「生理前や生理中に下痢になるのはどうしてだろう?」
このような疑問を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
原因が分からず対処の仕方に悩んでいる方も多いかもしれませんね。
生理前や生理中に下痢が起こりやすいのは、生理周期に伴う女性ホルモンのはたらきによるものです。
この記事では生理前や生理中に下痢が起こる原因や対処のポイントについて解説していきます。
ぜひ最後までお読みになり、生理前・生理中を快適に過ごすための参考にしてくださいね。
1.生理前や生理中に下痢が起こる原因
生理前や生理中に下痢が起こるのは、生理周期に伴って変動する女性ホルモンが腸の活動に影響を与えるためです。
女性ホルモンと腸の活動の関係について、生理のメカニズムを交えてご説明しましょう。
生理周期は女性ホルモンの分泌バランスによって調整され、生理開始から排卵前の卵胞期、排卵日前後の排卵期、排卵後から生理前の黄体期に分けられます。
個人差はありますが、排卵は生理が始まってから13~14日目に起こるといわれています[1]。
排卵後は女性ホルモンの一つである「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の分泌が高まります。
プロゲステロンには腸の活動を抑えるはたらきがあるため、この分泌が高まっている間は便秘がちになったりおなかが張りやすくなったりします。
しかし生理が始まるとプロゲステロンが減少するため、これまで抑えられていた腸の動きが活発になります。
それに加え、生理直前から生理前半にかけて子宮を収縮させる「プロスタグランジン」が子宮内膜から分泌し急激に増加するため、腸が異常に収縮し下痢が起こりやすくなるのです。
また女性の体は妊娠の準備のため生理終了後から黄体期にかけて子宮内膜が厚くなります。
妊娠しなかった場合はこの子宮内膜がはがれ落ち、血液と一緒に体外へ排出される生理が起こるのです。
生理前にプロゲステロンの分泌が高まると、プロゲステロンの作用により分厚くなった子宮内膜からプロスタグランジンがつくられます。
プロスタグランジンには子宮の収縮を促して子宮内の血液を押し出すはたらきを持つ他、腸の収縮を促す作用もあります。
これらの影響により生理前や生理中に下痢が起こりやすくなるのです。
[1] 厚生労働省 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「基礎体温」
【関連情報】 「PMSとは?月経前症候群の主な症状や受診の目安、治療法を解説」についての記事はこちら
2.生理前や生理中の下痢を防ぐポイント
「生理前や生理中の下痢を防ぐにはどうしたら良いのかな……」
このように生理前や生理中の下痢について対処法が分からないと感じている方も多いのではないでしょうか。
この章では生理前や生理中の下痢を防ぐポイントについてご説明します。
ポイント1 体を冷やさない
生理前・生理中の下痢を防ぐためには体を冷やさないことが大切です。
夏は冷房で体が冷え過ぎることがあります。
肌の露出を避けたり、普段より少し厚着をしたりして対処しましょう。
また寒い時期はカイロや腹巻などの活用もおすすめです。
特に下腹部を冷やさないことを意識しましょう。
腹部を温めることで下痢を予防するだけでなく、血行を良くして生理痛を和らげる効果も期待できますよ。
ポイント2 胃腸を刺激する食べ物や飲み物を避ける
生理前・生理中には胃腸を刺激する食べ物や飲み物は避けましょう。
辛いものや冷たいものは胃腸を刺激して動きを活発にするため下痢を起こしやすくします。
コーヒーや緑茶などのカフェインを含む飲み物も控えましょう。
カフェインは胃腸を刺激するだけでなく、血管を収縮させる作用もあるため生理痛を悪化させてしまう可能性があります。
また一部の甘味料には、水分を腸内にためる作用があり下痢を引き起こすことがあるため注意が必要です。
ポイント3 よく噛んでゆっくり食べる
生理前や生理中の下痢を予防するには、食事の際によく噛んでゆっくり食べることが大切です。
早食いは消化不良につながり、下痢を起こしやすくなります。
よく噛んでゆっくり食べることで食べ物を消化しやすくなり、胃腸の負担を軽減できます。
生理前や生理中に限らず、普段から食事方法には気を付けたいですね。
3.生理に伴う代表的な病気
