PMSとは?月経前症候群の主な症状や受診の目安、治療法を解説

2023年11月23日

2024年10月07日

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「PMSってなんだろう……」

PMSという言葉は聞いたことがあっても、何のことを指しているのか分からないという方も多いのではないでしょうか。

PMSとは月経前症候群(premenstrual syndrome)のことで、月経が始まる1週間ほど前から体や心にさまざまな症状が出るものとされています。

それらの症状は月経開始とともに弱まったりなくなったりするのが特徴です。

月経のある方のほとんどが月経の前に何らかの不快な症状を感じているといわれており、PMSはその症状が強く出ている状態です。

症状は軽いものから日常生活に支障を来すものまでさまざまで、多くの方が症状や対処法について悩んでいるといわれています。

この記事では、PMSの主な症状やどれくらいの症状で受診したら良いのかなど、受診の目安についても解説します。

また、PMSを改善するためのポイントも紹介していますので、生活のなかに取り入れてくださいね

1.PMSとは

ベッドの上でお腹をおさえる女性 

「この症状はPMSなのかな……」

このように月経前に起こる症状がPMSなのかどうか気にされている方もいらっしゃいますよね。

PMSとは、身体的あるいは精神的な症状が月経前の3~10日間続き、月経の開始とともに症状が軽減または消失するもののことです[1]。

PMSの症状は多岐にわたります。

ここでは、PMSの具体的な症状や原因、診断方法について解説します。

[1] 公益社団法人 日本産科婦人科学会「月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)」

1-1.PMSの症状

PMSの症状は主に身体症状、精神症状、自律神経症状があります。

身体症状には、腹痛、頭痛、むくみ、おなかの張り、乳房の張りなどがあります。

また精神症状には、情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下などが挙げられます。

PMSの症状のなかでも精神症状が特に強く現れる場合には、月経前不快気分障害(PMDD)の可能性があります。

月経前不快気分障害(PMDD)とは
PMSの症状のなかでも精神症状が強く現れる状態のことです。抑うつ、不安、緊張、情緒不安定、怒り、イライラなどの症状が主で、食生活の変化や睡眠障害などの症状が月経前に現れ、社会生活にも支障を来すことがあります。

また、自律神経症状としてのぼせや食欲不振、過食、目まい、倦怠(けんたい)感などがあります。

自律神経とは
意思ではコントロールできない神経で、あらゆる臓器のはたらきをコントロールし呼吸や体温、血圧、消化などの生命活動を維持します。

1-2.PMSの原因

PMSの詳しい原因は分かっていませんが、女性ホルモンの急激な変動が関わっているといわれています。

女性ホルモンには、卵巣から分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」があり、これらのホルモンの影響で月経が起こり体や心の状態が変動します。

エストロゲン(卵胞ホルモン)とは
女性らしい体づくりを助けるホルモンで、思春期には乳房の成長や生殖器官の発育を促します。その他にも髪や肌の潤いを保つ、骨の健康を維持するはたらきがあります。
プロゲステロン(黄体ホルモン)とは
排卵直後から分泌量が増加し、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を柔らかくすることで妊娠の準備を整えるホルモンです。妊娠した場合はプロゲステロンの分泌は続き子宮内膜を維持させます。妊娠しなかった場合は分泌量が減少し、子宮内膜が剥がれ落ちる月経が始まります。

女性ホルモンと月経周期

月経周期は、排卵前の卵胞期、排卵期、月経前の黄体期に分けられ、卵胞期のうち月経がある期間を月経期と呼びます。

卵胞期は女性にとってうれしいはたらきをするエストロゲンが増加し、心身共に好調でいられる時期です。

一方で、エストロゲンが減少しプロゲステロンが増加する黄体期は、排卵が起こることで妊娠を維持しやすい体をつくるため、体に栄養や水分を蓄えようとします。

そのため太ったりむくんだり、心身共に不調になりやすい時期です。

そしてエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が下がり切ると月経が始まります。

特に月経前はプロゲステロンの分泌量が増えて、月経開始とともに急激に減るため、この激しいホルモンの増減がPMSの発症に関連しているといわれていますが、明確な原因は分かっていません

