「最近、寝ても疲れがとれない気がする……」
「睡眠の質を上げるにはどうしたら良いんだろう?」
寝ても疲れがとれないことで、睡眠の質で悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
睡眠の質は睡眠後の休養感、つまり眠ったことで疲れがとれている感覚があるかどうかで判断できます。
また寝起きが良いことや、就寝から起床時までぐっすり眠れることなども良質な睡眠の条件といえるでしょう。
この記事では睡眠の質を上げるためのポイントを生活習慣、睡眠環境、嗜好(しこう)品という三つの観点から解説します。
質が高い睡眠のメリットについても解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
1.良質な睡眠とは
「良質な睡眠ってどういうものなのかな?」
睡眠の質を上げるためには、まず良質な睡眠の基準を知る必要がありますよね。
睡眠を評価する指標には量と質の二つがあります。
睡眠の量は睡眠時間で測ることができ、睡眠の質は睡眠休養感、つまり睡眠で休養がとれている感覚があるかどうかで判断できます。
睡眠時間が長くても疲れがとれない、もしくは一時的に疲れはとれたものの睡眠不足による悪影響を被るようでは質の良い睡眠をとれているとはいえません。
そのため睡眠の量(睡眠時間)と睡眠の質(睡眠休養感)がそれぞれ十分に確保されていると、良質な睡眠がとれているといえるでしょう。
必要な睡眠時間については個人差が大きく、一概に何時間寝れば良いという指標はありません。
子どもは大人よりもたくさん寝る必要があり、大人でも高齢になるほど必要な睡眠時間が短くなる傾向にあります。
季節や1日の活動量によっても必要な睡眠時間は変わってきます。
そのためしっかり休めた感じがあり、日中に眠気を感じない程度の睡眠時間を確保できていれば良いでしょう。
一方、質の良い睡眠の条件としては睡眠休養感の他、寝付きや寝起きの良さ、「中途覚醒」がないことなども挙げられます。
中途覚醒については以下の記事で紹介しています。
次の章からは睡眠の質を上げるためのポイントを生活習慣、睡眠環境、嗜好品という三つの観点から解説します。
【関連情報】 「睡眠は時間だけでなく質も重要!ぐっすり眠るための7つの秘訣とは?」についての記事はこちら
2.睡眠の質を上げるための生活習慣のポイント
生活習慣は睡眠の質に関わる重要な要素です。
この章では睡眠の質を上げるための生活習慣上のポイントを五つご紹介します。
ポイント1 規則正しい生活を送る
睡眠の質を上げるには規則正しい生活を送ることが重要です。
どのような工夫をしても、不規則な生活を送っていては良質な睡眠をとることはできません。
夜更かしは控え、なるべく同じ時間に寝床に就くようにしましょう。
規則正しい生活が重要な理由は「体内時計」にあります。
体内時計は前もってホルモンの分泌などの生理的な活動を調整し、睡眠に備えます。
こういった体のはたらきは自分でコントロールすることができません。
そのため毎日眠る時間がばらばらだと体が眠りに備えることができず、睡眠の質が低下してしまうのです。
体内時計を整えるには朝に光を浴びることも重要です。
ヒトの体内時計の周期は24時間より若干長いため、この誤差を修正しないと生活がずるずると後ろにずれていってしまいます[2]。
朝の光には体内時計を早め、ずれを修正するはたらきがあるため、目覚めたら積極的に光を浴びると良いでしょう。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「体内時計」
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
ポイント2 朝食を摂る
睡眠の質を上げるには朝食を摂ることも重要です。
朝食を抜いたせいで日中の活力が低下すれば、夜の睡眠にも影響が及びかねません。
脳がエネルギーとするのは「ブドウ糖」だけなので、朝は糖分を摂取すると良いでしょう。
朝食には体内時計を整える作用もあります。
1週間ほど朝食を摂らずにいると体内時計が遅れてしまいます[3]。
その結果、寝付きが悪くなり睡眠不足に陥りやすくなってしまうのです。
一方、就寝時間に近いタイミングに食事をしたり、夜食を摂ったりすることでも体内時計が遅れてしまいます。
睡眠の質を上げるには規則正しい食生活を心掛けることも大切なのですね。
