域の水が細菌やウイルスの基準をクリアしているかどうかの違いによります。

基準をクリアしている海域で育った牡蠣であれば、生で食べても食中毒の心配が少ないと考えられるため、生食用として販売されているのです。

一方、加熱用の牡蠣はノロウイルスが体内にたまっている恐れがあるので、鮮度にかかわらずしっかりと加熱することが必要です。

牡蠣の中心部が80〜90℃の状態で90秒以上加熱すれば、ノロウイルスの感染性はなくなるとされています[45]。

また加熱用の牡蠣に触れた手や調理器具で他の食品に触れないようにも注意してくださいね。

[45] 農林水産省「 ノロウイルス(ウイルス) [Norovirus]

ポイント4 ビタミンCを含む食材と一緒に摂取する

レモンをそえた殻付きの生の牡蠣

ビタミンCは牡蠣に豊富に含まれる鉄や亜鉛の吸収率を高めます

生牡蠣ならビタミンCを多く含むレモンやすだちを搾って食べるのがおすすめです。

またブロッコリーやほうれん草、じゃがいももビタミンCが豊富なので、牡蠣をグラタンなどにして味わうのも良いでしょう。

ポイント5 食べ過ぎない

牡蠣には亜鉛が多く含まれているので、食べ過ぎには注意が必要です。

通常の食生活を送っていれば亜鉛の過剰摂取による不調が問題になることはまれですが、急性亜鉛中毒では吐き気やめまい、胃障害といった症状が現れます。

また継続的な過剰摂取では鉄や銅の吸収が阻害され貧血や免疫障害、下痢、神経症状などが起こる恐れがあります。

亜鉛の耐容上限量は18歳以上の場合30〜45mgです[46]。

耐容上限量とは
過剰摂取による健康障害を起こさない上限となる量です。

牡蠣100gには亜鉛が14.0mg含まれています[47]。

亜鉛の含有量を考慮すると、一度に牡蠣を食べる量は数個程度にとどめるのが良いでしょう。

[46] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

[47] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

6.牡蠣に含まれる栄養素についてのまとめ

日本で食用として出回っている牡蠣のほとんどは「マガキ」と呼ばれる品種です。

牡蠣にはさまざまな栄養素が含まれています。

体の材料となるたんぱく質や、抗酸化作用のあるビタミンE、ビタミンB2など6種類のビタミンB群などが豊富です。

また不足しがちなカリウム、鉄、亜鉛といったミネラルも多く含まれています。

さらに牡蠣からはビタミンAやビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンCも摂取できます。

栄養ドリンクの成分として知られるタウリンが含まれている点も魅力的ですよね。

牡蠣を選ぶ際は、殻がしっかり閉じているものか、身にツヤがありふっくらしているものを選びましょう。

また加熱用の牡蠣は絶対に生で食べず、十分に加熱する必要があります。

ビタミンCを含む食品と一緒に食べることで、牡蠣に含まれる鉄や亜鉛の吸収率が高まりますよ。

ただし亜鉛の過剰摂取には注意しておきましょう。

この記事を参考に、多くの栄養素を豊富に含む牡蠣を日々の食事に取り入れてくださいね。

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