1-3.PMSの診断方法

PMSを診断するにあたっては、症状や発症時期、月経周期、妊娠・出産歴、生活環境などの詳しい問診が行われます。

月経前に症状が現れて、月経開始とともに症状が和らいだりなくなったりするのがPMSの特徴であり、問診はその特徴との関連を確認するために行われます。

また症状が重いPMDDやうつ病などの精神疾患との識別のためにも問診が行われます。

2.PMSを改善するためのポイント

「PMSの症状を軽くする方法はあるのかな?」

PMSを改善するためにできることがあれば知りたいですよね。

ここでは、日常生活のなかで取り組めるポイントをご紹介します。

ポイント1 体調や気分の変化を記録する

ノートに何かを書こうとしているところ

PMSを改善するためには、まず自分の体調や気分の変化を理解することが大切です。

日々の体調や気分の変化を記録し病状を把握することで、体調の変化に対処しやすくなります。

体調が優れないときには予定を詰めないようにするなど、状況に合わせてスケジュールを調整すると良いでしょう。

また、つらい症状がどれくらいで終わるのか把握できるようになるだけで、不安が軽減しPMSの症状が軽く感じられることもあります

PMSの症状を記録する習慣を付けてくださいね。

ポイント2 リラックスする時間をつくる

花とアロマオイル

PMSを改善するためには、リラックスや気分転換をする時間をつくることが勧められます

PMSは精神的な影響が大きくストレスによって悪化するといわれています。

そのため、PMSの症状が現れる時期にはなるべくゆったりとした気持ちで、リラックスした時間を過ごすようにしましょう。

また、気分転換の時間を持つことも、心身への負担を軽減するのに有効です。

ポイント3 カフェイン・飲酒の過剰摂取と喫煙を控える

お茶

明確なことは分かっていませんが、一般的にカフェインの摂取や飲酒、喫煙はPMSを悪化させるといわれています。

カフェインを過剰に摂取すると神経が過敏になり、PMSと同様の症状であるイライラを増長させる原因となります。

またカフェインには血管を収縮させる作用があるため、カフェインを過剰に摂取することで頭の周りの血流が悪くなり、頭痛を悪化させる場合があります。

適量のカフェイン摂取は片頭痛を和らげる効果があるといわれていますが、PMSと同様の症状を引き起こすほどの過剰摂取は控えた方が良いでしょう。

また、お酒の過剰摂取も控えましょう。

多量に飲酒をすると血糖値が下がる場合があり、その血糖値が下がった状態がPMSの症状を悪化させるといわれています。

摂取したアルコールの処理は主に肝臓で行われており、肝臓に運ばれたアルコールは酵素のはたらきで分解され体外に排出されます。

血糖値が下がると肝臓はブドウ糖を放出させ血糖値を正常に戻すように作用しますが、ブドウ糖はアルコールの代謝により消費されてしまいます。

そのため、本来であればブドウ糖の上昇するはずの血糖値が上がりにくくなり、血糖値が低いままの状態を招きやすくするのです。

月経前に甘いものが食べたくなるなどの症状が出やすくなるのも、低血糖の状態になっているためです。

PMSを悪化させないためにも、飲酒は控えると良いですね。

その他、喫煙も控えましょう

喫煙は血液の流れを悪くします。

その上、月経前は子宮内膜や骨盤内の血流の流れが変化し、血の巡りが悪くなっている状態です。

血行不良により体が冷え、自律神経のバランスが崩れることでPMSを悪化させかねません

ポイント4 カルシウムを十分に摂る

バスケットにはいった瓶入り牛乳

PMSを改善するためには一般的にカルシウムを積極的に摂ることが勧められています

カルシウムを十分に摂取している方としていない方では、PMSの症状に差が出るといわれています。

しかし20歳以上の方のカルシウムの摂取量は厚生労働省が設定している摂取推奨量を下回っており、カルシウム不足が懸念されます。

推奨量とは
ある性・年齢階級に属する人々の多くが1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量のことです。

カルシウムは乳製品や野菜、豆類、穀物、小魚といった食材に多く含まれています。

これらを積極的に摂取するよう心掛けましょう。

ポイント5 ビタミンB群を十分に摂る

レバー

月経前や月経中に現れる肌荒れや貧血などの症状に対しては、ビタミンB群を十分に摂ることが勧められます

メモ
ビタミンは性質の違いから脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分けられます。ビタミンB群は水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミン12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンのことを指します。

