ストレスがきっかけに?蕁麻疹が発生する理由と対処方法を紹介します

ストレスがきっかけに?蕁麻疹が発生する理由と対処方法を紹介します

2024年04月25日

2024年04月18日

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「最近、ストレスを感じると体がかゆくなる……これって蕁麻疹(じんましん)?」

「目の周りや手のひらがかゆいのはなぜ?ストレスと関係ある?」

忙しい日常生活を送るなか、ちょっとした体調の変化からこうした疑問を感じたことはないでしょうか?

「原因がよくわからないけど、かゆみが気になる」という症状を抱えている方は少なくありません。

この記事では現代人が抱え込みやすい「ストレス」が、「蕁麻疹」にどのような影響を与えるのかについて解説していきます。

1.蕁麻疹とは

腕を掻く女性

蕁麻疹とは皮膚の一部分が盛りあがり(もしくは赤くなり)、少し時間が経つと跡形もなく消えてしまう病気のことです。

このようなタイプの皮膚の症状(皮疹)を「膨疹(ぼうしん)」といいます。

皮疹の大きさは人それぞれです。数ミリ程度の小さなボツボツがいくつも集中して発生することもあれば、目に付く範囲全体が腫れてしまうこともあります。

1-1.発症部位

蕁麻疹の特徴は「皮膚に発症する」というものです。

皮膚であれば体のどの部位でも皮疹が表れる可能性がありますが、なかでもとくに多いのは顔や首、腕、腹、背中、太ももといった柔らかい部位です。

1-2.随伴症状

蕁麻疹の典型的な症状は、くっきりとした皮膚の腫れや赤み、そしてかゆみです。

人によってはチクチクしたり、熱っぽく感じたり、(患部に触れると)痛みを感じることもあります。

ただしこうした症状は長続きしません。持続時間には個人差がありますが、一般には発症から24時間以内に消えるとされています。

2.ストレスと蕁麻疹は関係がある?

頭を抱える女性

蕁麻疹を発症する方のなかには、日常的に強いストレスを感じている方が大勢います。

「ストレスと蕁麻疹は関係がある?」「ストレスは蕁麻疹の原因?」といった疑問を感じる方が多いのはこのためでしょう。

この疑問に答える前に、まずは蕁麻疹が発症するメカニズムを簡単に紹介します。

2-1.蕁麻疹が起こる基本的なメカニズム

蕁麻疹は皮膚の付近にある「マスト細胞」から、ヒスタミンなどの作用物質を含む顆粒が放出されることで発症します。

放出されたヒスタミンは皮膚の血管を拡張させ、これにより皮膚の一部が盛りあがって見えます。

また血管から血漿(血液の血球以外の成分)が周囲に滲み出るため、皮膚の一部が赤みを帯びます。

またヒスタミンは神経を刺激し、痒みを発生させます[1]。

なおマスト細胞が顆粒を放出させる現象は、体の「反応閾値(はんのういきち)」、つまり一定の限界値を超える刺激を受けることで発症するといわれています。

反応閾値の範囲は人によってさまざまです。また同じ人でも、体調などによって反応閾値が変化することがあります。

ストレスも蕁麻疹の発症に影響を与える要素の一つです。

一般に「ストレスは万病の元」というように、ストレスは体にさまざまな影響を及ぼします。

例えば自律神経のバランスが崩れると免疫システムが弱り、反応閾値が下がってしまいます。

つまりストレスによって反応閾値が下がることで、結果として蕁麻疹が発症しやすくなるのです。

[1] 公益財団法人 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「Q3蕁麻疹が起こる仕組みを教えてください。

3.蕁麻疹の種類

腕を掻く女性

ひとくちに蕁麻疹といっても、さまざまな種類があります。

公益社団法人日本皮膚科学会の「蕁麻疹診療ガイドライン」では、蕁麻疹の種類を次のように分類しています。

蕁麻疹の主な分類

I.特発性の蕁麻疹

  1. 急性蕁麻疹(発症後6週間以内)
  2. 慢性蕁麻疹(発症後6週間以上)

