疲れているときにできやすい口内炎は、食事をするたびにしみてしまって、つらいものですよね。
口内炎の原因は、いまだ明確になっていないものの、ストレスが原因の一つであるといわれています。
この記事では、口内炎とストレスの関係、口内炎の対処法、口内炎に関するよくある疑問などについて解説するとともに、食事や市販薬の選び方についても紹介します。ぜひ参考にしてください。
1.ストレスとの関係は?口内炎の主な原因
口内炎の原因は、実は、まだはっきりと分かっていません。
ストレスのほか、ウイルス、細菌、免疫機能の低下、入れ歯・矯正器具などによる刺激、薬の副作用、ビタミンなどの栄養不足などといったさまざまな原因で口内炎ができると考えられています。
なかでも、ストレスによって口内炎ができる主な原因としては、次の三つが挙げられます。
ストレスによる口内炎の主な原因
- 免疫機能が低下している
- 唾液の分泌が低下している
- 口腔内を無意識に傷つけている
ストレスを感じると、体の状態は、「恒常性(ホメオスタシス)」によって通常モードを保とうとします。
恒常性は、自律神経・ホルモン・免疫系の三つに支えられていますが、ストレスによって徐々にバランスが崩れてしまうのです。
ストレスが長期間続くと、自律神経が乱れ、ストレスホルモンとも呼ばれる「コルチゾール」の分泌が弱まっていきます。
コルチゾールは、免疫バランスを調節しますが、ストレスが続くとこの免疫機能が低下し、普段抑えることのできている炎症が発生して口内炎となります。
さらに、ストレスを受けると、自律神経のうちの交感神経が優位となって唾液の分泌が抑えられます[1]。
よって、唾液による殺菌作用が発揮されずに口内炎ができやすくなってしまうのです
また、ストレスを感じているときや疲れているときに、無意識に頬の内側を噛んでしまうことはありませんか?
口内炎は、そのような刺激によってできてしまうこともあります。
さらには、熱い食べ物、飲み物、強いブラッシングなども刺激の原因となってしまいます。
【関連情報】 「ストレスの原因、引き起こされる症状や対処法を分かりやすく解説!」についての記事はこちら
2.ストレスによる口内炎の特徴・できる場所
口内炎の種類は、いくつかありますが、ストレスが原因で起こりやすいのは、「アフタ性口内炎」です。アフタ性口内炎は、頬の内側や舌に直径3mm〜5mm程度の白くて痛みを伴う潰瘍のことをいいます。
できる原因は明確になっていないものの、免疫機能低下による説が有力であり、ストレスも原因の一つとされています[2]。
アフタ性口内炎は、口腔内のあらゆる粘膜部分にできますが、特に次のような場所にできやすいといわれています。
口内炎ができやすい場所
- 舌のふち
- 歯茎
- 頬の内側
- 唇の裏側
- 喉の奥
また、口腔内を無意識に傷つけてできてしまう口内炎のことを「カタル性口内炎」といいます。
カタル性口内炎は、口腔内の一部が赤く腫れたり、ざらざらになったりします。
炎症の境界ははっきりせず、広範囲に及ぶこともあるのが特徴です。
3.ストレスによる口内炎が治るまでの期間
アフタ性口内炎やカタル性口内炎は、7日〜10日程度で自然に治ることが多いでしょう。
早く治したい場合は、ステロイドやアズレンなどを配合した口内炎専用薬の使用をおすすめします。
軟膏や貼り薬は、口内炎をカバーしてくれるため、痛みの軽減にもつながります。
喉の奥の口内炎には、うがい薬や喉スプレーを使うと良いでしょう。
ストレスや疲れが軽減しなければ、口内炎が長引く可能性があります。
これから紹介する治し方を参考に対策することをおすすめします。
4.ストレスによる口内炎の治し方
ストレスによる口内炎は、基本的には自然治癒しますが、ここで紹介する方法を試すことで治るのが早まることが期待できます。
- 口腔内を清潔にする
- 水分をこまめに摂る
- ビタミンB2・ビタミンB6を摂取する
- トローチなどの市販薬を使う
- ストレスの原因に対処する
- 医療機関を受診する
口腔内の環境を改善したり、ストレスなどの原因をなくしたりすることはもちろん、粘膜を修復したり、炎症を抑えたりする成分を積極的に摂ることが大切です。
4‐1.口腔内を清潔にする
