「眠いのに布団に入ったら寝られなくなる」
「朝起きてもすっきりしない」
1日頑張った体や脳を休ませるための睡眠が満足にできていない方は、実は多いのではないでしょうか。
夜眠れない原因は、ストレスが大きく関わっています。
そして、寝られないこと自体がストレスとなり、さらに寝られなくなるといった悪循環を引き起こすこともあります。
この記事では、不眠の原因を解説した上で、ストレスによる不眠の解消法について紹介します。
1.夜眠れない原因はストレス?不眠とストレスの関係
仕事、勉強、家事で疲れているのに、夜なかなか寝付けなかったり、朝起きたときに疲労感が残っていたりすることはありませんか?
日常のストレスが原因で、満足に眠れていないと感じている人も多いでしょう。
私たちは、自律神経のバランスによって活動と休息を繰り返しています。
自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」があります。
交感神経が優位になると活動的になり、副交感神経が優位になるとリラックスして休息・睡眠をします。
理想的な自律神経のバランスは、日中は交感神経、夕方から夜にかけては副交感神経が優位になることです。
しかし、ストレスを感じると交感神経が刺激されて脳の興奮状態が続き、リラックスできずに寝付きが悪くなったり、睡眠が浅くなったりしてしまいます。
また、自律神経の乱れによって、胃腸などさまざまなところに不調を感じやすくなるでしょう。
ストレスは、睡眠に大きく関わってくるのと同時に、不眠自体がストレスの原因にもなるため、なかなか解消されないことが多いです。
ストレスや不眠は、早い段階で対処し、自律神経の乱れを修正していく必要があります。
2.寝られない原因はストレス以外の可能性もある
寝られない原因には、ストレスが大きく関わっていますが、ここからは、ストレス以外の不眠の原因となる生活習慣や潜んでいる可能性のある病気について、みていきましょう。
2-1.不眠に影響する生活習慣
ストレス以外に考えられる不眠の原因の多くは、毎日の生活習慣です。
脳を興奮させるカフェインやニコチンの摂取、ブルーライトを見るなどといった体内時計を乱れさせる不規則な生活習慣をなくしていくだけでも、不眠が改善される場合があります。
不眠に影響する生活習慣
- 就寝前にコーヒーやお茶などを飲んでいる
- 就寝前に喫煙している
- デスクワーク中心で運動不足である
- 就寝前にスマートフォンを見る
- お酒を飲み過ぎてしまう
- 食事時間が不規則である
夕方から就寝前にかけては、ノンカフェインの飲み物を摂るようにしたり、タバコやお酒以外にリラックスできることを見つけたり、スマートフォンなどのブルーライトを極力見ないようにするなど、生活習慣を見直すことを心掛けていきましょう。
また、就寝前には、運動不足解消をかねて軽いストレッチをするのもおすすめです。
ただし、筋肉トレーニングなどの激しい運動は、脳を興奮させてしまう恐れがあるため、避けるようにしましょう。
不規則な生活リズムの方は、朝ご飯だけでも毎日同じ時間に食べることをおすすめします。
2-2.潜んでいる可能性のある病気
寝られない原因には、単なる不眠と間違えられやすい病気が潜んでいる可能性もあります。
次に挙げる病気は、医師による診察や薬の処方が必要です。
潜んでいる可能性のある病気
病気 | どんな病気か |
---|---|
うつ病や適応障害など心の病気 | 意欲の減退、抑うつ症状がみられる。 不眠、過眠の症状もある。不眠がさらに精神的な症状を悪化させる。 |
睡眠時無呼吸症候群 | 睡眠中に呼吸が止まってしまう。 血液の酸素濃度を保つために心臓が強くはたらいてしまい、その結果、高血圧や動脈硬化を招く。 |
レストレスレッグス症候群 | 夕方から深夜にかけて足の違和感があり、ピクッと勝手に動くなど、じっとしていられず、十分な睡眠がとれない。 中年以上の女性に多い傾向がある。 |
周期性四肢運動障害 | レストレスレッグス症候群と併発することが多い。 睡眠中に足がピクッと動く不随意運動が頻繁に起こる。 |
概日リズム睡眠・覚醒障害 | 自分が望む睡眠時間帯に対し、体内時計がずれた状態になる。 睡眠日誌や活動量計を用いた睡眠スケジュールの把握で診断が可能。 |