II.刺激誘発型の蕁麻疹

  1. アレルギー性の蕁麻疹
  2. 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
  3. 非アレルギー性の蕁麻疹
  4. アスピリン蕁麻疹(不耐症による蕁麻疹)
  5. 物理性蕁麻疹(機械性蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、日光蕁麻疹、温熱蕁麻疹など)
  6. コリン性蕁麻疹
  7. 接触蕁麻疹

III.血管性浮腫

  1. 特発性の血管性浮腫
  2. 外来物質起因性の血管性浮腫
  3. ブラジキニン起因性の血管性浮腫
  4. 遺伝性血管性浮腫

IV.蕁麻疹関連疾患

  1. 蕁麻疹様血管炎
  2. 色素性蕁麻疹
  3. Schnitzler症候群およびクリオピリン関連周期熱症候群

秀 道広 他「蕁麻疹診療ガイドライン 2018」 日本皮膚科学会雑誌,128(12), 2503-2624,(2018)を参考に執筆者作成

私たちが一般に蕁麻疹と聞いて想像しやすいのは、上記のうち「II. 刺激誘発型の蕁麻疹」に相当するものです。

以下に、「II. 刺激誘発型の蕁麻疹」について説明します。

3-1.アレルギー性の蕁麻疹

アレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)に触れる、もしくは体内に取り入れることで発症する蕁麻疹です。

アレルゲンについては後ほど説明します。

3-2.食物依存性運動誘発アナフィラキシー

特定の食べ物を摂取してから数時間(通常は2時間以内)に運動をすることで発症する症状で、蕁麻疹や喘息様症状などがあります。

この蕁麻疹はアレルギー性蕁麻疹と異なり、食べ物の摂取だけでは症状が起こらないことがポイントとなります。

運動ではなく、入浴によって発症することもあります[2]。

3-3.非アレルギー性の蕁麻疹

造影剤の静脈注射をはじめ、サバやタケノコといった一部の食品を摂取した際に発症することがある蕁麻疹です。

3-4.アスピリン蕁麻疹

アスピリンなどの非ステロイド系消炎鎮痛薬を服用することで発症する蕁麻疹です[2]。

3-5.物理性蕁麻疹

ひっかく、こするといった機械的擦過や、圧迫、寒冷・温熱、日光、振動といった物理的な刺激によって発症する蕁麻疹です [3] 。

3-6.コリン性蕁麻疹

汗をかくことで発症する蕁麻疹です。発汗を促す「アセチルコリン」という神経伝達物質が関わっていることから、このように呼ばれています。

3-7.接触蕁麻疹

皮膚が特定の物質に接触することで発症する蕁麻疹です。接触から数分〜数十分で症状が表れ、数時間以内に消滅するのが特徴です。

このように蕁麻疹にはさまざまな種類がありますが、実は上記のように名前が付いているものばかりではありません。

実際には原因がわからず病名を付けられない蕁麻疹も多くあり、それらは「特発性(とっぱつせい)蕁麻疹」と呼ばれています。

[2] 日本医師会 日医ニュース 健康プラザ No.366「食後の運動にご注意!-食物依存性運動誘発アナフィラキシー-」(2012)

[3] 三原律嗣「蕁麻疹の誘発試験(物理性蕁麻疹,アスピリン蕁麻疹,食物依存性運動誘発アナフィラキシー)」(2009)

4.蕁麻疹の主な原因

たけのこ

「蕁麻疹の種類」で説明したとおり、蕁麻疹にはいくつもの原因があります。「蕁麻疹診療ガイドライン」にはこの原因(病態に関与する因子)を次のように分類しています。

蕁麻疹の病態に関与する因子

1.直接的誘因(主に外因性、一過性)

  1. 外来抗原
  2. 物理的刺激
  3. 発汗刺激
  4. 食物
    食物抗原、食品中のヒスタミン
    仮性アレルゲン(タケノコ、もち、香辛料など)、食品添加物、サリチル酸
  5. 薬剤
    抗原、造影剤、NSAIDs、防腐剤、コハク酸エステルバンコマイシン、など
  6. 運動

2.背景因子(主に内因性、持続性)

  1. 感作
  2. 感染
  3. 疲労・ストレス
  4. 食物
    抗原以外の上記成分
  5. 薬剤
    アスピリン、その他のNSAIDs、アンジオテンシン転換酵素阻害薬、など
  6. IgEまたは高親和性IgE受容体に対する自己抗体
  7. 基礎疾患
    膠原病および類縁疾患
    造血系疾患、遺伝的欠損など
    血清病、その他の内臓病変など日内変動