ビタミンB2やビタミンB6は皮膚や粘膜の保護、ビタミンB12は貧血の予防に役立つとされています。

ビタミンB2はレバーやうなぎ、牛乳などの動物性食品や、納豆、アーモンドなどの植物性食品などに多く含まれ、ビタミンB6はまぐろやかつお、豚ヒレなどの動物性食品や、バナナ、玄米、いも類などの植物性食品に多く含まれています。

またビタミンB12はしじみやあさりなどの貝類や、牛レバーなどの動物性食品に多く含まれており、植物性食品にはほとんど含まれていません。

これらは体内で助け合いながらはたらくため、一緒に摂取できるよう日々の食事に取り入れてくださいね。

3.PMSが疑われる場合の受診の目安

目を閉じて壁により掛かる女性

「PMSはどのくらいひどかったら受診した方が良いんだろう?」

PMSの症状や程度はさまざまなため、症状がどれくらい深刻であれば受診したら良いのか迷う方もいらっしゃいますよね。

日常生活に支障を来すほどPMSの症状が強くてつらい場合は、早く受診した方が良いでしょう。

何か別の病気が原因となっている場合もあります

症状は個人差があるため自分がつらいと思ったら受診し専門家に相談しましょう。

相談することで、自分に合った治療法を選択することもできます。

また、気持ちが楽になることもありますので、そこまでひどくないと思っても無理に症状を我慢せずに相談しましょう

4.PMSの治療法

体温計などの月経をイメージさせるアイテム類

「PMSはどんなふうに治療をするんだろう?」

受診をしたらどんな治療が行われるのかも気になりますよね。

ここでは、一般的な治療法について紹介します。

主治医とよく話をして自分に合った治療法が選択できると良いですね。

4-1.排卵を薬で抑える治療法

PMSは、排卵が起こり女性ホルモンの分泌が大きく変動することが原因とされています。

そのため、その排卵を止めて女性ホルモンの変動を避けることで症状の改善が期待できます

低用量経口避妊薬(OC)や低用量エストロゲン・プロゲステロン配合薬(LEP)は少ないホルモン量で排卵を止めます。

メモ
低用量経口避妊薬は避妊法の一つともされ、一般的にピルやOC(Oral Contraceptives)と呼ばれています。女性ホルモンのエストロゲン、プロゲステロンを配合した飲み薬です。低用量エストロゲン・プロゲステロン配合薬も低用量経口避妊薬とほとんど同じ成分で、月経困難症や子宮内膜症などの疾患の治療を目的とした医薬品です。

服用している期間だけ排卵を止め、服用をやめると排卵が再開するため、服用後に妊娠に影響を与えることはないといわれています。

4-2.症状を和らげる治療法

さまざまな症状を和らげる治療法もあります。

痛みに対しては鎮痛剤、むくみなどに対しては排尿を促したり尿量を増やしたりする薬剤、精神症状や自律神経症状に対しては精神安定剤などが使用されます

また、おのおの症状に合わせて漢方薬が使用されることもあります。

5.PMSについてのまとめ

PMSとは月経前症候群のことで、月経が始まる3~10日ほど前から体や心にさまざまな症状が現れるものとされています[2]。

PMSの詳しい原因は分かっていませんが、女性ホルモンの急激な変動が関わっているといわれています。

PMSの症状はさまざまで、腹痛、頭痛、むくみ、おなかの張り、乳房の張りなどの身体症状や情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下などの精神症状などが挙げられます。

また、自律神経症状としてのぼせや食欲不振、過食、目まい、倦怠感などがあります。

PMSを改善するためには、日々の体調や気分の変化を記録することが重要です。

リラックスや気分転換をする時間をつくることも勧められています

またカフェインの摂取や飲酒、喫煙は控え、カルシウムやビタミンB群などの栄養素を十分に摂取すると良いとでしょう。

ただ日常生活に支障を来すほどPMSの症状が強くてつらい場合は、我慢せずに専門家に相談することが勧められます。

排卵を止める方法や不快な症状を和らげる方法など、必要に応じて自分に合った治療法を選択することが大切です。

PMSの症状を無理に我慢せずに、うまくコントロールできる方法を見つけましょう。

[2] 公益社団法人 日本産科婦人科学会「月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)」

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