「ストレスって、そもそもなんのことなんだろう?」
ストレスという言葉は普段からよく見聞きしますよね。
しかしふと考えてみるとストレスがどのようなものかよく分かっていない、という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ストレスとは外部からの刺激によって体内に生じる反応のことで、原因となる刺激などを含める場合もあります。
ストレスは私たちの心身や行動にさまざまな影響を与えるため、我慢し過ぎないことが重要です。
「ストレスとは何か」「つらいとき自分に何が起きているのか」という仕組みを知ることで、気持ちが少し楽になるかもしれませんね。
また、日々の習慣を変えることで、ストレスを軽減できる可能性もあります。
この記事では、そもそもストレスとはなんなのか、またストレスを解消するためにはどのようにしたら良いのかを解説します。
1.ストレスとは
「ストレス」という言葉は日常的によく使われますよね。
私たちのストレスの原因にはどんなものがあるのでしょうか。
そして、ストレスによって私たちの心身にどんな変調が起きてしまうのでしょうか。
まずはこのストレスという言葉が持つ意味をかみ砕いて説明しましょう。
1-1.ストレスの定義
ストレスという言葉は、もともと機械工学の用語で「物体のひずんだ状態」を意味するものです。
医学用語としてのストレスは、外部からの刺激などにより体内に生じる反応のことで、カナダの生理学者ハンス・セリエ博士が唱えた「ストレス学説」によるものです。
ストレスという言葉は、「ストレスがたまっている」という使い方のほかに、「〇〇がストレスになっている」といったような使い方もされていますよね。
一般的には、ストレスの原因(ストレッサー)とそれによって生じた体や心のひずみ、ひずみを戻そうとする心身の反応(ストレス反応)をひっくるめて「ストレス」と表現されているといえるでしょう。
風船をギュッと押しつぶした状態をイメージしてみてください。
このとき風船をゆがませている手の力が「ストレッサー」で、風船自体がゆがんでいる状態を「ストレス反応」だと考えれば分かりやすいのではないでしょうか。
この風船のように、心身に負荷がかかっている状態を「ストレス」というのですね。
ストレスは私たちの体や心、行動にさまざまな影響を与えることが分かっています。
ストレスのシグナルが自分への警告として発せられ、それに伴って私たちの心身にはさまざまなつらい症状が現れるのです。
こういった異変に早めに適切な対応を取れば、正常な状態へと復調しやすくなります。
しかし、さらなる無理を重ねるなどして対処が遅れると状態はどんどん悪化し、取り返しがつかなくなることもあります。
このような事態を避けるためにも、自分の体から発せられているストレスやそのシグナルに気付くことが大切です。
1-2.ストレスの原因
私たちの心身に影響を与えるストレスの原因(ストレッサー)は、「物理的ストレッサー」「化学的ストレッサー」「心理・社会的ストレッサー」の3つに大別できます。
【私たちの心身に影響を及ぼすストレッサーの種類】
- 物理的ストレッサー……暑さ、寒さ、騒音、混雑など
- 化学的ストレッサー……公害物質、薬物、酸素欠乏など
- 心理・社会的ストレッサー……人間関係や仕事、家庭の問題など
この中でも私たちの日常生活で特にストレスの要因になりやすいのが、人間関係や仕事上の問題で起きる「心理・社会的ストレッサー」ではないでしょうか。
特に労働者のストレスは深刻な問題だといえるでしょう。
厚生労働省の「労働者健康状況調査」によれば「仕事や職業の環境でストレスを感じている」労働者の割合は、1982年には50.6%であったものが、2012年には60.9%になっています[1]。
また2012年の調査では職場の人間関係にストレスを感じていると回答した方が41.3%にも上っています[1]。
実際に学校や職場のストレスにより心や体にさまざまな異変を感じ、体調を崩した経験したことのある方は少なくないでしょう。
[1] 厚生労働省 こころの耳「ストレス軽減ノウハウ 1 ストレスとは」
1-3.ストレスによる影響
ストレスは心だけでなく、体や行動にも影響を及ぼします。
ストレスが心に与える影響としては、やる気が低下したり、いらいらしてしまったり、不安や気分の落ち込みを感じたり、何かに対する興味や関心がなくなったりといったことが挙げられます。
これまで楽しいと感じていたことが、忙しいときには急にどうでもいいことのように感じられてしまった経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それはストレスがたまってしまった結果なのかもしれません。
また体には、頭痛や肩こり、腰痛、目の疲れ、腹痛や消化器官の不調、動悸(どうき)、息切れ、不眠などの症状が現れます。
ストレスでおなかが痛い、眠れなくなった、といった話はよく聞きますよね。
ストレスはさらに私たちの行動にも影響を及ぼします。
知らず知らずのうちにお酒やたばこが増えてしまったり、仕事でのミスが増えてしまったりする場合もあるのです。
ストレッサーが強すぎたり、ストレッサーが長期的に続いたりすると、ストレス反応が慢性化してしまいます。
ストレス反応が慢性化すると、最終的には気分の落ち込みや食欲の低下、疲れやすいなどの身体症状を伴ういわゆる「鬱(うつ)」の状態になってしまう可能性もあります。
さらに身体面でも、循環器系、消化器系、内分泌系などの疾患を引き起こす要因になるのです。
2.自分のストレスをチェックする方法は?