秀 道広 他「蕁麻疹診療ガイドライン 2018」 日本皮膚科学会雑誌,128(12), 2503-2624,(2018)を参考に執筆者作成

4-1.直接的誘因について

直接的誘因とは、皮膚と接触する、もしくは体内に取り入れるとすぐに蕁麻疹を発症するものです。

原因と蕁麻疹との関連が比較的はっきりしているものということになります。

とくに多いのがアレルギー性蕁麻疹の原因となるアレルゲンで、これには食物や薬剤などが含まれます。

接触蕁麻疹の原因となる物質、例えばゴムや金属などもアレルゲンです。

コリン性蕁麻疹の原因となる発汗刺激や、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因となる運動、物理性蕁麻疹の原因となる各種の物理的な刺激も直接的誘因に含まれます。

4-2.背景因子について

背景因子とは、直接的誘因の影響を受けやすくするものです。

アレルゲンを排除しようとする「IgE抗体」や、なんらかの病原体への感染、特定の食物や薬剤、基礎疾患などのことですが、ストレスもこのなかに含まれます。

5.蕁麻疹を抑える・悪化させない方法

お医者さんの胸元

ここまで説明してきたとおり、蕁麻疹にはさまざまな種類と原因があります。

いままで蕁麻疹を発症したことがない方が、ある日突然蕁麻疹になることも珍しくありません。このため蕁麻疹の予防は非常に困難です。

一方、発症してしまった蕁麻疹についてはある程度の対策が可能です。

5-1.安静にする

蕁麻疹は時間が経てば消えるため、余計な刺激を与えずに安静にすることが有効な対策となります。

かゆいからといってひっかいたり圧迫したりすると余計にかゆみが増したり、ひっかき傷が残ってしまうこともあるため注意しましょう。

なお患部を冷やす「アイシング」には鎮痒効果があるため、かゆみの症状を緩和できる可能性があります。

5-2.皮膚科に相談する

蕁麻疹が頻繁に起こる場合や、時間が経っても皮疹が解消されない場合(目安として24時間以上)は、皮膚科を受診するのもおすすめです。

ただし皮膚科で見てもらったからといって、すぐに蕁麻疹が解消されるとは限りません。

症状がよほど重い場合は点滴治療を行うこともありますが、一般には検査を行った上で飲み薬(抗ヒスタミン薬やステロイド薬)を処方されます。

5-3.食生活を改善する

蕁麻疹の原因が食物のアレルゲンなら、再発を防止するために食事の内容に注意しましょう。

とくに刺激の強い食物には注意が必要です。また反応閾値を下げないため、食生活を改善して健康な状態を保つようにしましょう。

5-4.ストレスをためない

再発防止、そして予防という意味でストレスをためない生活を心掛けましょう。

仕事の量や内容をコントロールすることは難しくても、規則正しい食事や睡眠をとる、適度な趣味や運動をする、自分に合ったリラックス方法を見つける、といった方法でストレスを緩和することは可能です。

ストレスと蕁麻疹についてのまとめ

蕁麻疹にはさまざまな種類や原因があります。原因そのものがわからない蕁麻疹も少なくありません。

このため完全な予防は困難ですが、ストレスをためない生活をすることで「蕁麻疹を発症する可能性を減らす」ことを期待できます。

規則正しい生活や気分転換の手段を持つことで、心身ともに健康な生活を心掛けていきましょう。

この記事の監修者

竹内 想
竹内 想
名古屋大学医学部附属病院
皮膚科医

【経歴】
2016年に名古屋大学医学部を卒業後、市中病院での初期研修を経て現在は皮膚科医として病院やクリニックにおいて外来診療を行っています。日本医師会認定産業医であり、嘱託産業医として従業員の健康増進に寄与するなど皮膚科領域を越えた活動にも取り組んでいます。 専門的な内容を分かりやすく伝えることに重点をおき、Web記事監修や執筆を行っています。

【名古屋大学医学部附属病院のHP情報】
»名古屋大学医学部附属病院

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