下痢や腹痛、抑うつなどの不快な症状は、月経前症候群や月経困難症、月経前気分障害などの生理に伴う病気によって起こることがあります。
これらの病気は症状を正確に把握した上で対処することが重要です。
ご自身の症状と照らし合わせ、気になるものがある場合は婦人科を受診しましょう。
ではそれぞれの病気について解説します。
3-1.月経前症候群(PMS)
月経前症候群(PMS)とは、生理前に生じる身体的あるいは精神的な不調が重い状態のことをいいます。
明確な原因は分かっていませんが、生理周期に伴うホルモンバランスの変化やストレス、生活習慣などさまざまな要因が関わっていると考えられています。
PMSには次のような症状があります。
【PMSの主な症状】
- 頭痛、腰痛、肩こり
- だるい、疲れやすい
- むくみ、体重増加
- おなかの張り、腹痛、便秘、下痢
- 胸の張り、痛み
- イライラしやすい、怒りやすい
- 無気力
- 集中力低下 など
このような症状は生理の3~10日前に現れ、生理が始まると軽快、または消失するのが特徴です[2]。
気分転換によるストレス軽減や生活習慣の改善などにより症状が軽快することがあります。
その他、症状に応じてホルモン剤や鎮痛剤を用いたり、精神的な症状が重い場合は抗うつ剤や漢方薬を使用したりする治療もあります。
PMSについては以下の記事で詳しく解説しています。
PMSとは?月経前症候群の主な症状や受診の目安、治療法を解説
[2] 公益社団法人 日本産科婦人科学会「月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)」
3-2.月経困難症
月経困難症とは生理の直前や開始とともに起こる腹痛や腰痛などの症状のうち、日常生活に支障を来す場合をいいます。
子宮の病気や形の異常などによって生じる「器質的月経困難症」と、原因となる病気がない「機能性月経困難症」に分けられます。
どちらの場合であっても主な症状は強い痛みが下腹部や腰部などに現れるのが特徴です。
その他、吐き気や下痢などの症状が生じることもあります。
一般的に、これらの症状は生理終了前、あるいは終了とともに消失します。
なお器質的月経困難症の場合は不妊の原因となることもあるため注意が必要です。
治療方法としては原因となる病気や症状に応じ、鎮痛剤で痛みを軽減したり、ホルモン剤で月経を調整したりします。
気になる症状がある場合は婦人科を受診しましょう。
3-3.月経前不快気分障害(PMDD)
月経前不快気分障害(PMDD)とはPMSの症状のうち特に精神的な症状が重い状態をいいます。
主な症状は次のとおりです。
- 抑うつ
- 不安や緊張
- 情緒不安定
- 怒りやイライラ
症状の程度により情緒の不安定に対し精神安定剤、抑うつの症状に対し抗うつ薬などが用いられます。
生理の前に気分がひどく落ち込みとてもつらいといった症状がある場合には、早めに婦人科や精神科を受診しましょう。
4.生理前や生理中の下痢についてのまとめ
生理前や生理中に下痢が起こりやすいのは、腸の活動が生理周期に伴う女性ホルモンの影響を受けるためです。
個人差はありますが、生理が始まってから13~14日目に排卵が起こると女性ホルモンであるプロゲステロンが分泌されます[3]。
プロゲステロンには腸の活動を抑えるはたらきがあるため、この分泌が高まっている間は便秘やおなかの張りが起こりやすくなります。
やがてプロゲステロンの作用で増殖した子宮内膜からプロスタグランジンがつくられます。
プロスタグランジンの作用で子宮が収縮し生理が始まるとプロゲステロンの分泌は低下します。
これにより腸の活動が活発になるため、生理前や生理中は下痢が生じやすくなるのです。
生理前や生理中の下痢を予防するためには、普段よりも体を冷やさないよう心掛けることが大切です。
また生理前、生理中は胃腸を刺激する食べ物や飲み物は避け、よく噛んで食べることを意識しましょう。
なおPMSや月経困難症、PMDDなどの生理に伴う病気により下痢や腹痛、抑うつといった不快な症状が起こることがあります。
これらの病気は適切な治療を受けることが大切です。
症状が気になる場合は我慢せずに早めに婦人科を受診しましょう。
この記事を参考に、生理前や生理中に起こる下痢やその他の不調に対処するために役立ててくださいね。
[3] 厚生労働省 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「基礎体温」