更年期障害・月経前 | 女性ホルモンの変動により、自律神経の乱れ、のぼせ、動悸による不眠が生じる。 月経前には基礎体温が高くなり、睡眠が浅くなる場合がある。 |
厚生労働省 e-ヘルスネット「適応障害」「睡眠時無呼吸症候群」「レストレスレッグス症候群 / むずむず脚症候群」「周期性四肢運動障害」「女性の睡眠障害」 、国立精神・神経医療研究センター「私って不眠症?~不眠症と間違えられやすい睡眠障害~」をもとに執筆者作成
生活習慣を変えても、睡眠不足が解消されない、眠いのに寝られない、寝られない以外に気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
3.ストレスによる不眠が続くとどうなるか
ストレスによる不眠を放っておくと、日中の眠気以外にもさまざまな不調が出てきます。
不眠が続くことにより出現する不調[1]
- 倦怠感
- 意欲低下
- 集中力低下
- 抑うつ
- 頭重
- めまい
- 食欲不振
- 不眠恐怖
上記のような不調によって、日常生活に支障が出たり、うつ病などの精神疾患をはじめ、高血圧、糖尿病、心筋梗塞などといった生活習慣病になりやすかったり、あらゆる場面に影響を及ぼしてしまいます[2]。
また、寝られないこと自体がストレスとなり、不眠をさらに悪化させてしまうこともあります。
心と体の健康を守るためには、満足のいく睡眠が不可欠です。
ご自身の睡眠状態に疑問を感じたら、早めに対処しましょう。
4.ストレスによる不眠症のセルフチェック
不眠症かどうかの判断は、睡眠への満足度と日中の生活へ影響が出ていないかどうかが大きな基準となります。
次の質問から、過去1カ月間の間で週に3回以上経験したものがあればチェックしてください。
- 日中に眠気を感じる
- 朝目覚めても疲れがとれていない
- なかなか寝付けない
- 夜、寝ている途中に目が覚めてしまう
- 朝早くに目覚めてしまい、その後眠れない
- 日中の気分がすぐれない・やる気が出ない
- 集中力や記憶力が低下していると感じる
- イライラを感じやすい
- 睡眠のことが気になってしまう
厚生労働省 女性の健康推進室「不眠症チェック」をもとに執筆者作成
チェックの数が多いほど、不眠症の可能性が高くなります。
また、チェックの数が少ない場合であっても、度合いが高いものがあれば、不眠症を疑って良いでしょう。
5.ストレスによる不眠の解消方法
ストレスによる不眠は、早めの対処によって自分で解消することもできるでしょう。
ここからは、自分でできる不眠の解消方法についてみていきましょう。
- 自分に合うストレス解消法を見つける
- 就寝前にリラックスできる時間をつくる
- 快適に眠るための環境を整える
- ストレスを緩和する食品を摂る
- 日中に適度な運動を行う
- 朝早く起きて太陽の光を浴びる
- 起床・就寝の時刻を一定にする
- 睡眠時間にこだわり過ぎない
上記のなかで簡単にできそうなものから、少しずつとり入れていくことをおすすめします。
5-1.自分に合うストレス解消法を見つける
まずは、不眠の原因となっているストレスを解消することが重要です。
ストレス解消法は、人によって異なるため、自分に合うものを見つけていくと良いでしょう。
ストレス解消法(例)
- 音楽を聴く
- カラオケで大声を出す
- 読書する
- 好きな場所へ出かける・旅行する
- スポーツする
- 絵を描く
- ペットと触れ合う
- 思ったことを紙に書き出す
- 気の知れた友人と話す
5-2.就寝前にリラックスできる時間をつくる
ストレスがあると、交感神経が優位になり、寝付きが悪くなってしまいます。
質の良い睡眠へと導くためには、副交感神経を優位にさせる工夫が必要です。
就寝前には、意識的にリラックスする時間をつくっていきましょう。
リラックスできる時間のつくり方(例)
- ぬるめの湯船につかる
- 好きな音楽を聴く
- 読書する
- 好きな香りのアロマを嗅ぐ
- 軽いストレッチやマッサージをする
5-3.快適に眠るための環境を整える
ベッドなどの寝具や寝室の環境を整えると、寝付きが良くなったり、質の良い深い睡眠をとりやすくなったりします。
快適に眠れる環境の整え方(例)
- 吸湿性・保湿性の良い寝具(湿度50%が最適)
- 保温性の良い寝具(温度33℃が最適)