[3] 厚生労働省「良い睡眠の概要(案)」
ポイント3 適度な運動を行う
適度な運動をすることは睡眠の質を高めます。
習慣的に運動をしていると寝付きが良くなり、深い眠りに就けることが分かっています。
激し過ぎる運動は眠りを妨げることがあるので、睡眠の質を高めるには軽めの「有酸素運動」がおすすめです。
就寝3時間ほど前に運動をすると、さらに睡眠の質を上げやすくなります[4]。
体を動かすと脳の温度が一時的に上がり、就寝時には運動をしなかったときよりも大きく低下します。
眠気は脳の温度が低下するときに現れやすいため、結果として眠りに就きやすくなるのです。
ただし、眠る直前に運動をしてしまうと体が興奮してしまい、なかなか眠りに就けなくなるので注意してくださいね。
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
ポイント4 入浴する
就寝する2〜3時間前に入浴すると寝付きが良くなります[5]。
ヒトは脳の温度が大きく低下したときに眠気を感じやすくなります。
運動と同様に、就寝時間から逆算して脳の温度を一時的に上げることで、眠気が生じやすくなるのですね。
体温を0.5度ほど上げるだけでも寝付きが良くなることが分かっています[5]。
体温を上げることを意識し過ぎるあまり、熱いお湯につかると体にかかる負担も大きくなってしまいます。
そのためあまり考え過ぎず、自分の体調や好みに合った入浴方法を選ぶと良いでしょう。
[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
ポイント5 リラックスする時間を設ける
就寝前にリラックスする時間を設けるとスムーズに眠りに就くことができます。
気持ちが落ち着くと脳の興奮も静まり、眠りに就くための準備が整います。
少なくとも就寝1時間前には仕事や勉強を切り上げ、リラックスするための時間を確保すると良いでしょう[6]。
リラックスするための方法は人それぞれですが、一般的には瞑想(めいそう)やヨガ、音楽、アロマなどは入眠効果が高いとされています。
[6] 厚生労働省「良い睡眠の概要(案)」
3.睡眠の質を上げるための睡眠環境のポイント
睡眠の質を上げるには睡眠環境を整えることも重要です。
この章では睡眠の質を上げる環境づくりのポイントを二つご紹介します。
ポイント1 寝室の環境を整える
寝室は静かで適温、できるだけ暗くするのが良いでしょう。
ヒトはわずかな光でも目覚めてしまうため、寝室はできるだけ暗くしておくことをおすすめします。
また就寝前はパソコンやスマートフォンの操作を控えましょう。
これらの電子機器から発せられるブルーライトを夜遅くに浴びると体内時計が乱れ、睡眠の質が低下します。
冬は布団の中が寒いと寝付きが悪くなるため、毛布を被せておいたり、ゆたんぽを使ったりしてあらかじめ寝具内を温めておくと良いですよ。
夏は室温が高くなることが多く、睡眠の質が低下しやすい季節です。
そのため夏場はエアコンを用いて室内を涼しくしておくと睡眠の質が上がります。
屋外の騒音が気になって睡眠が阻害されている場合には、防音機能がある壁や窓の設置を検討しましょう。
それらの対策が難しい方向けの防音カーテンや、ドアに貼り付ける防音テープなどのグッズもおすすめです。
ポイント2 快適な寝具を使う
快適な寝具を使うことで睡眠の質を上げることができます。
寝具には就寝中の保温と良い寝相を保つという二つの役割があります。
ヒトは眠りに落ちると深い眠りを保つために体から熱を出します。
体からの放熱は、深い眠りで特に活発になり発汗を伴うため、寝具は吸湿性、放湿性、保温性が良いものを選びましょう。
立っているときに近い姿勢で寝ると体への負担が少ないとされています。
ヒトは正しい姿勢で立つと、後頭部から首、胸にかけてと、胸から腰にかけて背骨が二つのS字カーブを描きます。
そのため柔らか過ぎて体が沈み込む、硬過ぎて体が一直線になってしまうマットレスや敷布団は避け、適度な硬さのものを選びましょう。
4.睡眠の質を上げるための嗜好品摂取のポイント
睡眠の質は普段摂取している嗜好品によっても左右されます。
この章では睡眠の質に影響する可能性がある嗜好品の摂取について、三つのポイントをご紹介します。
ポイント1 カフェインを摂り過ぎない
カフェインを摂り過ぎると睡眠の質が下がるため注意が必要です。