「最近なんだか調子が悪いんだけど、これってストレスのせいなのかな?」
このように不安に思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
知らず知らずのうちにストレスをため込んで心や体に不調を来してしまっている可能性もあります。
ご自分がどれくらいストレスを抱えているのか、客観的に考えてみることもストレスと上手に付き合う上では重要だと考えられるでしょう。
厚生労働省は就労者向けに「5分でできる職場のストレスセルフチェック」を用意しています。
ご自分がどのくらいストレスをためているのか知りたい、という方は参考にしてみると良いかもしれませんね。
【関連情報】 「ストレスが溜まっている時に注意したいポイント」についてもっと知りたい方はこちら
3.ストレス発散に役立つ方法
「ストレスを解消するためにはどうしたら良いんだろう?」
社会生活を営む以上、ストレスを完全にゼロにすることは難しいといえます。
また適度なストレスは脳の機能、特に記憶力などに良い影響を与えるというマウスでの実験結果も報告されているのです[2]。
重要なのは適度にストレスを解消しつつ、ストレスと上手に付き合っていくことだといえるでしょう。
ここでは普段の生活の中でストレス解消に役立てられる方法をご紹介します。
[2] 一般社団法人日本生活習慣病予防協会「適度なストレスは脳の活性化に役立つ」
方法1 考え方を変える
同じ環境にいてもストレスの感じ方は人それぞれで、強くストレスに感じる人もいればあまり気にならないという人もいます。
その差は物事の捉え方、考え方の違いからきているといえるでしょう。
過去にすごく悩んでいたことでも、後から振り返ると「何をそんなに悩んでいたんだろう?」と不思議に思った経験がある方もいらっしゃるかもしれませんね。
これは環境の変化もあるかもしれませんが、主には自分自身の考え方が変わったことによるものです。
物事の捉え方を少し変えてみることで、ずいぶんと楽になることがあります。
「考え方を変えるなんて、そんな簡単にできないよ......」
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、少しずつ意識を変えていきましょう。
完璧主義は捨て、柔軟な思考を心掛けることが重要です。
「完璧な人間はいない」「目標と現実のギャップがあるのは当たり前」と肩の力を抜くことで、ゆとりをもって物事に取り組めるはずです。
ストレスがたまると何事もネガティブに捉えて、独りで悪循環に陥ってしまう恐れがあります。
「肯定的に捉えられるところはないか」「うまくいっている部分は何か」とポジティブな面を見ることで、気持ちが前向きになって、問題解決へと意識を向けられるようになると考えられるでしょう。
「なるようになる」「じたばたしても仕方がない」と、いい意味で開き直ることもときには必要です。
うまくいかないケースを想定した上で現実を受け入られるようになり、気持ちを楽にできると良いですね。
方法2 十分な休養と睡眠をとる
休養と睡眠は強力なストレス対策になってくれます。
忙しいからとおろそかにせず、睡眠時間をしっかり確保するようにしましょう。
いつも忙しいからと十分な睡眠をとらずにいると、脳の機能が低下してストレス耐性が弱まってしまいます。
日中の集中力が低下してパフォーマンスが落ちる、ストレスが増して睡眠の質も落ちる、という負のスパイラルに陥る恐れもあります。
また睡眠時間が十分でないと、「自律神経」やホルモンのバランスが乱れる原因にもなります。
自律神経は互いに相反するはたらきを持つ「交感神経」と「副交感神経」の2種類に分けられますが、ストレスなどによってこれらのバランスが乱れるとさまざまな不調が現れてしまうのです。
またストレスと戦ってくれるホルモン「副腎皮質ホルモン」の分泌は、朝に最も多く、昼間から少なくなっていき、深夜には最も少なくなるといわれています。
つまり、夜更かしは自らストレスに弱い体を作っているのに等しいといえるでしょう。
心と体を休めるには早寝を心掛けて、良好な睡眠をとることが重要です。
なお、就寝前に飲酒したり、夜遅くまでスマホを眺めたりといった行為は睡眠の質の低下を招くので注意してくださいね。
方法3 お風呂にゆっくりつかる
入浴にはリラックス効果があり、ストレス解消を期待できます。
入浴には体を清潔にするだけでなく、血行を促したり、筋肉痛を和らげたり、神経をリラックスさせたりといった効果があります。
「どれくらいの温度のお風呂が良いんだろう?」
と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれませんね。
ストレス解消に適した温度は分かっていませんが、寝付きを良くするためには38度程度のぬるめのお湯で25〜30分程度、42度の熱めのお湯なら5分程度が良いとされています[3]。
眠気は脳の温度が低下したときに生じやすくなるため、一度体を温めてあげることで眠りに就くときの温度の下がり幅が大きくなり、快眠を得られると考えられるのです。