- 後頭部から首にかけての隙間を埋められる枕
- 適度な硬さのマットレス
- 寝返りしやすい寝具
寝るときのベストな姿勢は、立っている状態に近く、体に負担がかかりにくい姿勢だといわれています。
自分に合った枕、布団、マットレスを選ぶことが重要です。
5-4.ストレスを緩和する食品を摂る
食生活を意識し、ストレスへとアプローチする方法もあります。
例えば、幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」は、必須アミノ酸の一つである「トリプトファン」から合成され、心を安定させるはたらきがあります。
また、体内時計をリセットし、睡眠リズムをつくりやすくする「メラトニン」の原料にもなります。
トリプトファンは、納豆や豆腐などの大豆製品、チーズなどの乳製品といったたんぱく質に含まれているため、毎日の食事にとり入れてみると良いでしょう[3]。
また、穀物に含まれる「GABA」や緑茶のうまみ成分「L-テアニン」なども、一時的な精神的ストレスを緩和し、睡眠の質を向上させると考えられており、サプリメントも発売されています[4][5]。
[4]堀江健二,渡部和哉,坂下真耶,山津敦史 「GABA の生産技術の確立と高機能食品の市場開発 ユニークな機能性食品素材」(『化学と生物』57(4): 207-212 (2019))
5-5.日中に適度な運動を行う
程良い体の疲れは、質の良い睡眠へ導くといわれています。
おすすめは、午後の有酸素運動です。激しい運動は、交感神経を優位にさせてしまうため、夕方以降は避けた方が良いでしょう。
適度な運動は、睡眠に良いだけでなく、ストレス解消にも役立ちます。
無理のない範囲で、体を動かすことを楽しんでみてはいかがでしょうか。
5-6.朝早く起きて太陽の光を浴びる
朝に太陽光のような強い光を浴びると、体内時計がリセットされ、睡眠リズムを整えやすくなります。
セロトニンは、光を浴びるとトリプトファンから合成されます。
さらに、朝に光を浴びてから13時間ほどで睡眠リズムを整えるメラトニンが分泌され、その後、体が1〜2時間かけて睡眠をとるための準備を始めるのです[6]。
そのため、早く寝たい場合や寝付きを良くしたい場合は、まず朝早く起きることから始めてみましょう。
眠りに就きたい時間帯の約15時間前には起床して日光を浴びることをおすすめします。
5-7.起床・就寝の時刻を一定にする
睡眠のリズムは、体内時計で調整されます。
体内時計を乱さないためには、起床時間と就寝時間はなるべくずらさないようにしましょう。
休日のお昼近くまで寝ていたり、夜更かしをしたりすることは、体内時計が乱れる原因となります。
たとえ夜更かしをしても、翌日はいつもと同じ時間に起床すると、体内時計がリセットされます。
日中に一時的な眠気が出てきた場合は、30分程度の昼寝をすると良いでしょう。
毎日バラつきのある起床時間・就寝時間だと自律神経が乱れて体の不調やストレスの原因となるため、気を付けましょう。
5-8.睡眠時間にこだわり過ぎない
「必ず1日○時間、寝ないといけない」といったようにこだわり過ぎてしまうと、寝られないことに罪悪感を持ったり、ストレスを感じたりしてしまいます。
「また今日も眠れない」「早く寝ないと……」などと不安になると、さらに不眠が悪化する可能性があります。
どうしても寝られないときは、いったん寝床から出てしまうことをおすすめします。
また、眠くなるまではリラックスする時間を楽しむなど、自分を責めないようにしながら過ごしてください。
6.寝られない原因とストレスについてのまとめ
夜寝られない原因としては、ストレス、生活習慣、隠れた病気などが挙げられます。
最近は、「ストレスで寝られない」という方が多いため、日常的なストレスを解消していく必要もあるでしょう。
ストレスは、交感神経を興奮させ、リラックス状態をつくりにくくしてしまいます。
また、寝られない状態がさらにストレスとなり、不眠を悪化させることもあるため、早めにコツコツと対策することが重要です。
この記事では、不眠の解消法を紹介しましたが、自分にできるものから無理なく始めてみてください。
ストレス自体が減ってくると、気持ち良く毎日を過ごせるようになります。
なかなか自分で解決できないときは、早めに医療機関を受診し、医師に相談すると良いでしょう。