口腔内を清潔にしていなければ、細菌やウイルスに感染しやすくなります。
食後や就寝前などといったタイミングを決め、毎日2〜3回は歯磨きを行いましょう。
忙しくて歯磨きの時間がとれないときや、歯磨きにプラスして口腔内ケアをしたいときは、マウスウォッシュをとり入れることをおすすめします。
口内炎の痛みが気になる方は、ノンアルコールタイプのような刺激の少ないマウスウォッシュを選ぶと良いでしょう。
4‐2.水分をこまめに摂る
水分不足は、唾液の分泌不足を招き、口腔内の免疫機能を低下させてしまうため、口内炎ができやすくなります。
そのため、こまめに水分補給をして唾液の分泌を促し、口腔内のうるおいを保つことが大切です。
また、よく噛みながら食事をしたり、ガムを噛んだりしながら、唾液の分泌を促すのも良いでしょう。
4‐3.ビタミンB2・ビタミンB6を摂取する
ビタミンなどの栄養素は、バランス良く摂ることが大切ですが、特に粘膜の正常なはたらきに関与するビタミンB2・ビタミンB6を摂るのがおすすめです。
ビタミンB2・ビタミンB6が欠乏すると、口内炎だけでなく、口角炎や皮膚炎などを引き起こしてしまいます[3]。
ビタミンB2は卵・乳製品・緑黄色野菜・豆類、ビタミンB6は穀類・肉類など多くの食品に含まれています。
また、食べ物からの摂取の他、腸内細菌による生合成もできるため、日頃から腸内環境を整えておくことも大切と考えられます[4]。
4‐4.トローチなどの市販薬を使う
トローチ・うがい・軟膏・貼り薬といった市販薬は、炎症を抑える成分が口内炎へ直接作用し、腫れを鎮めてくれます。
口内炎に使われる市販薬の成分には、次のようなものがあります。
- 抗炎症成分:ステロイド(トリアムシノロンアセトニド)・グリチルレチン酸・アズレン・シコンエキス
- 殺菌消毒成分:セチルピリジニウム
食事のバランスが気になる方は、粘膜の正常なはたらきを助けるビタミンB2・ビタミンB6を配合した飲み薬を併用すると良いでしょう。
自分に合っている市販薬が分からない場合は、薬局やドラッグストアの薬剤師や登録販売者に相談することをおすすめします。
4‐5.ストレスの原因に対処する
ストレスで口内炎ができやすい方は、何よりもストレスの原因に対処することが大切です。
ストレスの感じやすさは、人それぞれであり、日常生活で感じる不安、緊張、怒り、恐怖、暑さ、寒さ、病気、睡眠不足など原因もさまざまです。
ストレスには、できるだけ早い段階で対処していきましょう。
4‐6.医療機関を受診する
口内炎は、医療機関で診てもらうこともできます。
特に、治療中の病気がある方は、かかりつけの医師に相談すると良いでしょう。
持病や現在使用している薬の副作用で口内炎ができやすくなっている可能性もあります。
かかりつけの医師がいない場合は、耳鼻咽喉科、内科、口腔外科、皮膚科などの受診をおすすめします。
子どもの口内炎は、小児科でも診てもらえます。
5.口内炎に関するよくある質問
「口内炎をすぐに治す方法は?」「口内炎は梅干しで治る?」などといった、口内炎に関するよくある質問をまとめてみました。
ストレスによる口内炎がよくできる方は、ぜひ参考にしてください。
5‐1.口内炎ができやすい人の特徴は?
疲れやストレスを感じやすい方、寝不足気味の方、口腔内の環境が良くない方は、口内炎ができやすく、治ったとしても再発しやすいでしょう。
この記事で紹介した対処法を実践していくことをおすすめします。
また、義歯、差し歯、矯正器具を使っている方は、口腔内を傷つけて口内炎ができやすい状態になっている可能性があります。
使用中の器具が合っていない場合は、かかりつけの歯科で診てもらいましょう。
5‐2.口内炎が繰り返しできる原因は?
口内炎は、疲れやストレス対策ができていなかったり、口腔内が清潔に保たれていなかったりすると、繰り返しできることがあります。
また、ビタミンB2・ビタミンB6が不足気味になっている方も、繰り返し起こりやすいでしょう。
さらには、治療中の病気や薬の副作用で口内炎ができやすい状態になっているケースもあります。
口内炎が繰り返し起こる場合や、何週間も治らない場合は、早めに医療機関を受診してください。
5‐3.口内炎がよくできるのはがんと関係ある?