カフェインはコーヒーや紅茶、エナジードリンクなどに含まれる成分で覚醒作用があります。
そのためカフェインを摂り過ぎると眠りが浅くなり、夜中に起きることが増え、眠れる時間が短くなることが分かっています。
具体的には1日当たり400mg以上のカフェインを摂取すると睡眠に悪影響を与える可能性があります [7]。
400mgというのはドリップコーヒーでマグカップ2杯分(約700mL)、ペットボトルコーヒーで1.5本分(約750mL)程度です[7]。
その他、緑茶の一種である玉露(ぎょくろ)では約250mL、紅茶では約1,300mL程度を摂取するとカフェインが400mgを超えます[7]。
エナジードリンクなどに関しては製品によって含有量が異なるため、成分表をチェックしてください。
摂取量だけでなく、摂取するタイミングにも注意しましょう。
カフェインの「代謝」にかかる時間は3〜7時間と個人差があります[7]。
仮に代謝にかかる時間を5時間とし、就寝時間を23時とした場合、18時以降にカフェインを摂取すると就寝時にまだ体内にカフェインが残った状態になります[7]。
そのままでは睡眠の質が下がる可能性があるため、夕方以降はなるべくカフェインの摂取を避けると良いでしょう。
[7] 厚生労働省「良い睡眠の概要(案)」
ポイント2 寝酒をしない
睡眠薬代わりにアルコールを摂取する、いわゆる寝酒は睡眠の質を下げてしまいます。
アルコールは寝付きを良くし、睡眠の前半では深い眠りをもたらします。
しかし睡眠後半の質は明らかに低下し、飲酒量が多いほど目覚める回数も多くなってしまいます。
またアルコールの大量摂取、常用的な飲酒を繰り返すとアルコールを飲まないとなかなか眠りに就けなくなってしまうことがあるため注意が必要です。
ポイント3 就寝前の喫煙は避ける
就寝前の喫煙は寝付きの悪化、中途覚醒の増加、深い睡眠の減少などの悪影響を及ぼします。
たばこに含まれるニコチンには覚醒作用があり、ニコチンが血液中で半減するまで約2時間かかります[8]。
そのためある程度時間に余裕を持って喫煙をしたとしても、就寝時に覚醒作用が残る可能性があるのです。
また習慣的に喫煙をしている人がたばこを控えると不眠の症状が現れることがあります。
たばこを吸っているかどうかにかかわらず睡眠の質が悪化することになりかねないので、睡眠の質を上げるには喫煙自体を控えた方が良いでしょう。
従来の紙巻きたばこに加え、加熱式たばこや電子たばこであってもニコチンが含まれている以上、睡眠の質低下につながる恐れがあります。
[8] 厚生労働省「良い睡眠の概要(案)」
5.質が高い睡眠のメリット
質が高い睡眠は心臓や脳の血管、代謝、「内分泌」、免疫、認知機能、心の健康などの増進・維持にとって重要です。
睡眠の質が悪化するとこれらに関連したさまざまな病気の発症リスクが増加します。
質が高い睡眠をとることは、間接的に病気を予防することにもつながるのですね。
また質の高い睡眠は労働災害や自動車事故など、眠気や疲労が原因の事故のリスクを下げます。
さらに睡眠は体の成長や記憶の定着などとも深い関係があります。
しっかり眠ることで体の成長が促され、記憶の定着が進んで学習効率が上がります。
睡眠不足の悪影響については以下で解説しています。
睡眠不足の悪影響とは?質の高い睡眠をとるためのポイントも解説
6.睡眠の質についてのまとめ
睡眠の質は睡眠後に休養感があるかどうかで判断できます。
また寝付きや寝起きの良さ、中途覚醒がないことなども良質な睡眠の指標といえます。
睡眠の質には生活習慣や睡眠環境、嗜好品が深く関わっています。
前提として規則正しい生活を送らない限り、良質な睡眠をとることはできません。
その上で朝食を摂ること、適度な運動をすること、入浴するタイミングを工夫することが重要です。
また就寝前にリラックスする時間を設けると良質な睡眠をとりやすくなります。
寝室は静かで適温、できるだけ暗くすると良いでしょう。
寝具は吸湿性・放湿性・保温性が良いものを選ぶのがポイントですよ。
コーヒーやカフェインなどを含む飲料やアルコール、たばこは睡眠を阻害する要因になり得るので、摂取量や摂取するタイミングには注意が必要です。
質の高い睡眠をとっているとさまざまな病気の発症リスクや、労働災害や自動車事故など眠気や疲労に起因する事故の発生リスクを抑えることができます。
ぜひこの記事で生活習慣、睡眠環境、嗜好品を見直し、睡眠の質を上げるために役立ててください。