時間がないからといってシャワーで済ませずに、ゆっくりお風呂につかる習慣を付けたいですね。
入浴とうつ病の関連を調べた研究結果もあります。
全国の約1万人のうつ病でない65歳以上の高齢者を調査したところ、週7回以上の浴槽入浴をしている方で6年後のうつ発症割合が低くなっていました。
特に冬の浴槽入浴との関連は統計学的有意差がありました[4]。
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
方法4 適度な運動をする
適度に体を動かすこともストレス解消になるといえるでしょう。
特にウォーキングやジョギング、サイクリングなどの同じ動きを繰り返すような運動がおすすめです。
一定の動きを反復することで、精神を安定させ安心を感じさせる神経伝達物質「セロトニン」の分泌が高められるといわれています。
「少し歩いてみる」といったところから始めてみると良いですね。
また日光を浴びることもセロトニンの分泌を促すといわれています。
日頃体を動かす習慣や日光を浴びる機会がないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
セロトニンが不足するとストレスや疲れをより感じやすくなってしまいます。
積極的に体を動かし、日の光を浴びるよう心掛けましょう。
方法5 趣味など好きなことに熱中する
趣味に熱中することもストレス発散法の一つです。
仕事など、ストレス源となり得るものと距離を置き自分の好きなことをする時間を確保するようにしましょう。
好きな映画や小説、ゲームといった娯楽に触れたり、音楽を聴いたり演奏したり、絵を描いたり、スポーツに励んだりと人によっていろんな趣味がありますよね。
無理はせず、自分に合った方法でストレスを発散すると良いでしょう。
仕事や勉強などの「オン」と趣味に没頭する「オフ」の切り替えをしっかり行うことでオンのときの意欲もさらに高まると考えられます。
また共通の趣味を持つ人と関わることで生活がより豊かになるかもしれませんね。
方法6 深呼吸やストレッチをする
つい仕事や勉強などに集中し過ぎて、同じ姿勢のままじっとしていることが多くなってしまっているという方も多いのではないでしょうか。
ストレスがかかっているときは特に、筋肉が緊張したり、呼吸が浅くなったりする傾向にあります。
深呼吸やストレッチでリラックスし、気分を切り替えることを心掛けましょう。
深呼吸をするときは背筋を伸ばし、軽く目を閉じながらおなかに手を当ててみましょう。
ポイントは息を吸うのではなく、吐くことから始めることです。
ゆっくりと数を三つ数えながら口から息を吐いたら、次は同じようにカウントしながら鼻から息を吸い込みます。
これを5〜10分ほど繰り返すと良いでしょう[5]。
息を吐くときにはおなかが凹み、息を吸うときにはおなかが膨らむ腹式呼吸を意識してくださいね。
途中で余計なことが頭に浮かんでしまったら、気にしないで一から数え直しましょう。
またデスクから離れられない、時間がないというときには、椅子に座ったまま体を後ろにひねり、背もたれをつかむだけでも軽いストレッチになりますよ。
ストレッチを行うときには以下のポイントに気を付けてくださいね。
【ストレッチのポイント】
- 弾みをつけない
- 痛みを感じたらそれ以上は伸ばさない
- 大きい筋肉ほどゆっくり伸ばす
- 呼吸は止めない
- 伸ばしている部位を意識する
厚生労働省が仕事の合間にも行える簡単なストレッチをまとめている「東京ストレッチ物語」も参考にしてみましょう。
[5] 厚生労働省 こころもメンテしよう 〜若者を支えるメンタルヘルスサイト〜「こころと体のセルフケア 腹式呼吸をくりかえす」
【関連情報】 「手軽に行えるストレス発散法」についてもっと知りたい方はこちら
4.つらいときは無理せず早めに専門家に相談しよう
「気分の落ち込みが長いこと続いている……」
「ストレスで体調を崩してしまった……」
ストレスをため込み過ぎると心や体にさまざまな不調が現れます。
このようにつらい状態が続いている場合は無理をせず、早めに専門家に相談しましょう。
精神科・心療内科などを探せるよう、厚生労働省が各都道府県別の医療機関の検索サイトをまとめているページがあります。
受診先を探す際にはこちらを参考にしてみても良いでしょう。 厚生労働省 こころの耳
【関連情報】 「ストレスの影響を受けにくい体」についてもっと知りたい方はこちら
5.ストレスについてのまとめ
ストレス対策で大切なのは、普段からストレスをため込まないよう気をつけることです。
心身への負荷が長く続くと、体や心、行動面にさまざまな異変が生じる恐れがあります。
ストレスを慢性化させないために、適度にストレスを解消するよう心掛けましょう。
また、休養や趣味の時間を十分にとってもまったくストレスが解消されない、心身に症状が現れているといった場合には無理をせず、早めに医療機関に相談してくださいね。