口の中のがん(口腔がん)の初期症状は、口内炎や歯周病と非常によく似ていて区別が難しいともいわれています。
口腔がんの初期症状
- 口腔内が白色に変わる
- 赤みが強くなる
- ただれる
- ざらざらする
- しこりを感じる
- 歯茎が腫れる など
口内炎は、自然治癒する場合が多いですが、口腔がんの場合は、症状が消えなかったり、悪化したりすることがあります。
なかなか治らない口内炎は口腔がんの可能性があるため、口内炎の症状が2週間以上治らない場合は、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう[5]。
5‐4.口内炎とヘルペスの見分け方は?
口内炎と口にできるヘルペス(口唇ヘルペス)は、見た目に違いがあります。
口内炎の場合は、小さな白い潰瘍ができますが、口唇ヘルペスの場合は、白い潰瘍はできずに水膨れができます。
そして、水膨れがかさぶたになっていくことが特徴の一つです。
また、口唇ヘルペスの場合、水膨れができる前にピリピリとした痛みが生じたり、粘膜以外(唇や唇周辺の皮膚)に水膨れができたりしやすいことも特徴です。
5‐5.即効性のある治し方は?
口内炎は、自然治癒する症状ですが、「これを実践すれば、すぐに治る!」といったような対処法はありません。
しかし、この記事で紹介した対処法を一つひとつ試していけば、比較的早く治るでしょう。
ストレスや疲れが原因で口内炎ができてしまった場合は、少しでも多く休養をとり、体力を回復させることが大切です。
なかなか口内炎が治らない場合は、市販薬の使用や医療機関への受診を考えてみましょう。
5‐6.口内炎は梅干しで治る?
「口内炎に梅干しを付けておくと、治りが早まる」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。
実際にインターネットで調べてみると、「口内炎には梅干しがおすすめ」といった記事も出てきます。
しかし、実際には、「口内炎は梅干しで治せる」という科学的根拠や研究結果は、見つけられていません。
炎症している部分に酸味や塩味といった刺激のあるものを付けてしまうと、痛みが強くなり、むしろ口内炎を悪化させてしまう可能性があるため、注意しましょう。
5‐7.口内炎は蜂蜜で治る?
「蜂蜜は、口内炎に限らず喉などの粘膜に良い」という話を聞いたことがある方もいるでしょう。
蜂蜜には、粘膜を保護する効果があると認められています[6]。
刺激もほとんどないため、口内炎に塗っても問題ないでしょう。
ただし、蜂蜜が直接口内炎を治すというわけではありません。
あくまで、口内炎を刺激から守る保護剤のような役割です。
また、1歳未満の乳児への使用は、やめてください。
「乳児ボツリヌス症」という食中毒を起こす可能性が極めて高いため、注意が必要です。
5‐8.塩は口内炎に効果がある?
「口内炎には塩が良い」との話を聞いたことがある方もいるかと思いますが、こちらも科学的根拠は不明確です。
梅干しと同様、塩味による刺激で痛みを感じるだけでなく、塩を直接口内炎に塗り込むことで粘膜を傷つけ、口内炎を悪化させてしまう可能性があります。
水道水でのうがいで口内炎に痛みが生じる場合は、「塩うがい」がおすすめです。
ただし、塩うがいで口内炎が治るわけではありません。
あくまで粘膜への刺激を減らし、痛みを軽減させる目的となります。
塩うがいをする際には、生理食塩水(500mLの水に食塩4.5g)を作って行うと良いでしょう。
6.口内炎とストレスについてのまとめ
口内炎は、ストレスなどによる免疫機能低下によって口腔内のさまざまな場所にできやすいですが、多くは1週間程度で自然に治ります。
しかし、疲れやストレスがたまった状態のままだと治りにくく、治ってもすぐ再発してしまうでしょう。
口内炎を早めに治す方法としては、ストレスの原因に対処する、口腔内を清潔に保つ、ビタミンB2・ビタミンB6を摂るなどといったことをおすすめします。
また、トローチなどの市販薬の使用や医療機関へ頼ることも大切です。
痛みを生じる口内炎は、それ自体がストレスになってしまうこともあるため、早めに対処していきましょう。